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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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精神の奥底
  58 戻橋

 
前書き
今回も特に戦闘はありません。
日常回というのか、普通の買い物なんですが、チラチラと彩斗という人間を掘り下げていきます。
この章が「精神の奥底」というタイトルなのですが、彩斗をはじめ、色んなキャラクターの意外な面が出せたらなぁ〜と思います。 

 
「さぁ、着いたよ」
「ここ?思ってたよりずっと大きいのね」
「さすがにデンサンシティの代表的なスポットの電気街にあるからね。それと同時に激戦区だから他にもいろんな量販店がある」

彩斗とメリー、そしてアイリスは同じ街に暁シドウがいるということも知らずに目的地へと辿り着いた。
炎天下の中、誰に頼まれたわけでもなく、必死に燃え続ける太陽にある種の恨みを抱きながら、可能な限り日陰を通ってきた。
場所としてはさっき利用したメトロの駅からメインストリートを通り、旧国鉄の一般的な電気街駅のオールドストリート改札付近にある。
周囲を見渡せば、先程までのあからさまな電気街という感じではなく、いわゆるオタクだけでなく、一般の客も利用しやすいようなカフェやファーストフード店の他、駅直結で多くのアパレルショップがテナントに入った商用ビルまで揃っている。

「でも集まりすぎてても大変じゃないですか?」
「いや、店同士が近いから、比較するのには楽だよ。価格の交渉もしやすいしね。それにしても…」
「?」
「随分と気に入ってくれたみたいだね?」
「あっ、うん…とっても」

新しい服を身につけたアイリスは今までの控えめな微笑ばかりだったことを忘れるくらいの笑顔を浮かべていた。
生まれて初めて服を買ってもらったのがよほどうれしかったのだろう。
更に先程の店員が言うとおり、アイリスだけでなく彩斗もメリーもモデル見えるようなルックスをしているのは確かなようで、かなりの注目の的となっていた。
暑い中、日陰を探しながら歩くだけなく、変な注目を浴び、彩斗は心なしか少し不思議な気分だった。

「よし、早く入ろう!中は冷房が効いてるよ!」
「ハイ!」

3人は店の中に入り、その燃えるような暑さの外界とは完全に遮断された、その心地良い冷気を全身に浴びる。
そこは完全に別世界だった。
気温は言わずもがな、今までの歩いてきた電気街という街の一部であるにも関わらず、全く違う。
今までは完成前のパーツやジャンク品、ノーブランドのバルク品などを扱うが程よく情緒を感じさせるマニア向けの電気街だったのに対し、ここはまるで有名百貨店のように明るく、きちんと掃除がされ、ピカピカのショーケースやデモ機が並び、扱われているのは新品、ほとんどはパーツ単位ではなく完成品を扱った万人向けの電気街という感じだ。
1階はPETやトランサー、スマートフォン、PCなどを扱うフロアで今日も多くの人々が古くなった端末と別れを告げ、新しい端末を契約して新しい生活を始めていく。
彩斗はすぐ右にあった最新家電やイチオシ商品が書かれたフリーペーパーを手に取る。
最近ではネットで簡単にデータ媒体で入手できるものの、やはり機械に疎い人々はデジタル文明がいくら発達しようと一定の割合で存在し、普段から置かれているものではあるが、今はネットが使えないせいか、いつもより多く刷られている。

「新モデルがもうすぐ発売か」
「何がです?」
「トランサーの後継機、I.P.Cから来月発売される。えっと…スターキャリアーだって」
「次々出ますね、去年はトランサーでその前がリンクPETエクシード。毎年毎年コンスタントに発売する必要あるんですかね?」

新しいものに心を躍らせる彩斗にメリーは少々冷ややかな視線を向けた。
メリーは正直、現行の機器の性能に不満を感じてはいなかった。
性能はもう飽和状態、一般的な使い方をする人々には必要のないものだ。
性能を上げ過ぎた結果、バッテリー持ちが悪化したり、発熱が酷いといった症状を起こすことも多い。
もちろん性能を求める人々向けの製品は出し続けても構わないが、一般の人々向けの端末に関しては、性能はもう十分だから、バッテリー持ちであったり、持ちやすさであったりといった部分に力を入れて欲しい思っていた。
メリーは予約の列に目をやる彩斗の腕を引っ張り、アイリスとともにエスカレーターに乗った。

「ほらほら予約しませんよ!上に行きますよ!」
「あっ、うん…」
「もう…何が新しくなるっていうんですか?」
「えっと…画面のサイズはそのまま30%のサイズダウンと25%の軽量化…あとネットナビとウィザードを管理するシステムが一新されて、ナビのメンテナンスやエラーチェックが通常の4倍に」
「それはナビには嬉しい」
「あと…マテリアライズ機能が追加になる」
「え?マテリアライズって…」
「サイトくんの…」
「そうだね。それがこの機器で手軽に行えるようになるらしい」

メリーとアイリスは思わず顔を合わせた。
今でこそ失われたが、マテリアライズは数日まで彩斗が身につけていたものだ。
電波を物質に変換する、そんな夢の技術が身近になる。
今までは限られた人々の限られた用途にしか使われていなかったが、これにより資源の問題が大きく発展するだろう。

「電波は電磁波の一種だし、電磁波も突き詰めると粒子の性質を持っている。そして粒子は物質の構成するもの。夢のテクノロジーが今や家庭に1台どころか、1人1台の時代になるっていうことだね」
「サイトくん、買うの?」
「予約はしたい。でも買うか買わないかは、いろいろ見てからかな。どうせ、発売前に詳細が流出するし、実際にマスコミ向けに展示会とかが開かれて実物を触った記者のレポート記事とかが出てくるから」
「なっ、なるほど…」

彩斗はどこか心ここにあらずといった顔を浮かべていたが、心の中では微妙な心境だった。
これは今や世界中の共通の課題である食料・資源の問題は抜本的に解決しかねない勢いだろう。
しかし同時にかなりリスキーだ。
テロリストの手に渡れば、枯渇している武器にも成りうる。
更には、恐らくこの商品の発売によって電波人間や電波体の存在はかなり身近なものになるだろう。
そうなれば今でさえこの街で問題になっているような、電波人間による犯罪が横行する可能性も高くなる。
科学技術の発展にはつきものだが、使いどころを間違えば危険なものになるという法則がこの新商品に関しても例に漏れず、執念深い蛇のようにつきまとっていた。
3人は次の階へのエスカレーターに乗り換える。

「すごく広いのね」
「うん、売り場面積はニホン最大規模だからね」
「でも何年前に不景気の煽りを受けて、経営難になったことがあって、I.P.Cグループの参加に入って事無きを得たんですって」
「その時に建て替えられてリニューアルオープンしたんだ。売り場は前の建物の3倍。携帯端末からデジカメ、PC、美容家電、時計、テレビ、レコーダー、オーディオ機器はもちろん薬剤師在駐のドラッグストア、ゲームコーナーとゲームソフト売り場、外国人向けのお菓子やニホンのおみやげコーナーと何でも揃ってる。それに上にはレストラン街まである」
「本当に電気屋さん?」
「まぁでも、ポイントがいろんなことで使えるから…便利って言えば、便利な気も…」

アイリスは周囲を見渡すと、50インチの最新型のテレビの説明を受ける老夫婦がいた。
老後の生活に彩りを加える大画面で高精細、インターネット上の動画ストリーミングサービスに対応し、まるでそこにいるかのような臨場感とニホンの工業製品のテクノロジーを肌で実感できる一品だ。
しかしよく見れば、インターネットが使えないせいで、多くの機器はデモで本領を発揮できずにいるのが、ネットナビであるアイリスにはすぐに分かった。
それと同時にこの事件の大きさを改めて感じた。

「ここだ」

3人は先程までのデジタル感溢れるフロアとはまた違ったエリアに降り立つ。
美容家電やマッサージチェアの他、スポーツ用品、時計などが置かれている。
しかし彩斗は先程までとは違い、あまり周囲に目をくれずに奥へと進んで行く。
だがアイリスもメリーも進めば進む程、徐々に客が少ないエリアに向かっていることに気づいた。
それにこのフロア自体が1つ下のフロアに比べて、圧倒的に店員の数も少ない。
それもそのはずで、彩斗が向かっているのは売り場ではないからだ。

「やぁ、相変わらず、“忙しそう”だね」
「おや?坊っちゃん!…これはこれは」

彩斗は奥のカウンターの近くで本を読んでいた男性店員に声をかけた。

「可愛いガールフレンドを連れての来店は3回目ですな」
「この子は前に来たことがあるよ。妹だ」
「あぁ!お久しぶりです。大きくなられて。それにそちらのお嬢様は童話のお姫様のように可愛らしい」
「どっ、どうも…」
「あっ、ありがとう…」

彩斗のことを「坊っちゃん」と呼んだその店員の一連の行動と言動、そして容姿にアイリスは驚きを隠せず、反応が遅れた。
メリーも一応、昔会ったことはあったが、微妙な表情を浮かべている。
まず最初に彩斗に声をかけられる前に読んでいた本は隠微な女性の裸体が描かれた成人向け雑誌、いわゆるエロ本だ。
ニホン最大規模の量販店の店員が業務中に読んでいるという段階で面食らってしまった。
そしてメリーや初対面である自分にかけた言葉も女好きであることが滲み出てきている。

「いやぁ、初々しいですなぁ」
「…っ!」
「そちらのお嬢様は初めましてになるわけですね?ようこそ、ジョーモン電機・電気街本店へ。私は修理コーナーを担当させていただいている久鉄(ひさがね)といいます。難しい名前ですが、何かございましたら、お気軽にお声がけください」

そして普段穏やかな性格の彩斗からあからさまに「いい加減にしろ!」と言わんばかりの顔をされて、我に返ったように紳士的な対応に変わった。
その店員は顔のホリが深くハーフのような整った顔立ちで、美男子というか男らしいというか、女性には人気がありそうな顔をしていた。
しかし不思議と年齢が窺い知れず、30代と言われればそんな気もするし、50代と言われても別に驚くこともないような容姿だ。
初対面の人間ならば、自分より年上なのか、年下なのか、どう接したらいいのか分からないこともあるだろう。
しかし少し混じった白髪と少しじじくさいというのか、どこか老いと紳士らしさを感じる言葉遣いから恐らく年齢は中年から壮年に近いだろうと辛うじて判断できた。

「で、今日は?」
「修理を頼みたいんだ。この時計なんだけど」
「おや、うちでご購入いただいた…どんな調子ですか?」
「昨日の夕方から遅れるようになった。深夜に電波を受信して修正したみたいだけど、またズレてる」

彩斗は昨日まで使っていたシチズン・アテッサを渡す。
軽量なチタンのケースにブルーダイヤルのクロノグラフ、世界中の時間に切り替えられるダイレクトフライト機能を備えつつも、実売価格は7万5000ゼニーと手頃なニホンの時計市場の傑作だ。

「そうですか…ではお預かりして、メーカーの方に発送しますので、結果が出るまでに2週間程度いただきます」
「いや、今ここで直せるのか、直せないのか、分からないかな?」
「私にですか?」
「確か時計修理技能士がいるって書いてあったけど、修理カウンターにいるのが1人だけってことは必然的にあなたしかいないんじゃない?」
「えぇ…まぁ、生活の糧に。では少し見せてもらいますよ」

食い下がる彩斗に下手な抵抗をするのも面倒くさかったのか、潔く久鉄は引き受け、奥のテーブルに座って、バネ棒外しを手にする。

「修理カウンターなのに1人だけなんですか?」
「えぇ、まぁ。というか、このフロアには他のフロアに比べて、最初から少ないんですよ」
「前に来た時もそうでしたけど、このフロアってお客さんが海外の方が多いですよね」
「扱ってるのも、美容家電やら薬やら時計やら海外のお客様に人気の商品ですからね。ここのスタッフは必然的に数カ国語を話せる必要があるので、私はともかく他のスタッフにとっては、ここのフロアに移されるのはある種の罰ゲームですがね」
「まぁ、このフロアにいるってことは、左遷されたような感じなのかな」
「うっ、坊っちゃん…まあ、私も別に隠してるわけじゃないですが、左遷組ですからね。しかも私は元はジョーモン電機じゃなくて、I.P.Cの方の人間でしたし」

久鉄は手際よく作業をしながら、3人との会話もこなす。
棚にはメーカー修理から帰ってきた商品に依頼書の写しが添付されたものが、ジャンル別に分けられている他、修理の手順のマニュアルや接客マナーが壁に貼られている。
態度には少々問題はあるが、店員としてのスキルは確かなものだとアイリスは安心しかかったが、次の瞬間には修理の専門書が並ぶデスクの本棚の中に「ムチムチ黒ギャル女子高生24時」というタイトルの本を見つけて呆れて、首を振った。

「そういえば、2週間と2日前の夕方の4時20分に一緒にいらした背の高いお嬢さんは?今日はご一緒ではないんですか?」
「あっ、あぁ…ミヤは…今日は…」
「その様子だと別れたわけではなさそうで安心しました」
「僕がいつ来たのかも覚えてるのか?」
「えぇ、私達の場合、暇か忙しいかのどちらかです。あなたは大概、暇な時においでなさるので、覚えやすいのです。それにこのフロアにとって数少ない“お得意様”ですから」
「サイトくんはいつも何を買っていくんですか?」
「大概、本ですな。地味にここのブックコーナーはそれなりに品揃えがありますから。ポイントでガジェットも買えるし、逆にポイントで本も買えるからと仰ってました」
「うん。本屋なら本屋のポイントカード、家電量販店なら家電量販店のポイントカードとごちゃごちゃしちゃうからね」
「あとはここのフロアでは薬や時計をたまに。他のフロアではメモリーカードやPCの部品などをお買い上げいただいています」
「学校ではよく怪我をするし、時計も壊れる」
「それにしても…」
「どうしたんですか?」
「いや、来なさるときはいつも必ずと言っていい程、どこかに殴られたような痕があって、浮かない顔を浮かべておいでで。今日は無いようで安心しています」
「兄さんは…その…」

アイリスとメリーは会話の中で普段の彩斗の不明瞭な部分が見えてくるような感じがした。
メリーは普段はネットナビとして彩斗のトランサーの中にいるとはいえ、他の人の目線から見た彩斗のことを聞くのはどこか新鮮だった。
しかしそんな時、久鉄は話題を変えた。

「そういえば、ニュース見ましたよ。おたくの学校の不良生徒達が港の廃工場で殺されたとか」
「あぁ、らしいね」
「どんな気分です?」
「どんな気分…とは?」

久鉄の話の雰囲気が変わるのと同時に彩斗の雰囲気も変わる。
不良が殺されたニュースについて、彩斗は軽く他人行儀に受け流したものの、久鉄は何か気づいているようだった。
彩斗は一瞬、自分が殺したことに気づかれたのかと焦り、真偽を確かめようと、久鉄の脳にシンクロしかける。

「クラスメイトの方もいらっしゃんたんじゃないですか?」
「あぁ、多分ね」
「この不良たちですよね?坊っちゃんの怪我の原因。そんな相手がいなくなって、どんな気分ですか?」
「…スッキリした。でも残念でもある。いたらいたで殺してやりたいと思っていたし、いなくなったらいなくなって恨む相手がいなくなって、不思議と虚しさを覚えてる」
「フッ、坊っちゃん」
「…何だい?」
「詩人ですなぁ」
「…はぁ」

真剣な顔をして対応した彩斗は自分を責めた。
そして自分を落ち着かせる。
何を焦っているのか、この左遷されたエロジジイに何が分かるというのか、シンクロでも使えない限り自分が犯人だと断言できる者はいない、現場はディーラーが処理して指紋はおろか髪の毛一本自分に繋がる証拠は残っていない、と。
それに自分が犯人だとしても、刑事未成年である自分は一般法は愚か少年法ですら裁くことはできない。
しかし徐々に思考が犯罪者のそれに近づいていることに、恐れが抱き始めていた。
まるで未成年だからと実名で報道されず、社会に復帰できると高をくくった自分の殺した不良たちと全く同じになってしまう気がして、首を横を振った。
一瞬で頭をリセットして、久鉄の作業の方を見た。
久鉄自身も質問自体に大した意味は無かったようで、先程と変わらぬ様子で作業を続けている。
作業はいよいよ裏蓋を外して中を調べる段階に進んでいた。

「ん?うわぁぁ…」

しかし、中の機械を少しいじった後、何かの測定器のようなものを近づけた瞬間、久鉄はの顔色が変わった。

「どうしたんですか?」
「これは酷く帯磁してますな…MRIにでもそのまま突っ込みましたか?」
「検査を受ける時くらい時計は外すよ」
「この時計はある程度の耐磁性能を備えている上、クォーツの時計なら磁気から遠ざけてやれば、大概直るのですが、それでも直らないとは…」
「脱磁したら直るんですか?」
「いえ…磁気だけでなく、中のパーツもところどころ損傷が見られます。ケースやバンドも硬質コーティングがされているのに、かなり傷だらけですし」
「修理はできるのかな?」
「ここまでボロボロだと、メーカーでも直せるかは微妙でしょうな」
「そうか…」

彩斗は誰が見ても分かるくらい残念そうな顔をする。
機能も性能も装着感も全て気に入っていた。
しかし同時に感謝の気持ちもあった。
今まで使ってきた時計も学校での暴行のせいでどれも短命だった。
しかしこの時計は今までの中で長く使えたし、買ってから今日までこんなにボロボロになっても、必死に自分に性格な時刻を伝え続けてくれたのだと、不思議と労いの気持ちがこみ上げてきた。

「まぁ、時計に限った話じゃないですが、国産のものはパーツの保有期間が短いですからね。特にクォーツは正確ですが、寿命が来たら、中身を総入れ替えすることになることが多いです」
「ケースとバンドを取り替えて、中のムーブメントも入れ替えたんじゃ、修理じゃなくて、買い直したのと同じじゃないか」
「そうなりますな。しかもこの手の店だと3割引きで売ってますが、修理に関してはメーカー希望小売価格に対する修理額になりますから、新品を買った方が安い場合が多いです」
「この国はモデルチェンジしてばかりで、1つのものを長く使おう、もったいないって言葉を知らない」
「全くですな」
「…さっきまで今度、モデルチェンジする端末欲しがってたくせに」

彩斗と久鉄がこの国を憂いているのに、水を差すようにメリーはぼやいた。

「残念なことに私は立場上、新しい時計の購入をおすすめすることになりますが、もう新しい時計を着けていらっしゃるようで」
「いや、このモデルは気に入ったから、もしまだ在庫があるなら」
「いえ…残念ながらもう生産もしておりません。しかし衛星電波時計になった後継機が発売されています。電波の受信が高速になり、世界中どこでも自動で時刻を修正します」
「衛星電波時計か…」
「おや、新しいもの好きの坊っちゃんが興味を示されないとは?その心は?」
「衛星からの電波を受信するモジュールを積んでるからか、どれもサイズが大き過ぎる」
「坊っちゃんは腕が細いですからなぁ」

彩斗はその細く華奢な手首をくるくると回してみせる。
今までのアテッサもサイズこそ大きい方ではあるが、薄型で手首にフィットするような装着感で違和感は無かった。
久鉄の見せるカタログを見ながら、一度ため息をついてから、口を開いた。

「それに今の話を聞いてると、どうも今の僕には不要な機能が多いみたいだ。世界中を飛び回ることはないし、電波の受信は夜寝てる間にやってくれるから高速でなくても構わない」
「確かに世の8割の人には必要なさそうですなぁ。マーケティングというか、自分たちの技術力を誇示するために作ったようなところもありますし」
「今度発売するっていうスターキャリアーもそんな感じじゃないですか?」
「トランサーでも十分過ぎる性能ですよ?私みたいにあまり使わない人はどちらかといったら、バッテリーとか持ちやすさとか、細かいところをマイナーチェンジして欲しいんですけど」
「おぉ、お嬢さん方も坊っちゃんと同じで若くして、しっかりと自分の意見を持っていらっしゃる」

メリーには幼くして、周りに流されない判断力というものを持っていた。
もちろん歳相応の洋服であったり、アクセサリーにも興味はあり、実際にさっきは彩斗の服についてもいろいろ勧めてはくるが、その素材やデザイン性がその価格に見合うものなのかを冷静に判断した上での行動なのだ。
そんなメリーからすると、不必要なくらいの性能のものを毎年モデルチェンジと価格改定を繰り返し、莫大な予算を使って宣伝して、消費者の購買意欲を煽るというスタンスの商売には疑問を覚えていた。
そんなメリーに対して、アイリスは違う意味で微妙な感じを覚えていた。

「しかも寿命が来て、パーツ保有期間も過ぎていたら、修理できないなんて…」

ネットナビでありながら人間としての体を持っている、正確には人間でありながらネットナビも活動できるメリーと違い、100%ネットナビであるアイリスにとってはパソコンやPETのような機械は、いわば自分の家だ。
人間なら一生に一度の大きな買い物、一番落ち着く場所なり、帰るべき場所となる。
同じ場所に帰る場所があるという安心感というのは、ネットナビである自分でも安心することだ。
しかし今の理屈からすれば、その家がメーカーが次々と新製品を作り出していく中で、過去の商品はまるで無かったかのように、修理することもできない。
自分たちネットナビがどれだけ人間の都合でいとも簡単に居場所を無くしてしまう存在なのかを思い知らされた気分だった。

「結局、長く使おうと思ったら、精度こそクォーツには敵いませんが、機械式になってしまいます。それもできれば、多少のカスタムやチューニングがされていても、ベースが汎用ムーブメントのものを。パーツが無くなる心配が少ないですし」
「最終的には、電気も半導体も使わない、昔ながらのトラディショナルなものが一番長持ちするわけだね。事実、だからこそ、スマートウォッチやトランサーみたいな便利なものが出てこようと、作り続けられているわけだ」
「私もこいつとは長い付き合いですがね。未だにいい働きをしてくれてますよ」

久鉄は自分の腕のボールウォッチ・トレインマスター キャノンボールを見た。
グレーダイヤルにアラビア数字のインデックス、ブルーの秒針と45分積算計を備えたクラシックな雰囲気を纏ったクロノグラフで独自の耐震・耐磁構造を備え、ルーツである鉄道時計に恥じぬ精度を持つ。
ベースが汎用ムーブメントのカスタム品であり、修理のパーツはそう簡単には無くなりはしないため、確かに長く使える一品だ。

「しかし坊っちゃんがお選びになる時計はいつもいい時計ばかりだ。店員の目線から見ても、なかなかいない目利きなお客様です。今着けてらっしゃる時計も素晴らしい上に美しい」
「それはありがとう」

彩斗が今着けているのは、OMEGA・シーマスター プロダイバーズ300 コーアクシャルクロノメーター。
サイズは男女兼用のミッドサイズでその美しいブルーダイヤルは見る者の目を奪う。
またその美しい外見とは裏腹に、シーマスターの名の通りの300メートル防水で高い耐久性を持っており、性能面においても、汎用ムーブメントをベースにしつつ、高精度を維持するチューニングと摩擦を低減するコーアクシャル脱進機を搭載し、C.O.S.C.による厳しい審査により高精度を約束されたクロノメーターの認定を受けている。
その防水性能と高い精度からあらゆる国の海軍でも愛用者は多い。

「オーバーホールは必要ありませんか?」
「多分、あと1年そこらは大丈夫。でもこっちの時計はオーバーホールを頼みたい」

彩斗はスターキャリアーの話題のあたりで既に頭の片隅に追いやられていたハートレスからのおつかいを思い出した。
ハートレスが愛用していたOMEGA・コンステレーションだ。
久鉄は受け取ると、少し顔色を変えた。

「おぉ、これもいい時計だ。でもこれはレディース…前にも見たことがあるような…」
「初めてのおつかいって奴かな。ここに行くって言ったら、ついでに持って行って欲しいって言われてね」
「お母様ですか?」
「…まぁ、そんなところ」
「いいですなぁ。御二人のお母様ともなれば、相当な美人に違いありません。いいですなぁ…あぁ、こちらの依頼書に必要事項のご記入を」
「いや…まぁ、お母さんというか、あしながおばさんというかね」
「あんなお母さん嫌ですよ!確かに美人だし、スタイルはいいけど…冷たいし、無愛想だし、いつも命令口調だし。体に血が巡ってるかも怪しい氷の女です、あの人は」
「おぉ…妹さんの方はお嫌いでいらっしゃるようで」

ハートレスの話題になった時、メリーは怒った。
隣にいたアイリスは全く予測できなった事態に依頼書を書く彩斗の背中に逃げるようにくっつく。
そして久鉄も自分の人生の5分の1生きているかどうかも分からない幼い少女の放つ年相応ではない剣幕に持っていたピンセットを落とした。

「まぁ、いろいろあって。あぁ、書き終わったよ」
「あっ、はい。お支払いは?」
「カードで一括払い。パーツの交換や追加料金が必要になったら、この番号に連絡してやってくれ」
「あと今、このようにインターネットがダウンしていろいろ混乱している時期ですので、通常よりお時間が掛かることが予想されますが、よろしいですか?」
「構わないよ。どうせ、代わりの時計なんていくらでももってるはずだし」
「ありがとうございます。ではお時計の方はお預かりします。あと坊っちゃんのお時計はどういたしますか?一応、修理に出すだけ出してみますか?」
「いや、修理できなさそうだから、やめておこうかな」
「でもまだ生産終了になってそう経っていませんので、パーツはまだ在庫があるかと。脱磁してやればまだ使える部分自体は多くあると思いますので、見積もりだけなら料金も掛かりませんし、結果を待ってみるというのも1つの手ですが」
「…じゃあ、頼もう」
「かしこまりました。ではお手数ですが、またこちらの依頼書の方に必要事項のご記入を」
「んっ……」

アイリスは彩斗の字が汚いことに気づく。
さっき書いていたハートレスの時計のオーバーホール依頼の時はハートレスへの当て付けにわざと下手に書いているのかとも思ったが、自分の時計の依頼書の字も大して変わらない。
だがそれは彩斗に限った話ではない。
今の時代の子供たちは幼い頃からパソコンや携帯端末に触れ、キーボードを使わずとも、音声で自動
入力・変換される文字をわざわざ覚えたり、読み書きしたりしないのだ。
恐らくメリーも彩斗程ではないが、字を書くのは苦手なのかもしれないと勝手に予想していた。
しかしそんなことを考えながら、ふとアイリスは自分が彩斗のことをずっと観察していることに気づいた。
それもそのはずでまだ出会って数日しか経っていないのにも関わらず、不思議とずっと一緒にいたように感じているが、アイリスは彩斗のことを何も知らないに近いのだ。

「あぁ、思い出した」
「何を?」
「10年くらい前に前に私がI.P.Cを左遷されて、系列の会社を部門をたらい回しされていた時のことです。ここではない別の系列量販店の売り場にやってきた20歳前後のカップルがいたんですが、その2人が買っていかれたものです」
「10年も前に売ったものを覚えてるのかい?」
「女性の方がすごく美人だったので…」
「結局、そこなんですか…」
「いや、でもその時、ちょうどクリスマスシーズンでカップルや夫婦向けに2万ゼニー以上の時計の裏蓋にメッセージを無料で入れるサービスをやってまして、まぁ今でもやってますが」
「へぇ~いいなぁ…いつか私も…」

メリーがこの前に観た恋愛ドラマのワンシーンに自分の姿を投影し始め、完全に自分だけの世界に入り込んでいる中、彩斗とアイリスは久鉄の口から語られるハートレスについて興味を向けていた。

「その時のカップルが注文する時に入れたメッセージだったもので」
「そのカップルはどんな2人だった?」
「えっと、ハタチ前後…大学生か、院生くらいの若者で、女性の方は申し上げた通り、本場パリのトップモデルさながらの美女」
「男の方は?」
「えっと…何というか…確かにイケメンではあったんですが、女性の方とは少し吊り合ってないような…雰囲気が違う感じでしたな」
「どんな容姿でした?」
「身長175から8、ザ・好青年という感じの若者で、女性の方同様に恐らく西洋の血筋を引いてらっしゃたような気がします」
「好青年…ハートレスも意外なところがストライクゾーンだね…んっ?」

ハートレスの過去の一部に触れ、ますます興味をそそられかけたとき、彩斗の顔色が変わった。

「どうかしたの?」
「いやっ…」
「サイトくん?」
「用事を思い出した。じゃあ、確かに時計は預けたからね」
「はい。確かにお預かりしました。坊っちゃんの時計の方は2,3週間で返事が来ると思います」
「あとすぐ戻るから、ここで2人の話し相手を頼んだ」
「えっ?...はぁ」

いきなり頼みごとをした挙句、カーボン紙で写された時計2本の引換証を握りしめ、彩斗はその場を急ぎ足で離れた。
アイリスは何かあったのだろうかと心配するが、幸いにも彩斗が向かったのは、トイレがある方向でひとまず胸をなでおろす。

「トイレ…?」
「…坊っちゃん、何かいつもと違いましたな」
「いつもと?」
「えぇ。坊っちゃん、今日は御二人が一緒だからか、幾分か明るかったように思いますよ」
「そうですか?」
「この間いらっしゃった時も長身の女の子と一緒にご来店されて、その時も少し明るかったですし」
「いつものサイトくんって、どんな感じですか?」
「先程も言った通り、身体中怪我だらけで、世界が終わったみたいに暗い顔を浮かべていらっしゃって」
「……」
「そうそう始めていらっしゃった時のことは今でも鮮明に覚えています。確かそちらの妹さんと一緒で、元気いっぱいというわけではありませんでしたが、お店に並んだ商品にいろいろと興味を示しなさる明るくて優しい気さくな男の子でした」
「兄さん…確かに昔は今より明るかったのに」

久鉄という第三者の話を通して、アイリスとメリーは彩斗という人間を再び見つめなおしていた。
親の顔も知らず、物心が着いた頃からディーラーの子として望んでもいない英才教育と能力開発の日々、そして外の世界を知りたくて勇気を振り絞って飛び出してみれば、毎日いじめられる日々が今の彩斗を作った。
そんな理不尽で辛い過去、そして今を生きながらも必死に耐え続けているという現実に2人は自分のことではないはずなのに、どうしようもない憤りを覚える。

「ですから、ここ数年の坊っちゃんを見てると、心が痛くて。段々と元気を無くしていく、何かをすり減らしていく過程を見ているような気がして」
「サイトくん……」
「ある時はまるで死んでしまったかのように感じられる時もありました。いえ...むしろその時の方が多かったかもしれない。まるで生気を感じない、生きている顔をしていらっしゃらなかった」
「......」
「私の見たところ、坊っちゃんは過酷ながらも、それなりに裕福な環境で育っていらっしゃる方だ。それに恐らくあらゆる才能に恵まれていらっしゃる。それにあの容姿とその才能を鼻に掛けない真摯な姿勢。それ故にいろんな人々から妬まれやすいのでしょう」
「鼻に掛けないどころか、自分を過小評価してるです。もっと自信を持っていいって思うんですけど……」
「私は彼と出会って、まだそう長くはありません。でも…今の話を聞いていて思ったことがあります」
「アイリスさん?」
「もしかしたら、その才能を一番妬んでいるのは、サイトくん自身なのかもしれない…って」

アイリスは徐々に明らかになっていく彩斗の素顔に胸を締め付けられる思いだった。
彩斗だって妬まれたくて、あらゆる才能を手にしたわけじゃない。
そのような妬まれる才能と常人が持ち得ない能力を持ってしまったことに一番困惑し、辛い生活を送る原因として一番妬んでいるのは、彩斗自身なのだと思うとやりきれない。
昨日の晩の公園の時でのやり取りの時から感じてはいたが、自分やメリーに見せている笑顔も今にも泣きそうな気持ちを必死で押し殺しているのだろう。
今も冷静な仮面をかぶりながら、何か吹っ切れないモヤモヤした嫌な感覚を覚え、本当の意味で自分に笑顔を見せてくれない。
アイリスは何とかしてあげたい気持ちと自分が介入することでますます彩斗をこの迷宮の奥に誘ってしまうのではないかという不安に溺れかけていた。

「でも前より、何というか、大人になった気がしますな。前まで抱えていた何かを吹っ切られたようで、今度はまた別の壁に突き当たったように思えます」
「兄さんはあまり悩みを話してくれないんですよ。いつも1人で抱え込んで…」
「久鉄さんには話たりするんですか?」
「いいえ、全く。何となく探りをいれてみたこともありましたが…まぁ、あんな感じです」
「全部、受け流されたってわけですか?」
「えぇ。こっちが何を言おうとしてるか全て見通されているようでした。それを知った上で、とぼけて返される時もありました。ですが、御二人とあの長身の女の子には心を開いていらっしゃるようだ」
「そう…ですか?」
「はい。今、死んでしまったように感じられる時があったと申し上げましたが...御二人と長身の女の子が一緒の時は間違いなく、生き返っていましたよ。やっと戻ってきてくれた、そう実感しました」
「......生き返った...」
「きっとあなた方との出会いが、坊っちゃんにとっての戻橋だったのでしょう。ですから御二人共、坊っちゃんのことをしっかり支えてあげて下さい」
「…はい」
「分かりました」

「おまたせ、そろそろ行こうか」

その時、彩斗が戻ってきた。
アイリスもメリーも今の話の内容を読み取られるのではないかと一瞬、警戒したが、彩斗も今はシンクロを控えているようで事無きを得る。

「じゃあ、また」
「おっと、坊っちゃん、お待ちを」
「ん?」
「この店を含めた系列店でもお使いいただける割引券とポイント3%アップ券です。よろしければ」
「あぁ、ありがとう。いいの?別に何か買ったわけでもないのに」
「えぇ、ちょっとした反抗ってやつです。あと、お忘れ物です」
「ん…」

久鉄はそれぞれ輪ゴムで留められた束の券と、画鋲のようなパーツを手渡した。
彩斗は割引券をアイリスに渡してから、そのパーツを受け取る。
メリーもアイリスもそれが何なのかは分からなかった。

「何?それ?」
「これは…時計のリューズだよ」
「それも先の部分に麻酔か何かが塗ってある。時計をある一定の手順でいじると、引き抜けるようにしてありました」
「護身用に仕込んでいたんだ。でも悲しいことに護身のためじゃなく、人間のクズ1人を黙らせるのに使う羽目になったけどね」
「この濃度と量なら成人男性でも短時間なら、自由を奪えるでしょうな。でも流石にこれも一緒に修理に出すことはできないので」
「そうだね。じゃあ、また」
「えぇ、お元気で。見積もりが出ましたら、ご連絡差し上げます」
「頼んだよ」

彩斗は2人を連れて歩き出した。
先程の話を聞いてから、2人の中で彩斗という人間が組み立て直されている。
きっと彩斗はまだ自分たちに打ち明けてくれていない事がたくさんあるし、本音を殺している部分も多いのかもしれない。
だけど久鉄の話の通りならば、徐々に心を開いてくれている。
今まで自分たちに見せてきた顔が全て仮面では無く、本来の姿だと思うと嬉しかった。

「……ッ…」

しかし反面、彩斗は苦しんでいた。
さっきトイレに行ったのは、決して便意を催したからではない。
例によって、胸の痛みが湧き起こってきたからだ。
原因は分かっている。
未明にスターダストを使って、街に繰り出したことだ。
ハートレスのPCの記録と分析の通りならば、スターダストシステムは適合・不適合に関わらず、肉体に負担を掛ける。
しかも素体である身体、それも心臓という脳を除く肉体の中心部であり、戦闘や運動をすれば一番負担が掛かる部分に致命的なディフェクトを持っているのだ。
彩斗はムーの遺伝子の影響で電波変換というある種、一番のハードルと呼べるもの自体は乗り越えているものの、やはり全く負荷が掛からないはずがない。
2人の視線が向いていないことを確認すると、一度深く息を吸い込んで、胸を軽く撫でる。

「…ふぅ」
「これで用事は済んだけど、この後、どうしようか?」
「いや、用事ができた。せっかくだからタワーの近くまで行ってみよう」
「えっ?タワーですか?」
「2人共、この街の事をあまり良く知らないだろ?錦町のショッピングモールにでも行こう」
「最近できたっていうショッピングモールですか!?やった!」
「私達の為に…ありがとう、サイトくん…!」
「それに少し気になることがあるしね」

彩斗は先程、感じた違和感の正体が分からないモヤモヤした感じを抱えながら、喜ぶ2人の笑顔で気を紛らわせていた。




 
 

 
後書き
ハイ、今回は舞台が電気街ということで...
彩斗、メカに関しては結構新しいものが好きです(笑)
でも前回の通り、趣向としてはスタンダードなものが好きなので、最新のものでも手を出さないものは手を出さずに様子を見ようとしたり、時計が機械式だったり、近未来が舞台の割に程よく古い面を持っていたりします。

次回はようやくスバルにスポットが...! 
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