英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第132話
~ル=ロックル訓練所~
「うわ……話には聞いていたけどさすがにこれは驚かされるわね。」
「これが”異界”ってやつか……”裏”の四輪の塔の空間に似ているな……」
次の”星層”へと続く転位陣の前まで仲間達と共に来たエステルとルークは周囲の様子を見回して驚いていた。
「………で、こっちの魔法陣が次の”星層”への入口ってわけね。」
「はい………”第五星層”に相当するかと。”影の王”曰く『本格的な遊戯盤』との事です。」
「うーん、その言葉から聞く限りかなりハードな場所になりそうね。覚悟して行くとしますか。」
「ああ、それとどんなやつが出てきてもいいように心構えもしておかないとな。」
「………ええ……………………」
エステルとルークの言葉に頷いたリースは黙り込んだままエステルを見つめた。
「ん?リースさん、どうしたの?」
「………エステルさん。どうしてわざわざ同行を申し出たのですか?それにルークさんも何故エステルさんの提案に応じたのですか?」
「えっ………」
「ハ……?」
「この状況で、あなた達があえて同行する理由は無い筈。なのにあなた達の瞳は決意と確信、そして希望に満ちています。理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「そ、そんな大層な理由があるわけじゃないんだけど………うーん、そうね………あえて言うならあたしは恩返しってところかな?」
「………恩返し?」
エステルの答えの意味がわからなかったリースは戸惑いの表情をした。
「聞いてるかもしれないけどあたし、ケビンさんにはずいぶんお世話になったんだ。色んなところで助けてもらったし、何よりもヨシュアの抱えていた問題を解決する手助けをしてくれたし。そのケビンさんが大変な今、出来る事って何かなって思って………それでリースさんの手伝いが出来たらなって思ったの。」
「うふふ、エステルらしいわね。」
「で、ですが………どうしてケビンへの恩返しが私の手伝いに繋がるのでしょう?」
エステルの答えを聞いたレンが微笑んでいる中リースは困惑の表情で訊ねた。
「え、だって………リースさんって、ケビンさんの大切な人なんでしょう?」
「……………え”。」
そしてエステルの推測を聞いたリースは呆けた後、普段は出さないような呆けた声を出した。
「あ、別に恋人とか言ってるわけじゃなくて…………話を聞いてて、家族なんだなって感じがしたんだけど………違った?」
「………勘違いだと思います。私とケビンは、5年近くもずっと会っていませんでした。今回の件で久しぶりに顔を合わせたくらいで………もう………縁が切れかけているのでしょう。」
エステルの推測を聞いたリースは表情をわずかに暗くして答えた後、寂しげな笑みを浮かべた。
「あはは、それは無いって。」
「え……………」
「『縁は深まれば絆となり絆は決して切れることはない。遠く離れようと、立場を違えようと何らかの形で存在し続ける。』―――とある調子のいいオジサンの言葉なんだけどね。でも割と、真実をついた言葉じゃないかと思うんだ。」
「………………………………」
「ケビンさん、何の迷いもなくリースさんに後を託してたじゃない?それにリースさんもケビンさんがどうするつもりなのかわかっているような口ぶりだったから。うん、それってやっぱり絆だと思うな。」
「………………………………よく、わかりません。ですが、エステルさんが同行する理由は納得しました。………ちなみにルークさんはどのような理由なのですか?」
「あー……ティア達から聞いているかもしれねぇけど昔の俺って、ホント最低な野郎でさ………それで自分がやる事が正しい事だと誰に相談する事もなく判断して取り返しのつかない事をしちまって、ティア達に失望されたんだけど………それでもティア達は俺を見捨てることなく、昔の俺と決別して変わる努力をする俺に協力し続けてくれたんだ。だからティア達から今まで受けた恩を返す意味でも、エステルの提案はちょうどよかったんだ。」
「ルーク………」
「ご主人様はやっぱり優しいですの♪」
「まあ、状況が状況でしたからねぇ。なし崩し的にそうなったようなものですけどね。」
リースの質問に気まずそうな表情で答えた後真剣な表情になったルークの答えを聞いたティアは微笑み、ミュウは嬉しそうな表情でルークを見つめ、ジェイドは若干呆れた表情でルークを見つめていた。
「うっせ。ったく、嫌味な所も全然変わっていねぇな……」
ジェイドの答えを聞いたルークはジト目でジェイドを睨んだ後疲れた表情で溜息を吐いた。
「なるほど………2人とも改めて………どうかよろしくお願いします。」
一方エステルとルークの理由を聞いて納得したリースは頷いた後、微笑んで2人を見つめた。
「ああ。」
「あはは………うん、こちらこそ!………あ。そういえば、ルーク兄。ルーク兄の事を知って一つ疑問に思った事があるんだけど、いいかな?」
「ん、何だ?」
「ルーク兄って本当は何歳なの??ティアさん達の話だとルーク兄は”レプリカ”?とかいう存在で生み出されて7年しか経っていないって言っていたけど。」
「いい”っ!?
不思議そうな表情で首を傾げているエステルの疑問を聞いたルークは表情を引き攣らせ
「確か………アッシュが帰って来たのは二人のお墓の前で行われた成人の儀式の日で、あれから2年経ったから……22歳のはずよ。」
「そ、そうだぜ!実際の年齢は22歳でシェラザード達より若いんだぜ、ハハ……」
ティアの説明に焦った表情で頷いた後乾いた声で笑っていた。
「まあ、実際の生きた年月で換算したら12歳前後になりますけどねぇ。」
「え”。」
「あら。うふふ、それじゃあお兄様はレンと同い年って事になるわね♪」
ジェイドの答えを聞いたエステルは表情を引き攣らせ、レンは目を丸くした後小悪魔な笑みを浮かべてルークを見つめ
「だ~っ!ゼムリア大陸では10年以上生きているから、実際は最低でも18歳にはなっているっつーの!その証拠にあれから身長も伸びたんだからな!?」
ルークは焦った表情で声を上げた後ジェイドを睨んで指摘した。
「むしろ身長が伸びているからこそ、貴方が幼い証拠ですよ?しかも彼女達の話によりますと彼女達の世界の1年は365日ですから、その2倍以上である765日を1年とする私達の世界で換算すれば貴方は12歳前後という答えになる上、身長が伸びているという事は貴方はまだ成長期―――つまり人間で言えばまだ大人ではない事がわからないのですか?」
「うぐっ………!」
「ご主人様、身長が伸びたんですの?よかったですの♪ご主人様、身長が低い事をずっと気にしていましたから。」
「余計な事を言うんじゃねぇ、ブタザルが!」
ジェイドに図星を突かれたルークは唸り声を上げたが嬉しそうに自分を見つめて口を開いたミュウの言葉を聞くとミュウを睨んだ。
(アハハ、今のルーク兄、凄く子供っぽいわね。)
(クスクス、実際レンと同い年なんだから子供っぽい所があってもおかしくないわよ♪)
「聞こえているぞ………!」
自分を微笑ましそうに見つめて小声で会話をするエステルとレンの言葉が聞こえていたルークは顔に青筋を立てて身体を震わせていた。
「フフ……………それともう一つ。エステルさん自身のことで少々、お聞きしたいことが。」
「あたしのこと?うん、良い機会だし何だって聞いて欲しいかな。」
「それでは………『お人好し』ってよく言われませんか?」
「へっ……」
リースの指摘を聞いたエステルは呆け
「はは……」
「クスクス……」
「ふふっ、そうね。私は彼女と接した時間は短いけど、リースに申し出た彼女の理由を知った時そう思ったわ。」
「僕もそう思いましたの♪」
「逆に言えばすぐ人に騙されるチョロ甘な性格ですけどねぇ。」
「人を騙す事が得意な奴が言うと説得力があるよな。」
ヨシュア達がエステルを微笑ましく見つめている中、呆れ半分の様子で答えたジェイドをルークはジト目で睨んだ。
「ちょ、ちょっと!なんでそこで笑ったり納得しているわけ!?というかあたしのどこがチョロ甘なのよ!?」
一方エステルはジト目で仲間達を睨んだ。
「………なるほど。聞くまでもありませんでしたか。」
「も、もう………それで納得しないでよ。まあいいや、早く中に入って”第五星層”に行きましょ!」
「ええ、了解しました。」
そしてリース達は転位陣の中に入って、転位した。
~第五星層・光迷宮~
「これって………」
「やはり………異空間のようですね。」
第五星層に到着し、周囲の様子を見たエステルは驚き、リースは冷静な様子で判断した。
「大理石で作られた次元の狭間にある迷宮……そんな所でしょうか。」
「見た感じ、迷宮の構造も結構複雑だな。」
「気合を入れて挑む必要がありそうね。」
「ええ……………この気配は………!」
ルークとエステルの意見にリースが頷いたその時何かの気配を感じたリースは表情を引き締めた。
「え……」
リースの言葉にエステルが呆けたその時リース達の目の前に妖しげな光陣が現れた!
「なっ………!?」
「来たわね………!」
「!後ろからも来ます!」
光陣の登場にエステルが驚いている中ティアは厳しい表情で声を上げると光陣から今まで見た事のない悪魔が現れ、何かの気配を感じたジェイドが後ろに振り向いて叫ぶと蜘蛛のような姿をした魔物が空から降って来て、リース達を包囲した!
「うふふ、早速歓迎されたわね。」
「みゅ~……囲まれてしまったですの。」
「チッ、雑魚の癖に考えているじゃねぇか。」
レンは不敵な笑みを浮かべて武器を構え、ミュウは不安そうな表情で呟き、舌打ちをしたルークは周囲を警戒しながら武器を構えた。
「夢魔と夢蜘蛛……………人の夢を喰い荒らし、悪夢を運んでくる者とも………!」
「なんかいきなり手強いのが現れたみたいね………まあいいわ。遠慮なくぶっ飛ばしてあげる!」
そしてリース達は戦闘を開始し、協力して魔物達を撃破した!
「………何とか、退けましたか。」
「はあ、さすがに一筋縄じゃいかなかったわね。」
「今のが話に出てた『悪魔』って奴等か?」
戦闘が終了し、仲間達と共に武器を収めたリースとエステルは安堵の溜息を吐き、ルークは尋ねた。
「ええ、その亜種である『夢魔』という存在です。伝承通り、精神攻撃に長けた者達のようですね。」
「やっかいな連中ね………となると、それなりの準備をした方がいいのかも。」
「そうですね……装備などを確認した上で慎重に進みましょう。」
その後リース達がしばらく探索を続けると封印石を見つけた。
「これは………」
「へえ………やたらと綺麗な宝石ね。七耀石か何かかしら。」
「アニスが見たら、自分の物にして元の世界に戻った時に売っぱらうんじゃねぇか?」
「まあ、アニスですからねぇ。それが封印石でなければ、本当に実行するでしょうねぇ。」
「ハア……アニスの性格を考えたら間違いなくそうするでしょうね。」
「はいですの。」
封印石を見つけたリースが目を丸くしている中、エステルは興味ありげな表情で封印石を見つめ、ルークの推測を聞いたジェイドは同意し、ティアは呆れた表情で溜息を吐き、ティアの言葉にミュウは頷いた。
「へ……じゃあ、これにあたし達が封じられていたの?」
「ええ、間違いありません。どなたか心当たりは?」
「う、うーん………後まだ解放されていない人で心当たりがあるのはソフィやリオン、レイスさんやレーヴェ、後はイオンさんとアリエッタさんくらいだけど……」
「”影の王”の話だと異世界出身の二人はこの迷宮の最後で手に入れるみたいだから、レイスお兄さん達と考えるのが妥当だけど……もしレイスお兄さん達も”異界の英傑達”に入るのだったら違うからレーヴェになるわね。お兄様達の方は心当たりはあるかしら?」
リースの質問にエステルと共に考え込んでいたレンはルーク達に視線を向け
「フム……可能性として考えられるとすればアッシュですね。」
「そうですね……さすがに兄さんや教官はあり得ないと思いますし。」
「うげっ……ナタリアには悪いけど正直、あいつとはあんまり会いたくないんだよな~……」
「みゅ~……もしアッシュさんだったら、ご主人様と喧嘩になる気がしますの……」
ジェイドの推測にティアは頷き、それを聞いたルークは嫌そうな表情をし、ミュウは不安そうな表情をしていた。
「………いずれにしても一度”拠点”に戻った方がよさそうですね。」
その後リース達は封印石を解放する為に庭園に戻った―――――
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