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どうして俺ばかり

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第二章

「ネガティブなイメージを払底してもらうんだよ」
「必死だな」
「童話とかで出番多いってそれだけでもいいだろ」
「神話でも出て来るだろ、俺達」
 北欧神話だ、この神話でも狼の出番は多い。
「小説にもなってアニメでも出る」
「悪役スターもそれでよくないか?」
「無闇にベビーフェイスになるよりな」
「そっちの方がいいだろ」
「妥協してどうするんだよ」
 こうした時によく出る言葉もだ、オスカーは出した。
「俺達はこのままでいいのか」
「いいんじゃないか?別に」
「悪役も悪役でな」
「妥協っていうかそのポジションもいいだろ」
「それはそれで人気があるしな」
「悪名は無名に勝るだろ」
 無名の俳優より悪役スターの方がずっといいというのだ、仲間達はどちらかというよりはかなり消極的だった。
 しかしオスカーのそのやる気は認めてだ、こう彼に言った。
「まあ頑張れ」
「俺達は一切邪魔しないからな」
「狼の本来の姿宣伝しろ」
「全力でな」
「そうするからな、見ていろよ」
 燃える目で右の前足を人間の手の様に拳の形にさせてだった、オスカーは誓った。そしてこの時から森の生きものや街の人間達にだ。
 彼は必死にだ、こう宣伝した。
「狼は必要な分しか食わないぞ」
「無闇に血は求めないぞ」
「残酷なことはしないぞ」
「食べるものをy食べるだけだ」
「狩りに頭を使うんだ」
「残忍とか狡猾とか嘘だ」
「もっと言えば人を食ったりなんかするか」
 派手に言って回った、猪にも兎にも鹿にも狐にも栗鼠にも言う、勿論草木や花、虫にも言う。湖や川の魚達にもだ。
 人間の街でも子供だけでなく大人にも老人にも言う、肉屋の親父にも主張した。
「親父、狼はな」
「肉を見てもなんだな」
「あんたはいつもパンやジャガイモを食いたいって思うか?」
 肉を並べて置いているカウンターの向こうの親父に問う。
「腹一杯なら」
「腹一杯ならもういいさ」
「そうだろ、それは俺も同じなんだよ」
「いつも食いたいんじゃないんだな」
「そうだよ、あと酷く殺すとかな」
「それもしないんだな」
「そうだ、野獣とか言うがな」 
 ジェヴォダンの野獣だ、桁外れの数の人を殺したという。
「あんなことするか」
「あれあんたの仲間の仕業じゃないのか」
「だから言ってるだろ、俺達は人間を滅多に襲わないんだ」
 このことは強く言う。
「それに満腹ならな」
「誰も襲わないか」
「そうだよ、誓って言うし狼は誇り高いんだ」
「プライドもあるんだな」
「当たり前だろ、狼は由緒正しい生きものなんだぞ」
「昔からいるか」
「ああ、その誇りがあるからな」 
 それ故にというのだ。
「嘘も言わない、赤頭巾ちゃんみたいなこと絶対にするか」
「婆さんを食ってから婆さんに化けたりか」
「七匹の子山羊みたいにもしないからな」
 狡猾に母親に化ける様なこともというのだ。
「群れを為して堂々と狩るのが俺達なんだよ」
「そうなんだな」
「そうだ、皆俺達を悪い奴だって言うけれどな」
 それはとだ、必死の顔で語る。
「それは間違いだ」
「じゃあ真実はあんたが言うことか」
「何度も言うが嘘は言わないぞ」
 オスカーはここでこうまで言った。
「俺達を従者にしていたオーディン神に誓ってな」
「そこまで言うんだな」
「そうだ、絶対にな」
 肉屋の親父にも言う、とかく彼は誰にも彼にも狼の素顔、彼が知っている限りのそれを語った。そうした活動をしていたが。 
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