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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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本来の力

 
前書き
昨日会社で定年の人がいて、7月7日生まれと工場長から言われた途端頭の中に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)という単語が現れた俺は何者なのだろうか。
別にナツたちは7月7日生まれではないんだけどなぁ・・・たぶん・・・ 

 
「俺たちの誤りを正す?」
「そうだ」

顔についた血を模様のように伸ばすカミューニさん。その様はまるで狂気に溢れる犯罪者を見ているようで、はっきり言うとかなり怖い。たぶん、ラクサスさんも同じことを考えているんじゃないだろうか?

「道を踏み間違えたのはあんただろ?勝手に悪魔の心臓(グリモアハート)に入って、しかもそのマスターを殺すためっていう不純な動機で」

評議院だった悪魔の心臓(グリモアハート)七眷属のリーダーであったウルティアさんに接触するために聖十大魔道に登り詰めたカミューニさん。その理由は、ハデスに近付き殺すため。だけど返り討ちにあった彼は、そのギルドに所属して何度もチャンスを伺ったって聞いている。
闇ギルドに入ったことも、その理由も間違いだと主張するノーランに、カミューニは大きくうなずく。

「その通りだ。俺はやり方も何もかも間違っていた。もっと違うやり方があっただろうに・・・それを模索することすらしなかったんだ」

天を見上げ物思いにフケながら、彼はかつての自分の過ちを思い返している。今でこそ罪を清算するために、独立ギルド魔女の罪(クリムソルシエール)を作り所属している彼だけど、悪魔の心臓(グリモアハート)にいた時は周りなど見えず、ただただ自分の目的のために戦い続けていたんだと思う。

「だが、俺のその過ちを正してくれた奴がいた」

そう言ってかがみ、俺の頭をグリグリと撫でるカミューニさん。その行動に少し照れ臭さを覚え、ハニカム。

「こいつのおかげで俺は・・・間違っていることに気付いた。だから俺は・・・お前を正しい道に連れ戻す」

頭を撫で終わり、ゆっくりと立ち上がりながら視線を鋭くさせる。その目は七年前の天狼島での戦闘を思い出させるほど、鬼気迫るものだった。

「正しい道・・・ねぇ・・・」

カミューニさんの決意を聞いたノーランは、口に手を当てクスクスと笑っている。それを見た俺たちはイラっと来たが、カミューニさんに制止されなんとか気持ちを落ち着ける。

「もう知ってんだろ?俺はゼレフ書の悪魔だ。俺に取っての正しい道は、ゼレフの元に帰ること。それ以外に意味なんかない」

冥府の門(タルタロス)は全員がゼレフ書の悪魔で構成されたギルド。故に、彼らの幹部クラスであるノーランもまた、ゼレフ書の悪魔ということになる。だから彼らに取っては、ゼレフのために戦うことが正義であり、絶対なんだ。
それを聞いてカミューニさんはどうするのかと視線をやると、彼は目を閉じ意識を高めている。

「問題ない。お前を正しい道に送る方法なんていくらでもある。例えば・・・土に返すとかな」
「面白い。やってみろよ」

カミューニさんの一言で両者が魔力と呪力を高めていく。二人の異常なまでに高いその力は、周囲の壁を揺らし、ヒビを入れていく。
次第に高まっていく力。それが最大限に上がり切った時、両者はその力を解放し、敵に向かって駆け出す。

「ハァッ!!」
「フッ!!」

同時に振るわれた拳。それは相手のそれとぶつかり合い相殺される。だが、ここからの行動は全く違っていた。

ガシッ

重なりあっていた拳を深紅の男が先に開き、相手の硬く握られた拳をホールドする。彼はその掴んだ腕を回転させると、ノーランは何もできずに宙に浮かんだ。

「波動波!!」
「くっ!!」

逃げ場のない空中に浮かんだ悪魔に手のひらを向け魔法を放つ。相手はそれに体を捻りながら正面を向くと、腕をクロスさせて一撃を防いだ。

「波動砲・・・球の章!!」

続けざまにノーランにサッカーボールほどの大きさの波動の球体を作り、足を踏み込み投じる。

「甘い。はっ!!」

それに対し空中にいまだ浮いていた男は、腕で空気を切る。すると、カミューニさんの放った球体は真っ二つに分断される。

「初見でこいつは交わせまい!!」

着地すると同時に再度腕を振るわせる緑の男。彼のこの魔法は俺もラクサスさんも初見では交わせず、もろに受けてしまった。そのため、自信をもって彼はその魔法を打ち出したのであろう。しかし・・・

「波動拳!!」

カミューニさんは魔力を纏わせた腕を体の前で振るわせる。すると、見えないはずの一撃が軌道をずらし、天井に大きな亀裂が入った。

「はっ!?」

これには魔法を打ち出したノーランも驚愕するしかない。彼のこの魔法は俺でも捉えることができなかった。不調なのも原因の一つではあるが、それでも全く見えないというのは、よほどの早さがある攻撃ということか、はたまたラクサスさんの種明かしてくれた通りのガラスならば、相当な透明度を持っているということだと思う。
なのに、カミューニさんはそれを苦にすることなく、あっさりと弾き飛ばして見せた。それを見せつけられたら、敵も味方も関係なく、驚くのは無理ないだろう。

「初見で・・・なんだって?」

先程のノーランの発言を覆したカミューニさんはしてやったりのドヤ顔を浮かべていたりする。そういうところは、子供っぽい人だよね、この人。

「一撃防いだくらいで・・・調子に乗んなよ!!」

余裕な表情を見せていたカミューニさんにイラっと来たのか、ノーランは全身にオーラを纏わせ始める。その力は大きく、力強くて、彼の周りの大気が大きく揺れていた。

「何・・・この魔力・・・」
「呪力って言ってたよ~」

彼の秘められていたその力に思わずそんな言葉が漏れる。冥府の門(タルタロス)が使う力は、俺たち魔導士が持っている魔力の上位にあるとされている呪力と言われているものらしい。ノーランが高めているそれは、カミューニさんの魔力と遜色ない・・・いや、むしろ越えているくらいかもしれない。

「消え失せろぉ!!」

力を高めたノーランは、姿勢を低くすると、後ろに引いた足で床を思いきり蹴り飛ばす。

「な・・・」
「早~!!」
「野郎・・・一瞬で・・・」

一度だけ・・・たった一度の蹴りでカミューニさんの懐へと入り込んだノーラン。信じられないほどの速度で敵に接近したその瞬発力に、“速い”以外の言葉が見つからない!!

「現れろ・・・無限の槍よ!!」

カミューニさんの目の前にやってきたノーランは、体術で応戦するのかと思いきや、地面に手をつき呪法の体勢へと入る。彼が手をつけた地面からは、無数の槍が敵を刺そうと伸びていく。

「「「カミューニさん(くん、カミュ)!!」」」

敵の技の激しさに三人の声が被る。当たったら一溜まりもないないほどの攻撃力があるように見えるノーランの呪法。それも、あれほどの至近距離で放たれたら、交わすことなど不可能だ。

「ほいっと」

そう思っていた俺やラクサスさん。しかし、その予想は覆される。顔を、体を、全身を刺そうと伸びていた大地の槍。それをカミューニさんは、曲げられた足で一本目を防ぐと、他の槍を巧みなフットワークで次々に回避していく。

「!!」

すべての槍を交わされたノーランは次なる攻撃に転じようとするが、それよりも先にカミューニさんが攻撃を行う。

「波動砲・・・斬の章!!」
「がはっ!!」

軽やかなステップからノーランの頭上に飛び込んだカミューニさんは、剣を作り出し斬りかかる。ノーランは攻撃を放とうとしていたこともあり、避ける動作に入るのが遅れ、体を波動の剣が切り裂いた。

「波動砲・・・」

魔法を当てた直後、すぐさま後方に下がりつつなおも攻めようとしているカミューニさん。だが・・・

「やらせるか!!」

彼にいいようにやられっぱなしのノーランは、発動する前に叩こうと痛む体にムチを打ち、下がる彼を追いかける。

「矢の章!!」
「無駄だ!!」

波動の弓と矢を作り出したカミューニさんは、それを手早く引いて矢を放つ。ノーランはそれに対し、さっきの自分の攻撃をカミューニさんが弾き、天井に亀裂が入った際に床に広がった残骸の一つを蹴り上げ、己の呪法で盾にして攻撃を防ぐ。

(次が来る前に仕留める・・・!?)

矢が当たった瞬間、盾を視覚を遮る壁に利用しながらカミューニさんに不意打ちをしようと迫るノーラン。だが、肝心のその男はすでにその場にいなかった。

「どこだ!?」

立ち止まって左右を見回すが、目に入るのは動けない俺とラクサスさんとセシリーのみ。標的である同じBIG3の称号を持つ青年の位置を特定することができない。

タンッ

彼が右往左往していると、その背後に着地音が響く。彼はその音に反応して振り返るが、正面を向いた瞬間、自身の腹部にカミューニさんの蹴りが入った。

「ぐっ!!この!!」

蹴りを受けたノーランは怯みそうになるのを懸命に耐え、拳を振るう。カミューニさんはそれを予測していたらしく、頭を下げてすんなりと対応していた。

「くそっ、どこにいやがったんだ」

ぼやくように呟く悪魔。彼は今自分に攻撃を食らわせた青年がどこにいたのかわからず困惑の表情を浮かべている。
確かにカミューニさんをノーランは捉えられていなかったと思う。その理由は、彼の回避の行動にあった。
盾を用いて敵の攻撃を防いだノーランは、それで自身の動きを見えないようにし、死角から現れるという戦法を取ったんだと思う。しかし、その死角にするための盾を、逆に利用された。
カミューニさんはノーランが見えるよりも早く、ジャンプしてその盾を乗り越えようとしていたのだ。その後にノーランは後ろから姿を見せたため、敵がいないという現象に見回れ、周囲を見回していた。彼が慌てている間にカミューニさんは空中から地上に着地し、逆に奇襲を成功させたといったところだろうか。

「それで四天王に勝てると思ってたのか?バカなんじゃねぇ?」
「チッ」

真面目な顔で相手の心を抉り取ろうとするカミューニさん。ノーランは予想と違う展開になっていることと、彼の言葉の方が正しいと感じ始めているらしく、小さく舌打ちをする。

「波動砲・・・槍の章!!」

引いた右腕を突き出し、敵目掛けて槍を放つカミューニさん。ノーランはそれを見切り、体を反らせて魔法を交わす。

「波動拳!!」
「なっ・・・」

しかし、ノーランのその動きはカミューニさんの予想の範疇・・・いや、むしろ狙い通りの動きだった。槍を交わしたノーランに、カミューニさんは一気に駆け出し、反らした上体が戻ってくる反動を利用して頭部に強烈な一撃を打ち込むカミューニさん。食らったノーランは、その威力に押し負け転倒する。

「波動砲・・・斬の章!!」

倒れた敵に容赦なく斬りかかるカミューニさん。目の前に剣が迫っていたノーランは、倒れた体勢のまま地面に手をつけると、頭跳ね起きの要領で波動の剣を振るう深紅の男を飛び越える。

「くあっ!!」

カミューニさんを飛び越えたノーランは床のタイルを一枚引き抜くと、それを後ろ向きに敵に投じる。そのタイルは雷撃へと変換され、カミューニさんへと襲い掛かる。

「おわっ!!」

距離が近かったこともあり、避ける暇もなく雷を浴びるカミューニさん。彼はそれに怯み地面に膝をつける。

「調子乗んなって・・・言ってんだろ!!」

片膝をつき身動きがとれないカミューニさんに飛びかかるノーラン。それを見て一瞬“ヤバイ”と思った。だけど、背中から敵が迫っているカミューニさんの表情を見て、その考えが消える。

(笑ってる?)

うっすらと口元に笑みを浮かべているカミューニさん。この状況下でなぜそんな顔をしているのか、俺には全く理解できない。
そう考えてる間にも、深紅の青年に何かを変化させて作り出した刀を構えたノーランが迫ってきている。そして、彼がそれを振りかざした瞬間、

「ぐはっ!!」

ノーランの腹部に魔力の衝撃波が命中した。

「バウンディングショット・・・とでもいっておこっかぁ?」

地に叩きつけられたノーランを見下ろすように立ち上がるカミューニさん。しかし、彼が魔法を放ったようにはとてもじゃないが見えなかった。おまけに、飛んできた方向もしゃがんでいた彼とは別のところから・・・何が何なのか、さっぱりわからない。

「なんだ・・・今のは・・・」

口から血を流し魔法が当たった部位を押さえて呼吸を乱した緑髪の青年。彼にもどういうことなのか理解ができていないようで、疑問に首をかしげていた。

「魔力の質を変えて魔法の性質を変える。あらゆるものを吹き飛ばす波動を、性質を変えて壁に跳ね返るようにしたんだ」

実は先程、波動の槍を放った後、すぐさまノーランに拳を叩き込んだように見えたカミューニさん。しかし、実は二つの魔法の間にもう一つ違うことをしていたのだ。
それは、普段とは性質を変えた、この通路にある壁に当たると跳ね返ってくるようになった波動の球。それをあらかじめ投げておき、相手が何かしらの攻撃をしたのをわざと受け、しゃがみこんだのを見計らって襲ってきたところに波動の球が戻ってくるように計算し、誘きだしていた。

「マジかよ・・・」
「やっぱりすごいや・・・」
「かっこいい~」

彼の判断力と行動力、そして技術力に感嘆の声を上げる。言うのは容易いだろうが、本番でできるだろうかと問われると首を縦には触れない。
細かな動きを入れるとどうしても焦るし、多少の誤差も発生する。カミューニさんはそれをものともせず、見事に作戦を成功させた。それは、尊敬に値する代物である。

「これが・・・カミューニさんの本来の力・・・」

天狼島で戦った時や、ドラゴンとの戦いで見せた力よりも上を行っている彼の動き。最強と言われる三人衆の善が、悪を挫くのか!?












 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
なんか戦いで強さを見せるシーンがあまりなく、肩書きだけの人になってたカミューニですが、本当はすごいんだよ、というのをやりたかった今回のお話。
次で新たな展開に入れるかな? 
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