英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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外伝~調査依頼、承ります~(インターミッション終了)
――リベル=アーク崩壊より4ヶ月後―――
~R&Aリサーチ社・ルーアン事務所~
「おお、これやこれや………」
「お役に立てればよろしいのですが……」
”リベールの異変”から数ヵ月後。リベールの窮地に駆けつけてリベールを守り、そして”異変”解決後もリベールの復興に積極的に貢献した事から部下共々恩赦を受けて釈放されるたリシャールは軍を退役し、故郷のルーアン市にて民間調査企業”R&Aリサーチ”を立ち上げ、今日も依頼人に依頼されて、調査を終えた調査内容を伝えていた。
「なるほどな、こうなっとったんか……販売ルートがここまで揃っとるなら恐いもんなしや。すぐにでも帝都に乗り込めるわ。」
「ご依頼の内容は帝国でのオーブメント売買の実情ということでしたので……現地の販売店を中心に調査させていただきました。」
「うん、よう揃っとる。そやけど……問題はリベールからの是やな。国際定期便は、ボルドーのおっさんが押さえとるし……」
「そうですね。国際定期便の積載量40%はボルドー家の優先契約となっています。しかし、最近では定期便以外の個人運搬業者もありますし……」
依頼人の悩みに頷いた所長のリシャールが秘書のカノーネに視線を向けると、カノーネは本棚から資料を出して依頼人の前に置いた。
「ふふ、こちらが追加資料になりますわ。」
「お、準備ええやないか。」
「はは、今回は少し調査期間が延びてしまいましたからね。こちらはその分のサービスです。合わせてお持ち帰りください。」
「相変わらず、ええ先読みや。どや、ウチに来ぃひんか?給料はずむでぇ~!」
「ミラノさんにそうまで言って頂けるとは………ですが、生き馬の目を抜くような商売の世界には私は向いていないと思いますよ。何分気が小さいですからね。」
「あはは、おもろい冗談やな。まあええわ。ボチボチ考えといてえや。」
軽い誘いを断られた依頼人は軽く笑った後立ち上がった。
「お疲れ様ですわ。」
そしてカノーネとリシャールは依頼人を見送っていたが、依頼人はふと立ち止まって振り返ってリシャールを見つめた。
「ああ、そや所長はん……次の調査も頼んどこかな。シモン君にさせとるんやけど、イマイチ不安があるんや。」
「ええ、構いませんよ。また国外市場の調査でしょうか?」
「そうそう………おっ、ええモンがあるやん。」
リシャールの言葉に頷いた依頼人は部屋の壁に貼ってある地図に気づくと地図に近づいて調査する場所を指さした。
「………ここや。」
「オレド自治州……ですか?」
「まあ、あんな小さな所に……」
依頼人が指さした意外な場所にリシャールとカノーネはそれぞれ目を丸くした。
「小さいからこそ、シェアが取れるんやないかい。国際定期船も一応通ってるし、まだ誰も手ぇ出しとらへんさかいな。」
「なるほど、市場規模の可能性を探る………という所でしょうか。調査のターゲットはオーブメント市場に限りますか?それとも市場全体で……?」
「全体の調査や。……どや、できそうか?」
「お任せください。まずは近隣の常駐スタッフに連絡を取ってみましょう。」
「よし、決まりやな。来週また来るさかい、詳しい話はそのときするわ。……ほなな!」
「お待ちしております。」
「お気をつけて。」
新たな依頼をした依頼人が満足そうに帰ると、リシャールは地図を見つめて考え込んだ。
「オレド自治州か……少し内陸になるな。確かあの辺りにはレインズ兄弟がいたはずだね。」
「ええ、後で連絡を取ってみますわ。」
「よろしく頼む。」
カノーネの言葉に頷いたリシャールは先程帰った依頼人の事を思い返した。
「ふふ、さすがはボース商人というべきか。ミラノさんの依頼はなかなか先進的で面白い。」
「所長に比べればまだまだですけれど。」
「はは、それは買い被りすぎだよ。」………カノーネ君、次の方を。」
「了解ですわ。」
リシャールの指示に頷いたカノーネは下に降りた後次の依頼人である新しいルーアン市長を連れてきた。
「やあ所長さん、いつもすみませんな。また少し、市の財政のことで相談に乗って欲しいのだが………」
「ええ、喜んで。どうぞおかけください。――――それで、今日はどのようなご用件で……?」
その後ルーアン市長の相談を終えたリシャールはカノーネと共に外に出てルーアン市長を見送った。
「この仕事も軌道に乗ってきたようだね。」
「ええ…………少々、緊張感に欠けるのが玉にキズですけれど。」
ルーアン市長を見送り終えた後呟いたリシャールの言葉に頷いたカノーネはかつての”情報部”で動いていた頃と今を比べていた。
「はは、我慢してくれたまえ。我々も今は民間人なのだから。」
「…………そうでしたわね。まあ、閣下の生まれ故郷でこうして過ごせるのは光栄ですけれど……」
「……カノーネ君。今は所長と呼んで欲しい。」
「はっ………………!?し、失礼致しました。」
リシャールに指摘されたカノーネは驚いた後慌てた様子で謝罪した。
「はは、謝るほどのことではないが………」
カノーネの態度にリシャールが苦笑していると空が暗くなり始めた。
「………入ろうか。天気も崩れてきたようだ。」
そしてカノーネと共に事務所に入ったリシャールだったが、見覚えのない手紙を見つけた。
「ん……?(……この手紙は………………)」
「…………所長?どうかなさいましたか?」
手紙を見つめて考え込んでいるリシャールに気づいたカノーネは不思議そうな表情で訊ねた。
「………………………いや………市長宛の郵便物がまた間違って届いてしまったようだね。この事務所も元は彼の家だから無理もない話だが………やれやれ、私が届けてくるよ。」
「えっ、今からですか?ですが今にも雨が………」
「なに、すぐ隣だ。降られても心配ないさ。君は定期連絡の方を頼む。」
「は、はい……」
リシャールの様子が僅かにおかしいことにカノーネが戸惑っているとリシャールは事務所を出た。
(…………………くっ…………)
事務所を出たリシャールは市長邸に向かわず、橋を渡り始めた。
(あの手紙は………)
そしてリシャールが橋を渡り始めると雨が降り始めた。
リシャールが見つけた手紙の貼り方は情報部で使っていた特殊なものであり、手紙の内容はフェイク、本文は封筒の貼り合わせ方に暗号化されていた。………「発着所へ来られたし」………元情報部の人間が自分を呼び出している……恐らくは、自分に投げつけたい暗い感情を抱えて――――………それを理解していてもリシャールは元情報部将校として……そいて情報部に所属していた人々の人生を狂わせた張本人として行かなければならないという義務で発着所に急いで向かった。
~ルーアン空港~
「………お待ちしておりましたよ。」
リシャールが発着所の倉庫前まで来ると、そこには一人の将校がいた。
「………君か、センダー。」
「……お久しぶりです、大佐。お元気そうで何よりです。」
「もう大佐ではないよ。何度説明しても、なかなかわかってもらえないのだがね……」
かつての部下―――センダーにかつての軍位で呼ばれたリシャールは苦笑しながら説明した。
「……いえ、本日は敢えて大佐と呼ばせていただきます。」
「……………………………」
センダーの言葉を聞いたリシャールは呆けた表情で黙り込んだ。
「……大佐、貴方にお尋ねしたいことがありまして。僭越ながら、こうしてお呼び出しさせて頂いた次第です。」
「……私に答えられる事なら何でも答えよう。遠慮はいらない……納得のいかない事があるならいくらでも言ってくれ。」
センダーから何を言われても言いように覚悟を決めたリシャールはセンダーが話しやすいように親しみのある微笑みを浮かべて促した。
「………大佐、ではお聞きしますが……何故、軍を辞められたのですか。貴方の愛国心はどこへ行ってしまったのだ!」
センダーがリシャールを睨んで叫ぶと雷が鳴り響いた!
「……君は……軍職に復帰したようだね。………ほっとしたよ。君は士官学校でも特に優秀だった。私にさえ出会っていなければ………私が巻き込んでしまわなければ今頃は佐官の位を受けていてもおかしくはない……本当にすまなかったね……」
「……大佐、自分は決して貴方を責めているわけではありません。……貴方は誰よりもこの国のことを考えていた。その愛国心は真実本物でした。自分はそれについていくと誓い、実際、幸福であったのです。確かに今となってはこの身の昇進は難しいでしょうが……そんなことはどうでもよい。自分は軍に復帰し、再びこの国の為に尽くしている。自分はそれで幸せなのですから。……貴方を恨むつもりなど、初めから毛頭ありませんよ。」
リシャールに謝罪されたセンダーは自分はリシャールを責めていない事を静かな表情で語ると一旦言葉を切り、話を続けた。
「……だが…………大佐、貴方はどうなされたのですか。……あれほどまでにこの国の将来を憂いていた貴方が……もう一度この国のために立ち上がろうとはせず、早々に軍を辞めてしまった……そして今は会社を立ち上げ、金持ち相手に商売しているなどと……!貴方の……あなたの愛国心はどこに行ってしまったのか!!」
かつてのリシャールと今のリシャールを比べたセンダーが怒りの表情で声をあげると再び雷が鳴り響いた。
「……大佐、軍へお戻りください。貴方は軍職に復帰し、そのお力を発揮なさるべきです!」
「……………すまない。私はもう、軍には戻れないのだ。」
自分の軍の復帰を強く望んでいるセンダーに対してリシャールは目を伏せて謝罪をして軍には戻らない事を伝えた。
「……………何故……何故ですかっ!?貴方はもう、十分過ぎるほどに償われた。貴方より遥かに重い罪を犯していたロランス少尉―――いえ、レオンハルト中尉もその罪を許され、軍に復帰し、新たな”情報部”―――”特務部”を率いる立場をアリシア女王陛下直々に任命されました。モルガン将軍やカシウス准将も、貴方の復帰を待っていらっしゃいます。我々はみな、それを心待ちにしているのです!……なのに、貴方はどうしてそのような顔をして……自分に……謝るのですか……!」
「……センダー、私は決して愛国心を捨てたわけではないのだ。………むしろ………………」
唇を噛みしめて自分を睨むセンダーにリシャールは辛そうな表情で語った後次の言葉を答えようとしたが黙り込み、そして再び口を開いた。
「……私は大きな罪を犯した。あれだけの事件を引き起こし、多くの人々を巻き込み……その多くの人々の助けで己の過ちに気づいたというのに……私の心は何も変わらなかったのだ。」
「た………大佐……?」
自分を蔑むかのように語ったリシャールの言葉の意味が理解できないセンダーは困惑の表情でリシャールを見つめた。
「あれほどの大事件を経て、なお私の国を思う気持ちは全く変化していなかった。今でも、リベールのために尽くしたいという盲目的な衝動に駆られてしまう……私は……クーデターを計画した頃と何も変わっていないのだ。……私は、それを恐れた。」
「……そ………そんな………では………愛国心が消えたわけではなく………持ち続けているからこそ軍には残れなかった、と……?」
リシャールが軍を辞めた真の理由に気づいたセンダーは信じられない表情で身体を震わせながらリシャールに訊ねた。
「………………すまない……君に話せる道理はなかったな。君達を巻き込んだのは他でもない。私であるのに…………本当に、申し訳ないと思っている……」
そして全てを語り終えたリシャールは辛そうな表情でセンダーを見つめ続けた。
「……………あ、貴方は………そんなはずは無い……貴方はもっと………」
一方今まで憧れていたリシャールの口から出た予想外の答えにセンダーは愕然としていた。
「……だが、誤解しないでくれ。センダー、私は決して、己の弱さから逃げ出したのではない。降格や処分を恥として軍を離れようとしたのではないのだ。私はあの後、長く考えた。本当はどうすればよかったのかと……どこで道を過ってしまったのかと……そして、ある時気づいたのだ。自分が見落としていた重大な事実に。」
センダーに一歩近づいたリシャールはルーアン市へと視線を向けた。
「……私は情報部を設置し、国を守るための情報を集めた。それなのに、私という人間は情報というものがどこにあるのか、まるでわかっていなかったのだ。情報は単独で存在するものではない。それを用いる人々の間にあって初めて情報は情報として存在する。そして立場や見方によって、その価値は大きく変わっていく……私の愛国心が歪み始めたのは愚かにもそれに気づいていなかった所為かもしれない。自分に見える価値を絶対だと思い込み、私はいつの間にか、自分に都合の良い情報ばかりを集めていたようだ。そしてその結果、この弱い心を支えるために強い力を探し求めてしまった……あの時の私には、軍とは異なる視点が必要だったのではないかと思う。……軍のように国と民の有り様を固定化して見る視点ではない。この国にとっての不利益を切り捨てていくのではない。リベールと諸外国を広く見聞し、自由な視点からより多様な情報価値を見出していくべきではなかったか………」
「……それを可能にするのが今の会社というわけですか……」
リシャールの説明を聞き終えたセンダーは静かな表情でリシャールに確認した。
「………そうだ。私にも、これが過ちを繰り返さない確かな方法なのかはわからない。考えを巡らせるより先に、するべきことがあったのかもしれない。だが、この国には新しい視点が必要なのではないかと思い至ったとき、私は軍職を辞する決意をした。軍は軍で、情報機関を作ればいい。准将がいらっしゃっている上、ロランスく――――いや、レーヴェ君も戻ってきてくれたのだから、私が心配することは無いだろう。しかし民間にはそのようなものは無い。組織的な情報収集とい正確な分析を行おうという考え自体がまだ無いのだ。……だから私は一民間人として”R&Aリサーチ”を興した。今これをやるべきなのは自分なのではないかと信じて……」
「もう………軍には戻らないのですね……」
リシャールの話を聞いてリシャールに軍に戻る意思がない事を悟ったセンダーは何かをこらえている様子で問いかけた。
「……軍に未練が無いと言えば嘘になってしまうな……しかし、私はこの国を支えるもう一つの目になりたいと考えている。……センダー、これが今の私の新しい愛国の形なのだ。どうか、わかって欲しい………」
「……………貴方は………卑怯だ………貴方のお考えは正しいでしょう。貴方はいつも正しく反論の余地は無い。だが…………もうリベールの明日を切り拓くと仰った貴方ではない……!もう会う事もないでしょう!失礼します……!」
リシャールの正論を聞いて黙り込んでいたセンダーは一瞬納得している様子を見せたが、すぐにリシャールを睨んで怒鳴った後その場から走り去った。
「………違う……………そうではないんだ、センダー………私は………(決意を秘めて、新しい道を歩んできたつもりだが……この選択が正しいなどと、確信しているわけではない。……今も、迷い続けているのだ。未だに、この過ちもまた間違いなのではないかと不安に駆られているのだ…………私には、准将のように一喝する力はない……やはりダメだな、私は……)」
「……所長。」
センダーが去った後一人物思いにふけていると聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。
「………カノーネ君か………」
声の主―――カノーネはリシャールに近づいた。
「……戻りましょう。風邪を引いてしまいますわ。」
「カノーネ君、私は……」
「……きっと彼も、戸惑っているだけなのです。あの情報部の熱気が忘れられずどこかに心の居場所を求めてしまうのですわ。……でもいつか、わかってくれる日が来ます。わたくしも、そうでしたから……」
「……そうか………フフ、そうだったね………」
穏やかな笑みを浮かべたカノーネの慰めの言葉を聞いたリシャールは微笑んだ。
「戻ろうか、カノーネ君。」
「…………はい。」
その後二人は事務所に戻った。
~R&Aリサーチ社・ルーアン事務所~
「やれやれ、ずぶ濡れになってしまった。カノーネ君、平気かね?」
「ええ、わたくしの方は問題ありませんわ。士官学校時代のサバイバル訓練を思い出すくらいです。所長こそ、早くお着替えになってください。」
「ああ、私も平気だ。サバイバル訓練も苦手ではなかったからね。」
「い、いえ、しかし………」
リシャールの答えを聞いたカノーネが戸惑っていると通信機の音らしき音が聞こえてきた。
「………暗号化通信だね。」
「定期報告で、ディーレンスが気になる情報があると言っていました。関連情報が入ったのかもしれません。」
「なるほど………ということは共和国方面で何かあったか。」
他の地方に派遣している部下からの報告を聞くためにリシャールはカノーネと共に2階に上がり、備え付けてある通信機をとって通信を始めた。
「……ああ、私だ。だから大佐はやめてくれ…………ああ…………ああ………ああ…………東方人街か…………あそこはまだ情報屋を置いていなかったな………ああ、わかった。こちらでも探ってみよう。ああ、君も無茶をするなよ。」
「何か動きが……?」
通信を終えた後地図を見つめているリシャールが気になったカノーネは訊ねた。
「東方人街にまた猟兵団が入ったらしい。猟兵団”赤い星座”。かなり大きなグループだ。」
「ここのところ、動きが活性化してますわね。」
リシャールの話を聞いたカノーネは目を細めて考え込んだ。
「少なくとも、裏社会の勢力抗争が激化する可能性はあるな。旧情報部の綱だけでは状況は把握できそうもないか………ふむ……………これは私が出向いた方がよさそうだ。」
そして自ら調査に向かう事を決めたリシャールは翌日、空港に向かった。
~翌日・ルーアン空港~
(……やはり、私には迷いがある。)
翌日空港で飛行船を待っていたリシャールは昨日のセンダーと語り合った場所に視線を向けた。
私の愛国心は、結局何も変わらなかった。変わらないままの自分で、果たして正しい道など歩めるのだろうか。そもそも、人の身で正しい道など拓けるのだろうか。………答えは見つからないが………今は、この信じる道を歩いみよう。私の間違いを正し、支えてくれた人々を信じて………
「所長……?いかがなさいましたか?」
リシャールが物思いにふけていると見送りに来たカノーネが声をかけた。
「あ、ああ………カノーネ君か。見送りはいいと言っているのに………」
「そうはいきませんわ。上司の見送りをするのは部下の務めですから。」
「………カノーネ君、もう軍ではないのだからそう堅くならないでくれ。ああ、それと一つ言い忘れていた。……留守の間、事務所の方を頼むよ。あまり大きな依頼などはそうそうやってこないとは思うが……」
「……お任せください。どんな依頼でも懇切丁寧に対応致しますわ。所長が小さな依頼を受けるのを楽しみにしていらっしゃる事くらい、わかっておりますから。」
「はは……よろしく頼むよ。」
カノーネの言葉にリシャールが微笑んだその時、飛行船が空港に着陸し、リシャールが飛行船に乗り込もうとしたその時ジークが飛んできてリシャールとカノーネの周りを飛び回った。
「君は………ジークか………?」
「ユ、ユリアのハヤブサ……!?」
ジークの登場に二人が驚いているとジークはリシャールの腕に止まった。
「ピューイ!」
「あ、厚かましくも閣下の腕に止まるなんて……キッ…………!」
「ピュ、ピューイ……!?」
カノーネに睨まれたジークは何故自分が睨まれるのか理解できず、戸惑い
「……カノーネ君、ガンを飛ばさないように。それと閣下は止めてくれ。」
その様子を見たリシャールは呆れた表情で指摘した。
「ピュピューイ!」
「???これを私に……?」
ジークの脚にくくりつけてあるメモに気づいたリシャールは不思議そうな表情でジークに訊ねた。
「ピュイピューイ!」
了承の意味でジークが鳴き声を上げるとリシャールはジークの脚にくくりつけてあったメモを取り上げて内容を読んだ。
「こ、これは………軍司令部からの書簡のようだな………」
「軍司令部から……?どうして親衛隊の伝令係がそんなものを………」
リシャールの答えを聞いたカノーネは不思議そうな表情をした。
「さて……何しろ人使いの荒い人だからね。………助かったよ、ジーク。この依頼、承知したと伝えておいてくれ。」
「ピューイ☆」
「あ、あの……所長……?その書簡はもしや……」
ジークをリシャールと共に見送ったカノーネはリシャールが持つメモの内容を察し、驚きの表情でリシャールを見つめ
「まあ、こういうことだ。」
リシャールはカノーネにメモを渡した後飛行船へと向かった。
「……出張、お疲れさん。王国軍としても”赤い星座”の動きは気になるからついでに探っておいて欲しい……」
「やれやれ……この情報は高くつきますよ、准将。」
カノーネが呆けた表情でメモの内容を読んでいる中、リシャールはメモに書かれた事を依頼した人物――――カシウスの顔を思い浮かべて苦笑した後飛行船に乗り込み、リシャールを乗せた飛行船は飛び去った………
そしてさらに約2ヶ月後、エレボニア領空を飛行する豪華飛行客船”ルシタニア号”……その船上の一角で新たな冒険の幕が開こうとしていた………!
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