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お好み焼き

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7部分:第七章


第七章

「何でだ?」
 次にこうも言った。
「何でこうなるんだ?折角終わると思ったのに」
「ははは、まあそうなってもいいではありませんか」
「校長」
 しかし校長先生は明るく笑いながら先生に対して述べるのだった。
「これもまた」
「いいのですか?」
「切磋琢磨です」
 儒学の言葉だ。互いに磨き合うということだ。若い頃はそうせよと重ね重ね言うのはかなり年輩の教育者である。この校長はそこまで歳ではないがそれでも言うのだった。
「ですからこれもまたよしです」
「いいのですか」
「暴力はないではないですか」
「それは確かに」
 その通りだった。二人はいがみ合いや競争をしてもそれでもそういった喧嘩はしないのだった。あくまで互いにライバル意識を燃やし競り合っているだけだ。確かに問題のある行動や発言ばかりだがそれでもあくまで競り合っている。それだけは間違いなかった。
「ですから。それで」
「いいのですか」
「そういうことです。それに」
「それに?」
「あの二人が競争すればいいことがありますよ」
 校長先生が今度言うのはこうであった。
「それも実にいいことが」
「そうなのですか?」
「二人はお好み焼きで競争していますね」
「ええ、まあ」
 その通りである。どうして二人がここまでいがみ合うかというとやはりそれである。とにかくお好み焼きで争っているのもまた全くぶれなかった。
「では互いにそれを競い合えば」
「それぞれのお好み焼きの味がよくなっていきますか」
「そういうことです。ですから」
「まあ過剰にならなければいいですか」
「多少過剰であっても暴力沙汰にさえならなければ」
 お好み焼きが好物の校長先生は随分と規制を緩和している。この辺りは個人的な舌の好みもそれなり以上に関係しているのであった。
「それで構いません」
「わかりました。それでは」
「見守りましょう」
 今度は教育者としての顔と言葉だった。完全に。
「温かく」
「はい、そうします」
「絶対に負けへんからな!」
「勝つのはうちじゃ!」
 先生も校長先生も皆も見守る中で桜と菜月は相変わらず互いに腕をまくりいがみ合っていた。二人のお好み焼き対決はまだまだこれからなのであった。


お好み焼き   完


                   2008・12・1
 
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