| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

211




 逢えぬ日を

  数え眺むる

   落陽を

 形見とぞ思ふ

   夕べなりける



 彼に会えない日々…太陽が山陰へと落ちるのを見ると、また一日…と、思ってしまう…。

 彼は…私になぞ会いたいとは思うまい…。

 思うはずはないのだ…。

 だが…私は会いたくて仕方無い…。

 そんな想いが無償に侘しく…沈む夕陽さえ、今日の形見と目に焼き付ける様に眺めてしまう…。

 そんな…一人切りの夕べ…。



 山の端に

  留めし月の

    わが恋の

 沈み果敢無む

     春の夜の夢



 山陰へとその身を隠そうとしている…まるで片想いのような半月…。

 その月を見ていると、何だか自分の片想いさえもう…終わりにしなくてはならない気がして…。

 刻一刻と沈む月…それがまた、自身の想いの儚さを示しているようで…。

 彼に恋をして…愛して…その全てを欲して…そして、そう思う自分の醜さに絶望して…。

 きっといつか…春の淡い夢のように、思い返すのかも知れない…。


 その時…私は幸せなのだろうか…?


 それもまた…春の夜の夢…。




 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧