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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十四話 お墓参りその六

 奇麗にしてお線香をあげてだ、手を合わせてだった。
 親父はお墓にいるお祖父ちゃんとお祖母ちゃんにだ、笑顔で言った。
「そっちで元気にやってるか?二人共」
「そのことだよね」
「ああ、元気でやってたらな」
 僕にもだ、親父は言って来た。
「それでいいんだけれどな」
「そうだよな、まあ極楽には行ってるよな」
「僕の聞く限りいい人達だったんだよね」
「俺とは違ってな」
 とても親父らしい返事だった。
「真面目でな、このこともいつも言ってるな」
「確かにね」
「長生きすべきだったんだよ」
「もっと?」
「どっちも揃ってぽっくりと」
 親父はお墓を見ながら残念そうに言った。
「ったく、どうしたものだよ」
「僕が生まれる前に」
「ああ、人間ってのはわからないな」
「何時死ぬか」
「死ぬ前まで二人共元気だったんだよ」
「それがだったんだね」
「急にな」
 お祖父ちゃんもお祖母ちゃんもというのだ。
「ぽっくりとな」
「急死って聞いてるけれど」
「実際にそうだったんだよ」
 本当に急死だったというのだ。
「元気だったのにな」
「二人共すぐに」
「苦しまずにな」
「まだ苦しまなかっただけましだよね」
「それはな、けれどな」 
 それでもという口調だった。
「俺は何の心構えもしてなかったんだよ」
「じゃあいきなり死なれて」
「寂しいなんてものじゃなかったぜ」
「そうだったんだね」
「この前まで元気だった親がいなくなるんだ」
 それも二人共というのだ。
「こんな寂しいことはないさ」
「何かわかるよ」
「御前もわかるか」
「僕も親父急に転勤になったから」
 親父の方を見て言った。
「本当にね」
「おいおい、俺は生きてるだろ」
「生きてるけれど」
 本当にそれでもだ。
「急にイタリアに行ったからね」
「ははは、そういえばそうだったな」
「家も引っ越したし」
「まさに急展開だったな」
「その急なことは血じゃないかな」 
 僕は首を傾げさせて言った。
「お祖父ちゃんお祖母ちゃんに親父にね」
「そうかもな」
「ひいお祖父ちゃん達はどうか知らないけれど」
「祖父様か」
「どんな人だったの?」
「柔道の達人だったらしいな」
 そのひいお祖父ちゃんのこともだ、親父は僕に話した。僕はひいお祖父ちゃんのこともあまりよく知らない。
「何でもな」
「柔道のなんだ」
「昔武専にいた位のな」
「武専って確か」
「武道専門学校な」 
 その正式名称をだ、親父は言った。
「日本中から剣道や柔道の本当に強い人を集めた学校だったんだよ」
「そうだったよね」
「少数精鋭でそれぞれ二十人だけ集めてたんだよ」
「二十人って」
「凄いだろ」
「本当に少ないね」 
 日本全国の剣道や柔道をやっている人から二十人だけと聞くとだ、僕もその凄さがわかった。 
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