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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十六話 出発その七

「お酒と女の人にかけては」
「まあ確かに普通じゃない人だな」
「普通の要素とは無縁だから」 
 あの親父の場合はだ。
「参考にならないよ」
「それもそうか」
「そうだよ、とにかくね」
 僕はさらに言った。
「僕美沙さんとも普通だから」
「そうなのよね」
 横から美沙さんも言って来た。
「これあたしも保証するわよ」
「そうか、じゃあ納得したよ」
「まあね」
 ここで美沙さんは自分の横にいる僕をちらりと見て言った。
「悪い感じじゃないわね」
「悪い感じじゃないって?」
「そう思っただけよ」
 美沙さんは僕にくすりと笑って言葉を返してきた。
「そう言われてもね」
「何かそう言われたら」
「義和は嫌?」
「そうでもないけれど」
 僕は言葉を選びつつ美沙さんに言った。
「何か親父みたいでね」
「そこでもそう言うのね」
「同じ八条荘に住んでてね」 
 僕は周りにも自分にも美沙さんにも言い聞かせる様にして言葉を出していった。
「同じ学年で同じバスケ部だけれど」
「友達ってことね」
「そう思ってるけれど」
「そうよね、けれどね」
「美沙さんとしてはなんだ」
「そう言われても悪い気はしないわ」
「それじゃあ」
 あえてだ、僕は美沙さんに問うようにして言った。
「僕が親父みたいな性格だったら」
「あたしに?」
「それでもいいの?」
「まあ義和がそんな人だったらね」
「その場合はだよね」
「流石にかわすけれど」
 親父みたいに言い寄ってきたらというのだ、親父は女の人に無理強いはしないけれどその言葉を使って攻めて陥落させる。
「それでもよ、まあ義和嫌いじゃないし」
「それでもいいんだ」
「こう言うのはね」 
 くすりと笑ってだ、こうも言った美沙さんだった。
「あたしも疚しい気持ちがないからよ」
「だからはっきり言えるんだ」
「しかも悪い気がしないのよ」
「そういうことだね」
「ええ、まあとにかくね」
 美沙さんは僕にあらためて言った。
「これからね」
「そうそう、皆で駅まで行って」
 そしてだ、これから。
「呉まで行くよ」
「呉まですぐなの」
「いや、実は広島まで行って」
 八条鉄道の特急でだ、まずはそこまで行ってだ。八条駅から広島までは一直線で行けるけれどだ。
「そこで路線変わるんだ」
「同じ八条鉄道よね」
「うん、けれどね」
「それでもなの」
「広島から呉までちょっと時間がかかるんだ」
 僕は美沙さんにこのことを話した。
「実はね」
「あれっ、同じ広島県でしょ」
「うん、そうだよ」
「広島は広いけれど」 
 美沙さんは僕の言葉に腕を組んで考える顔になって言った。 
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