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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第77話

~夜・アルセイユ・ブリッジ~



「各地に現れた人形や装甲獣はひとまず退治されたとの事です。警備体制こそ続いていますがじきにそれも解除されるでしょう。」

「そうですか……」

「色々わからねえこともあるが”塔”の異変も治まったし……一息つけそうな感じだな。」

「そうね……そうだといいんだけど。」

「フン、僕の経験で言わせてもらえばむしろ”ここから”だと思うがな。」

「それは私も思った。特に”執行者”達の行動がおかしい。」

「”塔”の異変を解決しに来た私達と本気で戦うことなく、異変が治まったらすぐに撤退したことか……」

仲間達が安堵の表情をしている中真剣な表情をしているリオンとソフィの話に続くようにレイスは重々しい様子を纏って答えた。



「そうだな……その件も含めてどうにも敵の意図が見えんな。」

「”執行者”達の行動を考えると”塔の異変が治まる事”も計画通りと思った方がいいだろうな。」

「そうね……そして次に一体何をするつもりなのかが一番気になるわね……」

「まあ、今までの事を考えたら絶対にとんでもない事には間違いないだろうがな……」

ジンとバダックの意見に頷いたアーシアは真剣な表情で考え込み、フレンは疲れた表情で呟いた。

「………………」

「エステルちゃん。なんか元気あらへんなぁ。あのチビっ子のことか?」

仲間達が話し合っている中辛そうな表情で黙り込んでいるエステルに気づいたケビンはエステルに声をかけた。



「……うん……あの子の事情も知らないで余計なおせっかいを焼いて……酷い事言ったのかなって……」

「お姉ちゃん……」

「エステルさん……」

「あたしなんか、人生経験もないしみんなに守られてばっかりで……そんなあたしが、あの子のこと救ってあげようだなんて……ムシが良すぎたのかもしれない……」

「……それは違うよ。」

「え……」

ユウナとの出来事を後悔している様子のエステルだったがヨシュアの口から意外な答えが出ると呆けた表情をした。



「ユウナはね……レンと同じ本当の意味での天才なんだ。あらゆる情報を瞬時に吸収して自分の力として取り込んでゆく……どんな環境にも即座に適応して自分と周囲を制御してゆく……そんな能力を生まれながら持っていたらしい。」

「そうなんだ………」

「うふふ、だからいつも言ってるでしょう?レンは”天才美少女”だって♪」

「こんな時くらいは茶化さず、空気を読んで黙ってろよな……」

ヨシュアの話をエステルが聞いている中からかいの表情で答えたレンの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力している中、ルークは疲れた表情で指摘したが

「意外、です。貴方の口からそんな言葉が、出てくる、なんて。」

「フッ、最初の頃のお前はまさに空気を読んでいない発言ばかりだったからな。」

「う”っ……」

「ま、まあまあ。今のルークは本当に見違えたように成長したのですから、もうその事を持ち出さなくてもいいじゃないですか。―――話の腰を折ってすみません。ヨシュア、続きをお願いします。」

アリエッタとバダックの指摘によって過去の自分を想い出して表情を引き攣らせ、その様子を見たイオンは苦笑しながら諫めた後ヨシュアに視線を向けた。



「ハハ……話を続けるけど”結社”に引き取られる前、あの子が置かれていた環境はとても酷いものだったけど……でも、僕と違ってあの子の心は壊れなかった。どんな逆境すら、対処すべき環境変数として把握できたから……だから自分を保ったままでいられた。」

「で、でもそれって……!」

「うん……そうだね。いくら感情を制御できても心が痛くないはずはないと思う。」

「「………………」」

ヨシュアの話を聞いたエステルが黙り込んでいる中、レンは複雑そうな表情をしていた。

「僕が知っている限り、ユウナがあんな風に昂ぶったのは見たことがない。それは多分、君の言葉がユウナ自身も気づかないような本当の部分に届いたからだと思う。……君だからできたことだよ。」

「ヨシュア……そういう事ならヘコんでばかりもいられないか。見てなさいよ~、ユウナ!今度会った時は、本当のあんたと徹底的に向かい合ってやるんだから!」

「お、お姉ちゃんってば……」

「ははっ、それでこそエステルちゃんやで。」

「うふふ、ユウナも厄介な人物に目を付けられてご愁傷様ね♪」

「ふふっ、ヨシュアを連れ戻すことができたエステルさんならきっといつか、あの子の心にエステルさんの言葉が届きますよ。」

すぐに元気を取り戻したエステルの様子を仲間達が微笑ましく見守っている中、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ステラは微笑みながらエステルを見つめていた。



「ま、それはともかく……とりあえず、これからどうする?”結社”の意図が分からない以上、王都に戻るのも何だと思うし……」

「それなんだが、今日の所はレイストン要塞に寄ってはどうかな?そうすればカシウス准将と今後についても相談ができるだろう。」

「あ、確かに……」

「そうした方が良さそうですね。」

「それでは、ユリアさん。レイストン要塞に向かってください。」

「了解しました―――」

「た、大変じゃあ!」

親衛隊員達にユリア大尉が指示を出そうとしたその時ラッセル博士が慌てた様子でブリッジに現れた。



「お、おじいちゃん?」

「ど、どうしたの?そんなに慌てちゃって……」

「お前さんたちが塔で見つけたデータクリスタルじゃが……その1つを、たった今”カペル”が解析したんじゃ!」

「えっ……」

「何が記されていたんですか?」

ラッセル博士の話を聞いたエステルは呆け、ヨシュアは気を引き締めて続きを促した。

「”デバイスタワー”の機能じゃ!4つの塔は、”輝く環”を異次元に繋ぎ止めておくために建造されたものらしい!」

「い、異次元……?」

「そんな所に”輝く環”が!?」

「ちょ、ちょっと待ってや!それじゃあもしかして、あの”裏の塔”の空間は……」

「うむ、その次元に属していた空間なんじゃろう。そして”ゴスペル”の正体は……」

ラッセル博士の説明を聞いたエステルとヨシュアは驚き、ケビンは信じられない表情で尋ねた事をラッセル博士が頷き、説明しようとしたその時

「―――ええ。”輝く環”の『端末』です。」

艦内にはいないはずのある人物の声が響いた後、なんと勝手にモニターが起動して、モニターにはワイスマンが映し出された!



「!!!」

「きょ、教授!?」

「なにッ!?」

「こ、この人が……」

(”最悪の破戒僧”にして”白面”ゲオルグ・ワイスマン……!)

「………………………………」

「あの人がエステル達の真の敵……」

(あの人がヨシュアを……!)

ワイスマンの登場にエステル達が驚いている中、ケビンとソフィは真剣な表情でワイスマンを見つめ、ステラは静かな怒りを纏ってワイスマンを睨んでいた。

「ど、どうして勝手に……。リオン!一体どうなっているんだ!?」

一方ユリア大尉も驚いた後、部下の親衛隊員に尋ねた。

「わ、分かりません!先ほど通信が入ったと思ったらいきなり制御が奪われて……」

「ハッキングというやつか……。高度な情報処理システムが仇になってしまったようじゃの。」

(どうやら向こうにはハロルド並みの技術や頭脳を持つ者もいるようですね、坊ちゃん。)

「フン、いずれにしても奴同様性格が破綻している事は間違いないだろうな。」

ユリア大尉の部下の報告を聞いて察しがついたラッセル博士は苦々しい表情をして答え、シャルティエの推測を聞いたリオンは鼻を鳴らして答えた。



「フフ……初めまして、ラッセル博士。それだけのシステムを自力で実現されたとは驚きです。さすが、かのエプスタイン博士の直弟子の1人だけはある。」

「ふん、イヤミか。言っておくが、航行制御はシステムから独立しておる。操ろうとしてもムダじゃぞ。」

「いえいえ。そんな事はしませんよ。せっかくの決定的な瞬間を見逃して欲しくなかったのでね。わざわざ連絡しただけなのです。」

「なに……?」

「決定的な瞬間……まさか!」

「フフ、その位置だと前方甲板に出るといいだろう。それでは皆さん、よい夜を。」

エステル達に意味ありげな事を言い残したワイスマンはモニターから姿を消し

「ヨシュア……!」

「ああ……甲板に出よう!」

エステル達は甲板に急いで向かった。



~アルセイユ・甲板~



「ど、どこ……!?」

「前方甲板から一番よく見える方向……」

甲板に出たエステルは何かを探し、ヨシュアはワイスマンが言った事を思い出して呟いたその時

「……あれや!」

何かを見つけたケビンがヴァレリア湖の方に指をさした。



エステル達がケビンが指さした方向――ヴァレリア湖上空を見ると、一閃の光が走った後空間が割れ、巨大な輝く浮島――浮遊都市のような物が現れた!



「な、な、な……」

「まさかあれが…………あの巨大な都市が……」

「うん……間違いない……」

「”輝く環”……オーリオールっちゅう事か!」

「という事は恐らく”執行者”達の”四輪の塔”での役目は……!」

「”輝く環”を封じ込めていた異空間の封印を解く為だった……と言う事でしょうね!」

「だから”ゴスペル”を、放置して、去ったの、ですね……!」

浮遊都市の登場にエステル達が驚いている中”塔”での”執行者”達の役目を察したイオンとアーシア、アリエッタは厳しい表情をし

「全て奴等の計画通りって事かよ……!」

「クソッ……連中はアレを使って一体何をしでかすつもりなんだ!?」

フレンとルークは悔しそうな表情で浮遊都市を睨んでいた。

「―――いかん。ユリア大尉!急いで艦を降ろすんじゃ!」

一方我に返ったラッセル博士は血相を変えて、ユリア大尉に警告した。

「……え……」

「カシウスが伝えた緊急指令があったじゃろ!急がんと手遅れになるぞ!」

「!!!」

そして浮遊都市が”ゴスペル”が放っていたような黒い光を放ち、黒い光に触れた王国中の導力は次々と消え、導力を消された事によって、王国中の照明は消え、王国中は闇に包まれた!



~グロリアス・甲板~



「おお……!」

「これは……」

「クハハ……マジかよ!」

「うふふ……ステキね。」

「あはは!確かにこれはスゴイや!教授が勿体ぶってたのも納得だ!」

一方その頃、浮遊都市の登場をグロリアスの甲板で見ていた執行者達はそれぞれ興味ありげな様子で浮遊都市を見つめていた。

「フフ……お気に召したようで何よりだ。”輝く環”は永きに渡って異次元に封印されていた……。だが端末たる”福音”があればこちらの次元にも干渉できる。問題はレプリカの精度をどこまで上げられるかだったのだ。」

「そして幾度もの実験を経て真なる”福音”は完成した……。”環”はそれらを通じて己を繋ぐ”杭”を引き抜き……そして今、昏き深淵より甦った。―――それが第3段階の真相か。」

「ククク……その通り。」

レーヴェの推測にワイスマンは凶悪な笑みを浮かべて頷いた後、高々と叫んだ。



―――『諸君の働きのおかげで第3段階は無事完了した!これより『福音計画』は最終段階へと移行する!」――― 
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