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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第33話

~監視塔・屋上~



「っ……はあ、はあ……」

「さすがに手強い……!」

ブルブランが地面に膝をつくとアリサは疲労の息切れをさせ、リィンは厳しい表情でブルブランを睨んだ。



「フフ……素晴らしい。想像以上に甘美なる仕上がりだ。どうやら簡単に制圧とはいかないようだよ、お嬢さん?」

「脅威度を上方修正……―――そちらの傀儡も聞いていたスペックよりは機能が向上しているようですね。」

ブルブランに視線を向けられたアルティナは淡々と答えた後アガートラムに視線を向けた。



「あはは、そうなのかな?んー、でもやっぱりキミも”繋がってる”みたいだね?」

「………………」

興味ありげな表情をしているミリアムの問いかけにアルティナは何も返さなかった。



「……アルティナ、だったな。いいかげん答えてもらうぞ。エリスと殿下は今、どこにいる?まさか……傷つけてはいないだろうな!?」

「……彼女たちについては私の知る所ではありません。ルーファス・アルバレア卿に身柄を引き渡しましたので。」

「な……!?」

「それって確か……」

「ユーシスさんのお兄様の名前ですわね……」

アルティナの答えを聞いたリィンは驚き、セリーヌは考え込み、セレーネは不安そうな表情をした。



「フフ……貴族連合の”総参謀”として大層な活躍ぶりのようだ。各地の機甲師団を分断したのも彼の手腕によるところが大きい。彼ほどの才覚があればこそ、といったところだろうがね。」

「そんな……」

「くっ……」

「……とにかく、あなた方は貴族連合の内情に詳しいようです。そちらの装置を止めたのち、色々と話を聞かせてもらいます。」

「……?理解不能です。」

クレア大尉の言葉を聞いたアルティナは不思議そうな表情をした。



「フフ、哀しい事に彼らはわかっていないのだよ。いまだこの場の主導権を我々が握っていることを―――!」

するとその時ブルブランが立ち上がると共に周囲に短剣を浮遊させ

「―――Aiguille(針よ)!」

短剣をリィン達の背後にそれぞれ降り注がせた!



「こ、これって………!?」

「か、身体が動きません……!」

「な、なんなの、これ~!?」

するとリィン達の身体は動かなくなった!

「これは……『影縫い』というやつか!?」

「クク、これも私の得意な術の一つでね。これで君達も籠の中の鳥というわけだ。」

「こ、こんなことまでできるなんて……!」

「くっ、迂闊でした……!」

ブルブランの信じられない術にアリサは不安そうな表情をし、クレア大尉は唇を噛みしめた。



「―――それでは全員、拘束させていただきます。」

「なに、しばしの間、この地での滞在を認めよう。高原に広がる”焔”を、心行くまで眺めていたまえ。」

「ぐっ……!」

ブルブランの言葉にガイウスは悔しそうな表情で唇を噛みしめた。

「させ『ふふふ、まさかこの程度の術で私達に勝利したとお思いですか?』……え?リ、リザイラ……?」

そしてリィンが”獣”の”力”を解放しようとした瞬間、突如リザイラの笑い声が聞こえ、呆けた様子でリザイラに視線を向けた。



「ほう……?」

リザイラの言葉にブルブランが興味ありげな表情をしたその時!

「――――ハッ!!」

何とリザイラは膨大な魔力を全身から解放して自分の影を止めている短剣を吹き飛ばした!



「ええっ!?」

「な、何をしたの、リザイラ!?」

「内に秘める膨大な魔力を解放して、その衝撃であいつの術を破ったのよ。……まあ、あんな荒業、”精霊王”みたいな”規格外”なクラスでないと無理でしょうけど。」

それを見たエリオットとアリサは驚き、セリーヌは二人に説明し

「ふふふ、別に私でなくても最上位の”精霊”へと”昇格”したミルモでもできるはずですが?」

「ええっ!?そ、そうなんですか!?」

リザイラの説明を聞いたセレーネは驚きの表情でミルモに視線を向けた。



「よ~し、やってみるぞ…………!はあああああ…………―――――やあああああっ!!」

するとミルモも続くように膨大な魔力を解放して自分の影を止めている短剣を吹き飛ばした!

「ミルモ……!」

「ほえええええ~!?ミルモまでリザイラと同じ事をした~!?」

「これが異種族――――いえ、”精霊”の力……!」

それを見たアリサは明るい表情をし、ミリアムとクレア大尉は驚いた。



「……脅威度大。ブルブラン様、まずはあの二人を速やかに制圧するべきです。」

一方アルティナは厳しい表情でリザイラとミルモを見つめ

「ハハハハハッ!さすがは要所要所で彼らを助けてきた異世界の騎士(ナイト)達!”福音計画”の際、他の”執行者”達やこの私にも苦汁を舐めさせたかの”ブレイサーロード”や”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”の騎士達を思い出させてくれる!ならば、こちらも本気で―――!」

ブルブランが高笑いをしながらステッキを構えたその時!



「この大自然の破壊を望む愚か者達には精霊王女たる私が直々に”躾け”をしてさしあげましょう。――――リスレドネーの支配!!」

リザイラが全身から膨大な魔力を解放するとブルブランとアルティナの周囲に突如謎の霧が現れ

「え――――」

「むっ!?」

二人は霧に包みこまれた。





~???~



「……ブルブラン様?一体どこに…………――――謎の霧により、視界が確認できません。クラウ=ソラス、状況を把握…………?クラウ=ソラス?」

霧に包みこまれたアルティナは周囲を見回したが誰もいなく、クラウ=ソラスの名を呼んだが答えは返ってこなかった。するとその時アルティナの周囲の地面に無数の触手が現れた!

「なっ!?クッ……!クラウ=ソラス、クラウ=ソラス、クラウ=ソラス!早急に応答し、迎撃を!!」

突然の出来事に驚いたアルティナはクラウ=ソラスの名を何度も呼んだが声は虚しく響き渡り、触手はアルティナを捕え、そして!

「え……や、やめて……い……いやああああああああああああああああああ――――――ッ!?」

なんと触手はアルティナの全身に巻き付いてアルティナの身動きを封じ込めた後アルティナを凌辱し始めた!

「グアアアアアアアアア――――――ッ!?グッ……ま、まさかこの私が幻術にかかる日が来るとは……!?ガアアアアアアアア―――――ッ!?」

一方ブルブランも強烈な悪夢を見させるリザイラの幻術――――リスレドネーの支配により、十字架に磔にされて身動きが取れなくなった状態で火あぶりにされ、怒りの表情をしたノルドの民達の民族衣装を身に纏った謎の人間達によって全身を十字槍で何度も貫かれ続け、苦しみ続けた!



ふふふ、この美しい大自然を破壊を望んだ”罪”は重いですよ?”死”すらも生温いと思える程の”地獄”をとくと味わいなさい!自然と精霊に仇名す愚か者達よ!



アルティナとブルブラン、それぞれがリザイラの幻術によって”地獄”すら生温いと思える程の強烈な悪夢を見せられて苦しんでいる中、二人の頭の中に心の底から怒っている様子のリザイラの声が響き渡った!


~監視塔・屋上~



「いやああああああああああああああああああ――――――ッ!?」

「グアアアアアアアアア―――――――――――――ッ!?」

「い、一体何が起きているの……?」

「霧が二人を包み込んだ後、突然苦しみ始めたけど……」

悲鳴を上げて苦しみ続けているアルティナとブルブランをアリサは戸惑いの表情で見つめ、エリオットは不安そうな表情でリザイラに視線を向けた。



「――――”幻術”ね。恐らくあの二人はリザイラがあの二人にかけた幻術によって、強烈な”幻”―――ようは”悪夢”を見せられているんだと思うわ。」

「”幻術”に”悪夢”…………」

「ほえええええ~!?」

「そ、そんな事までできたんですか、リザイラさん……!」

「な……まさか”幻術”まで扱うとは……!」

セリーヌの推測を聞いたガイウスは考え込み、ミリアムとセレーネは驚き、クレア大尉は信じられない表情をした。



「ふふふ、そうです……もっと泣き叫び、苦しみ、絶望を思い知りなさい………!そしてこの美しい大自然の破壊を望んだ”罪”がいかに愚かで重い”罪”なのか、その身にしかと刻み込みなさい……!ふふふふふふ……!」

一方リザイラはサディスティックな笑みを浮かべて笑いながら苦しみ続けている二人を見つめ、その様子を見たリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

(うふふ、ドSのリザイラを怒らせたあの二人は御愁傷様よね~。)

(ア、アハハ……ちょっと可哀想に思いますけど、自業自得ですね。)

(というかリザイラ自身の怒りの割合の方が高いように見えるわよね。)

ベルフェゴールはからかいの表情になり、メサイアとアイドスは苦笑していた。



「あ、あわわわわわわっ…………!?あ、あんな風に怒っているリザイラ様、初めて見たよ……!」

「これが精霊の……自然の”怒り”か……」

「……そうかしら?アタシはあの精霊王の私的な怒りによる制裁だと思うけど。」

ミルモは表情を青褪めさせて身体をガタガタ震わせ、重々しい様子を纏ったガイウスの言葉を聞いたセリーヌは呆れた表情でリザイラを見つめ

「き、気のせいでしょうか?ごく最近同じような光景を見た記憶があるのですが……」

「アハハ……ガレリア要塞でベルフェゴールが西風の旅団の猟兵達を操って同士討ちさせている所を見て笑っていた事だよね?」

「ほえええええ~!?そんな事があったんだ!」

表情を引き攣らせているセレーネの言葉にエリオットは苦笑しながら答え、それを聞いたミリアムは驚き

「そ、その……日々苦労していらっしゃるでしょうけど、その苦労に見合う心強い異種族の方達と”契約”しているのですね、リィンさん。」

「ううっ……慰めてくれてありがとうございます、クレア大尉…………ハア………………」

困った表情で自分を見つめて慰めの言葉を送るクレア大尉の言葉を聞いたリィンは疲れた表情で溜息を吐き

「というか楽しんでいる暇があったら私達の動きを止めているコレを何とかしてよ~!?」

アリサは呆れた表情でリザイラを見つめて声を上げた。



「ふふっ、でしたら私がリザイラ様の代わりにお嬢様達の拘束を解いて差し上げますわ。」

するとその時聞き覚えのある女性の声が聞こえて来た!

「……え……!?」

声を聞いたリィンが驚いたその時、突如鋼糸がリィン達の影を止めていた短剣を次々と抜き、リィン達は自由に動けるようになった!



「わわっと……!?」

「糸……!?」

「おや、貴女は……」

突然の出来事にリィン達は驚いて鋼糸が来た方向を見つめ、リザイラもつられるように視線を向けるとなんとそこにはシャロンがリィン達を見下ろしていた!



「あ、あれは……!!」

「シャ、シャ、シャ……――――シャロンッ!?」

そしてアリサが信じられない表情で叫んだその時、シャロンは飛び降り、リィン達の前に着地してスカートを摘み上げて恭しく頭を下げた。



「アリサお嬢様、お迎えにあがりました。Ⅶ組の皆様も、お変わりなくて何よりですわ。」

シャロンは驚いているリィン達に微笑み

「ガハッ!?ハア……ハア……ムッ!?」

「はあ……はあ……夢……………?」

リザイラがシャロンに気を取られた事によって幻術の効果が切れたブルブランとアルティナは息を切らせていた。



「クンクン……ん~?何か匂わない??」

「へ?……あ、あれ?こ、この匂いってもしかして……」

ミリアムの言葉に首を傾げたエリオットは鼻をかがせるとある匂いに気付いて困った表情をし

「うふふ、どうやらそちらの方が粗相をされたようですよ?」

シャロンは微笑みながらアルティナを見つめた。

「へ……」

そしてシャロンの言葉に呆けたアリサがアルティナを見つめるとアルティナは何といつの間にか失禁していた!



「あー!おもらししている~!君、見た所ボクと大して変わらない年齢だよね~!?それなのにまだおもらしなんてするんだ~!」

「~~~~~~っ!!!」

「そ、そのミリアムちゃん。あまり彼女を追い詰めない方が。それに恐らく相当恐ろしい悪夢を見せられたのでしょうから、仕方ないと思います。」

無邪気な笑顔を浮かべているミリアムに見つめられたアルティナは顔を真っ赤にして怒りの表情で唇を噛みしめてミリアムを睨み、その様子を見たクレア大尉は困った表情でリザイラに視線を向け

「ふふふ、失禁する程度で終わるとは残念です。人格を一度破壊し、一から躾け直そうと思っていたのですが。」

「う……あ……っ!?」

「リ、リザイラ様……」

「そこまでやるのは幾ら何でもやりすぎだろ……」

サディスティックな笑みを浮かべるリザイラの口から出た凶悪な言葉を聞いたアルティナは恐怖の表情で悲鳴を上げて表情を青褪めさせて身体を震わせ、その様子を見ていたミルモとリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「ククク……ハハ……ハーハッハッハッハ!」

一方シャロンに気付いたブルブランはすぐに立ち上がって高笑いをした。

「まさかこのような異郷で君と再会できるとは。これも女神の……いや、大いなる(マスター)の導きかな?執行者No.Ⅹ――――”死線”のクルーガー!」

「ふふ……そのどちらでもありませんわ。ラインフォルト家に仕える忠実なる使用人として……お嬢様の危機に駆け付けるのは当然のことですから。」

ブルブランの問いかけに対し、シャロンは冷徹な視線でブルブランを見つめた後苦笑した、



「シャロン……」

「わたしもシャロンを見習わなくっちゃ!」

「え、えっと……ちなみにどこを見習うのですか?」

「あはは、相変わらずだねー。」

「ですが……おかげで助かりました。」

シャロンの答えにアリサが嬉しそうな表情をしている中、ミルモの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかき、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、クレア大尉は安堵の表情でシャロンを見つめた。



「フフ、今はラインフォルト家に捧げられているというわけか。君の大いなる”愛”と”献身”は?」

「ええ、”結社”での使命よりも優先しているだけのこと。それ以上でも、以下でもありません。」

「クク、なるほど―――ヨシュアやレーヴェと同じ道を選ぶつもりではないようだね?」

「フフ……彼らのように後戻りできる身ではありませんから。ですが、貴方の”美”がわたくしの大切な方々を傷つけるつもりならば―――」

ブルブランの言葉に寂しげな表情で答えたシャロンは目を伏せた後身体を一回転させて片手に大型の軍用ナイフを、もう片方の手には鋼糸を構えた状態で膨大な殺気をブルブランをアルティナに向け、不敵な笑みを浮かべた!



「”容赦なく、一片の慈悲もなく”断ち切らせていただきましょう。」

「ひっ……」

「シャロンさん、凄く怖いです……」

「シャロン……」

シャロンの殺気を帯びた不敵な笑みを見たエリオットとセレーネは怖がり、アリサは不安そうな表情をした。



「ハハハ、それでこそ”死線”の忌名に相応しい!いいだろう、ならば私も”怪盗”としての全てを――――」

「―――貴様ら、そこで何をしている!?」

シャロンの答えに高揚したブルブランが戦闘を再開しようとしたが、空から突如聞こえて来た声に制止された。



声に驚いたリィン達が声が聞こえた方向を見つめると軍用飛行艇がリィン達の目の前にいた。

「しまった……!」

「貴族連合の軍用艇………!」

「戻って来てたのか……!」

軍用飛行艇の登場にリィン達が血相を変えると、監視塔の敷地内に機甲兵が現れた!



「監視塔に侵入するなど小賢しい真似を……!そこを動くな!ひっ捕らえてくれるわ!」

「き、機甲兵まで……!」

「まずいですね……完全に包囲されたようです。」

「くっ……」

「あと少しで装置を止められるのに……!」

「頃合いですね。」

「やれやれ、なんと無粋な。しかしこれで君達も進退窮まったようだな?」

「―――いや。丁度いいタイミングだ。」

ブルブランの問いかけに対し、リィンは拳を握りしめて集中しながら答えた。



「ほう……!?」

「報告にあった―――」

「リィン、まさか……!」

「行けるんだ!?」

「ええ………霊力は十分なハズよ!」

「ああ……来い―――”灰の騎神”ヴァリマール!!」

そしてリィンは心強き相棒の名を叫び

「応――――!!」

リィンの呼びかけに応えたヴァリマールはリィン達の目の前まで飛んで行くと滞空した!



「おお……!何と美しい機体か!」

「あれが……”灰の騎神”ですか。」

ヴァリマールの登場にブルブランは喜び、アルティナは冷静な表情でヴァリマールを見つめた。



「―――軍用艇と機甲兵は俺達が引きつける!!ガイウス、みんな……ここをよろしく頼む!!」

「リィン……!?」

「まさか―――!?」

助走の構えをしたリィンを見たガイウスとミリアムが驚いたその時、なんとリィンはセリーヌと共に走りだした!

「ちょ、ちょっと!?」

そしてリィンとセリーヌが監視塔から飛び降りた瞬間、リィンとセリーヌは光に包まれ、ヴァリマールの中に入って行き、機甲兵達の前に降りて剣を構えた!



「灰色の騎士人形………!何故こんな場所に……!やはり正規軍と手を結んでいたのか!?」

「……そのつもりはない。だが、ノルドを脅かす存在を野放しにするわけにはいかない!」

機甲兵の問いかけに対して静かに答えたリィンは決意の表情で叫んだ。



「図に乗るなよ、小僧……!―――上空からも援護せよ!!”灰色の騎士人形”を討ち取り、我らがカイエン公に捧げるのだ!!」

「イエス・サー!!」

操縦士の指示により、軍用飛行艇も機甲兵の背後に滞空した。

「空の方にも注意しておきなさい!地上に気を取られてたら手痛い一撃を喰らうわよ!」

「ああ、わかってる!なんとかスキを見つけて一気に片付けるぞ!」

そしてヴァリマールは戦闘を開始した! 
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