どうして俺ばかり
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第一章
どうして俺ばかり
狼のオスカーはこの時怒っていた、そして森の仲間の狼達に言っていた。
「何で俺達は悪役なんだ」
「童話でか?」
「人間の」
「そうだ、何で俺達ばかり悪役なんだ」
こう言うのだった。
「赤頭巾ちゃんでも三匹の子豚でも七匹の子山羊でもそうだろ」
「あと狼少年でもそうだな」
「他にも色々あるな」
「俺達はいつも悪役なのは確かだな」
「もう童話の悪役スターだな」
「スターじゃないだろ」
オスカーは仲間の一匹の言葉に突っ込みを入れた。
「思いきり悪く書かれてばかりだろうが」
「まあ出番は多いけれどな」
「どれだけの作品に出てるかわからない位だな」
「人間の世界で言うとナチスだな」
「ヒトラーに匹敵する悪役だよな」
「何がナチスだよ、ヒトラーだよ」
オスカーは彼等も全否定した。
「皆で俺達を悪者にしやがって」
「そう言うけれど仕方ないだろ」
「そうだよな」
仲間達は憤慨するオスカーの横で顔を見合わせて話した。
「それが俺達のイメージなんだからな」
「世間様のな」
「悪いことをする悪い奴」
「獰猛で残忍だってな」
「貪欲で狡猾もあるな」
「悪い要素をジャムみたいに煎じたな」
「だから違うだろ、俺達は必要なものしか食わないんだよ」
例え肉食であってもというのだ。
「しかも人なんて襲わないぞ」
「赤頭巾ちゃんかよ」
「それか」
「そうだよ、それと狩り尽くしたりもしないぞ」
狼少年の結末の様にというのだ。
「絶対にな」
「イメージ通りじゃない」
「巷の噂とは違う」
「貪欲でも残忍でもない」
「獰猛でも狡猾でもか」
「そうだよ、俺達は悪い奴等じゃないだろ」
間違ってもというのだ。
「そのイメージを何とかしたいんだよ、俺は」
「だからそう言ってもな」
「それは仕方ないだろ」
憤って言い続け仕草にもそれが出ているオスカーにだ、仲間達はまた言った。
「童話に書いてあることだからな」
「もうそれは定着してな」
「簡単に覆せないぞ」
「子供の頃に読んだらら残るからな」
頭の中にだ。
「だからもう諦めろ」
「俺達は悪役だってことでな」
「悪役でも童話に出番あるからいいだろ」
「知名度があるだけましってことで」
「何が出番ある、知名度があるからいいだよ」
言われても引かないオスカーだった、その灰色の毛で言う。
「もっとな、俺達の悪いイメージを払底して本来の姿を知ってもらおうって思わないとな」
「駄目ってか」
「そう言うんだな」
「それでイメージアップか」
「そうしたいってか」
「そうだよ」
まさにという返事だった。
「俺達の本当の姿を知って欲しいんだよ」
「そう言うと思ったよ」
「こうした時って大抵そう言うからな」
「自分の真の顔を知ってもらう」
「わかってもらうってな」
「ああ、宣伝してな」
ピーアールだの言ってもいい、とにかく本来の狼を知ってもらいたいというのだ。
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