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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十二話 夜の電話その十二

「けれどな」
「タレで食べたい時はね」
「そういうことだよ、焼酎もな」
 それもだった。
「とにかくこれが一番困るんだよ」
「親父焼酎も好きだしね」
「この味がいいんだよ」
 その焼酎を飲みながらの言葉だ。
「それなのにな」
「イタリアだとなんだね」
「ワインは確かにいいさ」
 親父はこのお酒のよさは認めた。
「けれど違うだろ」
「ワイン以外のお酒を飲みたい時もあるよね」
「そうした時に困るんだよ」
「親父色々なお酒飲むしね」
「そういうことさ、ワインはワインで楽しんで」
 そして、というのだ。
「焼酎は焼酎だよ」
「そういうことだね」
「ああ、焼き鳥と焼酎」
 この二つがというのだ。
「合わさったら最高だぜ」
「親父としても」
「御前もだろ」
「うん、好きだよ」
 僕は焼き鳥を食べつつ親父に答えた。右手で串を持ってそのうえで横から食べる。まさに焼き鳥の食べ方の王道だ。
「この通りね」
「イタリアにはないからな」
「鳥肉自体は食べるよね」
「かなりな」
「それでもだね」
「焼き鳥はなくてな」
「そして焼酎もだね」
 僕は自分から言った。
「ないんだね」
「この組み合わせは本当に日本ならではだよ」
「他の国にはどうしてもないんだ」
「あと焼きそばとかお好み焼きもな」
「そういうのもないんだね」
「日本だけだよ」
 こうした食べものもというのだ。
「そっちもな」
「たこ焼きもだね」
「イタリアでもたこは食うけれどな」
「たこ焼きはね」
「そっちもないからな」
「たこ焼きがないと」
 僕もたこ焼きが好きなので残念になって言った。
「やっぱりね」
「そうだろ、御前は」
「寂しいよ」
「あれもなくてな」
「焼きそばやお好み焼きも」
「パスタやピザもいいけれどな」
 それでもというのだ。
「そういうのがないんだよ」
「ううん、じゃあ日本人には」
「勿論お茶漬けなんてな」
「滅多にだよね」
「あれは通だよ」
「通って?」
「日本通の中の通だけが知ってるんだよ」
 そうした食べものだというのだ。
「それこそな」
「そうなんだね」
「そもそもお茶も漬けものもないんだぞ」
 その両方がというのだ。 
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