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遊戯王EXA - elysion cross anothers -

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TRICLE STARGAZER
  TRSG-JP003《闇に飲まれろっ!》

 
前書き
【海皇】・【水精鱗】
 転生者・水咲凍夜が持ち込んだ2つ目のデッキ。現実世界にて、水精鱗はアビス・ライジングで登場するカテゴリー。直前に登場したストラクチャーデッキ【海皇の咆哮】とは環境破壊レベルのシナジーを叩きだし、環境上位に食い込んでいます。
 水咲凍夜は、1つ目のデッキに対策をしてきた転生者に対してこのデッキを使い、やはり転生者を一方的に虐殺していました。現在は世界がこのデッキに反応したのか、とあるカードデザイナーがこの企画書を本社に送っているようです。

※注意※

 今回登場するカードには、OCGに存在しないカードがありますが、オリカではありません。共に海外版Abyss Risingで登場した海外新規のカードです。
 後書きに、海外カードのテキストとその日本語訳を明記しておきました。便宜上カード名は自分で考えたものを使用しましたが、公式で日本語名が確定し次第カード名を修正します。
 

 
―――― Turn.0 Are you ready? ――――

1st/Sakura Yagami
◇LP/10000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0

2nd-A/Kurono Mochiduki
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0

2nd-B/Ren Kazami
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0


「「デュエル!」」
「……デュエル」

 ……黒乃がなんか諦めたような顔してるんだけど、大丈夫かな?
 さて、さっき黒乃にとどめを刺していたモンスターは、昨日スクリーン上で確認した《水精鱗-メガロアビス》だった。そう考えると、夜神さんのデッキは水咲と同じ【水精鱗】だろうか。
 ……やっぱりむかつくな。水咲め、死んでも世界に迷惑かけるのか。

「私の先攻、ドローです!」


Turn.1 Player/Sakura Yagami
 1st/Sakura Yagami
  LP/10000 HAND/5→6
 2nd-A/Kurono Mochiduki
  LP/4000 HAND/5
 2nd-B/Ren Kazami
  LP/4000 HAND/5


「手札から《ジェネクス・ウンディーネ》を召喚!」

 彼女の場に、昨日も見たガラス瓶の人工生命体が姿を現す。

 ジェネクス・ウンディーネ
 ☆3 ATK/1200

「《ジェネクス・ウンディーネ》の効果発動! デッキから《海皇の竜騎隊》を墓地へ送り、《ジェネクス・コントローラー》を手札に加えます! そして《海皇の竜騎隊》の効果でデッキから《水精鱗-メガロアビス》を手札に!」

 おお、デッキの回ること回ること。こっちの世界にあったら環境取ってる気がする。メタのしにくさがおかしい……って、俺のデッキがメタられやすいだけか。

「カードを2枚セットして、ターン終了です!」


―――― Turn.1 End Phase ――――

1st/Sakura Yagami
◇LP/10000 HAND/5
◇《ジェネクス・ウンディーネ》ATK/1200
◇set card/mo-0,ma-2

2nd-A/Kurono Mochiduki
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0

2nd-B/Ren Kazami
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0


「次、黒乃からいいよ」
「……わかった! 俺のターン、ドロー!」

 ……さっき殺されかけたばかりなのに、もう元気になってる。……いや、あるいはただの虚勢……?

「……無理しないでね、黒乃」
「ああ、大丈夫だ」


Turn.2 Player/Kurono Mochiduki
 1st/Sakura Yagami
  LP/10000 HAND/5
 2nd-A/Kurono Mochiduki
  LP/4000 HAND/5→6
 2nd-B/Ren Kazami
  LP/4000 HAND/5


 さて、とりあえずは様子見だ。黒乃がどういったデッキを使うかで、俺の動きも僅かに変わってくる。

「……よし、手札から《強欲で謙虚な壺》を発動! デッキトップを3枚公開し、その中から1枚を手札に加える!」

 おお、剛健だ。
 このターンの特殊召喚を封印する代わりに、デッキの上から3枚をめくってその内1枚を手札に加えるという効果の通常魔法。情報アドバンテージを代償にして、手札事故を大幅に軽減する強力なカード。
 毎ターン特殊召喚を連打するようなデッキでも、そのギミックに到れなければすなわち事故だ。そのため、俺の世界では殆んどの人がデッキに差していた。俺も1枚入れてるし。本当の強さは使わないとわからないということを教えられた1枚。
 ……そして、黒乃の前に3枚のカードが映し出される。


《激流葬》
《グリモの魔導書》
《アルマの魔導書》


「【魔導】か……」

 【魔導】。通称【ジュノンビート】。
 手札の"魔導書"3枚を公開することで手札から特殊召喚する効果と、墓地の"魔導書"を除外することでフィールド上のカードを破壊する効果を持つ最上級モンスター《魔導法士 ジュノン》。
 このうち、大会仕様の【魔導】は全部このモンスターをデッキの中心としたデッキ。"ジュノン"と"魔導書"のサポートに特化したカードしか殆んど入らないため、もはや【ジュノンビート】。
 ……もっとも、彼がそのタイプとは限らないのだが。

「……《グリモの魔導書》を手札に加える」
「まあ、それ加えますよね」
「行くぜ! 手札から永続魔法《魔導書殿エトワール》を発動!」

 ……うん、知らないカード来た。
 フィールドの上空に水晶が現れる。水晶は淡い水色の光を放ち、フィールドを優しく照らし始めた。

「さっきは引かなかったカードですか……」
「ああ。《魔導書殿エトワール》は"魔導書"が発動する度に魔力カウンターを1つずつ乗せていく永続魔法。このカードに乗った魔力カウンター1つにつき俺のフィールドにいる魔法使い族モンスターの攻撃力を100ポイント上昇させる!」

 なるほどね、魔法使い族の打点強化か。"魔導書"を使う度に攻撃力100追加となると……最終的には火力が大変なことになる気がする。というか、純粋に《魔導法士 ジュノン》の打点強化はうまい。

「そして、《グリモの魔導書》を発動! 《セフェルの魔導書》を手札に加える!」

 【魔導】の軸とも言えるカード《グリモの魔導書》。デッキから"グリモ"以外の"魔導書"を手札に加える効果を持っている。
 殆どの"魔導書"は同じものを1ターンに2度以上使えないという制約があるが、それを差し引いても1枚1枚が強力な効果を持っている。この《グリモの魔導書》はそれら全てに成り変わることができるのだ。
 変わったところでは、召喚されるかリバースしたときにデッキから任意の"魔導書"を手札に加える効果を持った《魔導書士 バテル》なんかも加えられたりする。こちらは《グリモの魔導書》も手札に加えられるので、この2枚だけで小さな半永久機関が完成する。実用性はあまりないけど。

 魔導書殿エトワール
 M0→1

「そして、《魔導教士 システィ》を召喚!」

 ……またもや知らないカードだった。
 彼の場に現れたのは、緑色の法衣を纏った金髪の女性。右手には青い剣、左手には天秤を模した杖を手にしている。

 魔導教士 システィ
 ☆3 ATK/1600→1700

「続けて《セフェルの魔導書》を発動! "グリモ"の効果をコピーして《ヒュグロの魔導書》を手札に加え、発動! "システィ"の攻撃力を1000ポイントアップ!」

 魔導士が杖をしまい、空中に現れた赤い魔導書を開く。彼女の手に持つ剣にも赤い魔力が乗り移った。

 魔導書殿エトワール
 M1→3

 魔導教士 システィ
 ☆3 ATK/1700→1800→2800→2900

 すごく当たり前のように流されたけど……黒乃、俺《セフェルの魔導書》知らないんだよ。聞いた感じだと墓地の"魔導書"と同じ効果になるみたいだけど……こういうとき説明してもらえないと、本当に面倒だね。

「2900って、レベル3のスペックじゃないでしょ……」
「レベル6でフィールドを荒らしつつ3800を先輩に撃ちこんだあなたが言わないでください」

 夜神さんの仰る通りです、さーせん。

「バトルフェイズ! 《魔導教士 システィ》で《ジェネクス・ウンディーネ》を攻撃! 正義の威光(ジャスティス・ブリンガー)!」

 魔導士が紅く染まった剣を天にかざす。天空から紅い光が降り注ぎ、ガラス瓶を融かすように焼き払った。

「くうっ……!」

 Sakura LP/10000-1700=8300

「"システィ"が相手モンスターを戦闘破壊したことで、《ヒュグロの魔導書》の効果が発動! 俺はデッキから《魔導書院ラメイソン》を手札に加える!」

 ……もう、つっこまなくていいよね?


「メインフェイズ2、()()()()()()()《魔導書院ラメイソン》を発動!」


 ごめん、やっぱりつっこませて。

「これが目的だったのか……!」
「ん、どうした?」
「いや、何でもない。続けて」
「あ、ああ……」

 フィールドに、未来都市にありそうな建物、魔導図書館がそびえ立つ。魔力によるいくつもの光が、塔の周りを規則的に旋回している。

 魔導書殿エトワール M3→4

 ……てか、【魔導】がフィールド魔法使うとは思ってなかった。【ドラグニティ】もフィールド依存であることを考えると、このタッグは予想以上に不利だ。

「カードを2枚セットしてエンドフェイズ……」
「メインフェイズ終了宣言に合わせ、リバースカード《アビスフィアー》を発動します!」

 あれ、それ今撃つの?

「そのカードは……!」
「説明はしなくてもいいですよね。デッキから《水精鱗-アビスリンデ》を特殊召喚します!」

 突如として、夜神さんの場に大きな水泡が現れる。その中には、紺色の長い髪をもつ女性の人魚が閉じ込められていた。

 水精鱗-アビスリンデ
 ☆3 DEF/1200

「私が《アビスフィアー》を発動したのでメインフェイズに戻りますけど……」
「いや、何もない。改めてエンドフェイズ、"魔導書"を発動したから《魔導教士 システィ》の効果を発動! "システィ"を除外し、デッキから《魔導法士 ジュノン》と《グリモの魔導書》を手札に加える!」

 あれ、こいつ強い。ただでさえアドが減りにくい"魔導書"なのに、それを使ったら自身を除外して手札+2。アドの塊じゃないか。効果はエンドフェイズにしか使えないみたいだから、不安定な部分はあるけど。

「これで俺はターン終了だ」
「それでは、私の《アビスフィアー》が自壊します」

 夜神さんの宣言と同時に、泡が爆散した。当然、中にいた人魚も無事では済まず……爆発に巻き込まれ、泡となって消えた。
 ……あー、そういうことね。

「そして、破壊された《水精鱗-アビスリンデ》の効果発動! デッキから《水精鱗-アビスパイク》を特殊召喚します!」

 水精鱗-アビスパイク
 ☆4 ATK/1600

「《水精鱗-アビスパイク》の効果発動! 手札の水属性モンスターを墓地に送り、デッキからレベル3の水属性モンスター《海皇の狙撃兵》を手札に加えます!」

 おお、回る回る。一応これ、夜神さんのターンじゃないんだよな……。

「……と同時に、コストで墓地に送られた《海皇の重装兵》の効果を発動です! その厄介そうな永続魔法《魔導書殿エトワール》を破壊します!」

 はい、お疲れさまでした。打点強化はこれで終了です。
 自身と同じ大きさの盾を両手に構えた……蛙? みたいなやつが上空の水晶に特攻を仕掛ける。水晶から漏れる淡い光を掻い潜り、両手の盾を叩きつけた。盾からの衝撃に、水晶は意外にも脆く砕け散った。


「案外早かったな……破壊された《魔導書殿エトワール》の効果発動!」


「「なっ!?」」
「こいつが破壊され墓地に送られたとき、このカードに乗っていた魔力カウンターの数以下のレベルを持つ魔法使い族モンスター1体をデッキから手札に加えることができる!」

 ……アド損って、何だろうね。俺達の世界に存在しないカードって、なんでこんなにアドを稼いでくんだろうね。

「《魔導書殿エトワール》に乗っていた魔力カウンターは4! よって、デッキからレベル2の《魔導書士 バテル》を手札に!」

 ……結局、黒乃の手札は5枚。ここまで回しておいて2人とも手札減ってないなんて、こんなの絶対おかしいよ……。


―――― Turn.2 End Phase ――――

1st/Sakura Yagami
◇LP/8300 HAND/5
◇《水精鱗-アビスパイク》ATK/1600
◇set card/mo-0,ma-1

2nd-A/Kurono Mochiduki
◇LP/4000 HAND/5
◇《魔導書院ラメイソン》field
◇set card/mo-0,ma-2

2nd-B/Ren Kazami
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0


 ……あれ?
 そういえば、夜神さんの服に傷が全く付いてない。黒乃の服はボロボロなのに……。

「黒乃、さっきのデュエル……夜神さんのライフをどれぐらい削ったの?」
「……2700。"ジュノン"で戦闘破壊した1100と、"システィ"のダイレクトアタック1600だ」
「……あー、うん。わかった」

 うん、結構削ってる。にもかかわらず、彼女は無傷なのだ。……もしかして、これも夜神さんの能力なのか……?

「私のターン、ドローです!」


Turn.3 Player/Sakura Yagami
 1st/Sakura Yagami
  LP/8300 HAND/5→6
 2nd-A/Kurono Mochiduki
  LP/4000 HAND/5
 2nd-B/Ren Kazami
  LP/4000 HAND/5


「……いい引きです。手札から、魔法カード《闇の誘惑》を発動します!」

 おお、うまい。シナジー性皆無で使いずらい"ジェネコン"はこうやって処理するのか……。

「デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター……まあ何の捻りもなく《ジェネクス・コントローラー》なんですけど」
「……蓮」
「ん、何?」
「今ここで《マインドクラッシュ》撃ったらどうなるんだ?」

 ……え、伏せてるの?

「今すぐ撃って! 《闇の誘惑》にチェーン!」
「あ、ああ!」
「デッキからカードを……え?」

 俺達の会話に、今にもドローしようとしていた夜神さんの腕が止まった。

「《闇の誘惑》にチェーンして、リバースカードオープン! 《マインドクラッシュ》!」
「ええっ!?」
「効果は言わなくてもわかるよな。俺が宣言するのは、当然《(マー)「《ジェネクス・コントローラー》だッ!!」……え?」

 びっくりした……危うく変なことになるところだった。

「蓮、なんでそれなんだよ? 《ジェネクス・コントローラー》を落としてもあいつには影響無いぜ?」
「だったら《闇の誘惑》にチェーンなんてしないっての。 夜神さんのデッキは、恐らく【ジェネクス海皇水精鱗】。《ジェネクス・コントローラー》は《ジェネクス・ウンディーネ》の効果を使うために仕方なく入れているだけだと思う」
「だったら、なおさら……」

 ……思わず溜め息をついてしまった。プレイングはあるけど、まだ柔軟性が足りないかな。俺の言えたことじゃないけど。


「じゃあさ、夜神さんのデッキに他の闇属性が入ってると思う?」


「……《トラゴエディア》か!」
「入ってたのかよ!? ……まあ、他には《冥府の使者ゴーズ》だね。もし引かれても、結果的にそのカードは《闇の誘惑》の効果で除外できる。もし引かなければ……」
「……っ、そういうことか!」

 ここまで言って、ようやく黒乃が俺の言っている意味に気づいた。

「夜神の手札が、消える……!」
「Exactry! ……さて、夜神さん。今の会話、しっかりと聞いてたよね?」
「お前、さっき《ジェネクス・コントローラー》を加えてたよな……その手札、見せてもらうぜ!」
「……っ!」

 若干やけになりながら、夜神さんが手札を公開した。うん、誰だってそうなる。俺もされたら多分そうなる。

《海皇の狙撃兵》
《ジェネクス・コントローラー》
《水精鱗-メガロアビス》
《深海のディーヴァ》
《ジェネクス・コントローラー》

 うわ、"ジェネコン"2枚か……。多分これ、事故ってるな。だからレベル3水属性って言って《ジェネクス・ウンディーネ》を加えなかったのかな……。

「よし! 《ジェネクス・コントローラー》を2枚とも捨ててもらうぜ!」
「うう……わかりました」

 これで夜神さんの手札は3枚。《闇の誘惑》のことを考慮しても4枚だ。……ここで手札全落ちってなると嬉しいんだけど……まあ、現実はそんなに甘くないよね。

「お願い……来てっ!」

 そう言って、夜神さんが勢いよくカードをドローした。ドローしたカードを確認して、彼女は……


《水精鱗-アビスマンダ》
《水精鱗-アビスグンデ》


 ……うわあ。

「……それじゃあ、手札全滅かな?」

 彼女は涙目ながら頷いて、手札を全て墓地に送った。

「……墓地に送られた《水精鱗-アビスグンデ》の効果で、墓地の《水精鱗-アビスマンダ》を特殊召喚します」
「「そこから回るのかよ!?」」

 ただじゃ転ばないってわけか。今回のつまずき方は初めてかもしれないけど。
 現れたのは、上が巨漢で下が……なんだこれ。サンショウウオ……みたいな感じのやつ、かな?

 水精鱗-アビスマンダ
 ☆4 DEF/2000

「☆4が2体、か」
「"水属性"レベル4《水精鱗-アビスパイク》《水精鱗-アビスマンダ》の2体をオーバーレイ!」


 海底(かいてい)(ねむ)深淵(しんえん)は、満潮(みちしお)(とも)(よみがえ)る!

 大海(たいかい)宿(やど)不滅(ふめつ)意志(いし)よ、龍神(りゅうじん)となりて君臨(くんりん)せよ!

    ☆4×☆4=★4

 エクシーズ召喚(しょうかん)(あれ)(くる)え、海神(わだつみ)化身(けしん)


「《バハムート・シャーク》、爆誕!」

 重なりあう4対の星。蒼い光を放つそれは、水流となって飛び回る。やがて逆巻く蒼から描かれたのは、翼の如く六枚のヒレをもった青龍。鮫にあるまじき威厳をもったその姿に、思わず息を飲んだ。

 バハムート・シャーク
 ★4/2 ATK/2600

「そいつは……!」
「バトルフェイズ! 《バハムート・シャーク》で望月黒乃にダイレクトアタックです!」

 龍神の咆哮が、周囲に響き渡る。とてもソリッドビジョンとは思えないそのリアリティに……あ、これ闇のゲームだった。衝撃が実体化するんだから仕方ないね。

海神蒼龍波(フラッド・タイダルウェイブ)!」

 そして、開かれた口から蒼い竜巻が放たれた。距離と共に勢いを増していくそれは、何の障壁もなく獲物へと達する。踏み留まることも敵わず、黒乃はそのまま黒炎の境界へと叩きつけられた。

 Kurono LP/4000-2600=1400

「黒乃!?」

 ……目を覚まさない。気絶してしまったのか? あるいは、さっきのデュエルを引きずっていたせいで……


『……なるほど、やはり魔女の言った通りだったか。奴の直感だけは、信用に値するな……』


 突然響き渡る第三者の声。荘厳な低い声に、俺は声のした方向……黒乃の体へと目を向けた。
 何事もなかったかのように黒乃が立ち上がる。しかし、そこにさっきまでの面影はほぼ残っていなかった。

『《トラゴエディア》の効果を発動させてもらう。貴様がこいつに戦闘ダメージを与えたとき、我が分身を守備表示で特殊召喚』
「「なっ!?」」

 あれ、まさかこの人《トラゴエディア》?
 ……確かに黒乃の体は若干黒い霧が包んでるし、今フィールドに出てきた怪物よりも彼の方が怖い。

 トラゴエディア
 ☆10 DEF/?→2400

『……どうした。まだ貴様の手番は終了していないはずだが』
「……はっ! そ、そうでした!」

 あ、お帰りなさい。

「メインフェイズ2、《バハムート・シャーク》の効果を発動! オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、エクストラデッキから水属性ランク3以下のエクシーズモンスターを特殊召喚します!」

 水属性ランク3……《No.17 リバイス・ドラゴン》はないんだっけ。沙耶姉が言ってたし。とすると……ああ、《潜航母艦エアロ・シャーク》か。また微妙なモンスターを……

「《水精鱗-アビストリーテ》、爆誕!」

 ……ですよねー、やっぱりまた知らないモンスターでしたか。
 青龍の周囲を飛び交う一対の光、その1つが急速にふくらんでいく。やがて人間が入るほどの大きさになったところで、淡い蒼光を放って水泡が割れた。
 中に現れたのは、黄金の錫杖を手にした水精鱗の女王様……だよね、多分。

 水精鱗-アビストリーテ
 ★3 DEF/2800

 ……あ、固い。

「私はこれでターン終了です!」


―――― Turn.3 End Phase ――――

1st/Sakura Yagami
◇LP/8300 HAND/0
◇《バハムート・シャーク》ATK/2600
◇《水精鱗-アビストリーテ》DEF/2800
◇set card/mo-0,ma-1

2nd-A/Tragoedia
◇LP/1400 HAND/4
◇《トラゴエディア》DEF/2400
◇《魔導書院 ラメイソン》field
◇set card/mo-0,ma-1

2nd-B/Ren Kazami
◇LP/4000 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0


 ようやく俺の番が回ってきた。

「えーっと、トラゴエディア様?」
『……我を"様"付けで呼んだのは貴様が初めてだ』

 え、そうなの?

『まあ、構わん。その呼び名を許そう』
「ありがとうございます。さて、1つばかり質問よろしいでしょうか?」
『なんだ』

「このフィールド魔法、破壊してもよろしいでしょうか?」

『……ほう? つまり、貴様の手札にはそうするだけの価値があると』
「はい。少なくとも、彼女の場を荒らしつつ制圧することが可能となります」
『面白い。ならば、その光景を我に見せてみろ!』
「ありがとうございます! それでは俺のターン、ドロー!」

 久しぶりのいい手札だ、こっちも思いきり回させてもらうよ!


 ― ― ― ― ― ― ― ―


「ちょっと、アイシア!? なんで勝ったのに抜けなきゃいけないのよ!?」
「この建物の中で闇のゲームが発生しています! 風見様の行方がわからない以上、天河様と織姫様の力が必要になるかもしれません!」

 怒る沙耶ちゃんにはクレナちゃんが事情を説明してくれている。
 緊急事態のために私達は大会一回戦でわざと敗退し、闇のゲームが発する邪悪なエネルギーを探知しながら建物の中を走り回っていた。

「ここにいないとなると……」
「面倒ね……ここ4階でしょ? 下は地下1階+地下駐車場、上は9階+屋上。この建物の中にいるって言っても、探すだけで体力尽きるわよ」

 沙耶ちゃんの言う通りだった。このデパートは本当に広すぎる。

「……二手に別れましょう。私とアイシア様で上の階に向かいます。沙耶様と織姫様は先にこの階を捜索して、それが終わり次第下の階をお願いします」
「了解したわ。ゆみなとアイシアも、異論はないわね?」
「了解です!」
「うん!」

 クレナちゃんの出してくれた意見にみんなが同意した。

「(トラゴ!)」

 心の中で、精霊の名前を呼ぶ。

『(だから我をその名で呼ぶなと……)』
「(屋上をお願い! 多分そこで闇のゲームが始まってるから!)」
『(……また例の直感か?)』

 この世界に来てから、私の直感は何故かよく当たるようになっていた。理由はよくわからないけど、そのおかげで昨日蓮くん達の召喚される地点がわかったんだ。

『(まったく、貴様の直感が外れたことはないだろう)』
「(うん、でも間違えたら終わりなの! お願い、そこにいる転生者が危ないから急いで!)」
『(……了解した!)』

 ……デッキから《トラゴエディア》の気配が消えた。これで少しは時間が稼げるといいけど……。

「合流は任意、最悪アイシアの家で集合! それじゃ、解散! 2人とも、上の階は頼んだわよ!」
「うん!」

 お願い……無事でいて、蓮くん!


    to be continued... 
 

 
後書き
《魔導書殿 エトワール/Spellbook Star Hall》
 英語原文
Continuous Spell
Each time a "Spellbook" Spell Card is activated, place 1 Spell Counter on this card.
All Spellcaster-Type monsters you control gain 100 ATK for each Spell Counter on this card.
When this card with Spell Counter(s) is destroyed and sent to the Graveyard: You can add 1 Spellcaster-Type monster from your Deck to your hand, whose Level is less than or equal to the number of Spell Counter(s) that were on this card.
 日本語訳
永続魔法
「魔導書」と名のついた魔法カードが発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
自分フィールド上の全ての魔法使い族モンスターの攻撃力は、このカードに乗っている魔力カウンター数×100ポイントアップする。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキから、このカードに乗っていた魔力カウンターの数以下のレベルを持つ魔法使い族モンスター1体を手札に加える事ができる。

《水精鱗-アビスマンダ/Mermail Abyssmander》
 英語原文
Effect
LV4/WATER/Fish/ATK 100/DEF2000
You can banish this card from your Graveyard to activate 1 of these effects.
● Increase the Level of all "Mermail" monsters you currently control by 1.
● Increase the Level of all "Mermail" monsters you currently control by 2.
 日本語訳
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻 100/守2000
墓地のこのカードをゲームから除外し、以下の効果から1つ選択して発動できる。
●自分フィールド上の全ての「水精鱗」と名のついたモンスターのレベルを1つ上げる。
●自分フィールド上の全ての「水精鱗」と名のついたモンスターのレベルを2つ上げる。 
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