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サイボーグ軍人

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9部分:第九章


第九章

「政治家達に軍人の考えを伝えられず」
「そうしてですか」
「命令に従うだけでいいとした」
 こうした軍人も確かにいた。だがマンシュタインの様にヒトラーの下まで言って直談判をしてそのうえで作戦を承認させた者もいる。グーデリアンもあくまで食い下がった。ルントシュテットも直言を憚らなかった。そうした軍人達もいたのだ。
「だがそれは誤りだった」
「それを正す為にもですか」
「軍人として正しい姿」
 呟く様な言葉だった。
「その為にだ」
「来て頂けるのですね」
「喜んで」
 こくりと頷いての言葉だった。
「それではだ」
「では。アルゼンチンへ」
 こうして彼はアルゼンチン軍の顧問となった。このことが彼の運命を決定付けた。彼は実質的に不老不死でありそのうえで長きに渡って軍人として働き続けた。
 千年後だ。銀河の時代になってだ。各国の軍人を務めてきた彼に対して今ある者から声をかけられた。その声はというとであった。
「連合軍が創設される」
「はい、中央軍がです」
「千年の間創設されていなかったがだ」
 それでもだというのであった。
「しかしそれでもか」
「はい、今創設されることになりました」
「そうか」
「それで各国の軍がその中に組み入れられることになりました」
 これは事実であった。各国の選挙でも決定された事実である。
「それですが」
「私もか」
「どうされますか?」
 彼自身への言葉だった。
「それで」
「私が中央軍に入るか」
「階級は大佐です」
 階級についても言及された。
「今の階級のそのままです」
「大佐か」
「何でしたら准将、いえ少将ではどうでしょうか」
 提案された階級があがってもきた。
「お望みのままに」
「いや、階級はいい」
 ハルトマンには出世欲やそういった欲はない。権力欲や権勢欲もである。そういった欲はないのである。これはサイボーグになる前からのことである。
「それはだ」
「いいのか」
「そうだ、いい」
 階級にはこだわらないというのだった。
「それよりも私を招いてくれているのか」
「各国の全ての軍が統合されますが」
「その中でか」
「そうです、貴方もその中にいるのです」
「連合軍の軍人としてか」
「如何でしょうか」
 使者に来ている者はスーツだった。端整なネクタイを見せてもいる。
「それで」
「わかった」
 こくりと頷いたうえでの返答だった。
「それではだ」
「連合軍に来て頂けますか」
「うむ。そして私の職務は何だ」
「教育です」
 それだというのだった。
「それです」
「そうか、教育か」
「それで如何でしょうか」
 こう彼に問うのであった。
「駄目でしたら別の。参謀でも何でも」
「いや、それでいい」
 それでだ。構わないというのであった。
 
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