遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード34 ーヒロイック・チャンピオンー
前書き
2016年4月2日、デュエル終盤の大きなミスを修正いたしました。
ライフ4000vsライフ100という無茶苦茶なハンデを与え、デュエルをしているのはオベリスク・ブルーで、大企業の息子でもある金城と、叢雲 紫苑ーーもとい、プロデュエリストにして、トップランカーである望月 シオン本人。
もちろん、ライフ100なのは、シオン。もっとも相手が望んだのではなく、己からかけたハンディキャップなのだが。
現在、1ターン目が経過し、金城のフィールドにはエクシーズモンスター『H-C ガーンデーヴァ』一体のみ。
だが、その攻撃力はモンスター効果も加わり、3100。かの青眼すら超える攻撃力もつモンスターが1ターン目から召喚され、会場は沸き立ち、金城がもしかしてら勝つのではと期待の眼差しを込め、二人のデュエルの行方を見守る。
「俺のターン……」
そして、シオンのターン。デッキトップへと指をかけ、デッキの一番上のカードを引き抜く。
「……ドロー!!
『アトラの蟲惑魔』を召喚。」
『アトラの蟲惑魔』
☆4 DEF1000
召喚されたのは、黒紫色のワンピースを着たどこか妖艶な雰囲気を醸し出している少女。
「さらに『二重召喚』発動。このターンもう一度、召喚することができる。俺は『カズーラの蟲惑魔』を守備表示で召喚する。」
『カズーラの蟲惑魔』
☆4 DEF2000
次に召喚されたのは、アトラと同じ歳くらいの白のワンピースに身を包んだ女の子。
金城同様、シオンの場に二体の同レベルモンスターが並び、またエクシーズ召喚が見られるのでは、と期待するがーー
「ターンエンド。」
ーー伏せカードすらセットせず、ターンを終了する。
壁となるモンスター二体を並べただけのプレイングに金城は内心ほくそ笑む。そして、安堵する。
ーーこの決闘、もらった……、とを
金城
手札4枚
LP4000
魔法・罠無し
場
『H-C ガーンディーバ』
シオン
手札3枚
LP100
魔法・罠無し
場
『アトラの蟲惑魔』
『カズーラの蟲惑魔』
「僕のターンだ!ドロー!
手札から『H・C 強襲のハルベルト』を召喚!」
『H-C 強襲のハルベルト』
☆4 ATK1800
ガーンデーヴァの横に並ぶ様に現れたのは大剣を肩に担いだ剣士。
攻撃力は1800とガーンデーヴァに及ばないこそ、今の状況には最適とも言える効果を有している。
「ハルベルトは貫通効果持ちだ!」
「あっそう。」
強襲のハルベルトの攻撃力は1800。対するアトラの蟲惑魔の守備力は1000。
もし、ハルベルトの攻撃が通れば、シオンの負けになるのにも関わらず軽く受け流す。
だが、金城はそんな些細な事など気にも止めずただただ自分の勝利を信じ、バトルフェイズへと移行する。
「バトルだ!行けっ、ハルベルト!アトラを叩き潰せ!」
これで勝った!と内心で歓喜し、ハルベルトで攻撃を仕掛ける。だが……
「……ーーから、トラップ発動。」
その刃がアトラへと届く寸前、地上へと開いた穴へと引きずり込まれ、そして、それに続くように後方で構えていたガーンデーヴァも引きずり込まれて行く。
「なっ!?」
突然起きたその光景に会場にいる全員が絶句する。
シオン一人を除いて。
「な、何が起きた!」
「俺は手札から罠カード、『狡猾な落とし穴』を発動!」
「なっ!?て、手札からだと!」
通常、一度伏せてから発動される罠カードが手札から発動されたのと、圧倒的有利だと信じていた布陣があっけなく崩壊し、絶叫する。
シオンはそんな金城など気にもとめる様子はない。
「『アトラの蟲惑魔』は表側で存在している限り、俺は手札から『落とし穴』、『ホール』と名のついた通常罠を発動する事ができる。
もちろん、相手ターンであってもな。」
シオンが言うと
会場の何処からか「卑怯じゃないか!」と不満を持った抗議の声が上がる。
それに対し、やれやれと肩を竦めると再び口を開く。
「どこが、卑怯なんだ?正当なルールに基づいたプレイングだ。文句があるなら、勝ってみろ。」
素人は疎か、そこそこの実力者ですら軽く捻る実力を有するプロのトップランカー相手に生徒が敵うわけがない。
圧倒的な実力者を前に会場の誰もが押し黙る。
「僕は、メインフェイズ2で……「まだ、終わってないんだけど?」
なにっ!」
シオンが煽るたびに面白いくらいに反応を示す金城。
怒れば怒るほど、頭に血が上れば上るほど、シオンの思う壺になるのを知らずに。
「『カズーラの蟲惑魔』の効果を発動。『落とし穴』、『ホール』と名のつく通常罠カードが発動された時、デッキから『蟲惑魔』と名のつくモンスターを手札に加えるか、特殊召喚できる。
俺は『ティオの蟲惑魔』を特殊召喚!
そして、『ティオの蟲惑魔』の効果発動!特殊召喚された時、墓地の『落とし穴』、『ホール』と名のつく通常罠カードをセットできる。よって『狡猾な落とし穴』をセットする。」
「っ!?これでまた使えるようになっただと!」
「ただし、あくまでセット。このターンは使えないし、デメリットとして次の俺のターンのエンドフェイズにフィールドに存在している場合は除外される。」
シオンは必要な事を済ませると、視線でさっさと進めろと催促する。
「ちっ。
僕は改めてメインフェイズ2に移行。そして、通常魔法『戦士の生還』を発動し、墓地の『H・C 強襲のハルベルト』を手札に加える。さらにハルベルトは相手の場にのみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚することができる。再び来い、強襲のハルベルト!
カードを二枚伏せてターンエンド。」
金城
手札1枚
LP4000
魔法・罠伏せ二枚
場
『H・C 強襲のハルベルト』
シオン
手札3枚
LP100
魔法・罠
セット(『狡猾な落とし穴』)
場
『アトラの蟲惑魔』
『カズーラのだが蟲惑魔』
『ティオの蟲惑魔』
「俺のターン、ドロー。」
3ターンが経過し、金城の召喚した圧倒的な攻撃力を持ったモンスターが破壊された事で一度盛り上がりを見せたギャラリーは鳴りを静め、プロデュエリスト シオンのデュエルを観戦する。
「俺は『トリオンの蟲惑魔』を召喚。そして、効果を発動する。トリオンの蟲惑魔は召喚成功時、デッキから『落とし穴』、『ホール』と名のつく通常罠カードを手札に加えられる。『奈落の落とし穴』を手札に加える。」
「また、『落とし穴』か。それにそんな雑魚モンスター……。」
金城が"雑魚"と口にした瞬間、シオンの冷静な態度の中に少し憤怒の色を濃くする。
「あんたもシンクロモンスターやエクシーズモンスターを持ってんだろ?なんでそんな低級モンスターばっか使うんだよ!」
望月 シオンは数多の決闘において数は少ないが『ナチュル』と名のついたシンクロモンスターを使っているのは事実。
金城の言葉を聞き、より不機嫌さを濃くするシオン。
「その"雑魚"にやられたモンスターはどこのどいつだよ。」
ライフ100というハンデを背負いながらも、強気ーーそれでいて正論でもある発言に金城は返す言葉が見つからず、フラストレーションを募らせていく。
「リバースカードオープン『狡猾な落とし穴』発動。対象はハルベルトとアトラの蟲惑魔。」
「なっ!?自分のモンスターまで!」
フィールド中央に空いた大穴にハルベルトがアトラに引きづり込まれる形で落ちていき、バリボリという咀嚼音が響いた後、アトラの蟲惑魔が素知らぬ顔で穴から這い上がってくる。
「ど、どういう事だ!アトラの蟲惑魔は破壊されるんじゃないのか!」
「蟲惑魔は『落とし穴』、『ホール』と名のついた通常罠カードの効果を受けない。
彼女らは敵を誘い出し、罠へと嵌めるスペシャリスト。自分で仕掛けた罠で死ぬわけがないだろう?」
これが一般とプロの差を示すかのようにさも当然と言ってのける。
実際にその実力の差が与えるプレッシャーは金城を蝕み、さらにシオンの挑発的な言動に加え、たった一撃加えれば勝ちというすぐ手に届きそうな状況に金城は攻撃一辺倒なプレイングとなり、初ターンで見せた勝ち誇ったかのような態度は消え失せていた。
「落とし穴カードが発動された事でカズーラの蟲惑魔の効果発動!デッキから『トリオンの蟲惑魔』を手札に加える。
そして、バトル。アトラとトリオンでダイレクトアタック!」
「なっ!?くわぁぁぁ!」
金城:LP4000→600
二体のモンスターの攻撃が直撃し、背中を床へと強打する。そして、金城の唯一と言ってもいいライフアドバンテージは皆無に等しくなる。
金城は呻きながらも立ち上がり、今一度シオンを睨みつける。
「なぜだ!お前にはあとモンスターが二体残っていただろう!」
「だから?」
「っ!?ちっ、……なめやがって。」
憤怒を露わにして、舌打ちをする。
シオンのフィールドには、アトラとトリオンの他に二体のモンスターが残っている。そのどちらも守備表示だが、どちらかを攻撃表示にしすれば金城のライフをこのターンで0にすることができた、はず。
プロであるシオンがそんなことを忘れるわけがない。そして、金城が至った結論は一つ"わざとトドメを刺さなかった"。手加減、言い方を変えれば、舐めプだ。
真実はシオンのみ知るが上に立つ者としてのプライドを酷く傷つけられた金城はこれまで以上に憤怒を露わにする。
「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ。」
「このエンドフェイズ時に俺は『トュルース・リインフォース』を発動する!デッキからレベル2以下の戦士族を特殊召喚する。来い、『H・C アンブッシュ・ソルジャー』!」
召喚されたのは、今までに召喚された戦士よりも幾ばくか小柄な戦士。
『H・C アンブッシュ・ソルジャー』
☆1 ATK0
「攻撃力0……。効果持ちか。」
シオン本人は大した興味を示すわけでもなく、ターンを金城へと明け渡す。
「その余裕の面……すぐに吠え面をかかせてやるっ!ドロー!」
本性が露呈し、口調が変わり、残虐な笑みを口元に浮かべる。
「このスタンバイフェイズ、アンブッシュ・ソルジャーの効果が発動される!
このカード自身をコストに手札・墓地からH・Cモンスターを二体まで特殊召喚する!
俺は墓地のハルベルトとエクストラ・ソードを特殊召喚!」
アンブッシュ・ソルジャーの号令で倒れた戦士が再び起き上がり、戦線復帰する。
『H・C エクストラソード』
☆4 ATK1000
『H・C 強襲のハルベルト』
☆4 ATK1800
「へぇ、またモンスターが二体並んだか……。」
「ちっ、今に見てろ……!」
またしてもレベルの同じモンスターを二体並べ、エクシーズ召喚の準備を整える金城に対し、若干関心を寄せる。純粋にレベルの高さを褒めたつもりなのだが、それすらも金城は嫌味と受け取る。
「俺はマジックカード『強欲な壺』を発動し、二枚ドロー!
そして、『H・C サウザンド・ブレード』を召喚する!」
これで、金城のフィールドには同じレベル帯のモンスターが三体並んだことになる。
「俺はレベル4のエクストラ・ソード、強襲のハルベルト、サウザンド・ブレードでオーバレイ・ネットワークを構築!」
紅く輝く渦の中央へと三体のモンスターが吸い込まれ、そして、閃光が迸る。
早速二度目となる光景だが、それでも魅入ってしまうものがあり、誰もが渦の中央から姿を現わす戦士を今かと待ち構える。
「エクシーズ召喚!ランク4『H-C クサナギ』!」
『H-C クサナギ』
★4 ATK2500→3500
現れたのは、かの三種の神器のうち一つ、草薙剣の名を持つ英雄。そして、その攻撃力は『H・C エクストラ・ソード』の恩恵も受け、3500まで跳ね上がる。
そして、蟲惑魔達はそのモンスターの登場を待っていたかのように行動を起こし始める。
「リバースカードオープン!『奈落の落とし穴』発動!」
「そう何度も喰らうか!『H-C クサナギ』の効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使用し、罠カードの発動と効果を無効にし、破壊!さらに自身の攻撃力を500ポイントアップさせる!」
クサナギの周りを浮遊していた3つの光球のうち一つがクサナギに取り込まれ、全身から輝くオーラを発する。だが……
「無駄。『アトラの蟲惑魔』がフィールドに存在する限り、俺が発動する通常罠の発動と効果は無効にされない。」
「なっ!?」
アトラが蜘蛛糸を放ちクサナギへと絡みつかせ、ギリギリと縛り上げる。そして、抵抗できないほどに弱らせると落とし穴へと突き落とす。
アッと言う間にフィールドから姿を消した英雄に唖然とする会場。
「『奈落の落とし穴』が発動された事で、カズーラの効果が発動される。俺は『ティオの蟲惑魔』を手札に加える。
さて、これでネタ切れか?」
またしても挑発するような言葉を投げかけるシオン。それに反応してか、金城はギリッと歯を噛みしめる音を聞かせながら、強く睨みつける。
「もう流石に姑息な罠ももうないだろう。ちょうどいいよ。俺の真のエース……英雄の中の英雄を魅せてやるよ!
リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!俺は『H・C サウザンド・ブレード』を蘇させる!」
黒く発光する魔法陣から召喚されたのは、千もの剣を持った戦士。今までの闘いの傷か、その体は傷だらけだ。
「あんたがクサナギを墓地送ったおかげで、サウザンド・ブレードを召喚できた。
そして、サウザンド・ソードの効果発動!手札の『H・C スパルタス』を墓地に送り、デッキから『H・C 夜襲のカンテラ』を特殊召喚!」
そのモンスターはローブを目深く被り、それぞれの手にカンテラとナイフを持った戦士……というよりもアサシンと言った方がしっくりくる。
これで金城のフィールドに三度、レベル4のモンスターが二体並ぶ事となる。
「俺はレベル4のサウザンド・ブレードと夜襲のカンテラでオーバレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
金城の口上に合わせ、二体が光煌めく渦へと吸い込まれていく。そして、渦の中央から迸る光の奔流……
「光纏いて現れよ!闇を切り裂く眩き王者!ランク4『H-C エクスカリバー』!!」
現れたのは、かの選定の剣の名を持った光の王者。そのモンスターが醸し出す風格は先に召喚された二体のヒロイック・チャンピオンよりも断然に格上のモノである。
『H-C エクスカリバー』
★4 ATK2000
「さらにエクスカリバーの効果発動!オーバレイ・ユニット2つ使用し、攻撃力を元々の二倍にする!」
2つの光球がエクスカリバーへと吸い込まれると、纏うオーラが一変し、神々しいものに変わる。
流石にシオンもこの変化には、驚いたようでほぅと小さく声を漏らす。
『H-C・エクスカリバー』
★4 ATK2000→4000
「見たか、これが頂点に立つ者に相応しいモンスターだ!お前みたいな姑息者には、こいつでトドメを刺してやるよ!!」
「あっそう。じゃあ、メインフェイズ終了時に、リバースカードオープン、『ナチュルの神星樹』発動。カズーラの蟲惑魔をコストにし、デッキから『ナチュル・バタフライ』を特殊召喚する。」
フィールドの中央に巨大な霊樹がシオンのモンスターを守護するかのように聳え立つ。そして、神星樹から小さなピンク色の蝶々が飛んで来、シオンの指先へと止まる。
『ナチュル・バタフライ』
☆3 DEF1200
「ちっ、バトルだ!トリオンの蟲惑魔に攻撃しろ!喰らえ、エクスカリバァァァァ!!」
聖剣を振るい、放たれた光の斬撃がトリオンに向かう。だが、それも……
「『ナチュル・バタフライ』の効果発動。攻撃を無効にし、デッキトップを墓地に送る。ヒール・バリア!」
金城が雑魚と侮った、小さな蝶が鱗粉を撒き散らし、強力なはずの攻撃を受け止めてしまう。
「な、な、なん……。」
自身が最強だと豪語するモンスターをあっさりと止められたショックからか、口を開けたままフリーズしてしまう金城。そんな彼を一瞥すると、肩を竦めて一つため息を吐く。
「結局、最後までパワー一辺倒か……。」
つまらない。と呆れたように言葉を漏らす。
もっともそうなるように誘導したのは、シオン本人なのだが。
「くそっ!俺はターンエンド!」
実際に1ダメージすら与えられていない金城はシオンに何も言い返せず、恨めしそうに睨みつけながらターンを明け渡す。
「俺のターン、ドロー。魔法カード『強欲な壺』を発動し、二枚ドロー!さらに『天使の施し』発動。三枚ドローし、二枚捨てる。そして、『手札抹殺』発動。互いに手札を全て捨て、捨てた枚数だけドローする。よって俺は四枚捨て、四枚引く」
「くっ、手札交換かよ……俺の手札は0だ」
一人手札を交換し終えたシオンは、今の間に九枚引き、六枚も手札を捨てたことになる。
「さて、最後に特別に魅せてやるよ。エクシーズに並ぶもう一つの召喚を。」
ーー即ち"シンクロ召喚"を。
「いくぜ。『ナチュルの神聖樹』の効果発動。昆虫族の『アトラの蟲惑魔』を墓地に送り、『ナチュル・ビーンズ』を召喚!そして、俺はレベル4のティオとレベル2のビーンズにレベル3のチューナー、『ナチュル・バタフライ』をチューニング!」
バタフライの体が3つの光の輪へと分かれ、二体のモンスターがそれを通過し、同調する。三体のレベルの合計は9。
「野生の血流交わりし時、大地を切り裂くパワーが目覚める!咆哮せよ!シンクロ召喚!大自然の力、《ナチュル・ガオドレイク》!」
『ナチュル・ガオドレイク』
☆9 ATK3000
モンスター達が力を合わせ、呼び覚ましたのは勇猛果敢な獣。その身に違わぬ勇ましい咆哮を上げると、黄金のオーラを纏うエクスカリバーに対峙する。
「は、ハハッ……何が出てくるかと思えば。俺のエクスカリバーより攻撃力が低いじゃないか。驚かせやがって」
嘲笑う金城に対し、シオンは恐ろしいまでの冷静さを貫き、絶対零度の視線を相手へと向けていた。
「何を勘違いしてるか知らんが、これだけ終わるわけないだろう。俺は墓地に存在する『ナチュル・レディバグ』の効果を発動する。このモンスター達は、『ナチュル』と名のついたモンスターのシンクロ召喚に成功した時、特殊召喚出来る。来い、レディバグ!」
『ナチュル・レディバグ』
☆1 ATK100
地面から這い出るようにして現れたのは、鮮やかな花柄が描かれたテントウムシ。だが、その攻撃力はエクスカリバーには到底及ぶものではない。
「何が出てくると思えば、やっぱり雑魚。よほどあなたは低星モンスターが好きなんですねぇ!」
「予想通りのリアクションをどーも。そんなんだから、おまえは負けるんだよ。俺はレディバグの効果発動!自身をリリースすることで、『ナチュル』一体の攻撃力をターン終了まで1000ポイントアップする!レディバグ達の力を、ガオドレイクに!」
「なにっ!?」
『ナチュル・ガオドレイク』
ATK3000→4000→5000→6000
攻撃力がグングンと上昇していくガオドレイク。その攻撃力はエクスカリバーを超え、青眼の究極龍さえも超える。
「こ、攻撃力6000だとっ」
「これで終わりだな。ガオドレイクで、エクスカリバーを攻撃!」
その攻撃は無情に、エクスカリバーを砕きわ金城のライフを消しとばす。そうして、この決闘に終幕の幕を降ろされた。
結果は、シオンの圧勝。むしろ、蹂躙と言ってもよいくらいだ。
圧倒的なまでのプレイングの差を魅せつけられ、罵詈雑言は愚か誰一人さえ、口を開こうとする者はいない。
理由は単純。
ただの恐れだ。
力は羨望や嫉妬の感情を産むが、強過ぎる力はむしろ恐怖の対象となる。そして関わり合いたくないとさえ思わせてしまう。
「はぁ……。」
そんな状況下でドームの中央で一人立ったままでいるシオンは悩ましげに息を吐き出す。その表情に浮かぶのは、落胆と後悔。
「……十代。」
「っ!なんだ?」
突然、名前を呼ばれた十代はピクリと体を一瞬震わせるが、すぐに返答をする。
「代表生徒の権利、やるよ。俺なんかより、お前が出た方がいいと思う。多分。」
「なっ!?ちょ、紫苑!?」
精一杯の作り笑いを浮かべそう言い放つ。そして、十代の言葉なぞ聞かず、伝えたい事だけ伝えると踵を返し、ドームから出て行ってしまう。
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