甘やかした結果
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2部分:第二章
第二章
だがその迷惑をだ。親達は全く気にしないのだ。それもあってだ。
タマは新聞の上に寝転がり続けている。そのタマにだ。
新太は右手をあげた。叩いてどけようとするのだ。
だがその右手を見てだ。タマは喉と腹を見せてきた。それを見てまた言う新太だった。
「何、これ。今叩こうとしてるんだけれど」
「だから。遊んで欲しいんだよ」
「だからお腹と喉を見せてきたのよ」
「僕、叩こうとしてるんだけれど」
やや呆れながらだ。彼は両親に言った。
「それで何でこうなるんだよ」
「何度も言うけれどそんなことで怒るな」
「相手は猫よ」
「猫、猫っていうけれど甘やかすばかりで」
しかもだった。
「躾もしないで」
「躾なんて必要ないだろ」
「そうよ、ないわよ」
そのタマの腹や喉を優しく擦りながらだ。両親は息子に言う。
「猫なんだからな」
「そんな必要ないわよ」
「トイレはちゃんとするし爪とぎだって決まった場所でする」
「全然問題ないじゃない」
「全く。本当にでれでれして」
まさにそんな感じだった。今の両親は。
タマが家に来て一年、ペットショップで売れ残っていた彼女を買ってきて一年だ。その一年の間に二人はタマを甘やかし抜いているのだ。
そんな二人とタマを見てだ。新太は溜息と共に言った。
「どうなるんだろうね」
「どうにもならないよ」
「そうよ。何もね」
こう息子に返してだ。タマを甘やかし続ける二人だった。だが。
タマは甘やかされているだけあってだ。極めて我儘だった。何かあるとだ。
家族のところに来て身体を摺り寄せてくる。若し構わないと足を噛んで来る。新太は大学から家に帰るとだ。その足を早速噛まれてしまった。
足首のところをかぷ、だった。噛まれた彼はすぐにタマを叩こうとする。だが。
その彼にだ。専業主婦の賀代子は言ってきたのだった。
「そんなことで怒らないの」
「噛まれたんだよ」
「噛まれた位でどうなのよ」
「噛まれて怒らないと何時怒るんだよ」
「あんたどうせタマがすりすりしてきても無視したんでしょ」
「すぐに部屋に戻ってゲームしようと思ってたんだよ」
丁度今やりかけのゲームがあったのだ。だがここでだ。
二階の自分の部屋に戻ろうとする彼にだ。タマは身体を摺り寄せてきたのだ。自分と遊べということだ。
だが彼はゲームを優先させる為に相手にしなかった。そうするとだったのだ。
「噛まれたんだよ」
「だから噛まれた位で何なのよ」
「またそう言うんだね」
「気にしない気にしない。タマだってね」
言いながらだった。母は猫用のおもちゃ、先が毛玉になった棒を出してきた。
そしてそれをタマの前で振る。するとタマはそれにぱっと飛びつく。
賀代子はそれをかわし別の場所で振る。そうしてタマと遊ぶ。だが、だった。
そうしながらだ。彼女は息子に言うのだった。
「悪気はないのよ」
「悪気はないけれど我儘過ぎるじゃない」
「猫だからね」
「猫だったら我儘でもいいの?」
「人間だったら大変だけれどね」
その猫と遊びながらの言葉である。
「猫だったら全然大丈夫よ」
「全く。新聞紙の上に乗るしすぐ噛んでくるし」
必死の顔で目を爛々とさせておもちゃに飛びつくタマを見ながら言うのだった。
「物凄く悪い奴じゃない」
「悪いからって何なのよ」
「実際に悪いじゃない、こいつ」
「そうかしら」
「そうだよ。我儘でさ」
「だから猫の我儘はいいのよ」
その猫と遊び続けながら。賀代子は言っていく。
「若しかして嫉妬してるのか?」
「私達がタマばかり可愛がるから」
「そんな筈ないから」
このことは否定する新太だった。それもすぐに。
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