| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜

作者:ざびー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

エピソード33 〜譲れない事〜


実力トップクラスである三沢と十代を見事打ち破り、バトルロワイヤルを制した紫苑に送られたのは、勝利を讃える歓声などではなく、批難の嵐。


月一試験でも丸藤先輩を倒した時もこんな事あったな、とため息を吐く。
「面倒だな」と多少なりとも後悔していた。

だが、紫苑一人が後悔したところで、一向に紫苑へと浴びせられる罵詈雑言は止む気配はない。むしろ、紫苑がリアクションすらない事に対して、無視されていると感じたのか、非難の声がより大きくなる。
そして、予想だにしない展開に教員達は慌て、なんとかして静めようとするが焼け石に水だ。そんな中で一人、冷静になって状況を把握しているとわかった事が数点。
まず、現在進行形でブーイングしている奴らは生徒の凡そ半分。特にオベリスク・ブルー(エリート)の連中が中心になって叫んでいる。そして、そのメンバーの中には何人か見覚えのある顔が居た。

……あぁ、万丈目の取り巻き連中か。ボスが居なくなって別の奴についたか。
大方、そいつらの新たなボスの企みだろうな。

冷めた視線で元凶とおもわしき人物をみていると不意に肩を掴まれる。振り向けば、心配そうな表情をした十代と、憤怒を露わにした三沢の姿があった。
何事かと尋ねれば、言いたい放題にさせたままでいいのか?という事だった。

「なぁ、紫苑!悔しくないのかよ、あいつらにあんなに言われて!」

「別に……慣れたよ。俺に対する批判や非難なんて……。」

「それはどういう……」

事だ。と三沢が口にしようとするがそれ以上聞くなと視線で制され、言葉が詰まる。
批難を受けても冷静な態度を貫く紫苑だが、彼にも言って欲しくない言葉はある。

「あんな弱小モンスター(雑魚)ばっかり使って勝って、相手に失礼だと思わないのか!」

「くっ……!」

誰かがそういった瞬間、紫苑の表情が一気に険しくなる。

「お、おい……紫苑。」

険しい表情のままに一歩前へと出る。何かしでかすと直感した三沢は咄嗟に止めようと試みるが今まで感じた事のような殺気を受け、退いてしまう。

ワーワーと煩い中、紫苑は息を大きく吸いーー

「 だ ま れ ! ! ! ! 」

非難の声など掻き消すほどの絶叫が会場内に轟き渡る。一瞬にして、静まり返った会場の中で一人、紫苑は憤怒の色を滲ませながら口を開く。

「俺がいくら非難されようと構わない……。
だが、俺の仲間を貶めるのは、何があっても、許さない!!」

自分が罵倒されるくらいなら我慢できるし、適当に受け流す。
だけど、俺について、力を貸してくれた精霊達や一緒に闘った、十代たちのデュエルを否定する事は、許さない。

紫苑の言葉を受け、今だ静寂に包まれている中でパチパチパチと乾いた音が響く。
音源の方を向けば、オベリスク・ブルーの制服を着こなし、金髪に染め上げた髪を逆立てた男子がパチパチと拍手を鳴らしながら、元万丈目の取り巻き連中がいたところからこちらへと降りて来ていた。

「いや〜、流石言うことが違うね〜、仮にもカイザーを倒した人はーーー……」

殺気の篭った視線で睨みつければ、視線が合う。そして、悪寒が走るような気持ちの悪い微笑を浮かべ、一拍ーー

「ーーーねぇ、プロデュエリスのシオンさん?」

「っ!?」

その言葉を聞き、目を大きく見開く紫苑。当たった事が嬉しいのか、ブルーのその生徒はより一層笑みを深める。

「あれ、否定しないんだ?沈黙は是と取るよ。」

「……俺が望月 シオンだとして、その根拠は?」

「初めはカイザーとのデュエルした時かな。一年生が三年生、しかも学園最強の名を持つ丸藤 亮と闘うなんて変だ。それにライフをほとんど削られずの勝利を収めた。
初めは、インチキかと思ったけど。なんども見返したけど変な箇所なんてない。それに君の使ったシンクロモンスター……あれは学生が容易く扱える代物じゃあない。
それに気が付いたくらいで、君が普通の学生じゃないと思ったよ。
そして、君の使っている『ナチュル』。それはプロデュエリスト、望月 シオンも使っているカテゴリ。いや、プロリーグでは、彼しか使ってない。
それで大体君が望月シオンと同一人物って確証は50%くらいかな。ただのファンだってのもあるし……。
けど、今日のデュエルを観て確信したよ。君が望月シオン本人だってね。
だってそこの二人はイエローとレッドだけど、実力はブルーの上位者並だ。それをほぼノーダメージで勝つ程の実力者は同年代では、望月 シオンしか居ないってね。
で、解答はどうだい?」

そこまで言い切るとよほど自分の推論に自信があるのかやや自慢げに鼻を鳴らす。
紫苑もここまで言われたら流石にすっとぼける事はできないか、と思い大きく息を吐く。

「その通り。俺はプロデュエリストにして、トップランカーの一人……望月 シオン。これで満足か?」

苛立たしげに言い放つが相手はどこ吹く風だ。
それよりも、静かだった会場は突然の発覚に騒々しさを増してくる。


◆◇◆

「えぇ!紫苑さんって、あの望月 シオンさんだったんですか?!」

「ん?まぁね。」

左右でやはり、驚愕の声が上がる。明日香が私の事をマジマジとみつめ、若干口ごもりながら、話す。

「え、じゃあ……翠さんは……?」

「ん?まぁ、ご想像通り、私もプロデュエリスト。帝 光と名乗ってるね。」

よほどショッキングだったのか顎が抜けたかのようにあんぐりと口を開いて驚いてくれるみんな。
まぁ、いつかバレるとは思っていたけどね。

私はたいして変装とかはしていないけど、紫苑がプロとして活動するときは必ず、私達の中で最も印象に残りやすい銀髪と、紫眼をそれぞれをカツラやら、カラコンで隠してる分、正体がバレづらい。
バレるとしたら、私が先だと思っていたが、まさか容姿以外で判断されるとは思ってもみなかった。しかし、あの子意外と頭がキレる?

しかし、私たちの正体がばれたが、紫苑アンチの状況にあまり変化はみられない。
プロリーグはデュエリストなら誰もが憧れの舞台。そして、その中でも上位のわずか、トップランカーのデュエリスト達は彼らに取っては雲の上の存在。
ばれた時が今でなければ、鬱陶しいくらい人が詰め寄って来ただろう。
だが、今は紫苑へと敵意の視線が向けられている状況。その肩書きさえ、非難の対象となりえる。

ーーーただあの子の目的がわからない。紫苑の正体をバラして、吊るしあげたいだけ?

『ねぇ、翠……。なんか、あいつ、嫌い。」

ふわりと私の隣にアテナが現れると共に嫌い発言。それはどうかと思うが、今はそれにつっこんでる暇はない。

……嫌いって、なんで?

『あいつ、丁寧な口調だけどその裏になんか企んでそうなのよ。』

なるほど。アテナも私同様、なんか企んでそうと思ってるわけか。

「で、目的はなんだよ。ただ正体をバラしたいだけ……じゃないんだろ?」

「まぁ、その前に名前くらい名乗らせてよ。僕は金城 剣。」

金城……。どこかで聞いたような。

「金城って言ったら、万丈目君と同じくらいの規模の会社を一代で築いた人の跡取りっすよ!」

翔君が思い出したかのように叫ぶ。要するに金持ちの跡取りなのだが、そんな人物に対しても態度は全く変わらず、「だから、どうした?」いった風貌だ。
まぁ、嫌いな奴にはとことん冷たく接するからね、紫苑は。

「邪魔なんだよね。お前みたいな奴。」
「……邪魔?」
「そう。邪魔。僕はね、僕よりも上に立つ奴らが嫌いなんだよ。だから、君にはぜひ居なくなってもらいたいんだよ。」

笑顔でそう言う金城君だが、その分迫力がある。

「へぇ、だから批判するような雰囲気にするように取り巻き達にやらせたのか。」
「さぁ?けど、ここまでは考えてた通りだよ。」
「で?……どうやって俺に居なくなってもらうんだ?」

「そりゃ……もちろん。」

一拍

「デュエルでね。」

◆◇◆

「十代や三沢、万丈目とこの学年のトップを倒し、カイザーをも倒した君を倒せば実質的に僕がナンバー1だ。もちろん、君には挑戦を受けないっていう選択はないよね?」

ただの馬鹿か、本当に実力があるのかはわからない。ただこれを受けなければ、全員が臆病者などいい感想は抱かないだろう。まったく回りくどい事を。

「いいよ。受けてやるよ。」
「そうかい。ついでに素直に負けてくれるといいんだけどね。じゃ、決闘(デュエル)!」
「……決闘(デュエル)

金城:LP4000
シオン:LP100

「先行は僕が……ん?ライフ100?」

デッキに手をかけ、引き抜こうしている手が止まる。

「ハンデだよ。精々、頑張れ。」
「……ふ〜ん。気を取り直して、ドロー!」

「僕は手札から、『H(ヒロイック)C(チャレンジャー) エクストラ・ソード』を召喚して、ターンエンドだ。」

『H・C エクストラ・ソード』
☆4 ATK1000

剣闘士のような、直剣を構えた戦士が金城の場へと現れる。
紫苑は聞き覚えのないカテゴリ名に首を傾げる。

「……ヒロイック?」

「そう。勇猛果敢なる戦士達さ!
僕の父が提携してる会社に、デュエルモンスターズのカードデザインをやっているのもあってね。普段は使わないんだけどね。相手は、トップランカーのシオン プロだろ?だから、今回は特別さ。」

含みのある笑みを紫苑へと向けると、プレイングを続ける。

「僕は戦士族モンスターの召喚に成功したとき、こいつを特殊召喚する!
舞え、『幻蝶の刺客 オオルリ』!」

蝶の羽根を羽ばたかせながら、双剣を携えたモンスターが現れる。その風貌は、まさしく刺客(アサシン)と言ったところだ。

『幻蝶の刺客 オオルリ』
レベル4 DEF1700

「レベル4が二体……!」

そして、金城の場に早くも二体並んだモンスターを見て、意外そうな顔をして呟く。

「流石、察するのが早いね。
出し惜しみはなしだ。見せてあげるよ、僕の力……。ナンバーワンが持つに相応しいオンリーワンを!
僕はレベル4の『H・C エクストラ・ソード』と『幻蝶の刺客 オオルリ』の二体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

二体のモンスターが光球になると同時に、金城の足元へ紅い光子を放つ渦が形成され、そこへと呑み込まれていく。

紫苑にとっては見慣れた、そして、他の人たちにはほとんど見る機会がない召喚方法。

ーーエクシーズ召喚ーー

それがたった今行われ、モンスターが召喚されようとしているのだ。

なるほどな。エクシーズ召喚は予想外だったな。プロ()を倒すと言うだけの力は持っているという事か。

「歯向かう敵を撃ち落とせ!百発百中の英雄よ!『H(ヒロイック)C(チャンピオン) ガーンデーヴァ』!!」

渦の中央から光が溢れ、洪水の如きライトエフェクトが周りを白く染める。
そして、光が晴れると馬へと跨り、大弓を構えた英雄がこちらを見据えていた。

入手困難なエクシーズモンスター、かつプロリーグにおいても高ランカー同士の決闘ででしかみかけることのできないエクシーズ召喚がされた事により、ドッと会場が湧き上がる。

「僕はエクストラ・ソードをエクシーズ素材として召喚したガーンデーヴァの効果発動!攻撃力を1000ポイント上昇させる!」

『H-C ガーンデーヴァ』
★4 ATK2100→3100

ガーンデーヴァは仲間の支援をうけ、より一層、強者のオーラを強くする。
これでレベル4モンスター二体だけから、破格のステータスが出来上がる。
紫苑は改めて、エクシーズ召喚の強力さを痛感する。

「チャレンジャーから、チャンピオンね。」
(シオン)を打ち倒すには、チャンピオンじゃなくちゃね。
どうだい、僕のモンスターは。まぁ、もっともシオン プロにはとっくに見慣れてる光景だと思うけど。」

金城の嫌味を「そうでもないさ。」と肩を竦め、受け流すと格上の存在を打ち倒そうとこちらへ敵意を向けてくるガーンデーヴァに視線を向ける。
紫苑がいまだみ見た事も聞いた事もない未知のモンスター。だが、やる事はただ一つ。


「僕は、これでターンエンドだ。」

「俺のターン……、ドロー!」


本気を持って倒すのみ。



To be continue…… 
 

 
後書き
前回より、投稿がだいぶ遅れてしまいました。o(_ _)o ペコッ
さて、なんや紫苑くん正体がバレました。
あんまりヘイトやアンチは好きじゃないですけどね(汗

そして、久々に出てきたエクシーズ。
これからも多分あんまり出てこないと思います。主にプロで使われるものという設定なので。

感想待ってます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧