戦姫絶唱シンフォギア~海神の槍~
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EPISODE9.答え無き虚構の空
「キョウヤさん、すみません。私、キョウヤさんにまで怪我させようと。」
「気にするな。響ちゃんのガングニールを考えると、何時かこうなると思っていたから。」
先程の件で気に病む響をキョウヤは宥める。
(あれがデュランダルの力。ようやく始まるのね、全てが。)
その後ろで了子は不適な笑みを浮かべていた。
「ところでキョウヤ君、昨日見せたあれは何だ?」
翌朝、弦十郎がキョウヤに尋ねた。
「あの状態のことか。あれはノースガルドでも俺にしか出来ない芸当だ。前に、俺の背骨にトライデントを埋め込んでいる事は話しただろう?」
「やはり、それと関連している事か。」
「ああ、デュランダルを握っていた時の響ちゃんを見ただろう。あれは聖遺物に肉体を侵食されている状態だ。前に響ちゃんのレントゲン写真を見せてもらったが、あれは近い将来に心臓とガングニールが融合してしまうぞ。と、話がそれたよ。ごめんごめん。了子さんならよく解っていると思うが、シンフォギアのシステムにはある一定の条件下で聖遺物本来の力の一部が解放できる事は解っているよね?」
「ええ、絶唱も限定解除の一つだしね~。」
「俺の場合、トライデントと一体化している結果、トライデントの暴走状態を特定の条件下で限定解除できるようになったんだ。俺はあの状態をレリックドライブって呼んでいるからオッサン達もそう認識してくれ。」
「そうか。ところで、身体への影響はどうなんだ?」
「大丈夫。最初は響ちゃんみたいに暴走していたけど、森の国、ここでいうところの南米辺りで半年にわたって修行した結果、闘争本能に駆られる程度に抑えられるようになったんで。」
「そうか。実は君達に、嬉しいお知らせがある。入ってくれ。」
弦十郎の言葉を聞き、振り向くと翼が入って来た。
「どうも、この度無事とまでは行きませんが退院出来ました。」
翼は深々と頭を下げる。
「翼さん、もう大丈夫なのですか?」
「案ずるな立花。話は緒川さんから聞いている。よく頑張ってくれた。タカナリも、あの時は済まなかった。」
「あの時って?」
「私が絶唱を使った時だ。お前は、私の事を止めようとしていた。なのに私は…」
「風鳴翼、お前、生きる事を諦めていただろう?」
「タカナリッ!?その言葉─」
「いい!みなまで言うな!要するに、お前は自分の昔のパートナーの事を忘れていたってだけだ。そんなんじゃ、何時か偽っている自分に押しつぶされるぞ。」
「タカナリは、まるで奏と同じ事を言うんだな。」
「そうじゃない。一つしか無い命、大切にするんだ。」
「以後、気をつけよう。」
「その意気だ。」
キョウヤと翼は一通りの和解をみせる。
「翼さん、キョウヤさん、美冷さん、それなら明日、親睦会も含めて明日みんなで出掛けませんか?」
「おっ、いいじゃん!行こうぜ、美冷。」
「そうだね。翼さんとも、いろいろ話したいし。」
「いいのか?私なんかで。私は私生活なんて考えたことがなかったからつまらないぞ?」
「翼さん、こういうのは一緒にいる事が大事なんですよ。」
「そうなのか?ならば私も参加しよう。時間は何時だ?」
「すみません、突発的に考えたことなのでしっかり決めていませんでした。今から未来も誘うので一回帰って大丈夫ですか?後で時間は教えます。」
「おっ、友達とは仲直り出来たのか?」
「はい、おかげさまで!それではッ!」
響はダッシュで出て行った。
「慌ただしい奴だな、立花は。」
「それには同感だ。まあ、夜まで時間はまだある。お前さんの復帰パーティーとでも行こうか。」
キョウヤは提案する。
「い、いきなりどうした!」
「いや、二年前の事でお前にだけ話したい事がある。その口実だ。察してくれよ。」
キョウヤは小声で翼にそう言う。
「なんだ。それならそうと言ってくれ。いいだろう。それで、どこへ行くのだ?」
「実はな、大事な話をするのにぴったりなレストランを発見してな、そこに行こうと思うんだ。」
「ほう、そこまでの所なのか?まあ、タカナリのセンスが解るからいいだろう。」
「よし、今から行くか。」
「おっ、おい。予約とかはどうなっている!」
「何を言っている。既にしていなかったらこんな話しないよ、俺は。」
キョウヤは翼の手を引っ張り動く。
「それじゃあ、夜には帰るから。行ってくるぜ!」
キョウヤ達はそのまま外に出る。
「それじゃ、移動はツーリングでも楽しむか。」
キョウヤと翼はバイクに乗り、美冷はキョウヤのバイクに乗り、昨夜二人で行ったレストランに向かった。
「それで、話とは何だ。」
「その前に、通信機を貸してくれ。」
「通信機がどうかしたのか?」
翼はキョウヤに通信機を渡す。
「いや、ちょっと気になる事があってな。」
キョウヤは渡された通信機を分解する。
「貴様、何をしている!」
「レストランでは静かにしろ。それから、ちょいとバラしたのはこれの事だ。」
キョウヤは既に通信機を元に戻しており、そこからある機材を取り出していた。
「タカナリ、それは何だ?」
「これか?盗聴器ってやつだ。知っているか?」
「そうでは無い。なぜそんな物が入っているのだ。」
翼はキョウヤに尋ね、キョウヤは通信機を破壊する。
「今日ここに呼んだのは他でもない。二年前の事件、俺達は犯人を了子さんだと断定しているからだ。」
「櫻井女史が?一体何が目的でそのような事を?」
キョウヤは、翼に昨夜美冷にした説明を翼にもした。
「なるほどな。それならすぐに風鳴指令に報告しなくては。」
翼は通信機に手を伸ばすが、キョウヤに止められた。
「待ってくれ。今いえば相手は手を変えてくる。ここは様子見だ。」
「解った。いいだろう、頭の片隅に入れておこう。」
「ありがとう。それじゃ、いただきます。」
キョウヤ達はその後普通に食事をとり、会計を済ませて二課に戻り、ちょうどそのタイミングで響から明日の予定を聞いた。
「クリス、あなたにはがっかりだわ。与えられた仕事も出来ないなんて。」
「ふんっ!やっぱり私にこいつはいらねえ!私は私の力でやってみせる!このまま、あいつ等にいいようにされてたまるか!」
クリスはフィーネの言葉にそう言い返して一人動き出す。
「……もう用済みって事なのに。」
フィーネは一人そう呟いた。
翌日、キョウヤ達は既に待ち合わせの場所に集まっていた。
「キョウヤ、響達なかなか来ないね。」
「どうせ寝坊だろ。おっと、噂をすれば。」
キョウヤがそう言うと、響達が走ってやって来た。
「済みません!遅くなりました!」
「本当だ、三分遅刻だぞ。」
「ほら、響が寝坊するから。」
「ごめん未来。だって、凄く楽しみで寝られなかったんだもん!」
「とにかく、早く行くぞ。」
翼は一人、歩き始める。
「さ、響ちゃん達も早く行こう。あいつは忙しいんだ。俺達に付き合わせてくれている事を忘れるなよ。」
キョウヤ達も翼に付いて行く。
「まずは定番のゲームセンターから~。」
響は早速クレーンゲームを始めるが、才能は皆無に等しかった。
「ああ、もう!」
キョウヤはその台に1クレジット投入し、
「この角度とアームの開閉率、それから落とし口を考えるとこの景品の殺しどころはこう!」
キョウヤはアームの押し込みを利用して景品の端を押し、反動を利用して転がし、落とし口に落とした。
「キョウヤさん、凄い!」
未来は驚く。
「見たところ、これは持ち上げるより押し込む力の方が強いみたいだから、出来ただけだよ。」
キョウヤ達は一通り楽しみ小物屋に行く。
「これ、可愛くない?」
「美冷ちゃん着けてみて!」
「ええ~、翼さんの方が似合うよ~。」
「なんで私なんだ!立花が言い出しっぺなんだ。立花が着けるべきだ!」
「ならここは、間を取ってみんなで一つずつ買いましょうよ。」
「なんか飛び火した~。」
美冷達の楽しそうな様子を、キョウヤは遠巻きに見ていた。
「お待たせ!」
「おう、ところで次はどこに行くんだ?」
「やっぱりここはあれでしょう!」
響の提案で一同はカラオケルームに行く。
「俺、こういう所初めてなんだよなぁ。」
「嘘ッ!?私だって来たことあるよ、キョウヤ。」
「仕方ないだろ、こちとら10歳の頃には戦士として戦っていたんだ。」
キョウヤと美冷が話していると、演歌が流れてくる。響は未来に入れたか聞くが未来は違うと言う。すると、翼がステージに登っていた。
「私、一度こういうのを歌ってみたかったの。」
「-♪唇に なんてことする~の-」
「翼さん、凄い似合っている。」
「-♪切り刻みますぅ 恨~みの刃でぇ-」
翼は見事な演歌を披露する。
「なら、俺も負けられないな!」
キョウヤも予約を入れ、翼の次に歌い出す。
「-♪君から届いた百十番 緊~急出動~ 胸にエレキ 走り抜けて 痺れるぜ~!-」
キョウヤの歌に一同は呆れていた。
キョウヤ達は親睦会を終え、帰り道を歩いていると、
「よう、てめえらは呑気に買い物か?」
クリスがネフシュタンの鎧を纏って現れる。
「未来、先に帰っていて。-♪Balwisyall nescell Gungnir tron-」
「-♪Imyuteus Ameno habakiri tron-」
「-♪I have needful Trident to now-」
「-♪My brave Seiryu engetuto to now- 」
四人はシンフォギアを纏う。
「いくら増えようと関係ねえ!全ての力は、私が破壊する!」
クリスは四方にNIRVANA GEDONを放つが、キョウヤ達はそれぞれ回避し、キョウヤのシューティングハレー、美冷の旋型・百々、翼の蒼ノ一閃、響の拳がクリスを狙いネフシュタンの鎧にダメージを与える。
「どうだ!これでもまだやるのか!」
キョウヤはクリスに言う。すると、
「てめえらは私を怒らせた。」
クリスはARMOR PURGERでネフシュタンの鎧を脱ぎ捨てる。そして、
「見せてやるよ、イチイバルの力を!」
「イチイバル、だと!?」
モニターで見ていた弦十郎は驚く。
「-♪Killier Ichaival tron-」
クリスは聖詠を口ずさんだ。
戦姫絶唱シンフォギア~海神の槍~
つづく
後書き
今更ながらのキョウヤのレリックドライブモードの説明
キョウヤの持つトライデントの限定解除の一つ。トライデントと融合する事でトライデントの力の30%を引き出せるようになる。キョウヤは三年前に使用が可能となり、その時は響と同様に暴走していたが、森の国(南米に相当)で厳しい特訓を行い無事コントロール出来るようになる。通常時との違いはパーソナルカラーの青は黒く塗りつぶされ、装甲で守られていない部分と両手に靄がかかり、背中に黒い翼が生える。また、使用には相当の負荷がかかる為二分間しか使用出来ず経過した場合シンフォギアそのものが強制解除されてしまう。
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