| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

エクシードの村

 
前書き
真島さんがかつて読み切りで描いてた『星咬の皐月』の皐月ちゃんがウェンディにしか見えない(笑)
めっちゃ可愛いです。もう残りのスプリガン12のいまだに名前が出てない人、皐月ちゃんでいいです。割りと本気でそんなことを考えている。 

 
ウェンディside

「スゥ・・・スゥ・・・」

今私たちはシャルルのお母さんたちが暮らしているエクシードの村へと向かっています。その列車の中で、隣に座るシリルはスヤスヤを気持ち良さそうに眠っています。

「フフッ。可愛い」
「ホント。やっぱり子供なんだね」

その寝顔を見て私とシェリアは頬を緩ませています。でもシリルが眠っちゃった理由を思い出すと、すごく罪悪感があるんですよね・・・

「気にしちゃダメだよウェンディ。今回のは仕方なかったもん」

顔に出ていたのでしょうか、正面に座るシェリアがそういいます。実はエクシードの村の方向へと出発する列車の発射時間にギリギリで着いた私たち。これに乗り遅れると、シェリアたちが次の留学先に向かう頃までに戻ってくることが困難になってしまうから、大急ぎで列車へと乗りました。

『危なかったね』
『うん!!でも、乗れてよかったね』

ひと安心といった感じにお話ししていた私とシェリア。その隣にレオンとシリルが乗ったんですけど・・・

『ウプッ・・・』

シリルは私がトロイアをかけていなかったから、乗り物酔いに襲われてしまっていました。でも、シェリアとお話ししていた私はそれに気付かず、思い出した頃には、シリルは意識を飛ばしていました。

『し・・・シリル!!』
『だ・・・大丈夫!?』

慌ててトロイアを彼にかけると、苦しそうに眠っていた表情が和らぎ、気持ち良さそうな表情へと変化しました。その結果が今の眠っているシリルへと繋がっている訳です。

「キタ~!!ストレートフラッシュ!!」
「あら、残念ね。私はロイヤルストレートフラッシュよ」
「ラウはその上のファイブカードだよ!!」
「「えぇ!?」」

通路を挟んで隣に座っているセシリー、シャルル、ラウルの三人は、どこからか取り出したトランプを使って何やらゲームをしています。みんな、体とカードの比率が合ってなくて、すごく持ちにくそうですけど。

コテンッ

一瞬そっちに目を向けていると、シェリアに何かが寄り掛かっているのがわずかに視界に入り、そちらを向きます。彼女に寄り掛かっているのは、シリルと同様に眠っているレオンでした。

「うわ!!びっくりした!!」

いきなり寄り掛かられたためにビクッと驚いているシェリア。でも、レオンはそれに全く気付いていないようで、全然目覚める気配がありません。

「レオンも寝ちゃったんだね」
「最近大忙しだからね」

レオンの頭を自分の膝の上へと誘導していくシェリア。レオンは大魔闘演武での功績と元々の知名度が合わさり、今ではフィオーレに知らない人がいないほどの有名人になっています。その結果毎日ひっきりなしに依頼が来ており、相当疲労しているであろう彼を配慮して、できるだけ楽な姿勢にしてあげようと考えているみたいです。

「ウェンディもシリルに膝枕してあげたら?」

すると、私と隣に座っているシリルを見てシェリアがそんな提案をしてきます。シリルは頭を私の肩に乗せて、静かに寝息を立てて眠っています。確かにレオンみたいに膝に寝かせてあげるのもいいかもしれません。なんだか恋人みたいですし。だけど・・・

「こっちの方がいい・・・かな?」

私はあえて今の状態を選びます。膝枕すればシリルは喜んでくれるかもしれないし、そうなったら私としても嬉しいです。でも、今は彼の顔が私のそれのすぐ真横に来ています。つまり、私も彼の方に少し体重を預ければ、完全に密着することができるんです。
それに、肩と肩はすでにピッタリとくっついているから、相手の体温が伝わってくるのを感じます。前まではそれだけでドキドキしてましたけど、最近は慣れてきたのか、いつまでもこうしていたいと考えるようになりました。
だから、今日のところはこのまま、少しでも彼の体温を感じていたいと思います。

「えぇ。こっちにした方がいいよ。ほら」

シェリアはそう言うと、自分の膝に頭を乗せて目を閉じているレオンの頬を人差し指で突っつきます。

「んん・・・」

一瞬目を覚ましたかのように思われたレオン。でも、彼は何事もなかったかのように再びスヤスヤと落ちていきました。

「ほらほら」

それで調子に乗ったシェリアは何度も何度も彼の頬を突っつきます。レオンの頬はプニプニとしていて、シェリアもとっても楽しそうです。

「シェリア・・・そんなことしたら起きちゃうよ」

でも、彼女がそんなに彼の頬で遊んでいては、さすがに起きてしまうと思った私はそう言います。

「大丈夫だよ。レオンは何しても起きないもん」

だけどシェリアはそれを聞き入れてくれません。ちょっと羨ましいような気もするけど、シリルにはそんなことできないな。だって起こしちゃったら悪いもん。

「フフッ。レオンのほっぺ柔らか~い♪」

幸せそうな笑顔で、口を閉じて真面目そうな寝顔をしているレオンをなおも突っついているシェリア。でも、そんな彼女に悲劇が起きました。
ムニムニと頬を触っていたシェリアの指をレオンが・・・

パクッ

眠ったまま食わえてしまいました。

「きゃああああああ!!」
「な・・・なんだ!?」

突然指を食べられたことで驚いたシェリアが悲鳴を上げると、私に寄りかかっていたシリルが目を開けます。

「何!?」
「どうしたの!?」
「何かあったの!?」

離れて座っていたシャルルたちも一斉にこちらに視線を向けます。運よくこの車両には他に人も乗っておらず、迷惑をかけることがなかったのは不幸中の幸いでしょうか。

「ウェンディ!!シリル!!助けて!!」

レオンの口から指を抜こうとしているシェリア。でも、彼の吸い付く力が強すぎるらしく、なかなか離すことができません。

「大丈夫シェリア!?」
「何がどうしてそうなったの!?」

心配して彼女の指を抜こうと一緒に引っ張る私と、目覚めたらいきなりこんな状況になっていたせいで理解が追い付いていないシリル。ですが、シリルは一番手っ取り早く事態を解決しようと、レオンを揺すって起こすことにしました。

「レオン!!起きて!!」
「ん?」

それでようやく気付いたレオンは目を開けます。すると、彼は自分が何かを口に入れていることに気付き、それを手に取り出しました。

「・・・何これ?」
「何これ?じゃないよ~!!」

シェリアの顔を複数回見ながら疑問符を頭に浮かべているレオン。なぜ自分が彼女の指を食べていたのか、全くわかっていない彼は、頬を膨らませて怒っているシェリアを首をかしげながら様子を伺っています。

「レオンのほっぺつついてたら食べられちゃったの!!」
「それシェリアも悪くない?」

まさかこんなことになるとは思ってなかったシェリアにもっともなことを言うレオン。どっちもどっちだから、何とも言えませんね、これ。

「でも普通食べないでしょ、いくらなんでも」
「だよね~」

シャルルとセシリーはシェリアに味方らしく、そう言います。だけど、その正面に座っていたラウルがとんでもないことを口走りました。

()()シェリアのこと食べちゃったの?」
「そうみたいだね」

口からものがなくなったことで寂しくなったのか、ポケットから板チョコを取り出し頬張るレオン。でも、今の言葉は簡単には受け流せませんよね。

「ま・・・また?」
「それってどういうこと?」

同じ疑問を持ったシリルと一緒に質問します。すると、ラウルはいやらしい笑みを浮かべて答えを言います。

「朝起きると大体レオンがシェリアの耳をかじってるよ」
「「「「えぇ!?」」」」

衝撃過ぎる事実の発覚です!!そもそも二人は同じベッドで寝てるってこと!?

「あれは俺のベッドに入ってくるシェリアが悪いでしょ?」
「間違えちゃうんだからしょうがないでしょ!!」

何がなんだか理解できずに頭を抱える私たち。よく事情を聞くと、二人は同じ部屋で隣同士にベッドを置いて眠っているそうなのですが、シェリアがお手洗いで一度起きると、戻ってきた時に寝惚けているせいでレオンのベッドに入ってしまうんだとか。その結果、朝起きると口が寂しくなってきたレオンにかじられるといった調子らしいです。

「それは毎日なの?」
「いや、たまにって感じだよ」

シリルが恐る恐る聞いてみると、ケロッとした表情で答えるレオン。むしろ毎日それだったらどっちも学習してよってなると思うけどなぁ。

「そもそも同じ部屋で寝なきゃいいんじゃない?」
「それだ」
「おい!!」

私が率直な感想を言うとまるで名案のように手をポンッと叩くレオン。あまりにもぶっ飛んでいる彼らの思考回路にシリルもあきれ顔です。

「それだとラウが困るからダメ!!」

だけど、ラウルがそれにもう反発。彼は二人と一緒に寝るのが一番好きらしい。だからシェリアたちが別々の部屋で寝ると、どっちと寝るかで迷ってしまうとのことだった。

「ラウルは本当に二人のこと好きなんだね」
「うん!!もちろん!!」

かなり子供っぽい性格をしているラウル。まるでお母さんとお父さんに甘えている子供のようにも感じられてすごく微笑ましい。

「お!!そろそろ着く頃かな?」

車窓から顔を出しているシリルがそう言う。私たちも外の景色に目をやると、そこには目的地に最も近い駅が見えてきました。

「駅についてからはどうするの?」
「歩いていくしかないかな」

大魔闘演武でシャルルたちが応援席にいたけど、エクシードは一般の人から見ればかなり珍しい存在。故に、あまり人目につかないような場所に村を作っている。当然馬車を使っていくなんてダメだから、歩いて向かうしか選択肢はないんだよね。

「他の子供たちは見つかったのかな?」
「あれから七年経つもん。きっと見つかってるはずだよ」

エドラスから卵としてこちらの世界(アースランド)に送られてきた子供たち。その数は全部で100。そのうちの数人は私たちも目撃してるけど、他の子供たちがどうなっているかは全然わからない。でも、きっと見つかっている。私は、そんな気がしてならないんだ。






















シリルside

「本当にこんなところに村があるのか?」

辺りを見回しながらそう呟くのは金色の髪をした少年。俺たちの歩いているこの道は、人が住んでいるとは思えないほどの山道となっている。

「大丈夫だよ。前に地図もらったし」
「それに、エクシードのみんなならこれくらいどうってことないよ」

先頭を歩く俺とウェンディがそう答える。エクシードたちは(エーラ)があるから、多少の険しい道などものともしない。それに、身を隠すにもこういう方が適しているだろう。

「しっかし、こんなことならラウルのお母さん掘り出しとくべきだったな」
「そうだね」
「ちょっ!!二人ともそれはやめようよ!!」

レオンとラウルのとんでもない発言に慌てた様子の天神。ラウルのお母さんは彼らのギルド、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の裏庭に埋められているらしいのだが、彼女に故郷を見せてあげようと思ったのだろうか。

「二人とも、ごめんね?私そんなこと知らなくて・・・」

しょんぼりして肩を落とすウェンディ。実は先程、レオンがラウルを連れている理由を説明された。ウェンディは、彼のお母さんも村にいるものだと思っていたから、それを聞いて悪いことをしたと思ったようだ。

「全然いいよ!!ラウにはレオンとシェリアがいるから!!」

そう言ってシェリアに飛び付くラウル。胸に飛び込んできた彼をシェリアがぎゅっと抱き締めている。

「それに、もしかしたらお父さんには会えるかもしれないしね」
「うん!!それはあるよね~!!」

シャルルとセシリーが落ち込んでいる天竜を励まそうとフォローする。だけど、それがまたしても地雷だったということを、その場にいる全員が知らなかった。

「??ラウのお父さんは病気で死んじゃったよ?」
「「「「「・・・」」」」」

思わず押し黙るラウル以外の面々。ヤバイ・・・もう何をいってもフォローできそうにないんだけど・・・

「今が幸せなら、それでいいもんな」
「うん!!そうそう!!」

唯一冷静さを保っていたレオンがシェリアの腕の中にいる猫の頭をポンポンと叩きながらそう言うと、彼は笑顔でそう答えた。

「強いな、こいつら」
「そうだね」

コソコソとレオンたちに聞こえないように会話をする俺とウェンディ。レオンはイップスに陥ってたこともあるのに、今ではそれを一切感じさせない。ラウルも辛い別れがあっただろうに、周りに元気を振り撒いてくれる明るい存在になっている。それを見て暗くなりかけていた俺たちは、なんとか持ちこたえることができた。

「あ!!道が!!」
「そろそろみたいね」

そんな話をしながら進んでいると、雑木林のようだった道が開けてくるのがわかる。その先を目を凝らして見てみると、小さな村のようなあることに気付く。

「へぇ。あれがエクシードの村か」
「本当に村って感じだね」

遠目から見ても人間たちが作ったそれと変わりがないほどの家が建ち並ぶ村。だが、大きさは人が入るには小さくて、セシリーたちくらいがちょうどいいといった感じのサイズになっている。

「知り合いとかいるの?」
「うん!!もちろん!!」
「覚えててくれるといいけどね」

七年も前のことだし、もしかしたら俺たちのことを覚えてない可能性もあるかもしれない。そんな不安を感じつつも、村の中へと足を踏み入れていく。すると、数人のエクシードたちが一瞬こちらを見てビクッと体を震わせた後、すぐに安堵したように息を漏らす。

「あなたたちはいつかの・・・」
「久しぶりだね!!」

そして、懐かしい顔を見た彼らは、こちらに駆け寄ってきてそんな言葉をかけてくれる。

「みんな、久しぶり」
「元気にしてた?」

正直なことをいうと、ほとんどのエクシードの顔も名前も覚えていないのだけれども、ウェンディに合わせてそれっぽい言葉を並べていく。すると、村が騒がしくなったことで、一匹の黒い猫がこちらに走ってきた。

「どうしたんだい?みんな」

右手をシュッシュッと振りながら顔を覗かせたのは、ひょろ長い顔が特徴のエクシード、ナディ。彼は俺たちを見ると、驚いたような顔を見せる。

「君たち!!遊びに来てくれたんだね!!」

訝しげにみんなが騒いでいるのを見ていたナディは、俺たちが来たことに気付くとパッと笑顔を見せる。みんな覚えててくれて、なんだか嬉しいな。

「あれ?後ろの子たちは?」

断続的に手を振りながらレオンたちの方を見つめるナディ。他のエクシードたちも初対面の彼らに少し怖がっているようだ。

「私たちの友達なの!!それに・・・」

ウェンディが一匹のエクシードに視線を向ける。それを受けてオレンジ色の猫が、両手を広げて自らの存在をアピールする。

「すごい!!猫がいっぱいだ!!」
「お前も猫だけどな」

シャルルたち以外のエクシードを初めて見たであろうラウルはウキウキが止まらないといった感じだ。そして、彼を見たナディたちは、歓喜の声を上げる。

「すごい盛り上がりようだな」
「そりゃそうだよ。仲間が見つかったんだからね」

アースランドに逃がした子供のうちの一人がこうしてやって来てくれた。同族として、これほど嬉しいことはないよね。

「シャゴットは?一応挨拶しておきたいんだけど」
「一応ってシャルル~・・・」

そんな中、自身の母親(本人は知らないけど)であるシャゴットがどこにいるのか問うシャルル。だけど、その瞬間、ほんのわずかな時間であるが、ナディの表情がひきつったのを、俺は見逃さなかった。

「なんだ?今の・・・」

レオンも同じように疑問を感じたらしく、わずかに目を細める。ウェンディたちは気付いてないみたいだけど、何かあったのだろうか?

「そ・・・そうだね!!じゃあみんなをシャゴット様のところに案内するよ!!」

取り繕うように早口でそう言ったナディが歩き始める。その後ろを、俺たち七人もピッタリと付いていく。

「楽しみだね!!シャルル!!セシリー!!」
「なんであんたが一番楽しそうなのよ」
「いいじゃん!!僕も楽しみだし~!!」
「フフッ。あたしもワクワクする」

本人は知らないが、お母さんと会えるということは何よりも嬉しいに決まっている。その再会を見ることがウェンディに取っては幸福な時間なのかもしれないな。

「シャゴットってシャルルの?」
「うん。そう」

名前からおおよそ理解したレオンが俺に確認してくる。さっきのナディの表情は気になるけど
今はシャルルとセシリーのお母さんとの再会のことを考えていよう。そう思いながら、俺たちはナディの後をついていった。













 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
レオンがシェリアの指を食べる、本当はシリルがウェンディのを食べようかとも思ってましたが、キャラ的にレオンの方がしっくりくるのでこうなりました。
次はシャルルとセシリーがお母さんとの再会です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧