八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十二話 夜の電話その十三
「日本以外の国にはな」
「お茶漬けは特にだよね」
「ああ、アメリカにもないしな」
親父はさらに言った。
「中国にもタイにもベトナムにもな」
「勿論イタリアでもだよね」
「確かにイタリアでも米は食う」
「リゾットとかでね」
「けれどそもそも主食じゃないんだよ」
黒い焼酎を飲みながらの言葉だった。
「野菜だろ」
「主食はあくまでパンだからね」
「あっちはな」
「お米はあくまでお野菜だね」
「そうなってるからな」
それでというのだ。
「そこからして違うんだよ」
「スペインでも」
僕はパエリアをここで思い出した。
「そうだね」
「ああ、お茶漬けにはしないさ」
「お茶も違うし」
「あれは日本のお茶だから出来るんだ」
そうした代物だというのだ。
「それにお米もだよ」
「ジャポニカ米じゃないと」
「駄目なんだよ」
親父はお茶漬けにかなり真剣に話した、実はお茶漬けは親父の大好物の一つでかなりのこだわりがある。
「インディカ米でやったらな」
「まずい?」
「全然違うな」
「そんなになんだ」
「だからな、お茶漬けはな」
「日本だけなんだね」
「他の国にはないな」
それこそというのだ。
「あっても日本の程美味くない」
「成程ね」
「だから戻って来たからにはな」
それこそという口調での言葉だった。
「そっちも食うぞ」
「このお店でも?」
「ああ、焼き鳥と焼酎をたらふく食って飲んで」
そしてというのだ。
「最後はそれだ」
「お茶漬けだね」
「それまで付き合ってくれるか」
「いいよ」
僕も焼酎を飲みつつ親父に答えた。
「それじゃあね」
「よし、それじゃあまずは飲んで食うか」
こう言って焼酎を飲む親父だった、焼き鳥も色々な種類を次から次に頼む。僕は三本だけ頼んだ焼き鳥を少しずつ食べながらだった。カウンターでその親父の相手をした。
第七十二話 完
2015・12・16
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