英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第82話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「ええっ!?エ、エリスが!?」
「!?エリス、今の話は本当か!?」
レンの説明を聞いたアルフィン皇女は驚き、リィンは血相を変えて尋ねた。
「はい。兄様と姉様の妹として……姫様の”友人”として、兄様達の御力になりたいのです。」
「エリス…………」
「……ユミルの時にも忠告したと思うけど、遊びじゃないのはわかっているわよね?」
エリスの意思を聞いたアルフィン皇女は呆け、セリーヌは真剣な表情で問いかけた。
「勿論わかっています。皆様と比べれば実戦不足ですが、決して皆様の足手纏いにならないように、日々精進し続ける所存であります。幸いにもシグルーン様が実戦不足な私をフォローし、更には稽古もつけて頂けるとの事です。」
「なっ!?シグルーン中将閣下、今の話は本当ですか!?」
エリスの答えを聞いて驚いたリィンは信じられない表情でシグルーンに尋ね
「ええ。エリスさんは私や夫のゼルギウスにとってリフィア殿下を支える大切な仲間であるエリゼの妹…………エリゼの仲間として、期間以内の彼女のフォロー等は私が受け持ちますわ。」
シグルーンは微笑みながら答えた。
「だ、だけどさんざん父さん達に心配もかけてしまった事だし……」
その時リィンが反論したが
「父様達には勿論私の意思を話して兄様達の助力をする許可を頂け、応援の言葉も承りました。それに父様からも『エリスがいればリィンも”パンダグリュエル”に一人で向かったような無茶はもうできないだろう』とのお言葉も承っています。」
「うぐっ……」
「フッ、確かにその通りだな。」
「フフッ、やはり親子だけあってお見通しですわね。」
「ま、確かに仲間の為だと暴走癖があるリィンのストッパー役がいるのはあたし達としても助かるわね。」
エリスの答えを聞いて唸り声を上げ、ユーシスは静かな笑みを浮かべ、セレーネは微笑み、サラ教官は口元に笑みを浮かべた。
「リィン、いい加減認めてあげなさいよ。」
「兄の為に力になろうとしている妹の決意を無下にするのは兄として失格だと思うぞ?」
「それに傍で護った方が安心できると思いますわよ♪」
「フッ、覚悟を決めたまえ、リィン君♪」
「勿論わたくしはエリスがリィンさん達の”協力者”として”カレイジャス”に乗船する事は大賛成ですわよ、リィンさん♪」
「危険な目にあっていながらも、そなたの力になろうとする彼女の決意を無下にするべきではないと思うぞ。」
更にアリサやラウラにシャロン、オリヴァルト皇子やアルフィン皇女、アルゼイド子爵もエリスに対する援護をし
「ううっ……わかりました!エリス、お前にも手を貸してもらう!ただし、ユミルの時にも言ったが絶対に無茶はしないこと!約束できるか!?」
「はいっ……!―――皆様、未熟者ですがエリス・シュバルツァー、これより”Ⅶ組”の”協力者”として助力致しますのでよろしくお願いします……!」
ようやく折れたリィンの言葉に頷いたエリスはⅦ組の面々を見回して頭を下げた。
「えへへ……こちらこそよろしくね。」
「フフッ、エリスさんと共闘するのは初めてですね。」
「オレ達と共に内戦終結に向けて頑張ろう。」
「エリスなら大歓迎。」
「よろしくねー!」
「ハハ……兄妹全員が戦うって、ある意味凄い兄妹だな、シュバルツァー家は。」
エリオットやエマ、ガイウスやフィー、ミリアムは仲間達と共にエリスの加入を歓迎し、マキアスは苦笑し
「確かによく考えたらそうだよな……?」
「しかも3人揃って剣を扱うというのも凄い偶然ですね……」
マキアスの言葉を聞いたトヴァルとクレア大尉は苦笑した。
「えへへ……賑やかになりそうだね♪」
「ハハ……そうだね。」
トワは無邪気な笑顔を浮かべ、ジョルジュは苦笑した。
「さてと。これでレン達の用事も終わった事だし、レン達はそろそろ失礼するわね。」
「あ、待ってください。―――リィンさん、メサイアに会わせてもらえませんか?」
レンが転移魔術を発動しようとしたその時マルギレッタが制止し、リィンを見つめた。
「あ、はい。―――メサイア!」
マルギレッタの言葉に頷いたリィンはメサイアを召喚した。
「お母様……」
マルギレッタと対峙したメサイアは静かな表情でマルギレッタを見つめ
「……驚きました。亜人族である事を除けば転生前のマルギレッタ様の長女であるメサイア様がご成長された姿と瓜二つです。」
「フフッ、凄い偶然ね。」
リ・アネスは驚きの表情でメサイアを見つめ、ルイーネは微笑んだ。
「えっと……ヴァイス様から貴女の事は聞いているわ。―――”初めまして”、メサイア。並行世界とは言え、私の娘にまた会えて嬉しいわ。」
「私も嬉しいです、お母様。その……並行世界だけあって私の知るお母様とは色々と違っていますね。特に私の知るお母様は先程見せた凛々しい姿を生前に見せた事がありませんでしたし。」
マルギレッタに微笑まれたメサイアは苦笑しながら答えた。
「えっと……ちなみに並行世界の”私”はどんな方だったのかしら?ヴァイス様からは並行世界のヴァイス様が私やリ・アネスどころか”三銃士”の方々全員をも妾にした話は聞いているけど……」
(……並行世界の話とは言え、色々と複雑ではないですか?特にルイーネ殿の場合ですと、ギュランドロス殿が…………)
(別に気にしていないわよ。所詮は異なる世界。今この場にいる私やギュランドロス様には関係のない話よ。)
マルギレッタの言葉を聞いてある事が気になったリ・アネスに視線を向けられたルイーネは静かな表情で答えた。
「とても優しい方であるのは今この場にいるお母様と変わりないのですが……その、お父様に寵愛を受ける時はまるで人が変わったかのように快楽に溺れている方でして。私にも殿方を喜ばせる方法を色々と教えてくれた方です。」
「……………」
「なっ!?マ、マルギレッタ様がですか!?」
「あらあらまぁまぁ♪」
「フフッ、一体どんな風に変わったのか非常に気になるね♪」
「お兄様、お下品ですわよ。」
メサイアの話を聞いたマルギレッタは石化したかのように固まり、リ・アネスは目をギョッとさせ、ルイーネは微笑み、オリヴァルト皇子の言葉を聞いたその場にいる全員が脱力している中アルフィン皇女は呆れた表情で指摘した。
「ア、アハハ…………今の私がいるのはヴァイス様のお蔭よ。ヴァイス様が私を立派な皇族として教育してくれなければ、ひょっとしたら”そちらの私”と同じ運命を辿っていたのかもしれないわね…………」
「お母様…………」
そして我に返って苦笑した後昔を懐かしんでいるマルギレッタをメサイアは複雑そうな表情で見つめた。
「――――色々と厳しい道を歩むようだけど、私は貴女の”母”として応援しているし、何か力になれることがあったら遠慮なく相談して。貴女の”母”としてできるかぎり力になるわ。また会える日を楽しみにしているわね。」
「お母様……はい……っ!」
優しげな微笑みを浮かべるマルギレッタに抱きしめられ、頭を撫でられたメサイアは嬉しそうな表情で頷いてマルギレッタを抱き返した。
「リィン・シュバルツァーさん。これからも娘の事、よろしくお願いします。」
「い、いえ、こちらこそ。いつもメサイアには世話になりっぱなしと言うか……」
メサイアから離れたマルギレッタに会釈をされたリィンは恐縮した様子で答えた。
「フフ……―――時間を取ってもらってすみませんでした、レン姫。」
「うふふ、気にしなくていいわよ。エリゼお姉さんは言い残した事とかあるかしら?」
マルギレッタの言葉に微笑みながら答えたレンはエリゼに尋ねた。
「あ…………少々お待ちください。―――ユーシスさん、こちらを。」
するとその時エリゼがユーシスに手紙が入った封筒を手渡した。
「?これは一体……」
エリゼに手渡された封筒をユーシスは不思議そうな表情で見つめた。
「封筒の中身はルーファス様の”遺書”です。」
「!!」
「なっ!?まさか処刑される前のルーファスさんと会ったのか!?」
エリゼの答えを聞いたユーシスは目を見開き、リィンは信じられない表情で尋ねた。
「ええ。……ユーシスさんに伝える事はないかと尋ねた所、その封筒の中にある数枚の手紙に書かれてある内容を書いて私に託しました。」
「そう……か……兄上の遺書を届けてくれた事……感謝する……」
「……………………」
「ユーシスさん……」
「……私からも感謝する。本当にありがとう。」
エリゼの答えを聞き、身体を震わせながらエリゼに頭を下げて感謝の言葉を送る様子をマキアスとアルフィン皇女は辛そうな表情で見つめ、オリヴァルト皇子は静かな表情でエリゼを見つめて会釈をした。
「それと処刑されたルーファス様の遺体はリフィアに頼んで、処刑された遺体の首を繋げて元通りの遺体の状態にしてマルーダ城内で遺体が腐食しないように保管してもらっていますので、メンフィル帝国との外交問題や内戦が終結して落ち着いた時にシュバルツァー家を通して私に伝えてもらえれば、ルーファス様の遺体をユーシスさんにお返しするように手配致します。」
「わかった…………”アルバレア公爵家”がユミルに災厄を持ち込んだ張本人だというのに、そこまで手配してくれたこと……感謝する……」
「いえ、私ができるのはそのくらいの事ですから。―――レン姫、そろそろ……」
ユーシスに会釈をされたエリゼは静かな表情で答えた後レンの許に戻った。
「ええ。他にはもうないかしら?」
「……最後に一つだけ。もし私達が”期間以内”に内戦を終結できなかった場合はどうなるんだい?」
レンの問いかけを聞いたオリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。
「うふふ……その時はエレボニアの内戦はメンフィルとクロスベルの手によって終結すると共にエレボニア帝国が滅亡するだけよ。まあ、正規軍はそちらから手を出して来ない限りメンフィル、クロスベル共に攻撃はしないし、民達に危害を加えるつもりもないからその点に関しては安心していいわよ。―――ただし、貴族連合軍は”皆殺し”だけどね。」
「………………」
凶悪な笑みを浮かべるレンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は重々しい様子を纏い
「その……わたくし達……アルノール家はどうなさるおつもりですか……?」
アルフィン皇女は表情を青褪めさせて身体を震わせながら尋ねた。
「アルノール家はメンフィル帝国領の中でもユミルのような辺境の地で一生を過ごしてもらうわ。ま、アルフィン皇女の場合はどの道”戦争回避条約”の”第7項”の内容を実行してもらうからミルスのような栄えている地域で過ごしてもいいし、”救済条約”を守る為にリィンお兄さんに降嫁すればエレボニア皇家に対する”処分”を軽くしてあげるわ。」
「”処分”を軽くすると仰っていますが、具体的にはどのような内容になるのですか?」
レンの答えを聞いたアルゼイド子爵は真剣な表情で尋ねた。
「―――ゼムリア大陸でのメンフィル帝国領の一部―――”元エレボニア帝国領”の統治を任せてあげるし、本国―――異世界にメンフィル帝国領内で行われる社交界に参加する許可もあげるわ。一生日陰者になる事と比べればよっぽどいいでしょう?」
「「「……………………」」」
レンの答えを聞いたアルゼイド子爵は目を伏せて黙り込み、オリヴァルト皇子とアルフィン皇女は複雑そうな表情をした。
「―――それでは皆様、ご武運を(グッドラック)♪」
転移魔術を発動したレンは上品な仕草でスカートを摘み上げて会釈をした。
「兄様……どうかご武運を。エリスも絶対に無茶をしないでね。」
「姉様……姉様もどうかご武運を……」
「エリゼ、お前こそ無茶をするなよ。」
そしてレンの転移魔術によってマルギレッタ、リ・アネス、ルイーネ、エリゼはその場から転移して消えた!
「やっと帰ったか……」
「ハハ……まさに”嵐”のような出来事だったな……」
レン達が消えるとトヴァルとオリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を呟き
「申し訳ございません、殿下……!父の……”アルバレア公爵家”の暴走によってエレボニア帝国が……!」
ユーシスは辛そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめて頭を下げた。
「何度も言っているが、君のせいではないよ。そもそもユミル襲撃が起こったのはレン姫の指摘通り貴族派と革新派を纏めきれなかった私達――――」
そしてオリヴァルト皇子が慰めの言葉をユーシスに送ろうとしたその時、その場に突如閃光が走った!
「キャアッ!?」
「眩しっ!?」
「お嬢様……!」
「閃光弾……!?」
「オリヴァルト殿下とアルフィン殿下は私の後ろに!」
「………………」
「エリス……!俺を絶対に離すな……!」
「兄様……!」
突然の出来事にセレーネとアリサは悲鳴を上げ、シャロンはアリサの庇う位置に一瞬で移動し、クレア大尉は厳しい表情をし、アルゼイド子爵とシグルーンは周囲を警戒し、リィンとエリスは互いを強く抱きしめ合った。そして閃光は消えた。
「ったく、何だったのよ……」
「全員、無事!?委員長、副委員長!男性、女性に別れて全員いるか点呼して!」
「わかりました!」
「了解しました!」
閃光が消えるとセリーヌは疲れた表情で溜息を吐き、サラ教官はエマとマキアスに指示をした。そして二人はそれぞれ男性、女性に別れて点呼をした。
「―――教官、終わりました。全員無事でこの場にいます。」
「フウ……マジで何だったんだ、今のは……―――ん?おい、その娘は誰だ?」
エマの報告を聞いた後疲れた表情で溜息を吐いたトヴァルだったがある事に気付いて視線を向け
「え――――――」
トヴァルにつられるようにリィン達が視線を向けるとそこには部屋の端で旅用と思われる外套つきのローブを身に纏い、まるで雪のような白い髪を腰まで靡かせ、整った容姿を持つリィン達と同年代と思われる娘が倒れており、娘の傍には娘の所有物と思われる杖とARCUSがあった……!
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