ヒトデ
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第三章
「死なない生きものはいません」
「それじゃあ」
「すぐにそうされて下さい」
「干すか焼くかですね」
「どちらかです、それに」
「それにとは」
「煮てもいいです」
このやり方もだ、大村は漁師に話した。
「まとめて鍋にでも入れて」
「煮殺すんですか」
「どっちにしても熱に弱いですから」
「成程、わかりました」
漁師はここまで聞いて大村に対して頷いて答えた。
「では早速そのやり方でいきます」
「そうされて下さい、ただ」
「ただ?」
「もう一つお気をつけ下さい」
「まだ何かあるんですか?」
「はい、珊瑚礁のヒトデですが」
「オニヒトデ、全身トゲだらけの如何にも凶暴そうな奴です」
そのヒトデについてはだ、漁師は普通のヒトデについて語る時よりもさらに嫌悪を込めて眉を顰めさせて話した。
「あれはとんでもないですね」
「あのヒトデですね」
「あのヒトデに何か」
「絶対にその手で触ってはいけないです」
「あっ、村長がそう言ってました」
「もうですか」
「はい、あのヒトデは絶対に直接触れるな、頑丈な手袋で持てと」
そう言われたというのだ。
「絶対に」
「あのヒトデは毒を持っています」
「毒ですから」
「はい、ですから」
「素手ではですね」
「触ってはいけません」
「刺されるからですか」
「踏まないで下さいね」
それも駄目だというのだ。
「絶対に」
「わかりました」
「あのヒトデも同じです」
「やっぱり干せばいいんですね」
「焼くか煮るか、あと酢酸ですね」
大村はこの酸も話に出した。
「所謂お酢ですが」
「あのヒトデ酢にも弱いんですか」
「十パーセントから十五パーセントの酢酸ですぐに死にます」
「そうなんですが」
「あと造礁珊瑚も苦手でほら貝が天敵ですが」
「干せばいいんですね」
「はい、あと焼くか煮る」
そうすればというのだ。
「それでいいので」
「じゃあ毒に注意して」
「駆除すればいいです」
「わかりました、いやヒトデはそうなんですね」
「退治の仕方があります」
ヒトデにはヒトデのというのだ。
「それがありますので」
「それを守ってですね」
「駆除されていって下さい」
「わかりました、じゃあすぐに」
漁師は大村に対してまた頷いてだ、そのうえで。
すぐに村の者達にこのことを話した、大村も同席してそのうえで自分の肩書きを紹介してから話した。
「へえ、大学の教授さんですか」
「八条大学水産学部海洋生物科の」
「あの神戸の大学ですね」
「あっちの人ですか」
「はい、観光で来たのですが」
ここでも穏やかな顔でだ、大村は話した。
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