魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第2章:埋もれし過去の産物
閑話5「夜の一族と式姫」
前書き
...うん。また(誘拐)なんだ...。(´・ω・`)
ただ衝動的に思いついた話なので、読み飛ばし可です。
=椿side=
「ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎに...。」
「後、食パンとかも必要だよ。」
平日の午後、私達は商店街に買い物に来ていた。
...まぁ、ただ単に優輝の代わりに買いに来ただけね。
夏休みとやらで学校がないからって、翠屋で手伝ってばっかり...。
...べ、別に寂しいって訳じゃないわよ!?
「...って、あら?あれは...。」
そこで、ふと見覚えのある人物二人を見かける。
「えっと、確かアリサちゃんとすずかちゃんだったね。」
「やっぱりね。」
なんとなく話しかけようと近づき始めて、ふと気づく。
...どこか、人気が少ないような....。
「おーい!アリサちゃん、すずかちゃーん!!」
「葵!」
嫌な予感がし、葵に呼びかけるも、一足遅かった。
こちらに気付いた二人の背後に、メイド(って言ったかしら?)が立っていた。
「っ、こっちにも...!」
「椿さん!?葵さん!?」
ある程度近づいたから私達も対象になったのか、次々とメイドが現れる。
...どう見ても、ただのメイドじゃない...!
「(こいつら、人の気配がしない...!?)」
「アリサちゃん!すずかちゃん!」
私達を捕らえようと押しかかってくる多数のメイドからは、人の気配がなかった。
かと言って、妖のような気配も、何か違和感がある訳でもない。
「っ!くっ...!」
気絶させようと殴りかかってきたのを、両腕で防ぐ。
...その力も人のソレではなかった。
「(この気配のない存在...確か...!)」
人ではないのに、人の姿に見える存在。
それを、私や葵は知っている。...かつて、同じような式姫が仲間にいたから。
「(天探女と同じ存在...!しかも霊力がない分、気づきづらい..!)」
絡繰りで動いていた仲間の式姫と同じ存在に歯噛みする。
こんな街中で、霊術なんて使えない...!
「葵!」
「分かってる!!」
せめて二人を逃がそうと、霊力や武器を使わずに守ろうとする。
しかし....。
「椿さん...葵さん...!」
「っ...なんなのよ...!なんなのよコイツら!!」
「(っ、早い...!)」
予想以上にメイド達の行動が早く、二人は既に捕らえられてしまっていた。
しかも、私達が抵抗できないように丁寧に刃物を突き付けて。
「(...葵。)」
「(...ここは大人しくするべきだね...。)」
葵と目配せをし、大人しくする。
一応、葵に優輝に連絡をしてもらう。
「....殺す事以外、好きにすればいいわ。」
「...だけど、二人に手を出してみなよ。...感情が生まれるまで恐怖を刻んであげる...!」
おそらく感情がないであろう絡繰りのメイドに、私達は拘束される。
そのまま、車に詰め込まれ、どこかへ連れて行かれる。
...なるほど、だから人気が少なかったのね。
「(...さて、鬼が出るか蛇が出るか...。)」
どちらにしても、誘拐だなんて真似、許さないけどね...!
「(...どこかの廃工場...ね。)」
最近、ようやく現代の知識に慣れてきたため、連れてこられた場所を理解する。
「...椿さん、葵さんごめんなさい...。」
「...いきなりどうしたの?」
いきなり謝るすずかに、葵がそう聞き返す。
「さっきの人達...もしかしたら...。」
「...知ってるの?すずか?」
どうやら見覚えがあるらしい。すずかの様子が変だった。
「...自動人形...ごめんなさい。また、私の事情で...。」
「すずかの事情って事は...夜の一族?」
「......。」
アリサの問い返しに弱々しく頷くすずか。
...夜の一族って?
「...でも、今回は少し違うと思うの。...今回は、夜の一族と言うより、月村に対して...。」
「...つまり、すずか以外の私達は見せしめになるのかしら?」
事情は詳しく分からない。
だけど、すずかの家系に関する事で誘拐され、私達も巻き込まれたとなると...。
脅しか何かで、私達を見せしめに使うのだろう。
「...はい。...ごめんなさい...。」
「別にいいわよ。厄介事には慣れてるし。」
見渡せば、先程のメイドたちが私達を見張っている。
...ここは、人気がないし、アリサとすずかにばれても...まぁ、なんとかなるわね。
そういう訳で、徐に私と葵は縄抜けで縄を外す。
「「えっ!?」」
「脱出するわよ。こんな所、いつまでもいるつもりはないわ。」
「とりあえず縄を外すね。」
葵が縄を取り外そうとすると、当然のようにこちらに気付いたメイドが襲ってくる。
それを、私は体術でいなし、他のメイドに投げ返す。
「(...随分とまぁ、デタラメね...。...天探女には及ばないけど、ねっ!)」
服(普段は着物じゃなくなった)の中に仕込んでおいた短刀を取り出す。
同時に、メイドたちも刃物のようなモノを腕に取りつけ、斬りかかってくる。
それに短刀をぶつけ、いなす。
「っ、葵!まだ!?」
「もう取れたよ!」
相手の底が知れないため、警戒しつつも葵を呼ぶ。
もう二人の縄は解けたみたいなので、ここを突破しようとする。
「何をやっている!早くそいつを捕まえろ!」
「っ!」
そこで、入り口の方からそんな声が聞こえる。
見れば、中年ほどの男性がそこにいた。
「下がって!」
「...指示を出してるのはあいつだね...。」
指示を受けたメイド達が逃がさないように進路を妨害しだしたので、一端様子見のためにアリサとすずかを下がらせ、護るように私達が立つ。
「...安次郎...おじさん...。」
「...知り合い?」
「...親戚の人です。...確か、月村家の遺産相続で不満を持っていました....。」
遺産相続....まーた、ありがちで厄介な事ね...。
「...と、言う事はなにかしら?このメイド達を使って脅し、すずかを経由して月村家の遺産を無理矢理奪おうとか、そんな感じかしら?」
「っ...よく分かってるじゃないか。」
一切関係なさそうな私達があっさり思惑を見破ったのか、男は少し動揺する。
「お前らは知らないようだが、こいつらはただのメイドではない。自動人形...つまり、命令を忠実に実行する駒だ。」
「...どうやらそのようね。しかも、性能は人間以上と来たわ。」
さっきまでのあの動きは、全てが並の人間じゃあ、歯が立たない程だったわ。
「なんで...なんでいきなりこんな事を!?」
「凡才で容姿も悪い自分のような者は、金を頼みとしなければ幸せを掴むことが出来ないのでね。...だが、そんな苦労をしているのを余所に、のうのうと平和に生きているのを見れば、嫌がらせぐらいしてやりたくてねぇ!」
...あー、つまり、ただの嫉妬って訳ね...。見苦しいわ...。
「それで...それだけで、皆を巻き込んだんですか!?」
「そうさ!君が傍にいたから巻き込まれた!まぁ、自分の不運を呪う事だ!」
普段は大人しそうなすずかが、男に食って掛かるようにそう言う。
...すずかとしては、私達を巻き込んだのを申し訳なく思ってるのね。
「...いやぁ、むしろ幸運だと思うなぁ...。」
「...なに?」
「だってさ....あたし達がいたから、すずかちゃんは助かる訳だしね!」
だが、それを葵が否定するようにそう言う。
...まぁ、その通りね。私達がいれば、あの男の思惑通りにはならないもの。
「はははは!そうか、お前たちはすずかを庇おうと言うのか!」
「...?そうよ。何かおかしいかしら?」
男は笑う。まるで、“助ける相手が何者か分かってない”のを笑うように。
「おかしいとも!なにせ、人ではない者を助けようとしてるのだからな!」
「...へ?」
男の言葉に葵が素っ頓狂な声を上げる。
「何の因果か知らんが、すずかと忍は人間と仲良くしているみたいだが...。せっかくだから教えてやろう。俺達は...月村の一族は夜の一族と言ってな...所謂吸血鬼なのだよ!」
「....へぇ....。」
知らされた真実に、思わず葵がそんな言葉を漏らす。
...すずか達が吸血鬼...ね。
「それがどうしたって言うね。」
「そうね。吸血鬼程度で驚く訳がないわ。」
「なっ....!?」
別段、驚く事もない。私達は、それ以上の存在と巡り合ってきたのだから。
...というか、吸血鬼なら私のすぐ隣にいるし。
「だから、安心していいわよ。すずか、アリサ。」
「へ...えっ?」
「...ちょっと、不安に思っていたでしょう?私達が、貴女の正体を知って軽蔑するのかもしれない。もしそうだったらどうしようってね。」
アリサは以前に知ったようで、すずかと同じ事で少し不安だったらしい。
...でも、それでも大体信じていたのは、私達が優輝の家族だからかしら?
「...というかね?吸血鬼って言うのは....こういう存在なんだよ!!」
「っ...!?」
瞬間、葵が見せびらかすように式姫としてのいつもの姿になる。
マントをはためかせ、赤い瞳を爛々と輝かせ、鋭い犬歯を主張する。
ついでに、私も横で式姫としてのいつもの着物姿になり、隠していた耳と尻尾を出す。
「夜の一族?すずかちゃんには悪いけど、あたし達にとっては、ただの特異な人間だね!」
「予定変更よ。隠しておこうと思ったけど...私達式姫の力、見せてあげる!」
御札に変えていた弓を持ち、霊力の矢を番える。
葵もレイピアをどこからともなく取り出す。
「え、ええっ!?」
「自動人形?いいわ、かつていた妖より強いか、私達が見定めてあげる。」
「壊れたって文句言わないでね!」
そう言うと同時に、驚く二人を置いて私達は駆け出す。
まずは...一番近い奴から!
「“弓技・旋風の矢”!」
「“戦技・三竜斬”!」
元々、感情もない。魂もないのは分かっている。
だから、私達は躊躇なく自動人形を破壊する。
すると、男の表情が分かりやすく崩れた。
「な、なんなんだお前ら!?」
「陰陽師って分かるかしら?」
「あたし達は、その陰陽師に仕えていた、式姫。」
「...ま、つまりは裏の存在よ。」
狼狽える男に適当にそう言い、人形を破壊し続ける。
抵抗してくるけど、霊力を解禁した私達の敵じゃないわ。
「ああ、そう。逃がさないわよ。」
「がっ!?」
慌てて逃げようとした男に御札を投げつける。
痺れさせるような術式を込めていたため、男は痙攣しながら崩れ落ちる。
「ふふふ。あたし、最近...というか、ここ何年も血を吸ってないの。」
「ひっ...!」
人形を全て破壊し、葵は男にレイピアを突きつける。
「だから、ちょっと吸わせてくれる?」
「や、やめろ...!」
うわぁ...分かりやすい脅しね...。葵も楽しんでるわね。あれ。
「...なーんて!あたしが吸うとしたらかやちゃんだよ!」
「あんたはここでもそれか!!」
―――ポン!
...ハッ!?思わず葵を射ってしまったわ...。
まぁ、蝙蝠に変わった事からどうせ偽物だけど...。
「えー?嫌?だったら、優ちゃんとか...。」
「ゆ、優輝もダメよ!」
続けてそう言った葵に、私はそう叫ぶ。
...って、別に、そう言うつもりじゃ...!
「へぇ~....。」
「っ!?~~~っ!!」
ニヤニヤと、葵は笑う。
それだけで私は燃え上がる程顔を赤くするのを、自分でも感じ取った。
「皆!無事か!?」
「すずか!アリサちゃん!」
「椿!葵!」
...と、そこで優輝や恭也達が助けに来た。
「もう終わってるよー。」
「あー、やっぱりか...。...で、犯人は...。」
「...安次郎さん...。」
葵がそう言うと、やっぱりとでも言いたげな表情で優輝は辺りを見回す。
主犯の男を視界に捉えた所ですずかの姉(...よね?)が男の名前を呟く。
「...一般人にこの御札は破れないよね。とりあえず、拘束しますか。」
「それにしても、凄いのね式姫って...。」
優輝が男を縄で縛るのを余所に、すずかの姉が壊れた人形を見回しながらそう言う。
「すずかお嬢様、お怪我はありませんか?」
「アリサお嬢様もです。」
「だ、大丈夫だよノエル...。」
「大丈夫よ鮫島。...ありがとう、助けに来てくれて。」
それぞれの付き人らしきメイドと執事が二人を介抱する。
...まぁ、縄で拘束されてた以外、特になにもないから大丈夫ね。
「...うわぁ...これ、全部凄い作り....魔法技術なしでこれって凄いなぁ...。直接見て改めてそう思ったよ...。」
「...何してるのよ優輝...。」
「ん?あー、何かしら役に立つかなって。」
優輝は拘束し終えた後、人形の残骸を見ていた。
...優輝に天探女を見せたらどんな反応をするかしら?
「...とりあえず、私の家で詳しい事情を聞かせてもらうわ。恭也はこの人を警察に届けておいて頂戴。」
「分かった。」
そう言って、恭也は男を連れてどこかへ行ってしまった。
「忍さん、この残骸どうします?」
「...回収するわ。一応、人目に付かせたくないから。」
「分かりました。じゃあ、車に運んどきますね。」
優輝はすずかの姉...忍にそう聞いてから、魔力を纏わせて操ったのか、残骸を一気に浮かせて持ち運んで行ってしまった。
....便利ね。相変わらず。
「それじゃあ、一度私達の家に行きましょうか。」
「...そうね。互いに色々知っておきたい事があるみたいだし。」
私達は、そう言う事で一度すずかの家へと向かった。
「...さて、一応夜の一族について話しておこうかしら?」
すずかの家に着き、長い長方形の机(会議室とかにある長いテーブルの事)を囲むように椅子に座り、忍がそう言って話を切り出した。
ちなみに、鮫島と呼ばれていた執事は、一度家に無事だと報告しに行ったらしいわ。
「―――なるほどね...。」
一通り、“夜の一族”について聞かされる。
聞いた限りだと、葵とかと同じように思えるけど...。
「...どう考えても実際の吸血鬼の下位互換なのよね...。」
「うーん...あたしも同意見かなぁ...。」
元々突然変異が定着した一族だし、これが妥当なのかしらね?
「あ、あの...二人は一体...。」
「...あぁ、すずかとアリサちゃんには言わなきゃいけないわね。私は優輝君から車の中で一通り聞かせてもらったのだけど。」
「じゃあ、私が説明するわ。」
戸惑うすずかとアリサに、私が説明する事にする。
「まず前提として、私達は陰陽師と言う存在に使役されていた“式姫”と言う存在なの。...陰陽師がどんなのかは大体分かるわね?」
「えっと...御札とか使って霊とかを祓う...。」
「...まぁ、ちょっと違うけど...別にいいわ。今では式姫というより式神として伝えられてるわね。式神も式神で存在していたのだけど、今では一括りになっているわ。」
これらは優輝から聞いたり、パソコンとやらで情報を集めた葵から聞いた話よ。
...私もそれなりに調べたりしてたけどね。
「式姫は幽世にいる存在が、型紙という物を媒体にして顕現しているの。...で、式姫になる存在は色々いるわ。例えば私は草祖草野姫、葵は薔薇姫という吸血鬼よ。」
「他にも座敷童や烏天狗、雪女とかも存在していたね。」
葵が補足として説明してくれる。
「吸血鬼...だから、夜の一族の事を聞いた時...。」
「そう。私達の仲間に同種族がいたら何とも思わないわ。...と言うか、自分自身が人間じゃないのに、どうして人外ってだけで差別するのよ。」
私なんか神様だし。人を差別ってどうかと思うわ。
「私達式姫は、陰陽師に使役されながら妖を討伐する事を生業としてたけど、今では式姫を使役する陰陽師もほとんどいなくなって...というか、陰陽師自体が少なくなっているわね。...そうなってからは、段々と式姫たちは幽世へ還っていったわ。」
「まぁ、あたし達はその生き残りみたいなものだね。」
私達以外に生き残りがいるかは知らない。
...まぁ、ほとんどいないでしょうね...。
「ちなみに、今は優輝に使役されてるわ。優輝は霊力も持ってたから、契約ができたのよ。」
「あたしはちょっと事情があってデバイスになったけどね...。一応、仮初めだけど優ちゃんと契約はしてるよ。普段はかやちゃんのユニゾンデバイスだけど。」
...と、一気に説明したら訳わからなくなるわね。
「...まぁ、簡単に言えば、以前に優輝にお世話になってね。それ以来、優輝の家に住まわせてもらっているって訳。...他の詳しい事は別に覚えなくてもいいわ。」
「そ、そうですか...。」
アリサとすずかは、自分なりに私達から聞かされたことを整理しているようね。
...まだ子供なんだし、気楽に考えればいいのに。
「それにしても...また誘拐されるだなんて...。」
「家の警備はともかく、すずかお嬢様、アリサお嬢様個人の安全性を考慮すべきでしょう。」
「そうよね...。どっちも、外出時に攫われたんだもの。」
攫われた事に対する対策を、忍は考える。
...確かに、また攫われたら危ないものね。
「あ、ならこれとかどうですか?」
「これは...御札?」
優輝が忍に渡したのは、一目で複雑な術式が込められていると分かる御札だった。
「二人がこれを見に付けていれば、危険が迫った時に知らせてくれるんです。」
「知らせるって...誰に?」
「少し手間を掛けますけど、基本的に誰にもです。それも、複数人。」
...なるほど。そんな術式なら複雑になるのも当たり前ね。
「でも、私達魔法もその陰陽師みたいな力もないわよ?」
「大丈夫です。これは所謂第六感的な感じで知らせてくれるので。」
...前言撤回。さっき言った術式なんて少し苦労するだけだわ。
...霊力すら持っていない人でも感知できる術式って...一体どんな術式なのよ!?
「また、掠り傷とか小さい怪我程度は負いづらくなる加護と、致命傷を防いでくれる加護も付けてあります。」
「一体どれだけ術式込めてるのよ!?」
どんなまじない師でも込めるのに丸一日はかかるわよそんな術式!?
「いやぁ、暇な時いっつも術式考えたりしてたから...。」
「だからってこれは...。」
どんなに良く見ても、生粋の陰陽師などではない者が組めるような術式ではなかった。....どれだけ凄いのよ、優輝は...。
「....とても助かるけど...貰っていいのかしら?これほどのもの...。」
「どうぞどうぞ。暇な時に作ったものなので。」
...タダであげるとか、本職の人が聞いたら卒倒するわよ...。
「...ちなみに、椿ちゃん...椿さん?」
「...好きな呼び方でいいわ。見た目と相反しているのは自覚してるし。」
「じゃあ椿ちゃんで...貴女はさっきとても驚いていたけど、これの価値って実際どれほどのものなの?...とてもタダで貰えそうにないありがたさなんだけど...。」
...言っていいかしら?...いえ、言っておいた方がいいわね...。
「...国が挙って欲しがる程の代物よ。....そうね、一枚だけで小さな家一つは買えるんじゃないかしら?少なくとも、金持ちになれる程の値打ちよ。」
「....本当に対価なしで貰っていいのかしら?」
それには激しく同意だわ。忍。
全く、どうして優輝はこんなとんでもない物をいとも簡単に...。
「あ、じゃあさっきの残骸解析させてください。」
「...それっぽっちでいいの?...いえ、さすがに口外はしないでね?」
「ええ、それだけでいいです。もちろん口外もしません。」
それならと、忍は承諾し、優輝はそれらが保管されている部屋に向かった。
優輝が去った所で、忍と私達は溜め息を吐く。
「...優輝君って、凄まじいわね...。」
「最近、凄さに磨きを掛けてきたのよね....。つくづく驚かされるわ...。」
既に、陰陽師じゃないのにそこらの陰陽師以上に霊力を扱えてるわね...。
というか、術式を編む事に関しては、既に私達と同等じゃないかしら?
「...あ、そういえば言い忘れていたのだけど...。」
「あなた達の一族に関しては口外しない...でしょ?」
「分かっていたのね...。」
「私達も似たようなものなんだから当然よ。」
いつだって世間は例外的な存在を忌避するわ。
それが分かっているから、私達の存在は秘匿するべきなのよね。
「困った事があったらお互い助け合いましょう。」
「...そうね。こちらとしても、助かるわ。」
私的に、この街はいい街だと思っているからね。
忍...月村家とも良好な関係を取っていきたいわ。
...別に、優輝がいるからこの街を好んでいる訳じゃないわよ!?
「あなた達も、今日は災難だったわね。」
「い、いえ...その、ありがとうございました。」
「お二人がいなかったら、私達...。」
...あー、えっと...二人共ちょっと態度が遠慮してるわね...。
「もっと気楽な態度でいいわよ。それに、お礼を言われるまでもないわ。私はいつだって、人の子は守るべきだと思っているもの。」
「あたしも、子供は好きだからねー。」
私も葵も、基本的に子供好きよ。
だから、かつての時も士郎を助けたのよね。
「それじゃあ、優輝が戻ってきたら私達は帰るわ。」
「ええ。今日はありがとうね。優輝君が戻ってくるまで、好きにしてて頂戴。」
そう言われたので、せっかくだからとアリサやすずかと雑談する。
しばらくして、優輝が帰ってきたのでそのまま帰らせてもらった。
優輝も満足そうにしてたし、無事に事が終わってよかったわね。
後書き
天探女…かくりよの門の傾奇者(所謂斧系)の最上級亜種激レアの式姫。絡繰りで動いているっぽい。
...とらハシリーズを持ってないので、安次郎の口調を知りません。
もう、オリキャラと捉えてください。
アリサとすずかに渡された御札の効果は、優輝が持っていた虫の知らせから優輝が参考にしました。
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