とある科学の観測者
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能力崩し(AIMダウナー)
「私は『ITEM』。あなたを消しにきたの」
「え?」
「えーっと・・・、消すとは?」
「言葉のとおりよ。消す。殺す。逝かせる。命を奪う」
「えーっと・・・、人違いでは?桐原 瞬之助とか・・・」
「んどくさいわね。」
そういうと彼女の目の前に緑色の光の玉が現れる。
あからさまに怪しいので能力を使う。
結果から述べると、そこからビーム上に直進の攻撃が明確な殺意をもって
俺に向かってくるということ。
能力から得た結果から攻撃をかわし、背を向け逃走する。
「な、なんなんだ!なんだっていうんだよ!!」
俺は理不尽な気持ちを精一杯言葉に込め叫びながら逃げ回る。
能力を時々使いつつ、後ろから追いかけてくる女性の攻撃をかわしながらの
全力疾走。
「うげっ!」
俺は見事に袋小路に追い詰められてしまった。
「もう追いかけっこは終わりかぁ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺はなんで狙われてるんだ!?」
「なんでなんてこっちには関係ねぇんだよ。こっちは依頼をこなすだけなんだからなぁ!!」
俺は能力を使い攻撃コースを予測しようとする――
が、どこからか情報はきたがそれを演算処理しようとした瞬間、頭が真っ白になる
そうしている間に攻撃は放たれた・・・
「大丈夫?」
「へ?」
俺の真っ白になった頭の中には、急に血がまわりだしたように意識が回復していく。
「む、結標・・・?」
「お久しぶりね。大丈夫だったかしら?」
「あれ、俺いったいどうして・・・」
「私の能力で助け――」
結標は話している最中に口を押えふさぎ込む。
「ど、どうした結標!」
「大丈夫よ。取り合えずここから逃げるわよ。まだ追ってこないとも限らないわ」
「わ、わかった。でもなんで俺を助けに?」
「前回と同じで、上からの命令であなたを助けに来たのよ」
「俺はなんで狙われてるんだ!?」
「どうしても知りたいの?」
「あぁ。いきなり命狙われるなんて、俺なにかしたのか?」
「この状況を打破できたら、状況を知っている人間に合わせるわ。
とりあえずあなたの能力で敵がここに来るのがいつ頃か割り出せる?」
「わかった、やってみる」
俺は能力を使用する。しかしまたどこからか情報は来たが演算処理をしようとすると
頭が真っ白になる。
「だ・・・ぶ・・・?
だ・・・・じょ・・・ぶ・・・?
大丈夫!?」
意識がはっきりとしてくる・・・
結標が俺に向けて声をかけているのがわかる。
「大丈夫?」
「あ、あぁ大丈夫・・・」
俺は倒れてしまっていたようだ。
「急に倒れて、どうしたの?」
「いや、わからない。能力を使おうとすると頭の中が真っ白になって・・・」
俺は少し考えてみる。
(そういえば、今まで短時間に複数回能力を使用したことなかったな・・・。)
「能力の使い過ぎ?」
「かもしれない。逃げながら何度か使っていたから・・・」
ブー・・・、ブー、ブー・・・
結標の服からかすかな振動音が響く。
結標はポケットから振動の元。もとい携帯電話を取り出し耳に当てる。
「はい。結標。・・・あぁ、あなたね。・・・わかったわ。・・・彼に?
・・・ええ、わかったわ」
俺に携帯を差し出す。
俺は無言で受け取り耳に当てる。
「もしもし」
「君が桐原 瞬か?」
「えぇ。あなたは?」
「それはとりあえず置いておこう。要点だけ話す。君は命を狙われている」
「知ってます」
「だがとりあえずそれは解決できそうだ。オーダー主をこちらで対処した」
「対処・・・?」
「それと、重要なことを君には知っておいてもらいたい」
「なんですか?」
「君の能力についてだ。今テレパス系の能力者によって君の能力を引き出すため
特定の計算式を頭に直接送る。」
「能力を引き出すって、俺はもう能力は発現して――」
言いかけている最中に計算式が頭の中に流れ込んでくる。
「こ、これって・・・。AIM拡散力場の・・・」
「そうだ。それが君の能力だ」
「じゃあ、俺は能力を二つ持って――」
「みぃつけた・・・」
俺と結標は背後を振り向く。
そこには俺を執念に追いかけていた女性が立っていた。
「学園都市第4位・・・。原子崩し・・・。麦野・・・」
結標はかなり緊迫した表情でそう言葉を漏らす。
「え、原子崩しって!あのレベル5の!?」
「そうよ」
「さて、そろそろ本気で消えなさい!!」
麦野は声を発すると同時に能力を俺に向けて発射する!
「くそ!!」
俺はとっさに右手を前に出し、先ほど送られた計算式により演算処理を行う
すると俺の右手に触れる寸前で、麦野から射出されたビーム上の攻撃は霧散していった。
「な・・・、何しやがった!」
麦野は少し焦りの色を見せる。
再び攻撃態勢に入ったとき、何かの音楽が流れ始める。
「はい。どうした?」
麦野は自分のポケットから携帯を取り出す。
「あぁ?・・・わかった」
話を終えたようで携帯をポケットにしまう。
「命拾いしたな」
それだけ言うと、麦野は背を向け夜の闇に消えていった・・・
よくわからないが、俺も結標も糸が切れたようにその場に座り込む。
そして結標は携帯をスピーカーモードにする。
「言ったろう。命が狙われているのはとりあえず大丈夫だと」
「ところで?さっきの桐原の能力はなんだったの?」
結標は俺の右手を見ながら電話の主に問いかける。
「あぁ、桐原本人はもう気づいていると思うが、AIM拡散力場の撹乱だ」
「撹乱?」
「そうだ。AIM拡散力場を撹乱することで能力の発動を不安定にする。
それが彼の能力だ。能力崩し(AIMダウナー)とでも呼べるか」
「でもそうなると、彼は2つ能力を持っているということ?」
「いや、違う」
「え?」
俺はここでようやく会話に加わる。
「桐原。あんたの能力はAIM拡散力場の操作だ。」
「え、でも俺の未来予知はどうなるんだ?」
「それはお前の能力ではなく、お前の権限だ」
「権限?」
「そのうち時間を作ろう。とりあえず今日はゆっくり休んでくれ。
話す機会を設ける。日時と場所に関しては結標からお前に伝えさせる。」
「え?わ、わかりました・・・」
「とりあえず、二人ともお疲れさま。結標も今日はそのまま帰宅してくれ。」
「わかったわ」
そして通話は切れ、結標は闇に消えてゆき、疑問を抱えたまま俺も家路についた。
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