英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第45話
その後ユーシスと共に街道に移動したリィン達はユーシスの手配によって街道に予め用意されていた物―――導力バイクを見て驚いた。
~オーロックス峡谷道~
「こ、これは……!」
「アンゼリカ先輩からリィンが譲り受けた”導力バイク”か……」
「ど、どうしてここに……」
「へえ……これがプリネ達の話にあった……―――ティータが見たら喜びそうね。」
「ハハ、そうだね。」
導力バイクを見たリィン達が驚いている中、目を丸くしたエステルの言葉にヨシュアは苦笑しながら頷いた。
「公爵家の力で、学院方面からこちらに取り寄せるよう手配した。腕の確かな工房に管理は任せたから整備には問題はないはずだ。それに乗って、俺と勝負してもらおう。」
「勝負―――馬と導力バイクの競争か!?」
「さすがにそれだと貴方の方が不利に思えるのですが……」
ユーシスの提案を聞いたリィンはユーシスの背後に控えているアルバレア号と導力バイクを見比べて驚き、エイドスは戸惑いの表情をした。
「ゴールは、以前の実習で手配魔獣と戦った高台だ。到着した順に陣を取り、そのまま一対一の決闘を行う。より早く辿り着いたほうが風上をとれる、というわけだ。無論、アルバレア号を飛行させる等そう言った無粋な真似はせん。」
「なるほど……ルールはわかった。この一騎打ちをもってユーシスがどうするか決める―――……それでいいんだな?」
「ああ、万が一敗れれば潔くお前達と共に行こう。ただし、こちらも決して手加減をするつもりはない。その乗り物は確かに速いが、俺とアルバレア号は峡谷の地形を知り尽くしている。容易に勝てるとは思わぬ事だ。」
「ああ、承知の上さ。全力をもってユーシスに挑ませてもらう!」
「フン、上等だ。」
一騎打ちを始めるリィンとユーシスは互いに決意の表情で互いの顔を見つめた。
「やれやれ……」
「……どうやら我々は見守るしかないようだな。」
「ええ……私達は先に街道を行ってコースの見張りをしておきます。」
「二人とも頑張ってね!応援しているわよ!」
「エ、エステル……二人とも応援をしたら意味がないと思うんだけど……」
「フフ……細かい事は気にしなくていいと思いますよ?」
リィンとユーシスに応援の言葉をかけるエステルに冷や汗をかいて指摘するヨシュアの言葉を聞いたエイドスは微笑みながら指摘し
(”細かい事”って……やっぱりエステルの先祖だけあるよ……)
エイドスの指摘を聞いたヨシュアは疲れた表情をした。
「では、スタートの合図はわたくしにお任せください。もちろん、ズルは致しませんのでご安心くださいませ。」
「ええ、よろしくお願いします。……構わないな、ユーシス?」
「フン、いいだろう。ならばさっそく準備を始めるとしよう。」
その後、コースの見張りに向かうラウラとエマ、エステル達を見送り……久しぶりのバイクの感触を簡単に確かめてから、いよいよレースを開始するのだった。
「頑張って、リィン……!」
「相手は卓越した乗り手……だが―――どうか頼んだぞ!」
「ああ、見ていてくれ……!」
レース前にアリサとガイウスに応援の言葉をかけられたリィンは力強く頷いた。そしてリィンは導力バイクに乗り、ユーシスはアルバレア号に跨り、それぞれの位置についた。
「―――行くぞ、ユーシス!!」
「ああ、受けて立つ……!示してみるがいい―――お前達の意志の強さを!!」
「いきましょう―――位置について。”3(トライ)”………”2(ツヴァイ)”………”1(アイン)”………”0(ヌル)”!!」
その後レースを開始したリィンは導力バイクを駆使し、何とか先に到着して風上を取った。
「よし―――俺の勝ちだ!!」
リィンが到着して少しするとアルバレア号に乗ったユーシスも到着した。
「くっ、俺のアルバレア号に競り勝つとはなかなかやるな……!」
「ユーシス……!風上は取らせてもらったぞ!さあ、決着をつけよう!」
「―――よくやった。戻れ、アルバレア号!」
太刀を構えたリィンに応えるかのようにアルバレア号から降りたユーシスはアルバレア号を自分の身体に戻してリィンと対峙し、騎士剣を抜いた。
「いいだろう、この程度のハンデなどくれてやる……―――ゆくぞ、リィン!!」
「来い―――ユーシス!!」
そして二人は一騎打ちを開始した!
「セイッ、セイッ、セイッ……!」
ユーシスはクラフト―――クイックスラストでリィンに先制攻撃を仕掛け
「…………!」
繰り出される突きを太刀で受け止めながらリィンは反撃の機会を窺っていた。
「ハアッ!!」
「二の型―――大雪斬!!」
連続突きを放ち終えたユーシスは薙ぎ払いを放った瞬間、リィンは跳躍し、静かなる闘気を纏った太刀をユーシス目掛けて叩きつけたが
「!!」
ユーシスは後ろに跳躍してリィンの反撃を回避した。
「跪け……!」
リィンと距離を取ったユーシスが強く念じるとリィンの足元から氷山が現れ
「!!」
「ヤァッ!!
その事に気付いたリィンが側面へと跳躍して回避した瞬間、ユーシスの薙ぎ払いによって氷山は砕け散った。
「ハァァァァァ……孤影斬!!」
「舞えっ!!」
抜刀による衝撃波をリィンが放つとユーシスは騎士剣を振るって闘気の鳥を放ったが神剣によって放たれた神気を纏う衝撃波は相殺しきれず、ユーシスを襲った!
「チィッ!?」
それを見たユーシスは舌打ちをして側面に跳躍して回避したが
「妖の型――――弧武身妖舞!!」
「グッ!?」
リィンが高速剣技で強襲し、対応できなかったユーシスはダメージを受けた。
「斬の型―――滅綱斬!!」
「舐めるなっ!!」
リィンが追撃をするとユーシスはクラフト―――パワーピアスで対抗した。互いの剣が鍔迫り合いになった瞬間、剣を通して互いの身体に衝撃が駆け巡り
「ハァァァァァ……!」
「グッ……!?」
両手持ちのリィンがユーシスを徐々に圧し始め、自分が不利と感じたユーシスは後ろの跳躍してリィンから距離を取り、態勢を建て直す為に戦術オーブメントに指を走らせた。
「アークス、駆動!エアストライク!!」
駆動時間を短くするクオーツを組み込んだ事によってただでさえ駆動時間が短い下位アーツはすぐに発動し、リィンを襲った。
「舞の型―――閃舞剣!!」
襲い掛かる風の刃に対し、リィンは闘気を溜め込んだ太刀で薙ぎ払いを放って自分を襲うアーツを相殺し
「馬鹿なっ!?チッ……!」
それを見たユーシスは驚いた後高火力のアーツを放つ為に再びオーブメントを駆動させようとしたが
「二の型―――洸破斬!!」
「グッ!?」
神速の抜刀による衝撃波をその身に受け、怯んだ。
「―――そこだっ!疾風!!」
その隙を逃さないリィンは一瞬でユーシスに詰め寄り
「セイッ!!」
「くッ………!?」
太刀を振るってユーシスの剣を弾き飛ばし、その衝撃に耐えきれなかったユーシスは地面に膝をついた!
「はあはあ……―――勝負あり、だな。」
リィンは息を切らせながら地面に膝をついているユーシスを見つめ
「……さすがだな。八葉一刀流と飛燕剣………少し見ない間に更に磨きがかかったようだ。」
ユーシスは苦笑しながらリィンを見つめて称賛した。
「ユーシスの方こそ。全力を出し切らなければとても敵わなかった…………剣にしても、競争にしても。」
「フッ……お互い全てを出し切ったということか。どうやら、完膚なきまでに俺の負けのようだ。」
敗北したにも関わらずユーシスは憑き物が取れたかのようなすがすがしい表情でリィンを見つめていた。
「―――リィン、ユーシス!」
「大丈夫ですか、お二人とも!」
その時仲間達が駆け付けて来た。
「みんな……!」
「ああっ……もう終わってる!?」
「勝負は……!?」
二人の様子を見たアリサとガイウスは声を上げ
「……フン。見ての通りの結果だ。」
「ああ……なんとか勝てたみたいだ。正直、ギリギリだったが。」
「……そうか。」
「ム~……滅茶苦茶見たかったわ~……二人の勝負……」
「ハハ……駆け付けるのが少し遅かったね。」
「きっと素晴らしい勝負だったのでしょうね……」
二人の答えを聞いたラウラは静かな笑みを浮かべ、頬を膨らませるエステルの様子をヨシュアは苦笑しながら見つめ、エイドスは微笑ましそうに二人を見つめ
「じゃ、じゃあ……!」
ある事を察していたエマは明るい表情をした。
「……馬術、そして剣術。現時点での俺が持つ”力”は全て出し切った。だが、それ以上に―――お前達の力と意志が強かったことだろう。それを確かめられた以上、もはや迷いはない。今の俺が進むべき道は―――お前達と共にある。」
「ユーシス…………」
ユーシスの答えを聞いたリィンは嬉しそうな表情でユーシスに近づいて手を差し出し
「―――行こう、一緒に。この内戦と内戦において”Ⅶ組”として答えを見出すために……そして、あいつに―――クロウのいる場所に届く為に!」
「ああ……任せておくがいい。このユーシス・アルバレア―――今より”Ⅶ組”に合流しよう。俺なりの”アルバレア”のあり方を父や兄に示すためにも……!」
ユーシスはリィンの手を取って立ち上がった!
「やれやれ、見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ。」
「ううん、そういうのも含めて私達”Ⅶ組”なんでしょう。」
「ふふっ、本当にね。」
「ああ……これがオレ達だろう。」
「共にぶつかりあって初めてわかることもある。私もこの学院生活で身をもって学んだからな。」
「えへへ……ちょっと羨ましいわね。」
「ええ……私も後数年若かったら皆さんと一緒に学生生活を過ごしたかったです。」
Ⅶ組の様子をエステルとエイドスは微笑ましそうに見守り
(あ、後数年若かったらって…………)
エイドスの言葉を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせたが
「ヨシュアさん?何か余計な事を考えていませんか?」
「いえ、何も考えてないです。(やっぱりエステルの先祖だけあって、鋭すぎだよ……)」
威圧を纏ったエイドスに微笑まれ、疲れた表情をした。
「うふふ……これで現時点で集まれる”Ⅶ組”が全員揃ったわけですわね。これからの事ですが――――」
「フッ―――そうは問屋が卸しませんわ!」
シャロンが提案しかけたその時、娘の声が聞こえて来た!
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