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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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変身

 
前書き
エルザの肉親と思われるアイリーンなる人物の名前が出てきてたけど、つまりエルザは生まれて早々にアイリーンと生き別れたということなのでしょうか?
じゃないと楽園の塔とかで何も話が出てこないのはおかしいし。
一番面白いのは“実は全く関係ありませんでした”というのがやってみてほしい気もしますが(笑) 

 
「ねぇシリル、この服なんかいいんじゃない?」
「うん!!ウェンディなら絶対可愛いと思うよ!!」

今俺たちはギルドのテーブルでファッション誌を読んで盛り上がっている。女の子はオシャレに敏感だというし、ウェンディにもそれは当然当てはまる。

「シャルルとセシリーはどう思う?」

俺たちの脇・・・というかファッション誌の脇にちょこんと座ってそれを覗き見ている二匹の猫に質問してみるウェンディ。

「そうね、ちょっと子供っぽい気もするけど」
「ウェンディならいけるんじゃない~?」

二人は少し考えた後、彼女が指を指している洋服を見てそう言う。ピンクを主とした長袖ミニスカのワンピースなのだが、色合いが幼いように見えるだけでそこまで子供っぽいはないと思うけどなぁ。

「シリル、ウェンディ。よかったらお出掛けしない?」

ファッション誌を見ながら会話をしていると、ウェンディの後ろからエバーグリーンさんが俺たちに声をかける。

「エバーグリーンさん。お出かけってお仕事じゃないんですか?」

椅子から立ち上がってエバーグリーンさんに向き合うウェンディ。彼女が俺たちを誘うってこと自体が珍しいことなのだが、彼女の言い回しにも少々疑問を感じる。

「そうなのよ。こないだオープンしたショップな評判だから、ちょっと見に行こうと思って」

どうやら仕事の誘いではなく、マグノリアで最近出来たお店に行くのに、俺たちのことを誘ったらしい。それを聞いたウェンディは、嬉しそうに両手を体の前で合わせる。

「わぁ!!私も、ちょうど新しいお洋服が欲しかったんです!!」
「いいわね。やっぱり女の子はオシャレに敏感じゃないとね」
「どんなのがあるのかな~?」

ウェンディ、シャルル、セシリーの三人のテンションが上がる。三人ともオシャレに気を遣ってるのかな?セシリーとシャルルはあんまり服変えてるところ見たことないけど。

「女だけではない!!男だって敏感だ!!」
「だな!!俺もそろそろステージ衣装を新調したいと思ってたところだぁ!!」
「えぇ!?」

四人の会話を盗み聞きしていたのか、リリーとガジルさんがいきなり割って入ってくる。二人のテンションの高さに驚いたのはもちろん俺だ。だってこの二人、オシャレになんか絶対興味ないと思ってたもん。なのにこんなにノリ気なんて、かなり意外だ。

「いいだろう!!」

続いて名乗りを上げたのはエルザさん。それを見て唖然としているウェンディたち。だが、俺が気になっているのはそんなところではない。

「なんでウェディングドレスを見てるんですか?」
「なっ/////」

彼女が開いている雑誌の一ページ。そこには純白のドレスに身を包んだ女性が写されている。

「な・・・なんでもない!!これはなんでもないんだ!!」

テーブルの上に置かれているそれを素早く拾うと、彼女は恥ずかしそうに顔を赤くしたまま隠すように抱き締める。

「シリル!!それは追求しちゃダメ!!」
「え?」

なんでそんなものを見ていたのか気になっている俺はなおも質問しようと思ったのだが、ウェンディに止められる。

「あんた、女心がわかってる時とわかってない時の差が激しいわね」
「ムラありすぎ~!!」

シャルルとセシリーからも顰蹙を買ってしまった。ただ気になっただけであって深い意味はなかったんだけどなぁ・・・

「エルザ?一応言っておくけど、ハートクロイツのお店じゃないわよ?」
「わかっている。ただ、どんな服があるのか気になったものでな」

エルザさんはこの世界では有名なファッションメーカー『ハートクロイツ』製のものを好んで着ていることが多い。彼女の持っている鎧も大半がそのメーカーのものだ。ただ、本来ハートクロイツは洋服を作るメーカーなのであって鎧なのは専門外なのである。それなのにエルザさんが頼むと、恐ろしいから仕方なく作っているとの話を聞いたことがある。
ちなみに今回行くお店は彼女の大好きなハートクロイツのお店ではない。エバーグリーンさんがそのことを事前に伝えておくが、エルザさんは純粋に服が見たいらしく全く気にしていなかった。

「どんなお店なのかな?シリル」
「色々珍しい服とかも置いてあるかもね」

かなり新しいお店らしいのでどんな感じなのか気になって仕方がない様子のウェンディ。俺たちはノリノリなエルザさんやガジルさんたちと共に、みんなでそのお店に行ってみることにした。





















『Boutique 』という名前のお店についた俺たち。そこではすでにみんな思い思いの服を手に取り試着をしていた。

「ふふん♪なかなかいい感じね」

鏡に映る自分を見ながら鼻唄を歌っているエバーグリーンさん。彼女は普段のラフな格好とは一転、ロングスカートを用いた服を着ている。

「とっても素敵です!!」

エバーグリーンさんの後ろで見とれているウェンディがそう言う。

「ウェンディも可愛いわよ」
「本当ですか?」

彼女の方を振り返りるエバーグリーンさん。ウェンディは黒を基調としたゴスロリというのだろうか?そんな服を身に纏っている。

「ちょっと派手かと思ったんですけど」

いつもは着ないような服をしているからなのか、どこか恥ずかしげな表情のウェンディ。よく見るとメイド服のようにも見えなくはないな。それがまた可愛らしいんだがね。

「せっかくなんだし、たまには冒険しないと」

自信なさげなウェンディに対してそう言うエバーグリーンさん。すると、ウェンディが俺の方へとゆっくりと接近してくる。

「どうかな?シリル」
「うん!!とっても似合ってると思うよ」

スカートの裾を摘まみながらクルリとターンしながら全身を見せるウェンディ。服自体も似合っているし、その愛らしい仕草に頬が緩んだのはきっと俺だけじゃないはず。

「シリルもすっごく似合ってるよ!!」
「あ・・・ありがとう・・・」

笑顔で俺が着ている服を見ながら褒めてくれるウェンディ。ただ、俺は素直に喜んでいいのかわからない。いや、そもそもなぜこんな服がお店に売っているのかが理解できない。

「何なのかな?この服」

それはまるでどこかの王子様が着るような、金色のタスキをかけた上にマントまで付いている服。色合いも白い上着に赤のズボンと派手さがあり、ちょっと恥ずかしい。

「それで剣なんか持ってたら、完全にどこかの王子様ね」

なんだか微笑ましいような光景を見るような目でこちらを見ているエバーグリーンさん。ウェンディに薦められるがままに着てみたけど、やっぱりなんか違う気がするのは俺だけなのだろうか?

「私のはどう?」
「僕も僕も~!!」

そんな俺たちの横から声をかけるシャルルとセシリー。彼女たちはフリルのついたドレスとリボンが巻かれた帽子、そして日傘を持ったいかにもお嬢さまのような服装をしていた。

「わぁ素敵!!とっても似合ってるよ、シャルル、セシリー」
「うんうん」
「そういう服も似合うんだね」

ウェンディとエバーグリーンさん、そして俺が彼女たちの姿を見てそう言う。すると、それを見ていた店主がこちらに向かってやって来る。

「お客様、とーってもお似合いですよ」
「そう~?」

満更でもない様子のセシリー。ただ、服を着替えて盛り上がっているこちらとは別に、なんだか険しい表情を浮かべている人がいた。

「なんというか・・・もっと「これだ!!」という服は・・・」

お店にある服を手に取りつつも、しっくり来ないのか首をかしげているエルザさん。彼女はまだ試着などはしていないのだが、どれも自分のイメージとは違うらしくて納得いかないといった感じだ。

「ほう、渋いな」
「いや、渋すぎる」

そう言っているのはお店に来るのにノリノリだったガジルさんとリリー。二人がどんな服を着ているのか気になった俺たちは、そちらに視線を向ける。そして、彼らのあまりの格好に思わず固まってしまった。

「「ギヒッ!!」」

得意気な笑みを浮かべるガジルさんとリリー。彼らは全身黒タイツにマント、さらには覆面を被ったどこかの悪役レスラーのような格好をしていた。

「おっ!!」
「「「「「・・・うわぁ」」」」」

それを見て衝撃を受けているエルザさんと、何とも言えずにただ呆れていることしかできない俺たち。何なんだあの服は?いや、服なのか?

「これで俺たちも!!」
「完璧なヒーローだ!!」

ポーズを決めてスーパーマンにでもなったつもりになっているのだろうか、かなりハイテンションなガジルさんとリリー。でもあれはヒーローって言っていいのかな?どちらかというと悪者のような気がする。

「ヒーロー・・・」

二人を見て羨ましそうな目をしているエルザさんがそう言う。

「「ヒャッホー!!」」

あまりにもヒーローになりきりすぎてしまったガジルさんとリリーはお店の扉を勢いよく開いて外へと飛び出している。その際ガジルさんが空を飛ぶように片手を突き出しながら走っていくのを見てこちらまで恥ずかしくなってきた。

「おおはしゃぎね」
「す・・・すごいね・・・今のは~」

唖然としてどんどん遠くなっていく二人の背中を見送りながらエバーグリーンさんとセシリーがそう呟く。

「男はいくつになってもガキね」
「いや・・・俺はあんなことはしないぞ」

シャルルが俺の方を見ながら冷たくそう言うので弁解する。確かにうちのギルドの男性陣は変な人多いけど、俺はまともな分類に入ると思うぞ。真面目だし。

「店主。あの衣装はなんだ?」

彼らが着ていた黒タイツがよほど気になったのか、エルザさんがお店の人に声をかける。

「さすがエルザさん!!お目が高い!!」

彼女が聞いてくれるのを待っていたと言わんばかりに歩み寄る店長。彼はガジルさんたちが着ていたあの服?について説明し始める。

「大昔、あれを着た人がこの街の悪を倒した、という言い伝えがあるのです」
「ほう。正義のための衣装か・・・感慨深いな」

まさかの本当にヒーロー用の衣装だったらしい。それを聞いたエルザさんはますますその衣装に興味を示し、顎に手を当ててじっと考え込んでいる。

「ちょっ・・・エルザ?」
「まさか・・・」
「さすがにあれは・・・」
「やめておいた方が~・・・」

嫌な予感しかしない俺たちは彼女を説得しようと試みる。だが・・・

「もう手遅れね。見てよあの目」

シャルルの言う通り、エルザさんは正義の衣装と聞いて目をキラキラとさせている。それはまるでおいしそうなケーキ見つめている時のそれと遜色がないほどだ。

「ヒーローか!!で?私の分は?」

ついに購入を決意したエルザさん。だけどあんな衣装を彼女が着たら、非常にまずい。ガジルさんもそうだけど、大魔闘演武で上がった評判が一気に下がってしまう気がする。ここはもう、店長に何とかしてもらうしかない!!

「もちろんございます!!」
「「あるんかい!!」」

もうありませんと言ってもらえればどれだけ楽だっただろうか。店長はお店の奥から先程のガジルさんたちが着ていったものと似たようなものを取り出し、彼女は即決で購入して着始める。

「どうです?エルザさん」
「うむ」

試着室から出てきた彼女を見て俺たちは灰のようになっている。全身のラインが分かるピッチピチの黒タイツ。しかもレオタード型のそれに長い尻尾がついており、左腕にはハートが描かれた腕輪?を巻き付け、さらには仮面舞踏会のような仮面をつけている。

「なかなかの着心地だ。悪くない」

満足そうな表情で結った紙をかき上げているエルザさん。ヤバい・・・何がヤバいのかはわからないけど人として間違った方向に進んでいる気がする。

「とてもお似合いです!!」
「力も沸いてくるぞ!!」

力瘤を作るってみせるエルザさん。なんか本当にノリノリで突っ込んでいいのかわからなくなってきた・・・

「そのスーツは、あなたに着てもらうのを待っていたのです!!」
「だろうな!!」

店長も店長でエルザさんを仰ぎ立てるし、それにより彼女はますます調子に乗っていく。そして、

「今から私の名は『フェアリーウーマン』だ!!」

彼女は握りしめた拳を突きだし、マグノリアの街を駆けていった。

「えっと・・・私たち、どうすればいいのかな・・・」
「やっぱり連れ戻してきた方がいいかな?」

砂煙を巻き上げながら走り去るエルザさんをただ見送ることしかできないウェンディと俺は、互いに顔を見合わせてこのあとのことを考えている。

「いいんじゃない?ほっとけば」
「だよね~」
「そうね。私たちは何も見なかったってことで」

エバーグリーンさんとセシリー、シャルルがどこか遠くを見つめながら他人のフリをすることを提案してくる。まぁ深く関わるのはよくないことだよね、エルザさんたちはあんな感じが一番らしいから。

「あ!!シリル!!これなんかどう?」

頭の中を早々に切り替えたウェンディは近くにかけられていた洋服を手に取り、俺に見せてくる。その洋服は先程まで、ギルドで見ていた雑誌に載っていたものにそっくりだった。

「う・・・うん!!可愛いと思うよ?」
「それも着てみたらどう?」

さっきの三人のことが頭から離れていない俺とエバーグリーンさんは少々顔をひきつらせながらウェンディが持っている服の感想を述べる。それから俺たちは、先程の珍事をなんとか頭から吹き飛ばし、時間が過ぎるのも忘れて洋服を物色したのだった。



















「楽しかった!!」
「そうね。可愛い洋服がいっぱいあってよかったわ」

それからしばらくして、一通り試着して満足した俺たちはお店を後にする。その際ウェンディとエバーグリーンさんは洋服の入った紙袋を持ちながら、楽しそうに会話している。

「シャルルとセシリーも色々買ったんだね」
「ええ。可愛かったし」
「やっぱりオシャレは大事だよ~」

シャルルとセシリーも彼女たちサイズの紙袋を一つずつ持っており、中にはお店で気に入った服がたくさん入れられている。ちなみに俺はやっぱり何か違うような気がしたので今回は何も買っていない。だってどう見てもパーティーとかに着るような衣装ばっかりだったんだもん。ちょっと買うのには勇気がいるよね。

「あれ?」
「どうしたの?」

というわけで、ウェンディの荷物を片方持ってフェアリーヒルズへと向かっていたのだが、彼女が前方に何かを見つけて立ち止まる。

「あれってエルザさんとナツさん?」
「ハッピーとルーシィもいるわね」
「何してるのかしら?」
「いってみる~?」

お店から出ていったままの服装でナツさんたちと話し込んでいるエルザさん。他にもミラさんにマカオさん、それからワカバさんもいる。皆さん揃って何してるのかな?

「皆さん?何してるんです・・・か!?」

ナツさんの後ろからヒョコッと現れて声をかけるウェンディ。だが、彼女は何かを見て、大きく目を見開き、固まっている。

「どうしたの?ウェン・・・ディ!?」

一体何に対してそんな態度を取っているのか気になった俺は同じようにナツさんの後ろに回る。すると、見てはいけないものを見てしまい、ウェンディ同様言葉を失ってしまった。

「エルザさん!?」
「どうしたんですかその顔!!」

思わず二人揃って突っ込む。ヒーロースーツに身を包んだ彼女の顔が、なんだかとってもリアルになっているのだ。てかよく見るとナツさんたちも青ざめてる!!本当に何が起きてるの!?

「わ・・・わからん。これは一体・・・」

エルザさん自身もなぜそんなことになっているのかわからないみたい。聞いた話によると、自分のことを「フェアリーウーマン」と名乗り、変身魔法の暴走で怪物になったマカオさんとワカバさんを倒したら、ヒーローっぽくなったのか、めちゃくちゃリアルな顔立ちになったらしい。はっきり言ってめっちゃ怖いんですけど!!
その後彼女の顔はしばらく元に戻らなかったらしい。その間もあのヒーロースーツに身を包み、色んな悪党を倒していたようなので、実は満更でもなかったのではないかと内心思っている。










 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
なんだか文章むちゃくちゃですね、すみません。
書いてる途中でウェンディのロリータファッション書けたしもういいかな、と燃え尽きてしまった結果今までの中でも一二を争うへんてこなストーリーになっちゃいました。
次はケモケモのストーリーに入ろうと思います。 
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