英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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外伝~改変される因果~
~某日・アルテリア法国・星杯騎士団本部・霊安室~
七耀教会の総本山である”アルテリア法国”にある古代ゼムリアの遺産である”古代遺物”の回収と”外法”を狩る教会の裏組織―――”星杯騎士団”の本部にある任務によって殉職した騎士達の遺体が一旦収められてある霊安室で異変が起こった。それは棺桶の中に永眠しているルフィナ・アルジェントの懐に収められていたルークからもらった”リバースドール”が音もなく崩れると共にルフィナが背中に負ったおびただしい傷跡が徐々に塞がり始めた。
「……………?(こ……こ……は……?私、生きているの………?)」
意識が戻り、ゆっくりと目を開けたルフィナの目の前は真っ暗であった。
(もしかして霊安室の棺桶の中かしら……?だとしたら、一刻も早くここから……出ないと………でも………身体に力が………――――あ。)
ルークからもらった治療薬の事を思い出したルフィナは必死に手を動かして懐から透き通った水色をした液体が入った瓶を取り出した後、時間をかけながら震える手で瓶の蓋を取った後液体を口の中へと流し込み、飲み込んだ。すると体内に入った聖なる液体は活力や体力を失ったルフィナに力を貸すかのように僅かながらルフィナに起き上がれる程の力を与えた。
「クッ………!」
そしてルフィナは持てる力を振り絞って棺桶の蓋を開けた。
「ハア……ハア………」
棺桶から起き上がったルフィナは疲労による息を切らせながら棺桶にもたれかかっていた。
「ルフィナ!よかった……何とか息を吹き返したのですね!」
「やっぱり生き返った、です。」
「これは驚いた……まさか本当に生き返るとは。」
その時ちょうど部屋に入った直後に起こった出来事―――ルフィナが棺桶から起き上がった出来事を見て驚きのあまり目を見開いたイオンと首を傾げているアリエッタ、そして星杯騎士団を束ねる長であり、守護騎士第1位―――”紅耀石”アイン・セルナート総長が近づいてきた。
「アイン……ジュエ卿……それにアリエッタさんも………」
「しゃべらないで下さい。血を流し過ぎて、体力を失っているのですから相当辛いはずです。―――これを飲んでください。すぐに失った体力や血が戻るはずです。」
イオンは懐から東方に特効薬として伝わる粉薬――――”ゼラムパウダー”を取り出してルフィナに渡し
「ありがとう……ございます………」
ルフィナは受け取った粉薬を飲み込んだ。粉薬がルフィナの体内に入ると、失ったルフィナの大量の血を戻すかのようにルフィナの体内の細胞に働きかけて粉薬を元に失った分の血を復活させた。するとルフィナの体力が完全に戻り、表情を青褪めさせているルフィナの顔色は健康体に戻ったかのように赤みを帯び、顔色も良くなった。
「アリエッタ、後は傷を回復してあげましょう。―――――キュア!!」
「はい、です。――――メディテーション!!」
「私も力を貸そう。エイドスよ、彼の者に慈悲を!――――セイクリッドブレス!!」
そして3人の治療術の光によってルフィナが負っていた傷も完全に塞がった。
「フウ……ありがとうございます。それにしても何故アイン達がここに?」
「―――貴女の訃報を聞き、もしかしたら蘇っている可能性も考えてこちらに来たのです。」
「ルフィナ、ルークからもらった、”リバースドール”、持っていました、から。」
「フッ、正直”七の導師”達の話を聞いて耳を疑ったぞ。」
「え。――――あ………ルークさんからもらった人形が………」
3人の話を聞いたルフィナは懐から役目を終えて粉々になった”リバースドール”のなれの果てを取り出して呆けた。
「でもどうして、すぐに発動、しなかったの、でしょうか?」
「恐らくですがルフィナの背に刺さっていた”ロアの魔槍”の呪いの影響かもしれませんね。」
「!!!ケビンは!?それにリースはどうなったのですか!?二人とも無事ですか!?」
二人の会話を聞き、自分が大切にしている家族や自分が死ぬ前の状況を思い出したルフィナは血相を変えた。
「安心してください、二人とも貴女のお蔭で無事です。」
「だがケビンは”聖痕”を、顕させた為”守護騎士”に、任命され、本人も受けた。――――渾名は”外法狩り”だ。」
「!!そう……………」
当たってほしくない予測が当たってしまった事にルフィナは複雑そうな表情をした。
「―――アイン。私がこのままここから消える事、見逃してもらえないかしら?」
「ケビンを守護騎士として成長させる為だな?それに死の淵から蘇った事で教会から”異端者”として扱われる事も危惧しているのだろう?」
「………ええ。」
「別に私はいいぞ。私としても上層部の連中が蘇ったお前を”異端者”として扱った挙句”外法”扱いして、”処分”させる訳にもいかんしな。―――だがいつか必ず”外法狩り”に顔を見せてやれ。きっと面白い顔をするぞ。」
「もう、アインったら………」
口元をニヤリとさせた親友の軽口にルフィナは呆れた様子で溜息を吐いた。
「フフ、総長でしたら貴女を庇ってくれると思い、事情を話して正解でしたね。」
「セルナート総長と、イオン様が決めたのなら、アリエッタも手伝う、です。」
「私の為に動いて頂き、本当にありがとうございます……」
その後ルフィナはアイン達の手引きによってアルテリア法国から脱出した。
「それにしても”予言”に”フォミクリー”か、お前達がいたという世界はとんでもない世界だったようだな?特に”フォミクリー”とやらは普通に考えて”外法”に値するぞ?」
ルフィナが乗る飛行船を見送ったセルナート総長は真剣な表情でイオン達を見つめた。
「……”レプリカ”の僕を滅しますか?」
「もしそのつもりなら、アリエッタ、イオン様、守る為に、全力で戦うです。」
見つめられたイオンは静かな表情で尋ね、アリエッタは警戒した様子でセルナート総長を睨んだ。
「フッ、私はその”オリジナル”のイオンとやらを知らないし、創られたお前自身、被害者なのは理解している。―――それに”人間の偽物”であった存在が”聖痕”に選ばれる等、傑作な話だろう?」
「う、う~ん……そういう問題なんでしょうか?」
そしてからかいの表情で尋ねてきたセルナート総長にイオンは答えに戸惑い、困った表情をした。
後にルフィナは名前を”アーシア・アーク”という名へと変え、更に正体を隠すためにピンクブラウンだった髪の色を変えると共に髪型も変え、リベールで優秀な遊撃士として活躍する事となり、”暁”の異名で呼ばれる事となる。
ヨシュアがブライト家の一員となって数年後、レンの両親が借金を返し終え、普通の生活をしている事を遊撃士協会の情報網によって知ったルークは、一度だけ話してみないかとレンを誘った。レンは最初は嫌がっていたがカシウスやレナからも一度面と面を向かい合って話し合うべきだと言われ、渋々頷き、ルークと共にクロスベル自治州にある住宅街に向かうと、レンの本当の両親達が家から出て来て、その事に気付いた二人は物陰に隠れて様子を見守り始めた。
~雨・クロスベル市・住宅街~
「ふふ、本当に可愛いね。お前にそっくりだよ。」
「ほ~らよしよし。」
菫色の髪の男性は夕焼けのような橙色の髪の女性が抱いている赤ん坊を女性と共に幸せそうに見つめていた。
「ふふ、前の子達はあんなことになってしまったけれど……でもよかった。女神様は私達をお見捨てにならなかったんだわ。」
「おいおいその話はしない約束だろう?昔のことはもう忘れよう。」
「ええ……哀しいけれどその方があの子達のためよね……おお、よしよし、いい子でちゅね~」
「あぶぅ、あぶぅ。」
赤ん坊は女性に甘え、また女性も男性と共に笑顔であやしていた。
「………………………………」
その様子を物陰に隠れて見守っていたルークは愕然とした表情をし
「……………っ!」
顔を俯かせ、何かに耐えるように身体を震わせていたレンは持っていた傘を捨てて、赤ん坊をあやしている夫婦に背を向けて突如走り出し
「あ、おい!どこに行くつもりだ!?」
走り出したレンをルークは慌てた様子で追って行った。
「違う、違う、違うっ!レンの”本当の家族”はルークお兄様やエステル達っ!あんな”偽物”の人達なんか、知らないっ!」
雨にうたれるレンは涙を流しながらうわごとのように呟きながら走り続け
「おい、待てって、レン!」
ルークは長髪の黒髪の男性と共に歩く太った体型をしている眼鏡の男性とすれ違い、レンの後を追って行った。
~工事現場~
「ハア、ハア……――――え。」
全速力で走り続けたレンは息を切らせて立ち止まり、目の前に血だまりの中に倒れている青年―――ガイ・バニングスを見て呆けた。
「やっと、追いつけたか…………って。―――なっ!?お、お前は確かクロスベル警察の!?おい、しっかりしろって!」
その時レンに追いついたルークがガイに気付いて血相を変えた後、ガイにかけよって声をかけたが、ガイは返事を返さなかった。
「脈が弱まってやがる……!心臓を撃たれたのか!―――いや、まだ身体は暖かいから助けられるはずだ!」
血によって真っ赤に染まっているガイの胸元に視線を向けたルークは荷物の中から最後の一瓶である”エリクシール”を取り出してガイの口の中に流し込んだ。
万物の霊薬たる液体はガイの体内に入ると、失ったガイの血を戻すかのようにガイの体内の細胞に働きかけて液体を元に失った分の血を復活させ、更には銃弾によってできた貫かれたガイの心臓も何事もなかったかのように再生し、銃弾によって貫かれた傷跡も塞がった。
「お兄様。その人、助かったの?」
「ああ。発見が早かったお蔭で何とかな。―――それよりレン。本当にごめん!俺のせいでスゲェ嫌な思いをさせちまって……!」
嫌がっていたレンに”本物の家族”に会う事を提案した事を強く後悔するルークはレンを見つめて頭を深く下げた。
「クスクス、変なお兄様ね?どうしてわざわざレンが”偽物”を気にしなくちゃいけないの?レンも最初からわかっていたんだから。――――あの人達は”偽物の家族”でお兄様達が”本当の家族”だって。」
「………………………」
笑顔で何の躊躇いもなく血が繋がる両親を否定したレンにかける言葉も無いルークは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「グッ………!?あ、あれ?俺、生きてんのか??」
その時地面に倒れていたガイが呻き声を上げながら起き上がった。
「お前は”焔の剣聖”のルーク……それに嬢ちゃんはあの時ティオと一緒に助かった………もしかして俺を助けたのは二人か?」
「ああ。まあ、レンがお前を見つけてくれなきゃ、助けられなかったけどな。よくやったな、レン。」
「うふふ、お兄様に褒められちゃった♪」
ルークに褒められたレンは先程までの悲しみを全て吹き飛ばすかのように嬉しそうな表情で微笑んだ。
「えっと、ガイ……だったよな?一体何があったんだ?」
「………………………」
命の恩人である2人に事情を話すことにガイは躊躇ったが
「―――わかった。俺の命を救ってくれたお前達だからこそ話す。だけどその代わり絶対に誰にも話さない事を約束してくれ。」
やがて決意の表情になって、ルーク達に事情を説明した。
「なっ!?ア、アリオスやIBC―――”クロイス家”が”D∴G教団”と繋がっていて、何かとんでもない計画を考えているって、本当なのか!?」
「ああ。計画の詳しい内容まではまだわからないがな……」
「うふふ、”風の剣聖”が聞いて呆れるわね。―――それでレン達のお蔭で運良く助かったお兄さんはどうするの?」
驚愕の事実を知ったルークは驚き、レンは口元に笑みを浮かべてガイを見つめて尋ねた。
「俺が生きている事が先生たちにバレたら、俺を殺す事に何の躊躇いもなかったあの二人の様子だと、今度はロイドやセシルまで狙いかねないからな。一端身を隠して機を窺おうとは思っているんだが……どうしたもんかな……」
「―――でしたら、僕達が貴方を匿いましょうか?」
ガイが考え込んでいると聞き覚えのある声が聞こえ、声が聞こえた方向に視線を向けるとイオンとアリエッタがいた。
「あんた達は確か……あの”教団”の壊滅作戦に参加した”星杯騎士”……」
「イオン!それにアリエッタも!何でここにいるんだ??」
「騎士団の極秘任務の関係でこのクロスベルを訪れ、任務を終えて帰ろうとした所をリベールにいるはずのルークが慌てた様子で走っている所を見かけまして。それで気になって追ってきたんです。」
「アリエッタ達がここに来た事、絶対に誰にも、言わないで下さい。エラルダ大司教に知られると、とても厄介な事に、なりますので。」
「エラルダ大司教?」
「このクロスベルの大聖堂を取り仕切っている司教様だ。………確か”星杯騎士団”のクロスベル入りを頑なに禁じられているんだってな?」
アリエッタの説明を聞いて首を傾げているルークに説明するかのようにガイは自分が知っている限りの知識を説明した。
「うふふ、大司教さんに嫌われるなんて、”星杯騎士団”はよっぽど悪いことをしたのかしら?」
「………………―――今はその件は後にさせて下さい。それでガイさん、でしたね?どうでしょうか、しばらく僕達”星杯騎士団”と行動を共にしませんか?」
小悪魔な笑みを浮かべて尋ねたレンの疑問を静かな表情で答えを濁したイオンは真剣な表情でガイを見つめて尋ねた。
「俺に”星杯騎士”になれってか?」
「いえ。僕が”個人的に僕に協力してくれる協力者”という扱いにしておきます。こう見えても騎士団内ではかなり上の地位を持っていますので、そのぐらいの融通を効かせる事はできます。それにもしかしたら貴方の知りたい事が騎士団にあるかもしれませんよ?」
「……………わかった。そう言う事ならお言葉に甘えさせてもらうぜ。」
こうしてガイは自分が生きている事を判明しないように正体を隠すために髪を染め、名前を『フレン・ガルディオス』へと変えると共にイオン達と行動を共にする事となり、死亡した事を偽装する為に血だまりの中に警察手帳とバッジ、ジャケットを置き、イオン達と共にその場から去って行った。
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