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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第120話

~バリアハート・貴族街~



「委員長、ここにいたのか。」

「リィンさん。以前の実習でも思いましたが、やっぱりこの辺りは静かですよね。いえ、ようやく静けさを取り戻したというべきでしょうか。ユーシスさんの今後のことは心配ですけど……今はこの束の間の一時、ゆっくり休んで過ごしましょう。」

「(委員長と一緒にここで休憩していこうか……?)その、委員長。俺も一緒にいいかな?この木陰のベンチがなんとも心地よさそうでさ。」

「ふふ、もちろんいいですよ。ゆっくり静かに過ごすとしましょう。」

リィンはエマと共に木陰のベンチに座り、体を休め始めた。



(……静かだな。今日はそこまで寒くないし……こんなに静かでゆっくりとした時間は久しぶりかもしれない……なんだか、眠く……)

ベンチに座ってジッとしていたリィンはうたた寝をし始め

「あら……リィンさん?」

「すう………すう……」

(……眠ってしまったみたいですね。オーロックス砦の戦いは熾烈を極めましたし……よしっ……)

眠っているリィンを見つめていたエマは頬を赤らめてある決意をした。



「(…………ん…………いつの間にか眠ってしまったのか……なんだろう、温かくて、柔らかい感触が……)はっ…………」

眠っていたリィンはようやく目覚め

「あ……起きたみたいですね。」

「委員、長……?……え。…………へっ!?」

目覚めたリィンは自分が膝枕されている事に気付き、慌てた様子で起き上がり

(ようやく起きたわね、リア充男……!エマの膝枕を堪能するなんて……!この様子じゃエマが”処女”を捧げる日が近いかもしれないワね……)

その様子を悔しそうに見つめていたヴァレフォルは溜息を吐いた。



「い、委員長……!?な、なんで委員長に膝枕をされて……!?」

(うふふ、ご主人様ったら相変わらず初心ね♪)

(多くの女性と肉体関係の間柄であるというのに、今更膝枕程度で慌てるとはまだまだですね。)

(クスクス、私と契約したあの時リィンが目覚めていたら、慌てていたのでしょうね。)

(………理解できません。わたし達やマスターと婚約関係の間柄である女性達としている不埒な行為と比べれば天と地の差だというのに。)

(フフッ、殿方にも色々あるのですよ、アルティナさん。)

慌てているリィンをベルフェゴール達が微笑ましそうに見守っている中、呆れた表情をしているアルティナにメサイアは微笑みながら指摘した。



「ふふ、おはようございます。よく眠れましたか?」

「ああ、おかげさまでそれはもうぐっすりと……―――じゃなくて!その、すまない委員長。まさかいつの間にか膝枕をされてしまうなんて……」

「クスクス……いいんです。私がそうしたんですから。固いベンチに横たえてしまうのも気が引けましたし……まあ、これも”魔女”のサポートの一つとでも考えてもらえれば。」

(へえ~?”サポート”ねぇ?)

(ふふふ、一体何の為のサポートなのか是非説明をしてもらいたいですね。)

頬を赤らめたエマの言葉を聞いたベルフェゴールは意味ありげに笑みを浮かべ、リザイラは静かな笑みを浮かべ

「いや、さすがにそれは違うと思うんだが………」

(この超鈍感男!女に膝枕されといて思うのはたったそれだけなの!?セリカをも超える鈍感がいるとは思わなかったワ!)

リィンの答えを聞いたヴァレフォルは悔しそうな表情でリィンを睨んでいた。



「ふふ……でも、このくらいはさせてもらえると嬉しいです。リィンさんがヴァリマールと共に頑張ってくれているおかげで今の私達がいる……いいえ、これまでの試練を乗り越えられたのも、きっとリィンさんのおかげですから。」

「委員長……そうだとしても、委員長やみんなのおかげさ。みんながいるから、俺は必死で戦い抜くことができる。それに、委員長が導いてくれたからヴァリマールと出会えたわけだしな。」

「リィンさん……」

「クロチルダさんやクロウ、蒼の騎神――――精霊窟の探索だってまだまだ残っている。これからも、どうか俺達に力を貸してくれ。」

「ふふ、もちろんです。Ⅶ組の委員長の名にかけて、精一杯頑張らせていただきます……!」

その後エマと別れて市内の見回りを再開したリィンはゲルドに声をかけられた。



「リィン、少しいいかしら。」

「ゲルド?どうしたんだ。」

「うん、実はお願いがあって――――」

そしてゲルドの頼みを聞く為にリィンはゲルドと共にカレイジャスの格納庫に向かった。



~カレイジャス・格納庫~



「―――只今ノ質問ノ意図ガ不明―――今一度説明ヲ要求スル。起動者デハナク、”ソナタガ”我ニ搭乗シタイトイウノカ?」

「…………うん、お願い。でも、リィンみたいに誰かと戦う為に貴方に乗るんじゃないの。ただ………貴方に乗ってみたいの。」

ヴァリマールに問いかけられたゲルドは静かな表情で答えた。



「……フム…………」

「その、やっぱり駄目か?ヴァリマール。前にⅦ組メンバーとエリス、そしてゲルドは”準契約者”と言っていたし前に”パンダグリュエル”から脱出する時アルフィン皇女殿下も乗せてくれたから、もしかしたらと思ったんだが……」

(イヤ)、準契約者モ搭乗スル程度ナラ可能ノ上、準契約者デナクテモ可能ダ。」

「本当……?」

「無論、起動者デナケレバ我ヲ動カスコトハカナワヌ。アマリ意味ハ無イヨウニ思エルガ。」

「……それだけで十分よ。」

「どうかよろしく頼む。ゲルドの頼みを聞いてやってくれ。」

「……ヨカロウ――――」

そしてリィンとゲルドはヴァリマールに吸い込まれ、リィンが操縦席に座り、そのリィンの上にゲルドが座っている状態になった。



「え…………」

「ヴァ、ヴァリマール!?いくらなんでもこの体勢は……」

自分の状態にゲルドが呆けている中、リィンは疲れた表情で指摘した。

「魔女ノ使イ魔ハトモカク人間二人ハ容量的ニ無理ガアル。ソレハ以前アルフィン・ライゼ・アルノールヲ乗セタ時ニ理解シテイルダロウ?」

「う”。そ、それは…………」

ヴァリマールの答えを聞いたリィンは唸り声を上げ

「……私の事は気にしないで、リィン。私はそんなに気にしていないから。」

「そうか?ゲルドがそれでいいならいいんだが……」

ゲルドの答えを聞くと困った表情をした。



「…………これが”灰の騎神”の内部……うす暗い所ね?」

「まあ、必要のないときは休眠に務めているからな。戦闘の時は前面から十分な視界を得られているからあまり気にならないし。」

「そう……リィンはずっとここで戦ってきたのね。貴族連合の機甲兵達と………そして、クロウ、だったかしら?彼の操る”騎神”との戦いも貴方一人で……」

リィンの話を複雑そうな表情で聞いていたゲルドは心配そうな表情でリィンを見つめた。



「そうだな……セリーヌも手伝ってくれているけど。いつも、ヴァリマールと一緒にがむしゃらに戦ってきた。はは、最近は少しだけ戦い方も上手くなってきたような気がする。」

「リィン………………――――私ね、ずっと思っていた。いつもあなたは、作戦の中で一番厳しい戦いにヴァリマールと共に身を投じている……私達にはそれを傍からサポートすることしかできない……仲間として、本当にそれでいいのかなって。」

「ゲルド……だから、突然『騎神に乗りたい』なんて言い出したのか。」

ゲルドの話を聞いたリィンは真剣な表情でゲルドを見つめた。



「うん、リィンと同じ視点なら何か見えると思ったから……やっぱり、思っていたよりもずっと淋しい場所…………しかも昨日の戦いではあの人を助ける為にあんな無茶をして……リィン、本当にこのまま戦い続けてリィンは大丈夫なの?全てを背負って…………」

「……俺は、一人で戦っているなんて一度だって思ったことはないさ。」

心配そうな表情をしたゲルドに見つめられたリィンは静かな笑みを浮かべて答え始めた。



「アリサ達Ⅶ組メンバー、サラ教官やトワ会長、ゲルドやエリス、シグルーン中将、それに艦のみんな……みんなが待っていてくれるから必死で戦って来れた。それは、士官学院にいた頃となんら変わっていない。……って、言っても士官学院に通っていた頃の俺を知らないゲルドに言ってもわからないかもしれないな……」

「ううん…………私にも何となくわかるわ…………」

リィンの言葉を聞いたゲルドは微笑んだ。



「―――ゲルド、どうか心配しないでくれ。ゲルドが……みんなが待ってくれている限り。俺は絶対に負けたりしない。だからどうか、これからも俺に力を貸して欲しい。」

「…………リィン…………わかったわ。でもどうか無理はしないでね。あなたはみんなの……―――ううん、私にとって大切な…………」

「!ゲルド…………」

頬を赤らめて自分を見つめるゲルドをリィンは驚いた後静かな表情でジッとゲルドを見つめ

(うふふ、この娘も落ちたわね♪)

(ふふふ、この様子だと自身の身体をご主人様に捧げる日も近いかもしれませんね。)

(リ、リィン様の場合だと本当にありえそうだから冗談になっていないですよ……)

(……相変わらず不埒な方です。)

(フフ、この場合不埒ではなく、”罪作り”と言うべきよ。)

その様子をベルフェゴールは微笑ましそうに見守り、リザイラの推測を聞いたメサイアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、アイドスは苦笑しながらアルティナに指摘した。



「―――ソナタラ。」

するとその時ヴァリマールが二人に声をかけた。

「あ……」

「な、なんだヴァリマール?」

「ソナタラ二人ノ胸部カラ異常ナマデノ高鳴リヲ感知シタ。健康状態ニ問題ガアルナラ治療ト休息ヲ推奨スル。」

ヴァリマールの指摘を聞いた二人は冷や汗をかいて脱力した。



「いや、大丈夫だから。」

「うん……私も大丈夫。心配してくれてありがとう、ヴァリマール。」

「……フム……?」

その後、二人は気を取り直してヴァリマールの(ケルン)から降り……何となく照れや気まずさを感じながら中央広場へと戻り、そゲルドと別れたリィンはスカーレットの様子を見に行くためにホテルに向かった。 
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