造られた神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
3部分:第三章
第三章
「神に逆らうことは許されない」
「それでは」
「まずその子供達の親を集めよ」
こう人々に命じるのだった。
「そして子供達をだ」
「わかりました」
人々はまた彼の言葉に頷いた。神はそのうえでまた人々に命じるのだった。
「次に竈を用意せよ」
「竈を?」
「そうだ。何もかもが入るだけの竈をだ」
彼は命じ続ける。
「そうした竈を作れ。よいな」
「それで一体何をされるのですか?」
「罰を与える」
彼は言った。
「私に逆らう罰をだ」
この言葉によりそうした親達とその子供達が集められた。親達は縛られそのうえで一つにされた。子供達もまた縛られていた。彼等の前にはその巨大な竈があり赤く燃え盛っていた。
神はその彼等に対して告げた。人々が見ているその前で。
「これが罰である」
まずはこう。
「神に逆らった御前達に下す私の罰なのだ」
「罰・・・・・・」
「そうだ、罰だ」
神は告げた。そのこの時代から考えるとあまりにも古風な、それでいて途方もなく巨大で威圧感に満ちたその竈を眺めながら。
「神は人に罰を与えるもの」
彼はまた言った。
「その罰とは」
「一体それは」
「この子供達を竈の中に投げ入れよ」
神託だった。
「竈の中にだ。そして焼け」
「なっ・・・・・・」
皆それには言葉を失った。子供達を竈の中に入れる。それは即ち焼き殺すということだ。誰もがそれを聞いて唖然として言葉を失ったのである。
「子供達を竈に入れるのは」
「それは。幾ら何でも」
「この世で最も犯してはならない罪は神に逆らうことだ」
だが神はこう言うのだった。
「それをした者への罰は当然だ。だからだ」
「しかしです。子供達に罪はありません」
「親達はともかくとして」
子供達への助命嘆願であった。彼等としては子供達だけは何としても助けたかったのだ。しかし神はその考えを変えはしなかった。
「逆らうのなら」
その機械の目で何とか子供達を助けようとする人々を見据えて言った。
「御前達の子供達も同じようにする」
「我々の・・・・・・」
「わかったならば従え」
彼はまた言った。
「私にだ。神にだ」
「はい・・・・・・」
一人がまず頷いたのだった。
「それでは。今から」
「子供達を」
「皆竈の中に投げ込むのだ」
感情なぞ何一つとしてない。機械そのものの声でまた彼等に告げた。
「そして焼くのだ。いいな」
「わかりました」
「それでは」
人々は神に従うしかなかった。こうして子供達はその焼ける竈の中に投げ込まれた。炎の中に投げ込まれていく子供達の断末魔の悲鳴とそれを見て泣き叫ぶ親達、そして焼け焦げる匂いと煙が辺りを支配した。しかしこれははじまりでしかなかったのだった。
神はそれからも己に逆らう者がいると見ると容赦なく子供達を焼いた。焼かれる子供達は増えるばかりで生き残った子供達は完全に神の僕となった。彼等は神を唯一のものとし親ですら監視し密告した。それによりまた焼かれる子供達が現われる。人々は最早希望も何もかもを絶たれてしまった。
そうした時代がどれだけ続いたかわからない。全てのものは神に捧げられ人々は食べるものさえなくなろうとしていた。神は何も食べはしないがそれでも彼は捧げることを要求したのだ。飢え死にする者がいても彼はそれを意に介することはなかった。
「人は我の為にある」
彼はいつも言った。
「その人が我の為にあるのは当然だ」
こう言うのだった。人は死ぬばかりで楽しみも何もかもなくなってしまった。そしてある時神はまた人々に対して神託を下したのだった。
「巨大な塔を造れ」
今度は塔であった。
「天にまで届く塔をだ。いいな」
「わかりました」
最早誰も逆らう気力すら失っていた。そのうえでその巨大な塔の建築に入った。食べるものもない人々はその建築による重労働で次々と倒れていく。しかし倒れたそばから成長した子供達や機械達に電気鞭で打たれ起き上がらさせられ働かされる。死ねばその場で捨てられる。そうした中で働かさせられた。他の仕事よりもそれが優先され全てが神の為にあるのだった。
こうして塔が建った。多くの人々の犠牲の下に。そのうえで神はそれを祝う為に宴を開いた。しかしそれは人々を労うものではなかった。己を讃える為だけのものであった。
ページ上へ戻る