破壊ノ魔王
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一章
27
試験内容をざっと説明すると
1、安全性
どれだけ安定した運転ができるかどうか
無茶な試験管の指示を完璧にこなせるかどうか
2、速度
一定速度を保てるか
限界速度をだせるか
急な速度変化をつけることができるか
3、技術力
どれだけ飛空挺を操るのがうまいか
こんなかんじの試験ならしくて、試験管の指示通りに運転するのとレースと技術を見せびらかすのがある。どんな順番になるかは毎年違うらしくて、それぞれ分野別の順位もでるみたいだ。といっても、試験の合格はあくまで総合点。1位と3位ふたつなら、全部2位の方が勝る……ということ
レースやら技術やら、そんな派手なものあるから、会場はお祭り騒ぎ。出店まででてるし。観客もすごい数だ
「まぁぼくはやんないけどね」
「できねぇの間違いだろ。クソガキ」
そうです。できませんとも
あとはゼロにお任せ。できることなら祭りみたいな感じだから……なんかちょっと遊びたいくらいだよ
「まぁ見て勉強しろよ、お前も。操縦できて損はねぇし、なんだかんだで軍の飛空挺以外でアレが飛ぶのは見たことねぇだろ?」
「うん。これでも結構楽しみにしてるよ」
というか、ゼロが飛空挺って意外だよなー。翼があるから飛ぶ乗り物なんていらないだろうに……。こんだけ飄々としてるんだから下手くそなわけないしね
「種目順は?」
「最初に技術で最後が速度だよ」
「試験の順番は?」
「全部最後」
了解、とだけ言ってゼロは空を見上げた。すると、遠くからエンジン音が響き、すごい早さで空を切り裂いていった
飛空挺
すごい……こんなにかっこいいんだ
「…………へったくそ」
「え"。でも回転とか……ほら直滑降だよ!すごいじゃん!!周りもすごい盛り上がってる!」
「回転させるだけなら誰でもできるんだよ。あんなブレまくってスピードもおとして……直滑降っつーけど真下じゃねぇし」
…………ハイレベル
「まぁお前はテキトーに楽しんでろ。少し歩いてくる」
「し、試験までには来てよ!」
「当たり前だろ」
繰り広げられる技術のオンパレードは、ぼくにはすごいとしか言いようがなくて、下手くそと言ったゼロのことがよくわからなくなった
いったいどれだけ上手いんだろ……
レベル落ちたな、ほんと
昔はあんな下手くそ一人もいなかった。ギリギリのところで競い合うようなハイレベルな戦いだったのに……これじゃただの飛空挺祭りだ。まぁ俺としてはラッキーといえばラッキーなんだがな。あのヴァンみたいな飛び抜けた天才がいても困るし
「………………お?」
あの目立つ赤。右腕だけをさらした特徴な格好。ほう?なんの偶然か……それとも俺をおってきたのか?つーことは俺のスリに気づいたってことか
…………へぇ?
「奇遇だな、リオ・ アカツキ」
俺はスタスタと人が離れてできた輪のもとへ進んだ。小声で呼んだつもりだったが、女はばっとこちらを振り向いて迷うことなく前進
「お、……おまえ!!」
「そんな目くじらたててどうした?祭りを楽しんでるようには見えねぇけど?」
「………………必要なものを、無くしたんだ」
「へぇ……少し歩くか。人が少ないところの方がいいだろ?」
……ククク。それにしても、無くした、ねぇ
的確な言い方だな
「それでさがしてんのか?」
「見つからないだけで、無くなってはないはずだから……取り戻そうともがいてるところだよ」
「盗られたのか?」
「さぁ……手元から無くなっているのは確か。なにか心当たりでもある?ルーエンさん?」
………ククク。ほんとに面白い
墜ち人っつーのはこういう生き物なのか?
「何で必要なんだよ」
「試験。アレの受験者なんだよ、私」
アレ……
アレねぇ
空のアレか……
「墜ち人が飛空挺!?」
「なんか問題ある?」
……いや、ねぇ。墜ち人に参加資格がないとは一言も書かれてらない。それは確かにねぇけど、よくもまぁここまでこれたもんだ。素直に感心する
「そんなにアレがほしいかよ」
飛び回る五月蝿い蝿が
俺にとって飛空挺なんざ敵でしかねぇからな。現在のところ
「……必要なんだ。許可証。もらえないなら賊になるしかない」
欲しいのは空、か
まぁさすがに飛空挺がほしくても、軍人にはなりたくねぇわな。
「目的でもあんのか」
「ある。そのために出てきた」
女は空を見上げ、ため息混じりにいった
「あの監獄を消す」
「…………あ?」
意味わからねぇ
せっかくでれた地獄をわざわざ危険おかして消しにいくってのか?ひとつの罪も犯すわけにはいかない立場がすることじゃねぇ
「…………あそこは地獄だったけど、あれが私の日常で普通だった。出れたのは……ただ、運が良かっただけで、私は助けてもらってばかりだった」
「で?運の悪い次のだれかさんのために壊したいと?」
「まさか。他人なんてどうでもいい。私は助けてくれたあいつらに監獄の廃墟っていう墓をたててやりたいだけ」
………………ククク
なんとまぁ勝手なやつ
厳しい環境で生きてきたらしいな
他人を気にする余裕もないってか
「……しまった。こんなこと話したら殺されるね」
「そういう人間にみえるか?俺は」
「私は人を見る目はないけど、殺す力があるのはわかるよ」
……しょうがねぇな
警戒はしてても敵意はなし
背中見せても殺意もなし
話すことに偽りもなし、か
「……貸しだ。リオ」
俺は入国証を手渡した
「コレ、貸してやるから存分に飛んでこい。あれみたいな情けない飛空挺を見せんなよ」
リオは黙って受け取り、それを胸につける。ルーエンの名は、また俺のところに戻ってきた
「ありがとう。ひとつ、借り。必ず返すから」
赤い髪は美しく翻り、振り返ることなく走り去った。
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