八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十八話 出発前にその六
「教えない親父だけれど」
「その肝心なところはな」
「教えてくれる親父さんなんだな」
「泳ぐ前の準備体操のこととかも」
「しっかりと教えてくれたんだな」
「水泳だけじゃなくて運動全般だったよ」
親父が事前に準備体操をしろと僕に言ったことはだ。
「もうそれこそね」
「ああ、だからいつもか」
「御前運動の前はちゃんと準備体操するんだな」
「部活の時も体育の時も」
「何時でもな」
「さもないとね」
本当に言われた、親父に。
「怪我をするからってね」
「身体ほぐして温めておかないとな」
「それだけで怪我の元なんだよな」
「部活で先生も言ってるけれどな」
「そこはちゃんとしないとな」
「そう、だからそう言われたんだ」
怪我は自分が持つものだからとだ、親父は僕にいつも言っていた。怪我をしないスポーツ選手には理由があると。
「後で調べたら金田正一さんとかね」
「あの四百勝した人か」
「凄かったらしいな」
「あの人にしても準備体操はしていたっていうから」
練習や試合前にはいつもだったという、もっとも金田さんは食事とかで自分の身体のことにはかなり気を使っていたらしい。
「怪我をしないで四百勝出来たそうだよ」
「そうか、じゃあな」
「俺達もか」
「そこはちゃんとして」
「怪我をしない様にしないとな」
「そうだよね、それに毎日柔軟体操もしてると」
これも親父に言われたことだ。
「さらにいいってね」
「身体がほぐれてな」
「柔らかくなってな」
「それがいいんだよな」
「毎日してると」
「そう言われたよ、だから実際にね」
僕は皆に話した。
「毎日柔軟してるんだ」
「そうなんだな」
「それもいいか」
「怪我しないしな」
「それだけな」
「そのせいかね」
実際にとだ、僕は答えた。
「僕大きな怪我したことないから」
「靭帯やったりとか」
「そうしたことがないか」
「そうなんだ、親父の言った通りにしたら」
「そのこともいい親父さんだな」
「いつも思うけれどな」
皆僕の話を聞いてこうも言った。
「御前の親父さんいい親父さんだよ」
「確かに滅茶苦茶酒好きで女好きだけれどな」
「それでもなしっかり締めるところは締めてて」
「いい人だよな」
「皆そう言うね」
うちの親父についてだ。
「いいって」
「実際いいだろ」
「ダンディだよ」
「それも格好じゃなくて人間としてな」
「そんな感じだよ」
「そうなのかな、まあ確かにそうしたことも教えてくれるね」
人間として必要なそうしたことをだ。
「こうしたことも含めて」
「そう思うぜ」
「必要なことを子供に教えるのも親だろ」
「それをちゃんとしてるってな」
「やっぱりいい人だよ」
「そうなるかな、まあとにかくね」
僕はあらためて皆に話した。
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