英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第131話
~隠者の庭園~
「そっか………そんな事があったんだ。しかしまあ、聞けば聞くほど信じられない事ばかりって感じね。」
「ああ……特に世界が違うティア達まで巻き込まれているとか、ありえねえだろ……それもオールドラントの平和を取り戻す為に世界中を回って師匠を倒した時のメンバーが全員揃うなんて偶然にしちゃ、できすぎだろ……」
「……間違いなく何者かによる作為的なものであるだろうな。」
エステルの感想に疲れた表情で頷いたルークの言葉にバダックは重々しい様子を纏って答えた。
「ええ……ただ、見えてきたことも結構あると思います。この場所が”影の国”という不思議な法則によって構成された世界である事………そして僕たちが何らかの理由で選ばれて取り込まれたということ。」
「そして、それを踏まえた上で改めて疑問が整理できると言える。疑問その①。”影の王”及び”黒騎士”の正体は?疑問その②。”方石”及び”女性の霊”の正体は?疑問その③。”影の国”の成り立ちと真相は?」
「た、確かに………」
「疑問はつきませんが………大別するとその3つに整理できそうな気がしますね。」
「ふむ、俺達の世界―――ゼムリア大陸にはいないはずのあり得ない魔物が徘徊している理由なんかは3番目に入るってことか。」
ヨシュアとオリビエの話を聞いたティータとクローゼ、ジンはそれぞれ頷いた。
「なるほど、そう言われると色々と見えてきたかも。あれ、でも………ケビンさんが気絶したことはどう関係してくるのかな?聞いた限りだと、巨大な悪魔とやり合った時のことが原因みたいな気がするけど………」
「俺達を拘束していたあの結界を破った力……そしてその時に現れた紅い紋様みたいな光か……」
「あれは一体何だったのかしら……?中将は心当たりはありますか?」
エステルの疑問を聞いたアガットは考え込み、ティアはジェイドに訊ねた。
「そう言われましてもその場面を見ていませんので何とも言えませんねぇ。可能性で考えられるとすればルークの”超振動”のような何らかの特殊な能力によるものでしょうね。」
「ふむ、さすがにそれはボクも見当が付かないね。七耀教会に伝わっている法術あたりかもしれないが…………」
ジェイドの後に答えたオリビエは表情を引き締めた。
「……多分ですけど、あの力は”聖痕”だと思います。」
「え………!?」
「それって………ヨシュアの肩に出ていた!?」
するとその時カリンが自身の推測を口にし、それを聞いたエステルは驚き、ジョゼットは真剣な表情になった。
「うん………あれは、教授が僕を制御するために深層意識に埋め込んだイメージが肉体に現れていたものだったんだ。ケビンさんのあれも同じ………ただし僕に刻まれたものよりも遥かに強力なものじゃないかと思う。」
「………よく気付きましたね。」
ジョゼットの疑問にヨシュアが答えたその時今までケビンを看病していたリースがエステル達に近づいてきた。
「リースさん………」
「その………ケビンさんの調子はどう?」
「ええ………小康状態といったところです。」
「そっか………」
「やれやれ…………ヒヤヒヤさせてくれるわね。」
ケビンの状況を知ったエステルとシェラザードは安堵の溜息を吐いた。
「しかしリースさん………精神に負荷ということはやはり………」
「ええ………お察しの通り”聖痕”です。ただし………あなたに刻まれていたものと違い、彼のそれは”原型”と言えるもの。”守護騎士”にのみ顕れると言われる魂の刻印です。」
ヨシュアの言葉を続けるようにリースは真剣な表情で答えた。
「”守護騎士”………?確か”星杯騎士団”を統率する十二名の特別な騎士達で何か特別な力を持っていて、イオンさんもその一人だと聞いているけど……って、まさかケビンさんもその”守護騎士”って存在なの!?」
「はい。そしてその異能とは各々の”聖痕”の力によるもの。通常では考えられないような肉体の強化や高度な法術の使用を可能にしてくれる力の源泉です。ケビンは、その”聖痕”を持つ十二名の”守護騎士”の一人………”第五位”の位階を持つ人間です。」
ケビンの正体を察して驚いたエステルにリースは静かな表情で答えた。
「それでは、ケビンさんやイオンさんもヨシュアさんと同じように何らかの処置を受けて………?」
「いえ、本来の”聖痕”は意図して埋め込まれるといったものではありません。あくまで自然発生的に顕れるものだとされています。そして”守護騎士”の数は歴史を通じて常に十二名―――どの時代にも必ず、”聖痕”を宿す者がどこかに現れて”守護騎士”になると言われています。」
「な、なんだか不思議な話ね………それじゃあヨシュアにあった”聖痕”っていうのは………」
「あれは多分………本来の”聖痕”を疑似的に再現したものじゃないかと思う。………かつてワイスマンは七耀教会の人間だったからね。」
「あ、そんなこと言ってたわね。」
ヨシュアの話を聞いたエステルは”グロリアス”でのワイスマンの話を思い出した。
「………背信者ワイスマンは”星杯騎士団”の上位にあたる”封聖省”に所属する司教でした。彼は司教職にある時から”身喰らう蛇”に通じており、様々な秘蹟を盗み出したようです。守護騎士の”聖痕”に関する膨大な文献と研究もその一つ………彼はそれらを参考に意図的に”超人”を造り出す技術を結社で完成させたと推測されています。」
「やはり………そうでしたか。」
「……本来の”聖痕”がどういうものであるのかは何となくわかったが………しかし、どうしてケビン神父はそれで倒れる事になったんだ?イオン神父も戦闘の時に極稀に使っていたが、倒れるって事態にまでは陥った事がないぜ?」
「そう言えばそうですよね……?私の時も多少疲れている様子を見せていただけでしたし……」
リースの説明にヨシュアが納得している中ある事を疑問に思ったフレンはリースに訊ね、フレンの疑問にカリンは戸惑いの表情で頷き
「え……ちょっと待って。そんな凄い力を使っているのに、イオン様、今まで倒れた事がなかったの!?」
「……?それはどういう事かしら?」
フレンの質問を聞いたアニスの質問にアーシアは不思議そうな表情で訊ねた。
「だって、病弱のイオン様がそんな力を使ったら間違いなく倒れるもの……」
「そう言えばお前達はイオンの状況は知らなかったな……イオンの話によると、あいつ、目覚めたらシンクの記憶もあったって話だ。しかもシンクと同等の体術が扱えるし、体力もシンクと同等になっていたから以前と違って健康体そのものだから譜術どころかダアト式譜術もリスク無しで扱っていたぜ。」
辛そうな表情になったアニスの話を聞いたルークは自分の知る情報を答え
「ハアッ!?ちょっと待て!それって……!」
「―――間違いなく大爆発現象でしょうね。しかし……記憶だけでなく、体力や譜術力、更にはシンクが習得していた体術まで吸収……ですか。」
ルークの話を聞いたガイは驚き、ジェイドは真剣な表情で答えた後考え込み
「中将、大爆発現象には体力や譜術力等も吸収するのですか?」
「正直わかりません。大爆発現象は大爆発に至るまでの発生時期や発生条件等には不確定要素が多いですからね。しかもレプリカ同士の大爆発現象すらもありえないケースです。」
「イオン様のレプリカが7人も作られた事によって起こった現象……と言う事でしょうね。」
ナタリアの疑問にジェイドは静かな表情で答え、ティアは重々しい様子を纏って呟き
「ご主人様のレプリカが他にもいなくてよかったですの~……」
「確かにそうだよね~。ルークやアッシュのレプリカが何人もいるなんて事を考えたらゾッとするよね~?」
「確かにいろんな意味で考えたくもありませんねぇ?」
「……それはどういう意味で言ってんだよ……?」
ミュウの言葉に意味ありげな笑みを浮かべて同意したアニスと呆れ半分の様子でアニスの意見に頷いたジェイドをルークは顔に青筋を立てて睨み、その様子を見ていたリース達は冷や汗をかいた。
「え、えっと……あたし達はよくわからないんだけど……大爆発現象って何??」
するとその時エステルが苦笑しながらルーク達に訊ねた。
「ガイ、説明を。」
「また俺かよ!?えっと――――」
そしてジェイドに促されたガイによってリース達は大爆発現象についての説明を受けた。
「―――要はレプリカと被験者が一つになるって事ね。話を聞く限り正直イオンお兄さんに起こった出来事は奇蹟ね。」
「レ、レンちゃん、今の話を聞いて全部理解できたんだ……わたしは半分ぐらいしか理解できなかったよ……」
「いや、それを言ったらあたし達なんてチンプンカンプンだから。」
「何と言うか……改めてルーク先輩達の世界の技術は凄まじいって事を思い知らされますね。」
「宰相殿が知れば間違いなく利用して、宰相殿や宰相殿子飼いの”子供達”のレプリカとか作りそうだねぇ。もしそうなったらボク達にとってもそうだけど、”貴族派”にとってもお手上げな事になるだろうねぇ。」
「……洒落になっていないぞ。」
説明を聞き終えて納得した様子で呟いたレンをティータは信じられない表情で見つめ、エステルは疲れた表情で溜息を吐き、アネラスは苦笑し、疲れた表情で呟いたオリビエにミュラー少佐は複雑そうな表情で指摘した。
「話がなんだかどんどんそれているようだからケビン神父の事についての話に戻すけど……同じ”聖痕”を持つイオン神父は”聖痕”の力を扱っても倒れなかったのに、ケビン神父は倒れた。この違いについて、何かわかる事はあるかしら?」
「………それは……………理由はわかりませんがケビンは”聖痕”の力を滅多には解放しないそうです。唯一、それを解放するのは”外法”を狩る時のみ………”後戻りできない”大罪人を処分する時だけと聞いています。」
「しょ、処分………」
「な、なんか物騒な話だね………」
シェラザード質問に辛そうな表情で答えたリースの答えを聞いたティータは信じられない表情をし、ジョゼットは真剣な表情で呟き
「ちょ、ちょっと待ってください!今”外法”を”狩る”って言っていましたけど……まさかケビン神父はその”外法”という存在を殺し続けていたのですか!?」
ある事に気づいたロイドは信じられない表情でリースに訊ねた。
「―――”星杯騎士団”には”星杯騎士の心得”というものがあってね。その中には『外法、滅すべし』という心得もあって、七耀教会が”外法認定”した者を”狩る権限”が”星杯騎士団”にあるのよ。当然”外法認定”には七耀教会の最高指導者であられる教皇猊下も関わっているわ。」
「な―――――――」
「そ、そんな……幾ら相手が犯罪者とはいえ、七耀教会が”認められた殺人”をしているなんて……」
「しかも最高指導者である教皇まで関わっているとはな……と言う事は世界各国もその事については黙認しているのだろうな。」
「ゼムリア大陸に存在する”国”はどの国も七耀教会と”盟約”を結んでいますからね……」
「元刑事の身としたら、そんな法律を無視したやり方は色々と複雑だぜ……」
リースの代わりに答えたアーシアの説明を聞いたロイドは絶句し、クローゼは信じられない表情をし、バダックとユリア大尉はそれぞれ重々しい様子を纏い、フレンは疲れた表情で呟いた。
「よかったですね~、中将~?リースの話だと、もし中将がリース達の世界でレプリカを開発していたら、間違いなく中将もあの神父のターゲットになっていましたよ~?」
「全く持ってその通りですよ。世界が違ったお陰で命拾いしましたねぇ。」
「というか旦那だと間違いなく返り討ちにするだろ……」
「ジェイドが大人しくやられるとか絶対ありえねぇしな……」
「それと返り討ちにした後その返り討ちにした人物を譜術やフォミクリーの実験に使うのではありませんか?」
からかいの表情のアニスに見つめられたジェイドは呑気な様子で答え、ガイとルークはそれぞれ疲れた表情で指摘し、ナタリアはジト目で推測し、アニス達の会話を聞いていたリース達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ま、そいつはともかく………要するに滅多に使わない力をいきなり使ったせいで目を回しちまったってとこか。」
「そう……なのかもしれません。」
「なるほど………ケビン殿の事情は了解した。しかし、いいのか?我々に話してしまっても。」
アガットの推測にリースが悲しそうな表情で頷いたのを見て状況を理解したユリア大尉は七耀教会が秘匿していると思われる情報を自分達に伝えた事を疑問に思い、真剣な表情でリースに訊ねた。
「はい………すでにケビンも皆さんには一通り説明するつもりだった様子。私も今後の探索を進める上で皆さんの協力を得る為に必要な事であると判断しました。」
「そっか………って、もしかしてリースさん………!?」
「はい、しばらくの間は私がケビンの代わりを務めます。探索の記録も含め、皆さんの先導を務めさせていただければ幸いです。」
「なるほどな………」
「で、でもいいんですか?リースさん、ケビンさんのこと本当は看病していたいんじゃ………」
リースの話を聞いたジンは頷き、ティータは心配そうな表情で見つめた。
「………倒れる前、ケビンは私に”方石”を託しました。ならばこれも従騎士の務め。どうか気にせず皆さんに協力させてください。」
「リースさん……」
「ふむ、そういう事ならあえて反対する理由はあるまい。」
「ケビンさんのことならどうか心配しないでください。残ったメンバーで分担して看ることにすれば大丈夫です。」
リースの決意を知ったティータはリースを見つめ、ミュラー少佐は重々しく頷き、クローゼはリースを元気づけた。
「はい………どうかよろしくお願いします。」
「……………………………」
「………?エステル、どうしたの?」
考え込んでいるエステルに気付いたヨシュアはエステルに尋ねた。
「うん………あの、リースさん。一つお願いがあるんだけど。探索に向かうんだったらあたしとルーク兄も同行させてくれないかな?」
「え………」
「エステル?」
「つーか、さり気なく何で俺まで一緒なんだ?」
エステルの提案を聞いたリースは驚き、ヨシュアとルークは不思議そうな表情でエステルを見つめた。
「ほら、その………目を覚ましたばかりだから色々と肌で知っておきたくて。一応、これでも遊撃士だから色々とお手伝いもできると思うし。それにティアさん達の話によるとルーク兄って、クーデターや”リベールの異変”のあたしの時のようにティアさん達に色々とお世話になったんでしょう?だから、ルーク兄もティアさん達の仲間としてティアさん達の為にも率先して探索をしたいと思っていたんだけど………えっと………どうかな?」
「…………ハハ………まさかそこまで見抜かれていたとはな。リース、だっけ?そっちがいいんだったら、俺もエステルと一緒に手伝うぜ。」
「…………………………………わかりました。どうかよろしくお願いします。」
エステルの話を聞いたルークは苦笑した後リースに視線を向け、リースは少しの間黙り込んだ後静かな表情で頷いた。
「えへへ、どうもありがとう。………ヨシュア、ルーク兄。勝手に決めちゃってゴメンね。」
「いや………うん、君の判断に任せるよ。リースさんのサポート、よろしくね。」
「俺も気にしてねぇから気にするなって。」
「うふふ、二人の足を引っ張らないように気を付けてよ、エステル?」
「あんたは一々一言多いのよ。」
そしてレンの指摘にエステルがジト目で答えたその時
「――――だったら、私も同行させてもらうわ。」
ティアが探索の同行を申し出た。
「え………」
「ティア………?」
ティアの申し出を聞いたリースは呆け、ルークは不思議そうな表情でティアを見つめた。
「――――”約束”、したでしょう?昔の自分と決別して変わる努力をする貴方を見て、判断してくれって。」
「!ハハ……あれから随分経ったからもうとっくに忘れていたと思っていたけど、まだ覚えていてくれたんだな……」
優しげな微笑みを浮かべて自分を見つめるティアの話を聞いて目を見開いたルークは昔を懐かしむかのような笑みを浮かべて答えた。
「……貴方との大切な約束を忘れる訳がないでしょう………」
「ティア…………」
「ご主人様、ご主人様に仕えるチーグルとして勿論僕も絶対に一緒に行きますの!」
「ったく……もう、お前の役目は終わったって前にも言ったのに、仕方がねぇ奴だな……つー訳だから悪いけど、この二人も同行させてもらってもいいか?」
自分に同行しようとするティアとミュウの意志が固い事を悟ったルークは苦笑した後リースに確認した。
「……………どうやら深い事情がおありの様子ですし、構いません。お二人とも、これからよろしくお願いします。」
「ええ。」
「はいですの!」
その後リース達はメンバーを編成し、リース、エステル、ルーク、ティア、レン、ジェイドに編成し、”第四星層”にある次の”星層”に行く転位陣の近くにある石碑へ転位した……………
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