魔女に乾杯!
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35部分:第三十四話
第三十四話
第三十四話 集まった風
「今風さん一杯出してるよね」
「ええ」
美樹は弟の言葉に頷いた。
「それを一つずつ飛ばしてるの?」
「そうだけれど」
「そうじゃなくてね。一度に飛ばしたらどうかな」
「一度に」
「うん。だったら威力があると思うんだけれど。どうかなあ」
「一度に、か」
「何で今まで思いつかなかったんだろ」
ビルガーもファルケンも目から鱗であった。二羽は本当に鱗を持っているのであるが。
「ねえ御主人」
ビルガーが美樹に対して言った。
「一度試しにやってみたらどうでしょうか」
「そうね」
美樹は彼の言葉にも頷いた。
「ファルケンはどう思う?」
「私ですか?」
「うん。貴女がどう思っているかな、と思って」
「そうですね」
彼女は考え込みながら答えた。
「悪くはないと思いますよ。ものは試しです」
「賛成なのね」
「はい。一度やってみて下さい」
「わかったわ。それじゃあ」
「ええ」
美樹は魔法を使い風達を出した。それを全て自分の前に持って来る。
「行くわよ」
「うん」
そしてそれを一斉に前にある的に向けて放った。風は物凄い音を立てて飛ぶ。そして的に次々と命中した。的はそれにより完全に崩れ去ってしまった。
「凄い・・・・・・」
「まさか成功するなんて・・・・・・」
「うまくいった?」
「え、ええ」
使い魔達は唖然としていた。そして美樹も同じであったが信也の言葉に使い魔達よりも先に我に返った。
「まさかこれだけの威力だなんて」
「僕の言った通りになったね」
信也はそう言ってにこりと笑った。
「これで少しはお姉ちゃんの役に立てたかな」
「とてもね」
美樹も笑った。
「ありがと。今回は信也のおかげよ」
「僕はちょっと言っただけだから全部お姉ちゃんの力だよ。ほら、お姉ちゃんいつも言ってるじゃない」
「何て?」
「努力すればそれだけ叶うって。お姉ちゃんも努力したから魔法を完成させられたんだよ」
「あっ」
美樹はその言葉にハッとした。
「そ、そうね」
「だからね。僕のおかげじゃないよ。全部お姉ちゃんの力だよ」
「有り難う」
「御礼なんていいよ」
信也はまた笑った。
「お姉ちゃんの力なのに。そんなのいいよ」
「しっかりしてるね」
「流石ご主人様の弟さん」
歳のわりにしっかりした信也に対して感服する二羽の使い魔達であった。
第三十四話 完
2005・8・22
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