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サイボーグ軍人

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1部分:第一章


第一章

                    サイボーグ軍人
 ナチス=ドイツがどういった国家なのか。この時はよく知られていなかった。
 そうしたことがわかる、いやわかったような気になれるのは後世になってからであろう。その時代に生きていた人間には中々わからないものである。
 所謂ゲルマン民族至上主義や国家社会主義といったものへの全否定も後世になってからである。日本の今現在はしたり顔でナチスを批判しそれと同列に日本を批判している某巨大マスコミもその当時はナチスべったりでありユダヤ人をナチスに引き渡すべしと主張していたりしていた。
 そのナチス=ドイツであるがだ。曲がりなくも科学技術においては世界の最先端をいっていた。それと共にオカルトの研究も進めていたりする。様々な分野にかなり意欲的に進出して功績をあげていたこともまた事実だったのだ。
 その国家の首脳達がだ。今何かを話していた。それはだ。
「では究極の軍人を造るにはだ」
「はい」
「それしかありません」
 密室の中で話されている。
「やはりです。それしかありません」
「それしかないか」
「はい、まずはです」
「それしかありません」
「しかし」
 ここでまた話されるのだった。
「その候補者ですが」
「それが問題です」
「それも考えるべきです」
 こう話されてであった。彼等はそのまま話していってだ。一人がある名前を出した。
「そうだ、ジークフリート=ハルトマン少佐ならどうか」
「ハルトマン少佐ですか」
「陸軍のですね」
「士官学校を首席で卒業し」
 まずは学校の成績が挙げられる。一応参考にはなるがそれだけで能力の有無が決められるものではないというのは話している者達もわかっているようだった。
「フェシング、乗馬、射撃、ボクシングにおいて傑出した成績を残している」
「そして軍務においては」
「凄いな。激務を何ともしない」
「しかも失敗は何一つとしてない」
「あらゆる仕事を時間通りにこなす」
 それも完璧だというのだ。
「参謀本部においてもその深謀は定評がある」
「しかも統率力も見られ部下からの人望も篤い」
「祖国への忠誠心も絶対」
「それならば」
 ここまで話してであった。遂に太鼓判が押されるのだった。
 トップと思われる人間がだ。言うのだった。
「よし、決まりだ」
「彼ですね」
「ハルトマン少佐にするのですね」
「そうだ、彼だ」
 また告げられるのだった。
「彼にする。いいか」
「では本人に伝えましょう、このことを」
「それからですね」
「そうだ、それからだ」
 こう前置きしたのだった。そしてであった。
 ハルトマンに会談の一部始終が話された。
 ドイツ陸軍のそのジャーマングレーの端整な軍服と漆黒のブーツに身を包んだ長身の男だ。身体は引き締まりまさに戦う者の身体をしている。見事な金髪を後ろに撫で付け青い目の光は強い。精悍で彫の深い顔をしている。鼻が高くまさにそれはゲルマン民族の顔であった。年齢は三十になるかならないかというところであろうか。
 彼はその話を受けてだ。こう答えた。
「わかりました」
「いいというのか」
「祖国の為に」
 強い言葉での返答だった。テノールだがほぼバリトンの響きを持っている言葉だった。その言葉で言うのだった。
「喜んで」
「そう言ってくれるか。それではだ」
「宜しく頼む」
「はい」
 その男ジークフリート=ハルトマン少佐はこうして完璧な軍人となることを命じられたのだった。その後暫くして彼はベルリンのある研究室にいた。
 そこで白衣の男達を前にしてだ。こう言うのだった。
「では遠慮なくやってくれ」
「遠慮なくですか」
「宜しいのですね」
「既に決まったことだ」
 彼の方が落ち着いていた。そんな声だった。
 
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