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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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陰口はやめようぜ

 
前書き
なかなかアイリーンとエルザの関係性が出てこないな。
今週のタイトル的に・・・とか思ってたら、まだ触れないとなかなか焦らしてますね。
そんなことを言ってるうちにミラvs.アイリーンの構図ですが・・・ミラは連戦だし、あっさり瞬殺されそうな気がする。 

 
第三者side

冥府の門(タルタロス)の本拠地、冥界島(キューブ)。その中では至るところで妖精対悪魔の戦いが繰り広げられている。

「なんじゃと!?それは本当か!?」

雑兵たちを次々に蹴散らし進軍していく妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター、マカロフ。彼は周辺を取り巻いていた敵を全て凪ぎ払ったところで、ある情報を受けてウォーレンの方を向く。

「あぁ。間違いねぇ。ポーリュシカさんから連絡があったからな」
「むぅ・・・」

額に指を当てて念話しているウォーレン。その後ろにはドロイとジェットもいるのだが、彼らもたった今入った情報に頭を抱えている。

「ラクサスがいなくなったって!?」
「あいつ、何やってんだよ」

彼らの元に届いた情報。それは、魔障粒子に犯され、目覚めることすら困難なはずのラクサスがいなくなってしまったというものだった。

「マックスたちが気付いた時には、どこにもいなかったらしい。それに、敵に押し込まれてて探しにいくこともできないみたいだ」

現在フリードたち雷神衆を守るために冥界島(キューブ)の下面に留まっているものたちもいるのだが、彼らは冥府の門(タルタロス)の軍勢の多さに押し込まれており、これ以上退けないところまで下がっているらしい。

「わかった・・・ワシはひとまず皆の元に戻る。ラクサスを見つけたら、至急連絡をくれ」
「「「了解!!」」」

そう言い残し、その場から駆け出すマカロフ。彼はもと来た道を辿り、押し込まれている仲間たちのもとへと必死に戻る。

(ラクサス・・・あのバカたれが)

孫であり、ギルドの一員でもあるラクサス。彼は心の中で悪態をつきながらも、ラクサスがどこにいったのか、おおよその検討はついていた。

(無茶なことをするでないぞ)

そう一瞬思い、頭を切り替える。今は他のメンバーの援護をするのが何よりも重要だと、マカロフは先を急いだ。



























シリルside

「ラクサスさん・・・」

前に立ち、敵を見据える男性に驚愕する以外に何もできない。なんで彼がここにいるのか、どうして来たのか、俺の頭では全く理解が追い付かないのである。

「なんでここにいるの~!?」

同様に倒れているセシリーが、ここにいる彼以外の人物が抱いたであろう疑問を投げ掛ける。ラクサスさんは拳をポキポキと言わせると、全身の雷をさらに巨大化させていく。

「こいつを倒す。そのために来たんだ」

先日、ヤジマさんを殺すために8アイランドを襲撃したノーラン。彼はその際、居合わせたラクサスさんと雷神衆の皆さんと交戦したのだが、結果はノーランの圧勝だったと聞いている。ただ、フリードさんが機転を聞かせヤジマさんの命を守ろうとしたが、それが敵の癪に触り、魔障粒子を放出されてしまったらしい。
ラクサスさんは他の皆さんを助けるために、それを大量に吸い込んだらしく、生きていることが不思議と言われる状態だった。なのに、今は平然とこの場に現れ、戦う意志を持っている。

「おいおい・・・どうなってんだ?」

中でも一際驚いているのは、彼に魔障粒子を吸い込ませたこの男だった。彼はなぜラクサスさんが動け、この場に現れたのか思考が追い付かず、フリーズしているように見える。

「まさか・・・」

彼は何かに気付いたのか、ポケットの中から小瓶を取り出し、一口指で掬って舐めている。

「すり替えられたわけではないか・・・」

小さく呟いた後、ポケットに小瓶を戻すノーランを見て、その小瓶の中身が何なのか、おおよそ検討がついた。

「あれ・・・薬か?」

ノーランの考えはたぶん、自分の持っている魔障粒子の解毒剤をいつの間にか奪われ、それがラクサスさんたちの元に行き、彼を治すことになったと思ったんだろう。でも、実際は彼が解毒剤を持ってるなんてこちらは知らなかったわけだし、仮に奪っていたとしても届ける手段がない。味でそれを確認した彼は、ラクサスさんを見据えながら再度思考を張り巡らせていた。

「まぁいい。お前が今どんな状態であろうと、俺には関係ないからな」

結論に至ったのか、はたまた考えがまとまらず諦めたのか、戦闘体勢に入るノーラン。それを見たラクサスさんも、同じように構える。

「この間と同じ目にあわせてやるよ」
「やれるもんならやってみろ」

二人はそう言うと、しばしの膠着状態に入る。どちらが先に動き出すのか待っていると、意外にも早めに片方が動く。

「そりゃ」

掛け声と共に床に転がった破片を蹴り出したのは冥府の門。彼が蹴り出したそれは、長い槍へと変わり雷竜の顔めがけ一直線に伸びていく。

「ふん!!」

だがしかし、ラクサスさんはそれを雷を帯びた腕で払い落とすと、雷のごとき速度で接近を試みる。

「雷竜の・・・鉄拳!!」

打ち出された拳。しかし、予想の範疇だったのか、敵は軽く頭を下げただけでそのパンチを交わした。

「雷竜の・・・」
「!!」

右ストレートを交わし、攻撃に転じようとしたノーラン。だが、それよりも早く、上に被さるような形になっている金髪の青年が頬を大きく膨らませていた。

「咆哮!!」
「があっ!!」

至近距離で放たれたブレス。その威力は絶大で、反撃に出ようとしていた男は床を抉りながら押し込まれていた。

「なら・・・」

体重をかけて踏み留まるノーラン。彼はその場で腕を振るう。ラクサスさんはそれを見て頭を下げると、俺の脇を何かがすり抜け、後方の壁に傷跡がついた。

「なんだ?今の・・・」
「さ・・・さ~?」

真横を通過する際に何かが物体のようなものが通った気がする。それが何なのかまでは把握できなかったけど、確かに何か通っていた。

「もうそれの正体はわかってんだ。二度と食らうもんかよ」
「へぇ」

俺たちが後ろを見ていると、戦っている二人はそんな会話をしている。ラクサスさんはノーランの謎の攻撃の目星をつけているらしく、ノーランはそれに短く一言だけ答えた。

「お前のその攻撃・・・これだろ?」

そう言ってラクサスさんがポケットから取り出したのは・・・ガラス?

「本当はもっと透明度があるガラスなんだろうが・・・違うか?」

そう言うとガラスの破片を投げつけるラクサスさん。ノーランはそれを自分の手に傷かつかないように指だけで挟むように掴むと、一つ息をつく。

「驚いたな、まさかこんなあっさり正解にたどり着くとは」

持っていたガラスの欠片を地面に落とすと靴裏で踏み潰す。ラクサスさんの見立ては正解だったらしく、ノーランは少し悔しそうな顔をしていた。

「やられてもただでは負けないってとこか?」
「あぁ。んで・・・」

巨大な雷の戟を作り出し、勢いよく投げ放つ雷竜。それに対し悪魔は地面に手をつけ盾を作ると、その攻撃を受け止める。

「仲間を傷つけたてめぇをぶっ倒してやる」
「面白い。やってみろよ」

額に血管を浮かべるラクサスと余裕な表情を崩さないノーラン。二人の男の戦いは、さらに白熱していった。
























第三者side

シリル対ノーランの戦いにラクサスが乱入した頃、冥府の門(タルタロス)の本拠地にあり、シリルとミラが捕まっていたラボでは、二人の女性が激突しようとしていた。

「私の呪法『命令(マクロ)』は、かけたものを操り、意のままに動かすことができる」
「それでエルフマンを操ったって言うの?そう・・・」

セイラはユーリ老師の自宅であったエルフマンにすぐさま命令(マクロ)をかけた。その命令は、リサーナを握り潰すこと。すると彼は、彼女に懇願しこの行動を止めるようにいった。セイラはそれを利用して、リサーナを返してほしければ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を爆破するように指示を出したのてある。

「許さない・・・私の弟を・・・妹を傷つけるものを、私は絶対に許さない」

大切な家族を傷つけられたことで全身から禍々しいオーラを放ち、敵を見据えるミラ。彼女は次第に、赤いレオタードに身を包んだ悪魔へと姿を変貌させていく。

「っ!!」

変身直後に全速力で走り出すミラ。それを見たリサーナは、冷静さを欠いている姉に聞こえるように声を張り上げる。

「ミラ姉!!熱くなりすぎないで!!そいつの挑発に乗っちゃダメだよ!!」

怒れば怒るほど人間の動きは淡白になる。ナツのようにパワーアップするものもいるが、そんな人間はごくわずか。それを気にしてリサーナは叫んだが、すでにカッカッと来ているミラには届いていないようだった。

「人間はすぐに感情に振り回される。高みから人を操り、物語を紡ぐ私には・・・勝てない」

セイラは両手を広げると、彼女を取り巻くように分厚い本が大量に宙に現れる。彼女が腕を動かすと、本たちは突っ込んでくるミラに向かって襲い掛かる。

「ハァッ!!」
「!!」

しかし、ミラはそれを避けることなく突進を続行する。目の前まで敵の攻撃が迫ると、足を振り上げその攻撃を打ち消すミラ。セイラはそれに驚くが、そのまま飛び蹴りを打ち込んできた銀髪の女性の攻撃を、両腕をクロスしてなんとか防いだ。

「全てが自分の思惑通りに動くと思わないで」

咄嗟に防いだため後方に押し込まれたセイラ。ミラは彼女に反撃するチャンスを与えないために、すぐさま距離をつめて攻め立てる。

「サタンソウルのミラジェーン。キョウカ様のためにも排除いたしますわ」

防戦一方にも関わらず、その顔には余裕さが浮かんでいるセイラ。その理由は、彼女と交戦するミラの背後にあった。

「ミラ姉!!危ない!!」

リサーナが危険を知らせると、ミラも自分に迫ってくる敵の攻撃に気付き振り返る。そこには、先程彼女が叩き落とした無数の本が、列をなして攻めてきていたのだ。

「くっ!!」

腕を交差させその攻撃を凌ごうとするミラ。しかし、本の数があまりにも多く、全てを防ぐことができない。時おり彼女の頭に、分厚い本の角が衝突し、苦痛に顔を歪める。

(サタンソウルのミラ姉が、押されてるっていうの?)

セイラの怒濤の攻撃にやられっぱなしのミラを見てリサーナの顔が強張る。

「こいつ・・・」

ミラ自身も、自分が押されていることに驚きセイラを睨む。再び本に取り囲まれたセイラも、強き敵に対するため、気持ちを前のめりにしていた。

























シリルside

「がはっ!!」

敵の強烈な右ストレートを胸で受けた竜が吐血する。口元に血を流している青年に、悪魔は体を回転させながら顔面を蹴り飛ばす。

「がっ・・・ぐっ・・・」

地面に叩きつけられ、痛みを堪えながらなおも立ち上がろうとするラクサスさん。しかし、先の攻撃の反動か、なかなか起き上がることができない。

「ラクサスさん!!」
「大丈夫~!?」

いまだに地面に伏せたまま、声をかけることしかできない自分が恨めしい。序盤こそは接戦になっていた二人の戦い。でも、ラクサスさんが突然胸を押さえたかと思った途端、形勢は完全に敵に傾いてしまった。

「大丈夫だ・・・心配すんな」

ようやく片膝をつく姿勢まで起き上がった雷の男。だけど、息は乱れ口から出てい血液も止まる様子がない。相当厳しい状態なのは、火を見るより明らかだ。

「やっぱり、そういうことなんだな」

弱った青年を見下ろすノーランは、首をコキコキと鳴らしながら近付いてくる。

「その体、魔障粒子に犯されたままなんだろ?」
「え・・・」
「ウソ・・・」

彼のその言葉を聞いて固まる俺とセシリー。ラクサスさんはてっきり、解毒に成功したからここまで来たんだと思ってた。なのに、本当は治ってもいない体でやって来て、戦っているなんて・・・

「お前はフリードたちを傷つけた・・・それだけは絶対ぇ許せねぇ・・・」

苦しそうに胸を押さえながら敵を見据えるラクサスさん。そんな彼に、無情にもノーランは拳を叩き込む。

「ぐはっ・・・」
「「ラクサスさん(くん)!!」

地に大の字になって倒れる雷竜。その体は、見るも無惨にボロボロになっていた。

「仲間を傷つけられたから?下らねぇな」

倒れて動けないラクサスさんの腹部を踏みつけ苛立った表情のノーラン。彼は足に入れる力を強めた後、口を開く。

「お前らが俺に勝てない理由、教えてやろうか?それはな・・・」

ノーランは人差し指を立てた右手を最初に俺に向ける。そしてその後、踏みつけているラクサスさんに向け、交互に指さす。

「他者に戦う理由を委ねてるからだよ」
「「「!!」」」

彼の言っていること、それを聞いた瞬間、自分たちの思考を否定された俺たちはカッと怒りが芽生えたのを感じた。

「仲間のために、仲間が傷つけられたから、大切なものを守りたいから。そんなことを言ってる奴は、絶対に強くはなれない。
強きものはすべて己を第一に考える!!自分のため、自分の存在を証明するため、自分が強くあり続けるため、他人がどうなろうと構わない!!そういう業がなければ、この戦いの溢れた世界で生き延びることなんかできないんだよ!!」

ガンガンと動けぬ雷竜を踏みつけ自分の考えを述べるノーラン。彼はラクサスさんの顔面に足を置くと、誇らしげに腕を広げる。

「俺たちBIG3は強い。イシュガルの四天王に迫る存在とされてきたが、実際・・・あんな老兵ども、取るに足らん」

イシュガルの四天王はこの大陸でもっとも優れたと評議院に認定された十人の聖十大魔道の頂点に立つものたち。ノーランやカミューニさんはそれに続く存在と言われていたはずなのに、それを否定し出したのだ。

「ゴッドセレナもハイベリオンもウルフヘイムもウォーロッドも、みんな大したもんじゃない。リュシーはゴッドセレナに勝ったこともあるし、カミューニだって奴等を叩き潰せる。もちろん俺もな。だが・・・」

広げられていた右の手のひら。彼は歯をきつく噛むと、同じようにそれを握り締める。

「あいつは・・・カミューニがハデスに負けやがった!!力では間違いなく奴の方が上だったと俺は思ってる!!しかし、あいつは勝てなかった。その理由・・・お前らならわかるだろ?」

カミューニさんが勝てなかった理由・・・かどうかはわからないけど、彼がハデスに挑み続けていた理由は知っている。それはきっと、彼と友人だって言うラクサスさんもわかるんだろうな。

「カミューニはメルディっていう幼馴染みを助けるために戦っていた。もしあいつが自分の復讐のために戦っていたのなら、ハデスを下すこともできただろう。それを奴はしなかった。だから負けたんだよ」

悪魔の心臓(グリモアハート)に住んでいた街を壊され、家族を殺されたカミューニさんとメルディさん。彼は家族の無念を晴らすため、そして、連れ去られたメルディさんを救うためにハデスに挑み、負け続けた。でも・・・

「カミューニさんは間違ってない!!」
「はぁ?」

動かない体を無理矢理起こし、ノーランを睨む。彼も同様にこちらを睨み付けて威圧してくるが、構わず話を続ける。

「カミューニさんはみんなのために戦ったんだ!!だからあそこまで強くなれたんだ!!それをお前が否定すんじゃねぇよ!!」

ハデスに挑むために聖十に入り、勝つために滅竜の魔水晶(ラクリマ)に手を出したカミューニさん。すべては家族や街の人たちのためだった。その気持ちがなかったら、彼はあそこまで強くなれなかったと思う。

「わかってないねぇ、アマチャン。ワガママな奴がこの世界じゃ生き残る。あんな偽善者、すぐに消えてなくなるよ」
「てめぇ・・・」

彼のその発言は俺もラクサスさんも、セシリーさえも苛立たせた。この万全じゃない体でも、こいつをぶっ倒したい。そう怒りに震えていると、後ろから足音が聞こえてくる。

「おいおい、陰口はやめようぜ」

聞き覚えのあるその声に、全員がそちらを向く。それと同時に、俺とセシリーは、思わず口を押さえた。
壁に打ち付けられた冥府の門(タルタロス)の兵隊。彼らの体から飛び散った血液が壁を汚し、周囲に飛散している。

「そもそも、俺たちじゃまだ四天王には勝てねぇよ。調子乗んなよ、ノーラン」

暗闇から姿を見せる深紅の髪の青年。その姿を見て、全身に鳥肌が立った。
顔や服に返り血が飛び散り模様のようになっている彼は、両手に意識なく血まみれになった兵隊たちを携え、俺たちの前に現れた。

「なんでここに来た」
「けじめをつけに・・・な」

そう言って持っていた兵隊を投げ捨てる青年。彼は人差し指でかかってこいと敵を挑発する。

BIG3(俺たち)の誤りを正すのは、俺たちの仕事だ」

波動を扱う魔女、カミューニさん。最強と吟われたBIG3の戦いが幕を開ける。









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ラクサスの次はカミューニ登場です。てかカミューニの登場の仕方どう見ても悪者・・・
この出てき方はずっとやりたかったので、結構頑張りました。
次はBIG3対決です。一話か二話くらいで片がつくと思います・・・たぶん・・・ 
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