FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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妖精たちの罰ゲーム
前書き
ついに日常編ラストです。なんとかOVA発売まで日常編が続いたことに驚きを隠せない。
もっとFAIRYGIRLSのネタで何かやろうかとも思っていましたが、シリルを絡ませるストーリーが見当たらずあえなく断念。
あぁ!!シリルが女の子ならよかったのn「水竜の鉄拳!!」ウギャッ!!
ある日の早朝。ここ、妖精の尻尾では、大魔闘演武に出場した12人が集められている。
「これより、大魔闘演武チーム統合でうやむやになっていた・・・AチームとBチームの決着をつける!!」
大魔闘演武一日目の競技『隠密』の最中にジュビアさんが言っていた「勝ったチームが負けたチームを好きにできる罰ゲーム」、それのために集められたのである。
「負けた方が勝った方の言うことを一日だけ何でも聞くこと!!」
「こいつぁ負けられねぇな」
「絶対勝てよ!!雷野郎!!」
Bチームからは指をポキポキと鳴らしてやる気満々のラクサスさん。
「悪いが勝つのは私たちだ」
対する我々Aチームからはエルザさん。
「やっちまえエルザー!!」
「向こうにはエグい奴等が揃ってる」
「負けたら何されるかわかんないよ」
「頑張ってエルザさん!!」
向こうのチームにはカナさんやガジルさんといったヤバイ面子が揃っている。もし負けようものなら、それは死を意味するであろう。
「「ポンッ!!」」
前に出てきた二人が互いの右手をつき出す。エルザさんはチョキ、ラクサスさんはグー。ここまで言えば皆さんお分かりであろう。勝負種目は・・・じゃんけんなのである。
「勝ったのはBチーム!!」
「おし!!」
「イェーイ!!」
「漢ぉ!!」
「ギヒヒ」
「楽しみね」
じゃんけんなので、当然ラクサスさんのグーがエルザさんのチョキに勝った。そのため、Bチームはみんな大喜びで一体何をさせようか考えているみたいだ。
「ついに、グレイ様を好きにできる日が・・・」
中でもジュビアさんは相当嬉しいようで、なんか溶け始めている。
「「「最悪だ・・・」」」
「そんなぁ・・・」
「私たち・・・どうなっちゃうんですか~?」
一方敗北した俺たちは、全員が最悪の事態に青ざめている。じゃんけんで負けたエルザさんに至っては、もはや話す気力もないようである。
「うぷぷ、楽しそう」
「ドンマイシリル~」
「諦めなさい。ウェンディ」
そんな俺たちの足元では、ハッピーとセシリー、シャルルが罰ゲームを受ける俺たちを見てニヤニヤしている。
「お前たちもな」
「「「?」」」
すると、そんな三匹のところにもう一匹のエクシードが現れる。
「相棒のエクシードも、連帯責任で同じ罰が与えられる」
「えーっ!?」
「何よそれー!?」
「聞いてないよ~!!」
リリーからのまさかの発言に納得できないセシリーたち。お前たちだけ逃げようなんて、虫がよかったと言うことだ。
「ど・・・どうしようシリル・・・」
すでに涙をボロボロと流している少女がこちらを見つめてくる。しかし、個人的にではあるが、何となく大丈夫な気がする。
たぶん一番エグいラクサスさんはナツさんを選ぶだろうし、ジュビアさんはグレイさん、ミラさんはエルザさん、ガジルさんはルーシィさん。残るはエルフマンさんとカナさんだけど、たぶんカナさんはウェンディを選ぶだろうから、俺は難を逃れることができるかもしれない。ウェンディはヤバイことになるかもだけど・・・
「俺はナツをもらうぞ!!」
最初に名乗りを上げたのはエルフマンさん。だけど、ナツさんはたぶんラクサスさんが―――
「あぁ、いいぞ」
「えぇ!?」
いきなり予想外の出来事が起きてしまった。まさかラクサスさんがナツさんを譲るなんて・・・これはもう嫌な予感しかしないぞ。
「ジュビアはもちろんグレイ様!!」
「あ・・・あぁ・・・あ・・・」
続いてジュビアさんがグレイさんを指名する。指名された彼は寒気がするようで、真っ青になっていた。
「私はエルザね」
「う・・・」
「俺はお前だ」
「いやあああああ!!誰か替わって!!コレ絶対一番外れだから!!」
ミラさんがエルザさんを、ガジルさんがルーシィさんを指名する。二人は自分を指定した相手が嫌なようで、特にルーシィさんは大騒ぎしている。
「ということは・・・」
背中に嫌な汗を感じながらまだ相手を選んでいない二人の方を見る。そのうちの一人、雷を操る竜と視線が合ってしまい、どっと汗が吹き出してきた。
「俺はお前だ、シリル」
「ぎょえええええええええええええ!!」
頭を掴まれ逃げられなくなってしまった俺を見て不敵な笑みを浮かべる雷竜。よりによって一番エグい人に当たってしまうなんて・・・
「じゃあ・・・私は・・・」
びくびくと体を震わせ心配そうな表情をしているウェンディ。そんな彼女の元に、カナさんがやって来る。
「お姉さんのもの」
「ひゃああああああっ!!」
ウェンディもかなりヤバイ人に捕まってしまい、思わず悲鳴を上げている。こうして、Bチームによる罰ゲームが開始されたのであった。
第三者side
「ナツ!!なんか漢らしいもんを買ってこい!!」
「んだそりゃあ!!意味わかんねぇよ!!」
エルフマンに意味不明な指示をされて絶叫しているナツ。しかし、今日の彼は大柄なその男に逆らうことができない。
「今日一日は何でも言うことを聞かなきゃいけないんだぜ?」
「うぐっ」
エルフマンにそう言われ、反撃の余地なく外へと飛び出していくナツ。彼は心に決めた。今日一日が終わったら、奴をタコ殴りにしようと。
(に・・・逃げ場がねぇ・・・)
ギルドのある一室で其ボクシング漫画のラストシーンのような姿勢になっているグレイ。彼は、自分にここで待つようにといった女性が何をしようとしているのか、理解できずにただ暗い表情で待つことしかできなかった。
「グレイ様、顔色が悪いですよ?どうかしたんですか?」
そこに、今日の彼のご主人様であるジュビアがやってくる。彼女は彼の隣に腰かけると、心配そうに彼の顔を覗き込む。
「いや・・・なんていうか・・・色々な・・・」
「それは大変!!熱は!?頭痛は!?」
「熱なんかねぇ。ただちょっと疲れてるd―――」
グレイが言い終わるよりも早く、ジュビアは彼の額へと手を伸ばす。グレイのおでこに彼女の手が触れた瞬間、なぜかものすごい勢いでジュビアは手を離した。
「今・・・グレイ様の額にジュビアの手が・・・」
今まで大好きな彼の顔に手を触れたことなどなかったジュビアは、あまりのことに興奮して自分の手にキスをしている。そんな彼女の頭の中は、グレイとの妄想でいっぱいだ。
「あ~ん!!熱すぎます!!この熱を下げてあげなければ!!」
「だから熱ないって!!」
自分の妄想でグレイとラブラブになっていたジュビアは顔を火照らせ興奮状態。ただ、グレイはどんな妄想をしているかわからないため、先程の話の流れから突っ込むことしかできない。
「こんなこともあろうかと・・・」
一度グレイに背を向けて、何かをゴソゴソと漁っているジュビア。彼女はお目当ての品を見つけると、それを手に取りグレイに向き直る。
「ジュビアはアイスを用意しました!!」
彼女はそう言うと、カップに入っているバニラアイスをスプーンで掬う。
「グレイ様、あ~んしてください。あ~ん」
「あ・・・あ~」
ゆっくりとグレイの口にアイスを運んでいくジュビア。しかし、ここである誤算が起きてしまう。
夢だったグレイへあ~んをすること。そのことで緊張してしまったジュビアは手を滑らせ・・・
ボスッ
「ぶほっ!!」
「あーーーーー!!」
グレイの喉にスプーンを突っ込んでしまった。
「何しやがるてめぇ!!」
「ごめんなさい・・・ジュビア・・・緊張で手が・・・」
咳き込みながら怒鳴るグレイ。ジュビアは申し訳なさで謝罪をした後、突然服を半分脱ぎ、コップを取り出す。
「お水をどうぞ」
「飲めるか!!」
自身の体から水を発生させてコップへと移すジュビア。しかし、体から作った水を飲むなどグレイにはできるはずもなく、しばらくコップの押し付け合いが起きたのであった。
「なんだ・・・こんな格好をするだけでいいのか?楽なものだ」
そう言って堂々と仁王立ちしているのは胸元が大きく開いたメイド服に身を包んでいるエルザ。彼女の周りにいる男たちは、全員目をハートにして見とれている。
「とっても似合ってるわよ、エルザ。でも言葉使いがなってないわね。それにもう少し恥じらってもらわないと面白くないわ」
「それは無理だな」
罰ゲームのはずなのに、全くそのような雰囲気を見せないエルザに残念そうにしているミラ。しかし、それを見てミラはあることを思い付いた。
「じゃあこうしましょう」
「「「「「オオッ!!」」」」」
場所が変わってマグノリアの大通りの真ん中。ここでは、腕をロープで縛られたエルザがお尻を突き出した格好で地面に付している。
「なぜ通りの真ん中なんだ・・・」
「ご主人様にお仕置きされるメイドさんってシチュエーション」
「だからなぜ通り・・・これは・・・なんとも屈辱的な体勢だな」
自身の疑問に一切答えようとしないミラ。なので、その疑問は一度忘れて恥ずかしさに顔を赤らめながら周囲の人々と目を合わせないようにする。
「さぁ・・・言って頂戴。「許してくださいご主人様」と」
「こ・・・断る!!」
ミラの要求に対し必死に抵抗するエルザ。それを聞いたミラは彼女の下着が丸見えになっているお尻を思いきりひっぱたく。
「言わないか!!このはしたないメイドめ!!」
「ひっ!!」
魔人ミラジェーンへと接収した彼女は、反撃することができないエルザのお尻を何度も何度も叩く。それを見ている街の男性陣は興奮しながらそれに見入っている。
「完全に昔のミラ姉に戻ってる・・・」
「エルザはよく我慢してる」
「後が怖ぇから見なかったことにしよう」
群衆の中から距離を取っていくリサーナとワカバとマカオ。彼らは今日が終わった後、ミラがエルザに何をされるのか想像に難くなかったため、見たい気持ちを押さえつつ、彼女たちに背を向ける。
「シュビドゥバー♪トゥットゥットゥルー♪」
すると、彼らが振り向いた先に突如巨大なステージが出現する。そこにいるのは椅子に腰掛けギターを引くガジルと、バニーの格好で踊っているルーシィとレビィ。
「てかなんで私までやらされてんの?」
「ごめんレビィちゃん・・・」
片方ではエルザを辱しめるミラ、反対側ではバニー姿で踊るルーシィとレビィ。状況をイマイチ飲み込めてはいないが、マグノリアの人たちからすればそれは最高のサプライズだったそうな・・・
その頃、シリルはというと・・・
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
ギルドのある場所で海パンにラッシュガードという格好をしているシリル。かn・・・彼はその場に膝をつき、大きく息を乱していた。
「オラ、手を休めるなよ」
そう言って彼を見下ろすのは雷の滅竜魔導士。そのラクサスの格好は、なぜか裸にタオル一枚という姿だった
「だって・・・ラクサスさんの大きくて・・・」
上目遣いで彼を見つめながら、涙目になりつつ言い訳をする水髪の少年。
「口だけじゃなくて手を動かせ、手を」
「プゥ・・・」
シリルは頬を膨らませながら、自分のそれよりもずっと大きな・・・
ラクサスの背中へと手を伸ばし、タオルで力一杯擦っていく。
「全然弱ぇぞ、もっと力入れろ」
「入れてますよぉ!!」
自身の体重をすべてかけて洗っているのに、ラクサスは全然満足してくれない。イライラしてきたシリルは、半ばやけくそになりながら彼の背中を流している。
「ラクサス、背中なら俺が・・・」
「また今度な」
「・・・」
「フリードさん!!悪いのは俺じゃないです!!」
ラクサスの背中を流そうと提案したフリード。しかし、ラクサスに断られた彼は、シリルを恋敵のように睨み付ける。全く非がないシリルは、彼のその視線にビビりながら背中を擦り続けている。
「これが終わったらすぐに出掛けるぞ」
「どこにですか?」
不意にそんなことを言われて首をかしげるシリル。しかし、彼はすぐに今が罰ゲームの最中なのだと思い出し、ある考えに至っていた。
(まさか・・・荷物持ち!?)
きっととんでもない量の荷物を持たされるのだと悟ったシリルは、ガッカリと項垂れる。
(ウェンディは大丈夫かな?)
自分と同じくらいヤバイ相手の手に渡ってしまった少女。彼女のことを考えながら、シリルは何とかして逃げる方法がないかと頭の中で構想を練っていた。
その頃、カナに捕まっているウェンディは、洋服店へとやって来ていた。
「あの~カナさん。何ですか?この服・・・」
試着室からカーテンを開けて出てきたウェンディ。彼女は純白のドレスにウェーブをかけ、手にブーケを持っている。つまり、ウェディング姿なのだ。
「ウェディングドレスだよ。う~ん・・・違うなぁ・・・」
カナは可愛らしくおめかしされている彼女を見て首を傾げると、すぐ近くにあるたくさんの服が入っているかごの中を漁り始める。
「あの私・・・まだシリルとそこまでの関係じゃないですし、年齢的に早いかなって・・・」
ウェンディは今すぐにでも結婚式場に連れていかれそうな自分の格好を見てそう言う。すると、彼女はあることに気付いた。
「もしかして!!私、誰か知らない人と結婚させられちゃうんですか!?そんなのイヤです~!!」
年齢的にはまだシリルとウェンディはそう言う関係になるには早い。なので、ウェンディはそんなありもしないことを考え涙を流している。すると、そんな彼女のことなど知ってか知らずか、カナが新たな服を手に取りウェンディに見せる。
「次!!コレ着てみて」
「え?」
言われるがままにその服に身を包むウェンディ。そんな彼女の格好は、まるでレースクイーンのような姿だった。
「ビックリするほど似合いませんね、すみません」
「次コレ!!」
続いて渡されたのは舞踏会で着るような金ぴかのドレス。それを着てみた彼女は、髪もまとめて少し大人びているようにも見えるが・・・
「コレも似合ってないと思います」
まだ幼い彼女にはその服は早かった。胸元に大きくVカットが入っているが、それを生かすものがまだないため、どこか物足りない。
「あの~・・・」
「違うなぁ」
続いて現れたのはナース服に着替えた天竜。しかし、カナは納得いかず、首を傾げている。
「コレはダメです!!」
そして、最後に着替えさせられたのは、ボンテージのような露出が激しい格好、ウェンディはあまりの恥ずかしさに両手を腕の前でクロスさせ、顔を赤らめている。
「あの・・・私にいろいろな格好をさせて、何をするつもりなんですか?」
次に渡された服に着替えるためなのか、一糸纏わぬ姿でカーテンから顔を覗かせるウェンディ。彼女はカナが何をしようとしているのか、不安で不安で仕方ない。
「そーゆーのが好きなオッサンのところに行ってもらう」
「そーゆーのって何ですか!?なんかすごく嫌な予感がするんですけど!!」
お酒を煽りながら冷静に答えるカナとは正反対に焦りまくっている天竜。彼女の顔からは変な汗が吹き出している。
「やっぱり私には服選びのセンスねーな。いつもの服でいいや。さっさと着替えな」
「イヤです!!私帰ります!!」
「逃がさないよー!!」
服を持ってお店から逃げ出そうとするウェンディ。しかし、カナの反応の前にあっさり捕まってしまい、朝着ていた服に着替えて、彼女の後についていったのであった。
「いくら罰ゲームでもひどすぎます・・・私・・・何をされるんですか?」
とぼとぼとカナの後ろを付いていく天竜。彼女は白のノースリーブシャツに赤のスカートを合わせた少女のようなコーデをしている。
「まぁ、ベタベタ触られるだろうね」
ニヤッと泣きそうな天竜を見ながらイヤらしい笑みを浮かべるカナ。それを見てますます不安が増してきたウェンディは、すぐにでも涙を流すことができそうなくらい目に雫が溜まっている。
「お!?いたいた!!お~い!!」
突然誰かを見つけたのか、手を振り始めるカナ。ウェンディは彼女の後ろからどんな人なのか、そっと様子を観察しようと考えた。しかし、彼女は前にいる二人組を見て、一瞬思考が停止した。
「な・・・なんで・・・シリル?」
そこには彼女の恋人であるシリルと、彼の今日のご主人様であるラクサスがいたのだった。
「ったく、おせぇぞ」
「ウェンディ!?それにカナさん!?」
ラクサスの後ろで小さくなっていた水竜が、天竜を見つけてパッと笑顔になり、彼女に飛び付く。
「どうしたの?こんなところで」
「シリルこそ」
先程までの不安感から解放されたかに見えた二人の竜。しかし、非情な現実をこの男女から言われる。
「おい、一々騒いでんなよ」
「んじゃ、二人揃ったし、そろそろ行くとしようかね」
「「え?」」
彼らはここがゴールだと勝手に思い込んでいた。しかし、本当は違う。ただ、二人を一緒に連れていくつもりだったから、ここで待ち合わせていただけのようだ。
「カナさん?まさかシリルと一緒に身売りされるんですか!?」
「え!?身売りって何!?」
カナのここまでの発言からおかしな推測をしているウェンディ。彼女の勘違いを真に受けたシリルは、一体どういうことなのか困惑していた。
「まぁ、二人揃ってた方がお高いからね」
「お前は適当なことを・・・」
後ろの竜たちの反応が面白かったからなのか、彼女たちの不安を駆り立てるような発言を咬ますカナ。その隣でラクサスがため息をついているが、カナはとっても楽しそうに鼻唄を歌っている。
「やっぱり私帰ります!!」
「お・・・俺も!!」
「ダメだ」
「もう着いたよ」
「「にゃあ!!」」
身の危険を感じ、踵を返して逃げようとするウェンディとシリル。しかし、ラクサスとカナに頭を掴まれてしまった彼らは、チラッとどこに着いたのか確認してみる。
「「・・・??」」
そこに建っているのは教会。なんでこんなところについたのか、二人は意味がわからず唖然としている。
「コラコラ!!教会に酒を持ち込むんじゃない!!」
「おー、ブロック神父、久しぶり」
カナさんとラクサスさんを先頭に教会の敷地内に入ると、カラフルな服へと身を包んだ神父がやってきてカンカンに怒っている。
「あれだけダメじゃと小さい頃に口を酸っぱくして言っただろ」
「「小さい頃?」」
注意されてもお構い無しにお酒の入っている瓶を持ったまま、ズケズケと敷地の中に侵入していくカナ。その後ろでは神父が説教をしながら付いてきている。
「カナ、酒置いてけよ」
「大丈夫だって、ブロック神父はそう言いたいだけだから」
ラクサスに注意を受けるが、全く気にした様子もないカナ。そんなことをしていると、教会の奥にある大きな広場につく。そこには、シリルとウェンディぐらいの歳の子供たちがたくさん集まっていた。
「カナだ!!」
「カナが来たよ~!!」
「わ~い!!」
カナの周りに集まってくる子供たち。それに呆然としている二人のチビッ子に、ブロック神父が声をかける。
「おおっ!!君たちが前にカナが話していたシリルさんとウェンディさんかね」
「「え?」」
一体何の話をしているのかさっぱりな二人。とりあえず間違ってはいないので頷いておくと、それを見た子供たちは目を輝かせている。
「シリル!!?」
「ウェンディ!?」
「あのシリルとウェンディ!?」
「大魔闘演武見てたよ!!」
「わーっ!!本当に俺たちと同じ歳くらいなんだね!!」
あっという間に囲まれしまう水竜と天竜。まだ事情を飲み込めていない二人は、目を白黒させながらカナとラクサスに視線を向ける。
「え?これって一体・・・」
「あの・・・カナさんコレ・・・どういうことですか?」
「何でもねぇよ」
「いーから、相手してやんな」
めんどくさそうなラクサスと笑みを浮かべて教会の子供たちに囲まれている二人を見ているカナ。
「ねーねー!!大会の話聞かせて!!」
「あ・・・うん」
「シェリアって強かった?」
「レオンってやっぱりすごい?」
「かっこいい人いた?」
次から次に質問攻めにされている二人。彼らをここに連れてきた二人は、少し離れた場所からその様子を見守っている。
「服のセンスはイマイチだのぅ」
「言われると思ったからおめかしさせてこようと思ったんだけどね」
「いや、あんたにだけは言われたくねぇよ」
神父の言葉に予想通りといった顔をするカナとズバッと本音をぶちこむラクサス。神父はその突っ込みには何も答えず、子供たちの方を見つめている。
「悪いねラクサス。せっかくの罰ゲームを」
「いいよ。カミュにシリルをあんまいじめんなよって言われてっしな。それに」
下げていた視線を上げ、シリルとウェンディを見た雷竜。その瞳に映った彼らは、ギルドで見せる表情よりも何倍も輝いていた。
「いい面してんじゃねぇか、あいつら」
「間違っても襲うんじゃないよ」
「誰がだ!!」
そして日が落ち、辺りが暗くなった頃、教会の子供たちとお別れを告げたシリルとウェンディ、そして彼らを連れてきた二人の男女は近くの森にやって来ていた。
「あそこの教会は身寄りのない子供たちの世話しててさ。私も昔ちょっとだけ世話になったんだよ」
「カナさんが?」
「なんでですか?」
木に寄りかかりさっきまでいた教会について話しているカナたち。ラクサスはその木の上で、一人空を見上げている。
「お父さんを探してギルドまで来たのはいいんだけど、あの頃は宿に泊まる金もなくてね。この前あの子らにアンタたちの話をしたら、みんな会いたいって聞かなくてさ」
「私にですか?」
「ちょっと嬉しいです」
意外そうにキョトンとしているウェンディと顔を少し赤くさせてハニカムシリル。
「同世代のスターなんだ。アンタたちはあいつらは希望だよ」
それを聞いて視線を交わらせた水竜と天竜は、ニッと口角を上げる。カナは嬉しそうにしている二人を見た後、星が輝き始めた空へと視線を移す。
「私がアンタくらいの時は、ナツもグレイもエルザもミラも、みんな同世代だったんだ。お父さんに会えないのは寂しかったけど、のんびりとした平和な時代だった。
アンタたちはさ、その歳でずいぶんとハードなこといろいろ経験してるだろ?本当はまだ子供だってのにね」
「いえ・・・そんなことは・・・」
「あの・・・私は・・・」
言葉をうまく伝えられない二人を見て、カナは二人をギュッと抱き締める。
「わかってるよ。ギルドは家族だもんな、寂しいってわけじゃない。
だけど同世代の話し相手は必要だ。あの子たちにも、アンタたちにもね」
「カナさん・・・」
「優しい罰ゲームですね」
自分たちのことを思ってのことなんだと感じたシリルとウェンディは、カナの優しさに頬を緩ませる。
「これからもたまにはあの子たちに会ってくれるかい?」
「はい!!」
「もちろんですよ!!」
「それと、いい忘れてたけど、私が、アンタたちくらいの時は・・・もうちょっと胸あったよ」
「きゃん!!」
「だから俺男ですって!!」
不意に胸を揉まれて恥ずかしそうにしているウェンディと例の如く突っ込みを入れるシリル。そして、話し終わった少女たちは、その場でスヤスヤと眠りについた。
「ったく、こんなところで寝るなよ」
三人が眠ったのを見ていたラクサスが木から降りてきて、彼女たちの前に立つ。幸せそうな笑顔で眠っている彼女たちを見て、ラクサスは思わず笑みを浮かべる。
「風邪ひいちまうだろうが」
そういうと男は、上着を脱いで真ん中のカナに寄り添うように眠っているシリルとウェンディにも被さるようにそれをかける。
「さて・・・帰るか」
彼女たちを起こさないように、音を立てずにその場から離れていく青年。彼は一度立ち止まり振り返り、幸せそうな表情の三人を見て笑みを浮かべた後、ゆっくりと帰路へとついたのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
OVAが予想の斜め上を行っていたため、あえなくアニメと原作をごちゃ混ぜにさせていただきました。
たぶん森のところを仮にやったとすれば、シリルはグレイに肩車されたような気がします。グレイと猿のキスシーンを書きたくなくて飛ばしましたが。
後この話は、ラクサスはきっといい奴という作者の妄想の元できてますのであしからず。
次からはいよいよ冥府に入っていきます。長かった。ちょっとシリルで遊びすぎました。
冥府でもシリルはいじる予定がありますので、お楽しみに。
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