英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第16話
~メンフィル帝国軍・ケルディック地方・双龍橋方面国境防衛部隊~
「……ねえ。実際メンフィル帝国ってそんなに強いの?12年前の”百日戦役”でエレボニア帝国軍を圧倒した話は知っているけど。」
リィン達が黙り込んでいるとセリーヌが静寂を破って尋ね
「ああ……特別実習で異世界にあるメンフィル帝国の帝都でエリゼ君達から教えられたが……国力、戦力共に圧倒的にメンフィル帝国が上だ。もし戦争になったら、普通に考えれば負けるのは間違いなくエレボニア帝国だ。」
「しかも一般兵ですら俺達人間と比べると圧倒的に身体能力が上の異種族達―――”闇夜の眷属”がいる上、エステル達の話だとメンフィル帝国軍の一般兵の強さはリベール王国軍の選りすぐりの実力を持つ王室親衛隊員クラスだそうからな。一般兵の時点で、既に圧倒的な差が付けられているんだよ。」
「そしてメンフィルがまだ小国だった頃から多くの功績を残してメンフィルを支えたリウイ陛下やファーミシルス大将軍を始めとした多くの古参の英傑達が健在な事に加えて、プリネさんやリフィア殿下、そしてサフィナ元帥のような”幻燐戦争”にてリウイ陛下達と肩を並べて共に戦った英傑達の力を受け継ぎ、将来が期待されている若き英傑達。そしてゼルギウス将軍やシグルーン副将軍のような百戦錬磨の多くの勇将達がいる事や導力技術による兵器と比べると圧倒的な破壊力が秘められている異世界ディル=リフィーナの古代技術―――”魔導技術”を使った兵器があるからな。例え、正規軍と領邦軍が一致団結したとしてもエレボニア帝国の勝ち目は0と言ってもおかしくないと思う。」
「そこに加えて貴族連合にとって切り札である”機甲兵”すらメンフィル帝国にはありますものね……」
セリーヌの質問にその場にいる4人はそれぞれ重々しい様子を纏って答えた。
「フーン……そんな相手を怒らせる行為をするなんて、貴族連合はつくづく馬鹿な事を仕出かしたものね。そんな相手を敵に回すなんてヴィータも一体何を考えているんだか……」
メンフィル帝国の事を聞いたセリーヌは呆れた表情で呟いた。
「そういや、リィン。さっき初めて聞く名前のメンフィルの将軍の名前が出てきたが……一体何者なんだ?」
「確か名前はゼルギウス将軍とシグルーン副将軍、だったよな?」
「お二人ともお強いのですか?」
その時ある事を思い出したトヴァルとマキアス、セレーネはそれぞれリィンに尋ねた。
「ああ…………二人は夫婦でリフィア殿下の親衛隊を率いる立場である事と二人が親衛隊を率いる立場になるまでに多くの功績を残し続けた事でその名をメンフィル帝国内に轟かせているんだ。」
「ええっ!?」
「ふ、夫婦であのリフィア殿下の親衛隊を率いているだって!?」
「”夫婦”って事は片方は女性の将軍なのか?」
リィンの説明を聞いたセレーネとマキアスは驚き、トヴァルは目を丸くして尋ねた。
「ええ。”天馬騎士”にとって”最強にして最上”を示す称号である”神天馬騎士”の称号を持ち、”白銀の守護騎士”の異名で呼ばれているシグルーン副将軍はメンフィル帝国軍に所属している数多くの天馬騎士達の中でも1,2を争う実力持ちだそうです。」
「い、一体どんな強さなんだ……?」
「想像もできませんわよね……」
「女性将軍といえば、"黄金の羅刹"の異名で轟かせている領邦軍のオーレリア将軍もそうだが……話を聞く限り、あのオーレリア将軍ともまともに渡り合えそうだな。」
「へえ……それじゃあ将軍を務めている夫の方は更に強いのかしら?」
まだ見ぬ女性騎士の強さを聞いたマキアスは表情を引き攣らせ、セレーネは呆け、トヴァルは真剣な表情で考え込み、セリーヌは目を丸くした後ある事を尋ねた。
「当然強い。多くのメンフィルの勇将達の中でも1,2を争う実力を持ち、”漆黒の守護神”の異名で呼ばれているゼルギウス将軍はシグルーン副将軍共々リフィア殿下の親衛隊の所属を強く希望しなければ、あのファーミシルス大将軍の跡継ぎとしてメンフィル帝国軍を率いる立場になってもおかしくないと噂されている程、実力、戦術眼共に備わっている。」
「なっ!?あ、あの”空の覇者”と恐れられているファーミシルス大将軍の跡継ぎになってもおかしくないだって!?」
「”空の覇者”の跡継ぎクラスだなんて、とんでもねえ強さじゃねえか。」
リィンの説明を聞いたマキアスは驚き、トヴァルは真剣な表情で呟いた。
「あの、お兄様。先程の話でお二人はリフィア殿下の親衛隊の所属を強く希望していたと仰っていましたが……もしかして過去、リフィア殿下と何かあったのですか?」
「ああ。何でも二人は昔、レスペレント地方とは異なる地方で住んでいたらしいんだけど………異種族の混血児である二人は迫害されていた立場で、幼い頃から苦しい生活をずっと続けていたという話なんだが……城を抜け出して旅をしていたリフィア殿下が幼い2人を保護し、その後2人はメンフィル帝国が経営している孤児院に入れられたんだ。そして自分達を助けてくれたリフィア殿下に強い恩義を感じた二人はリフィア殿下に恩返しをする為に、メンフィル帝国軍に入隊、数々の武勲を立て、二人の活躍を評したシルヴァン陛下が二人に褒賞を与えようとしたそうなんだが……――二人はそれを辞退。褒賞の代わりにリフィア殿下の親衛隊に所属させて欲しいとシルヴァン陛下に嘆願したそうなんだ。」
「な、何だかおとぎ話みたいな話だな……」
セレーネの質問に答えたリィンの話を聞いたマキアスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「で、二人の思いをくみ取ったメンフィル帝国は二人をリフィア殿下の親衛隊を率いる立場にしたって事か。」
トヴァルは静かな表情でリィンを見つめた。
「ええ。それと余談になりますがリフィア殿下の親衛隊を率いる立場に任命された際に二人にはそれぞれ”伯爵”の爵位が与えられ、リフィア殿下の親衛隊を率いる立場になった事を境に恋仲だった二人は結婚したんですが……二人が結婚する際リフィア殿下自らの希望でリフィア殿下が二人の仲人が務め、更にはペテレーネ神官長とティア神官長にリフィア殿下自らが頭を下げて、結婚式を取り仕切る司祭と副司祭を務めてもらった話も有名で、俺のような訓練兵達にまで伝わっている程です。」
「なっ!?皇族が自ら仲人を務めた上、結婚式を取り仕切る人達に頼み込んだだって!?」
「リフィア皇女って、旧校舎の時にアンタ達に力を貸したあのエステルって娘並みに元気が有り余っている皇女でしょ?その様子が全然想像できないわね……」
「まあ……!フフッ、リフィア殿下はそのお二人の事をとても大切になさっているのですね。」
リィンの口から出た信じられない話にマキアスは驚き、セリーヌは疲れた表情で呟き、セレーネは目を丸くした後微笑み
「……そうなると。もしメンフィル帝国がエレボニア帝国との開戦に踏み切ったらその二人も出てくるのか?」
ある事が気になっていたトヴァルは真剣な表情で尋ね
「リフィア殿下が自ら戦場に立つ事があれば、必ず出てくると思います。」
リィンは静かな表情で頷いた。
「だったら、確実に出てくるだろうな。実際”リベールの異変”の際に”結社”がロレント市を襲撃しようとした際、ロレントを守る為にリフィア皇女は”英雄王”達と共に戦ったと聞いている。しかもリフィア皇女は”英雄王”達と共に”百日戦役”にも参戦したらしいからな。」
「しかもリフィア殿下自身がエレボニア帝国に対して怒りを抱いているそうですものね……」
「そんなとんでもない相手と戦う羽目になるなんて、エレボニア帝国は御愁傷としか言いようがないわね。」
「あ、あのなぁ。他人事みたいに言うなよな……僕達の祖国の未来がかかっているんだぞ?」
リィンの言葉を聞いたトヴァルは真剣な表情で推測し、セレーネは不安そうな表情で呟き、他人事のように言うセリーヌの言葉を聞いたマキアスは疲れた表情で指摘した。
「…………メンフィル帝国の今後の動きは気になるけど、今は目の前の事に集中しよう。」
「そうだな……合流地点まで後どのくらいだ?」
決意の表情をしたリィンの言葉に頷いたトヴァルはマキアスに視線を向けた。
「後少しです。―――行きましょう。」
「はい……!」
その後メンフィル帝国軍の拠点を後にしたリィン達は合流地点に向かった。
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