八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十四話 お墓参りその一
第七十四話 お墓参り
僕はこの日実際にお墓参りに向かった、八条荘を出るとだった。
もうそこに親父がいた、昨日会った時とはまた違った薄い麻の生地の黒いスーツを着てそこに立っていた。
「よし、行くか」
「迎えに来たんだ」
「そうさ」
明るく笑ってだ、親父は僕に答えた。
「こうした時親はな」
「子供を迎えに来てなんだ」
「連れて行くものだと思うからな」
「それでなんだね」
「五分位前に来たぜ」
こう笑って言うのだった、僕に。
「まあそれ位待つと思ってたさ」
「五分は」
「約束の時間から考えてな」
「約束の場所で待ち合わせたのに」
「気が変わったんだよ」
相変わらず明るく笑っての返事だった。
「それで迎えに来たんだよ」
「そうなんだ」
「じゃあ行くか」
「うん、何か今日もいきなりだね」
「何度も言うが俺はいきなりが好きだからな」
本当に親父らしい言葉だった。
「こうして来たんだよ」
「約束を破るのはよくないよ」
「破っていい約束と悪い約束はあるんだよ」
「約束でも、だね」
「ああ、こうした時は破っていいんだよ」
「人を驚かせる為なら?」
「予定を早めたりその方が事態がよくなる場合はな」
こうした場合はというのだ。
「破っていいんだよ」
「そうなんだ」
「ただしな、見極めは大事だからな」
それはともだ、親父は僕に話した。
「破っていい約束かそうでないかはな」
「どっちかはか」
「ああ、大事だ」
親父はこのことは笑いながらもだ、僕に真剣に話した。
「破って悪い約束もあるんだよ」
「悪い約束っていうと」
「裏切ったりな、あと自分のことを最優先させたりな」
「そうした約束はだね」
「絶対に破ったら駄目だ」
「自分の最優先だね」
「友達がピンチになって自分だけ逃げるな」
それは絶対にというのだ。
「そうしたことはするなってことだ」
「破って悪い約束だね」
「そこは弁えてくれよ」
「わかったよ、それじゃあ」
「またな」
こう話してだ、そしてだった。
僕達は一緒にだ、お墓参りに出た。親父は僕に車まで案内した。その車はというと。
「あれっ、八条自動車の」
「ああ、俺が帰って来たって聞いてな」
「それでなんだ」
「総帥さんが貸してくれたんだよ」
「そうなんだ」
「一日だけでもいいから使えってな」
「総帥さんらしいね」
僕は親父の話を聞いてこう言った、その青くカラーリングされたスポーツカーを見て。デザインは流線型でかなり早く動けそうだ。
「こうしたものまで貸してくれるとか」
「そうだよな、あの人親切だよ」
「本当にね」
「ガミガミ言うけれどな」
「親父にだけだよ、僕にはね」
特にだ、本当に。
「言わないけれどね」
「御前はいい子だからだよ」
親父は僕に笑って言った。
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