八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十六話 花火が終わってその十一
「どう?」
「危ういですが」
「それでもでしょ」
「はい、確かにですね」
「歩けてるわね」
「一応ですが」
それでもとだ、小夜子さんは言うのだった。
「歩けていますね」
「それじゃあね」
「帰りますか」
「そうしましょう」
「では私達も」
円香さんもここで言った。
「行きましょう」
「八条荘までね」
「一緒に帰りましょう」
「一人もはぐれるな」
井上さんも立った、井上さんは全くふらついていなかった。けれど動きはいつもよりも明らかに鈍かった。
「今ははぐれたら大変だ」
「そうネ、酔って一人で夜道とかネ」
「もう何があってもおかしくないある」
ジューンさんも水蓮さんも立ち上がって言う。
「だからネ」
「一人もはぐれたら駄目あるな」
「皆慎重にネ」
「集まって帰るあるよ」
「その通りだ、日本はまだまだ治安がいいが」
それでもとだ、井上さんはまた言った。
「お祭りの時は気をつけろ」
「人が多くテ」
「悪い奴等もいるあるな」
「だからネ」
「今は要注意あるか」
「そうだ、その為にはだ」
何といってもというのだ。
「一人にならないことだ」
「このお祭りはね」
僕もここで言った。
「賑やかだけれどその分ね」
「大変なのね」
「変な人もいるからね」
詩織さんにもこう答えた。
「残念ながら」
「本当に残念なことね」
「うん、全くだよ」
苦い顔でだ、僕は詩織さんに答えた。
「けれどそうした場所だから、今のここは」
「一人になったら駄目ね」
「それこそね」
今ここで酔った女の子が一人になるとだ。
「どうなるかわからないから」
「うん、お祭りは帰るまでがね」
「お祭りよね」
「楽しいのは帰るまでだけれれど」
余韻を味わいながら帰るからだ。
「だからこそね」
「気をつけることもね」
「忘れたら駄目だよね」
「ええ、お祭りだから」
「お祭りは変な人も来てるから」
実際に何人か柄の悪い人を見た、わざわざこうした時を狙ってお財布をすりに来るすりまでいる位だという。
「だからね」
「余計にね」
「気をつけないとね」
「そうよね、じゃあ」
「皆一緒に帰ろう。あとね」
僕はここでズボンのポケットから携帯を出した。
「アパートの他の皆にも確認取るよ」
「無事かどうか?」
「一人じゃないかとかね」
「そうね、それがいいわね」
詩織さんは僕のその提案に頷いてくれた。
「皆大丈夫かどうか」
「本当に今日は気をつけないと」
賑やかな日だけにだ。
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