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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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太陽の村編
  新たな冒険の朝

 
前書き
妖精たちの罰ゲームでジュビアがやってた体の水をコップに入れる・・・あれ、シリルでも出来るんじゃないかな?飲む人限られてくるけど、いつかやってみたい・・・リオンあたりにやってみたい・・・(黒笑) 

 
シリルside

「シリル!!ジュビアさん!!行ったよ~!!」

木々が生い茂る森の中。そこでは今、俺とジュビアさんの二人の水の魔導士があるものを待ち構えている。上空からターゲットを追いかけていたセシリーの声がした方向へと体を向け、いつでも動けるように体を馴らしておく。

水流昇霞(ウォーターネブラ)!!」
「水竜の・・・咆哮!!」

目標のモンスターが現れたと同時にそれぞれの魔法を放つ。互いに水を操る者同士、タイミングもバッチリで一撃でその標的を倒した。

「やった~!!」
「やりましたね、シリル」
「はい!!」

地上へと降りてきたセシリーと隣にいたジュビアさんとハイタッチを交わす。今日はこの森で最近現れるモンスターの討伐にやってきた。そのモンスターが水に弱いということで、その属性を扱う俺とジュビアさんが指名されてやってきた次第だ。ちなみに、ウェンディはエルザさんと、グレイさんはナツさんと仕事に行っているので、それぞれ相手に気を使うことなくやって来ていたりする。
そして討伐したモンスターの鱗を持って依頼主の家へと行き、報酬をもらってギルドへと帰っていく。

「あぁ・・・グレイ様、帰ってきてるでしょうか?」

まだギルドにすら着いていないのに、早速想い人であるグレイさんのことを考えているジュビアさん。彼女の一途さには、感心するよね、色んな意味で。

「ジュビアさんは、グレイさんのどこが好きなんですか?」
「もう全部です!!髪の毛から足の先まで全てが大好きなんです!!」

話を振ってから失敗してしまったと後悔している。グレイさんについて語り出したジュビアさんは、適当に相づちをしている俺に目もくれず、どんどんグレイさんのいいところをあげていく。時おり・・・いや、結構な割合で直した方がいい点もあるが、彼女的には彼のそういうところも好きらしいので、余計なことは言わないでおく。
ジュビアさんのお話を聞きながらギルドへと到着して扉を開く。しかし、中にはほとんど人がおらず、マスターがカウンターのテーブルにあぐらをかいて座っているだけだった。

「あれ?皆さんはどちらに?」
「グレイ様は?」

みんな仕事に出払っているのだろうか。気になってマスターに尋ねてみる。

「グレイはまだ帰ってきてないぞぃ。他のものはあっちじゃ」

そういってある方向を指さすマスター。その先にあるのは、新しくギルドに増設された大浴場。

「皆さん、仕事しなくて大丈夫なんですかね?」
「大魔闘演武以来、仕事量が増えましたからね。休めるときに休んでおかないと」

ジュビアさんの言う通りかもしれない。大魔闘演武で優勝した俺たちは、以前の山の上のギルドの時とは違い、毎日リクエストボードが依頼書で埋まっている。たぷん、家のお風呂で汗を流すより、広いお風呂で体を伸ばした方がいいと考えて、街の人が作ってくれたんだろうなぁ。

「そうだ!!ジュビアも入ってこようっと」

そういって大浴場の方に歩き出すジュビアさん。俺もお風呂に入って汗くらいは流しておいた方がいいかな。まだウェンディも帰ってきてないみたいだし、汗臭いのは嫌だからな。

「待ってくださいジュビアさん」
「僕も行く~!!」

セシリーと一緒に先を行く彼女の後にちょこちょこと付いていく。俺とジュビアさんは二人とも手ぶらなのだが、更衣室にはタオル等の入浴セットがギルドに置いてあるため、それを拝借して入浴している人も多い。今回はそれを使えばいいと考え、手ぶらでも全然問題ないのだ。

「じゃあ、俺こっちなので」

手前が男湯、奥に女湯がある位置関係になっているお風呂。男湯の前まで来た俺は、ジュビアさんに一言言ってからそちらの扉に手をかける。

「あれ?シリルそっちはおと・・・」

それを見てジュビアさんが立ち止まり、首をかしげながら何かを言おうとしていたが、すぐに手をポンッと叩いて数回うなずく。

「そういえばシリルは男の娘でしたね、忘れてました」
「忘れないでください!!」

男の子の発音がおかしかったような気もするけど、そこはあえて突っ込まない。それよりも今はこっちの方が重要だったから。

「・・・」プルプル
「セシリー、お願いだから笑わないでくれ」

ジュビアさんの言葉につぼったのか、体を震わせて笑いを堪えている相棒にそう言う。相棒はカクカクと頷くだけで、口を開こうとしないことから、何を考えているのかはまるわかりだった。

「気を付けてくださいね」
「何を!?」

いまだに笑いを堪えているセシリーを抱えながら、こちらに手を振りつつ女湯へと向かうジュビアさんに意味深な発言をされて困惑する。何に気を付けるのかよくわからなかったけど、気にしても仕方ない。彼女が女湯へ入っていったのを確認してから、男湯の脱衣所へと入っていく。

「一体何を気を付けるんだか・・・」

服の脱ぎながら先程のジュビアさんの言葉を思い出している。石鹸で滑って転ばないようにとか、そんなところかな。
なんてことを考えながら服を脱ぎ終えた俺は、脱衣所の扉を開いて大浴場へと入っていく。その際、隣の女湯の方が妙に騒がしく、入っているロメオやマックスさんたちもなぜか頬を赤らめていた。

「どうしたの?ロメオ」
「いや・・・何でもないよシr・・・」

かけ湯のためにシャワーを浴びる前に、近くにいたロメオに何があったのか確認しようとした。彼はトマトのように真っ赤になったまま回答しようとこちらを向くと、口を開けて固まってしまう。

「シリルね・・・兄!!なんでこっちに!?」
「「え!?」」

ロメオが大声を張り上げると、どこか上の空だったウォーレンさんとマックスさんがこちらを向く。彼らは俺を見た途端、顔を真っ赤にしていた。

「うおっ!?シリル!!」
「おま!!前隠せ前を!!」
「?隠してますけど・・・」

慌てて俺に背を向ける三人。だけど、俺は腰にちゃんとタオルを巻いているし、そもそも男同士なんだから気にする必要は一切ないんだけど・・・

「シリルね・・・兄!これで()隠して!!」

顔を反らしながら自分のタオルをこちらに投げてくるロメオ。しかし、彼のその言葉でなんでみんながこんなに慌てているのか理解することができた。

「だから俺は男だって!!」

どうやら悪ふざけとかではなく、マジで女の子か何かと勘違いしている皆さん。なのでロメオにタオルを投げ返しながらそう言う。しかし、返ってきたのは非情な回答だった。

「無理だ!!もう男として見れねぇ!!」
「大魔闘演武の一件で・・・な」
「うん。あれのせいで・・・」

一体何のことを言っているのかさっぱりだが、頭に血が昇っていた俺は頬を膨らませて魔力を溜めていく。

「水竜の咆哮!!」
「「「ぎゃああああああ!!」」」

湯船に浸かっていた男たちを冷たい水で吹き飛ばした後、ポンスカと怒ったまま大浴場を後にする。

「なんだよ、あの一件て・・・」

自分が大魔闘演武でそんな風に見られるようなことをした覚えが一切ないため、頭を悩ませるしかない。服を着直した俺は、仕方ないので自分の家で風呂に入ろうと帰路へとつく。

「あ!!シリル!!」

すると、家に向かっている最中に、街の人混みの中から、こちらに手を振る二つの人影の一つの小さな猫に気が付く。

「ウェンディ!!シャルル!!それにエルザさんも!!」

それは今日、別行動を取っていたウェンディと彼女と一緒に仕事をしていたエルザさんたちだった。

「早いな、もう今日は終わりか?」
「えっと・・・そんな感じです」

言えない。お風呂場で女と間違えられたからすぐに上がってしまったなんて、恥ずかしくてとてもじゃないが言えない。

「そうなんだ!!ならよかったぁ!!」
「え?」

俺が言葉を濁しながら答えると、ウェンディがそんなことを言い出す。何がよかったのかな?

「今日の仕事でもらったスイーツ、みんなで食べようと思ってね」
「もちろん、シリルの分もあるよ!!」
「ホント!?」

なんでエルザさんとウェンディのペアなのかよくわかっていなかったんだけど、報酬がスイーツだったからなんだ。二人はケーキとか大好きだから、そういう話題で話していることが多い。無論、俺も甘いものが大好きだから、その会話に参加してるんだけどね。

「ルーシィの家で食べようと思ってな」
「ルーシィさんの家、初めてだもんね」
「そうね」

彼女たちはルーシィさんの家に向かっていたので、偶然近くを通りかかった俺を見つけたらしい。しかしスイーツなんて、すごく楽しみだなぁ。

「あれ?セシリーはどうした?」
「あ・・・」

すると、ウェンディが俺の周りをジロジロと見ながらそう言う。そういえば、セシリーギルドに置いてきちゃったんだ。頭に血が上ってたから、すっかり忘れてた。

「仕方ないわね。私がセシリー呼んでくるから、あんたたち先に行ってて」
「ありがとうシャルル」

(エーラ)を広げてギルドに向かって飛び立っていくシャルル。俺たちは、彼女がセシリーを連れてくる間にルーシィさんの家でスイーツを食べる準備をしようと、早足で向かったのであった。






















「ウェンディ、このカップをそこに並べておいてくれ」
「はい!!わかりました!!」

キッチンの食器棚から紅茶用のカップを取り出しウェンディに手渡すエルザさん。天竜はそれを落としそうになりながらもしっかりとキャッチして、ケーキの入った箱が置いてあるリビングのテーブルへと並べていく。

「あの・・・エルザさん?」
「ん?どうしたんだ?シリル」

紅茶を注ぐためのお湯を沸かしながら、ケーキを乗せるためのお皿とフォークを準備していた俺。しかし、あることが気になって仕方ない。緋色の女性に質問しようとそちらを向いてみるが、彼女は何のことなのかさっぱりわかっていないようで、キョトンとしている。

「これ、不法侵入じゃないですか?」

今俺たちはルーシィさんが借りているアパートの部屋へと入っている。しかし、その部屋の借り主である金髪の女性はここにはいない。理由は簡単、彼女はまだギルドから戻ってきていないからだ。

「何、気にするな。同じギルドの仲間じゃないか」
「そ・・・それでいいのかな?」

ギルドの仲間の一言でこの事態をあっさりと解決しようとするエルザさんに、苦笑いするしかない。ただ、俺もスイーツが楽しみなため、罪悪感よりも先に食欲の方が勝ってしまい、紅茶をカップに注いでいるウェンディの隣へとちょこんと座る。

ガチャッ

俺たちが全員ソファに腰かけたそのタイミングで、部屋の扉が開く。そこにいたのは、この部屋の所有者であるルーシィさんだった。

「おかえりなさい」
「失礼してます」
「邪魔しているぞ」
「なんか懐かしい!!」

何食わぬ顔で挨拶するエルザさんと同様に彼女に挨拶するウェンディと俺。その脇ではシャルルとセシリーは自分たちで淹れた紅茶を一口飲んでいるところだったりする。

「ごめんなさい。勝手にお邪魔しちゃって」
「俺は注意しましたよ」
「なかなかいい部屋じゃない」
「ちゃんと整頓してるね~!!」

一応謝罪しておくウェンディと言い訳だけはちゃんとしておく俺。その他の三人は全く悪びれていないのだが、親しき仲にも礼儀あり、なんじゃないかな?

「報酬でもらったスイーツだが、ちょっと私たちでは多すぎてな。おすそわけに来たというわけだ」
「わぁ!!ありがとう!!」

だが、ルーシィさんは部屋に勝手に人が上がっていたにも関わらず、一切気にしている様子がない。心が広いのか、はたまたこの状況がよくあることなのか・・・

「あ!!じゃあ仕事うまくいったんだね!!」
「え・・・まぁ・・・」
「バッチリだ!!」

ルーシィさんの問いにひきつった笑顔で答えるウェンディと得意気な表情のエルザさん。これはもしかしたら、失敗した感じなのかな?エルザさんが気付いていないだけで。

「客席もかなり盛り上がってな!!すごい歓声だったぞ!!」
「あれは歓声とは言わないのよ・・・」

エルザさんが仕事でのことを語り出したが、シャルルは呆れながら突っ込み、ウェンディはただ苦笑いを浮かべるだけ。よっぽどだったんだな、何かが。

「ところで、ハッピーたちはまだ帰ってきてないの?」
「そういえば。簡単な仕事だって言ってたのに遅いね」
「「おお?」」

突っ込んだ勢いでシャルルがルーシィさんにそんな質問をする。それを聞いてセシリーと少しいじろうかとしたのだが、キッと睨まれて言葉を飲み込んだ。

「バカな、もう三日も立っているんだぞ?あいつらの分もあるというのに」
「何かあったんですかね?」

エルザさんがナツさんとグレイさんというギルド内でも上位に入る実力者二人が行っているはずなのに、時間がかかりすぎていると心配し、俺もそれに同意する。

「近場のはずだから、ちょっと見に行ってみようか?」
「そうだね~」
「別に心配してるわけじゃないわよ」
「そうだな。あの二人の実力でここまで遅いとなると、いささか気になる」
「何かトラブルでもあったんですかね?」
「う~ん・・・」

なぜここまで遅いのか全く検討がつかない。もしかしたら以前エクシードの村に行った時のような、予想外の敵でもいたのだろうか?それなら遅いこともうなずけるけど・・・

「善は急げと言いますし、行ってみましょうよ」
「うん」
「そうだな」
「待って!!あたしも行く!!」

悩んでいても仕方がない。俺たちはこの近くの森でモンスター討伐を行っているナツさんとグレイさんの様子を見るために、その場所へと向かった。





















ナツさんたちが仕事をしているはずの森。そこに俺たちはやって来た。そして、俺たちの目の前には、巨大なモンスターが白目を向いて倒れている光景が広がっている。

「デカッ!!」
「何?こいつ・・・」

人の十倍は軽くあると思われるそのモンスターを見て思ったことを口にするルーシィさん。俺はでかすぎるその生物を見て、唖然している。

「これは・・・」
「依頼書のモンスターです!!」

どうやらナツさんたちが受けた依頼は、目の前にいるこのモンスターの討伐らしい。こんなの街の近くにいたら、かなり危険だろうからね。

「もうとっくに始末済みのようね」
「白目向いてるもんね~」
「ナツたちはどこにいったのだ?」

辺りを見回しお目当ての人物たちを探す。しかし、周囲にはそのような人影が一切ない。

「濡れた土とハッパの匂いが強くて、ナツさんたちの匂いを追えません」
「見た感じ、近くにそれらしい人影は・・・!!」

鼻をヒクヒクさせて彼らの匂いを探るウェンディ。俺は目である程度の距離まで透視をしてみると、こちらに木の棒をついて近づいてくる一つの小さな影を見つける。

「いた!!」
「「「「「え!?」」」」」

俺がそちらを指さすと、一斉に彼女たちが振り返る。そこには、隈を目の下に浮かび上がらせて、疲労が見てとれるハッピーがフラフラとした足取りでやって来ていた。

「ハッピー!?」
「どうした~!?」
「えぇぇぇぇ!?」

彼のあまりの変わりように驚愕し、すぐに駆け寄る猫二匹。

「シャルル・・・セシリー・・・助けて・・・」

ハッピーはそう言うと、力尽きて地面に倒れ込む。それを見て俺たちもすぐに駆け寄っていく。

「「ハッピー!!」」
「すぐに治癒します!!」
「俺も!!」

彼を抱えて治癒の魔法をかけるウェンディと俺。しばらくすると、疲労感が滲み出ていた彼の顔に生気が戻ってくる。

「うぅ・・・」
「気がついた?」
「無理しないでね~」
「一体何があったのだ?」

意識を取り戻し、閉じられていた目を開くハッピー。彼が目覚めたことにシャルルとセシリーはホッと胸を撫で下ろしている。

「ケガはありませんが、疲労がすごいです」
「まるで徹夜してたみたいな感じですね」

ハッピーの体に目立った傷はない。ただ、よほど疲労していたらしく、俺たちを見て安心したのか、意識を失ったみたいだ。

「ハッピー、ナツとグレイは?一緒じゃなかったの?」

ルーシィさんが他の仲間のことを質問する。それに対し、ハッピーは半開きの目をしたまま、力なく答える。

「大変なんだ・・・ナツとグレイが・・・」
「え!?ナツとグレイがどうしたの!?」
「そ・・・それが・・・」























「この野郎・・・」
「てめぇ・・・いい加減にしろよこのクソ炎!!」
「それはこっちのセリフだ!!変態野郎!!」

ハッピーに案内されて二人の元へとやって来た俺たち。それはいいんだけど、彼らは顔を大きく腫らしながら、互いに相手に文句を言い、殴り会いをしている。

「あぁ・・・」
「何やってるんですか・・・」
「いつものことか」
「心配してたのに・・・」

予想の斜め上を行っている二人の行動に呆れを通り越してしまった俺たちは、止める気力もなくただその様子を見ている。

「ね~?まさかとは思うけど~」
「三日もこれやってんの?」
「寝たりごはん食べたりはしてるよ」
「あら、可愛らしいケンカだこと」
「ケンカって言わないよ~、それ」

どうやら休み休みこの殴り合いを繰り広げていたらしい。するとエルザさんが、手を叩き彼らの意識を向けようとしながら、ケンカを止めようと歩み寄る。

「コラ、お前たち。その辺にしないか。早く帰ってスイーツでも―――」
「「うるせぇ!!」」
「「「「「ああああああ!!」」」」」

ケンカを止めようとしていた緋色の女性。それをあろうことか二人揃って顔面パンチをお見舞いするナツさんとグレイさん。それを見て俺やウェンディは青ざめている。

「ほう・・・」
「エルザ!?」
「なんでここに!?」

いるはずのない人物を見てケンカしていたことなど頭から吹き飛び、お互いに抱き合い体を震わせる二人の青年。それに対し、怒ったこの女性は、大きな剣を別空間から取り寄せる。

「「うわああああああああ!!」」

エルザさんの一撃を受けた炎の竜と氷の魔導士。森には二人の断末魔が響き渡ったのであった。






















その後、エルザさんをなんとかなだめてギルドへと帰ってきた俺たち。しかし、彼女の恐怖から解放された二人は、互いにそっぽを向いて不機嫌さを露にしていた。

「もう二度とこいつとは仕事いかねぇ」
「こっちから願い下げだバカ野郎」
「仕方ねぇな、二人とも」
「ガキじゃあるまいし」

彼らの姿を見てエルフマンさんとロメオはいつも通りのことに笑っている。

「マスター!!緊急の依頼書、回ってきました」
「またかよ」

そんな二人とは離れたカウンター席で何やら話していたマスターとラクサスさん。彼らの元に、たった今評議院から回ってきたばかりの依頼書たちを持っていくミラさん。

「ナツ!!グレイ!!またお前らを指名の依頼書じゃ!!」
「「またかよ!!」」

マスターに言われて息のあった突っ込みを入れるナツさんとグレイさん。仲がいいのか悪いのか。

「そっか、そういう理由であの二人だったんだ」
「大魔闘演武以来、魔導士を指名してくる依頼増えたもんね」
「二人とも選手だったから、人気出たんだね」

彼らのケンカに巻き込まれないように別の席に集まっていた俺、ウェンディ、ルーシィさん、エルザさんの四人が、なぜあの二人で依頼に行っていたかの理由がわかり納得している。

「せっかくの指名だ、今度は仲良く行ってこい」

睨みを効かせたエルザさん。大丈夫かな?あの二人だけで・・・

「安心せぇ、今度はシリルも一緒じゃからの」
「えぇ!?」

すると、マスターの口から最悪の悲報が発せられる。それを聞いた俺はすでに先のことを考えてしまい、今すぐにでも逃げ出してしまいたい・・・

「ん?んん?これは・・・」
「なんだよじっちゃん!!」
「俺はこいつとはいかねぇ」
「俺もいかねぇ!!」
「触んな」
「二人とも、仲良くしてくださいよぉ・・・」

依頼書を見て固まっているマスターに歩み寄って仲の悪さを滲み出させているナツさんとグレイさん。これの相手を一人でなんて、絶対無理だよ・・・

「大丈夫?シリル」
「帰りたくなってきた・・・」

ウェンディが心配そうに聞いてくるが、こればかりはなんともできない。そもそもなんで俺もなんだ?やめてほしいよぉ・・・

「いや、行かねばならん。そして、絶対に粗相がないようにせよ」
「じじぃ?」

何やら様子がおかしいマスター。彼の孫であるラクサスさんもそれを感じ取ったらしく、訝しげな表情で彼の方を見ている。

「依頼者の名は、ウォーロッド・シーケン。聖十大魔道序列四位、イシュガルの四天王と呼ばれる方々の一人じゃ」

それを聞いた瞬間、先程まで騒がしかったギルド全体が静かになった。それだけのことが、今起きているのである。

「聖十大魔道の一人が依頼人!?」
「え!?なんでなんで~!?」
「どういうこと!?」
「なんでそんなすごい人が・」
「ギルドに依頼を?」
「何事なんだ?」
「「あぁ?」」

どういうことなのかさっぱり理解していない様子のナツさんとグレイさんとは違い、俺やウェンディたちはあまりのことに気が動転している。一体彼の依頼が何なのか、そしてなぜ依頼を出したのか、すべては謎に包まれていた。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
ようやく冥府の門(タルタロス)直前のストーリーに突入です。
おおよそ構想は決まっているので、頑張っていこうと思います。 
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