八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十話 午前の練習その四
「帽子は被れ」
「絶対ですね」
「そこはですね」
「そうだ、どんな帽子でもいいが」
こうも言う先生だった。
「間違っても巨人の帽子は被るなよ」
「そんなの持ってないですよ」
「誰も持ってないですよ」
「あんな不吉な帽子誰が被るんですか」
「北朝鮮の帽子じゃないですか」
それレベルで不吉だ、本当に。
「阪神なら持ってますよ」
「俺広島持ってますけれど」
「けれど巨人はないですよ」
「そんなの誰も持ってないですよ」
「ならいい、神戸で被ることも危険だが」
阪神の本拠地のある県だからだ。
「ここも同じだからな」
「広島だからですね」
「カープの本拠地ですから」
「江田島も広島ファン多いんですね」
「ガチですね」
「そうだ、ガチだ」
実際にという返事だった。
「阪神なら許されるんだがな」
「巨人はですね」
「あのチームだけはですね」
「やっぱり許されないんですね」
「反発受けるんですね」
「そうだ、だから誰も持ってないならいいが」
それでもというのだ。
「持っていたら被るなよ」
「他の帽子ですか」
「それ被るべきですか」
「自衛隊の人達から貰ってる」
帽子を持っていない人達の為にというのだ。
「だからだ」
「自衛隊の帽子ですね」
「それ被ればいいんですね」
「キャップ帽だ」
野球のそれと同じだというのだ。
「自衛隊では勤務の時や体育の時に被る」
「そういうのですか」
「それを被ってですか」
「そのうえで、ですね」
「走るんですね」
「そうだ、自衛隊はサービスがいいからな」
本当にそういう組織だ、僕は自衛隊の施設にこれまで何度も入っているけれどいつも親切にしてもらっている。
「だからな」
「帽子もですね」
「貸してくれてるんですね」
「そちらも」
「そういうことだ、ではいいな」
「わかりました」
皆先生の言葉に頷いた、そしてだった。
それぞれが持って来た帽子を被った、見れば皆帽子を持って来ていて自衛隊の帽子を被った人はいなかった。
だがその帽子、紺色のそれを見てだ。僕は走る前に皆に言った。
「何かあの帽子って」
「自衛隊の帽子か」
「あれか」
「いい帽子だね」
こう皆に言った。
「見たら」
「ああ、そうだよな」
「デザインいいよな」
「色もな」
「センスあるよな」
「確か海自さんの帽子だったな」
「うん、そうだよ」
僕はすぐに答えた。
「あの帽子はね」
「江田島だしな」
「それに傍に呉の基地もあるしな」
「明日江田島に研修行くけれどな」
「呉の基地にも行くな」
こちらも研修でだ。
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