八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十六話 花火が終わってその八
「この最後の花火は」
「合わせて相当打ち上げられるが」
「最後になんですよね」
「百発だ」
「とりわけ大きくて奇麗な大輪の花火が」
「打ち上げられる、まさに有終の美だ」
井上さんは確かな笑みのまま言っていく。
「これ以上の花火はない」
「僕も他には知りません」
これ以上の花火はだ。
「特に最後のこれは」
「そうだな、まことにいい」
声がうっとりとさえしていた。
「何度見てもな」
「何度もですか」
「花火は飽きないがだ」
それでもというのだ。
「この花火は特にだ」
「沙耶香さん本当に花火好きね」
詩織さんが井上さんに言った。
「確かに奇麗だけれどね」
「それでもか」
「ええ、かなり好きね」
「実際にな、そしてその中でもだ」
「この最後の花火が好きで」
「幾ら見ても飽きない」
それこそ何度でもというのだ。
「終わることが残念だ」
「そこまでなんですか」
「そう思う、しかし終わりがあるからこそ」
終わりを残念に思いながらもと言うのだった。
「またいいのだがな」
「はい、終わりがないと」
それこそとだ、詩織さんも井上さんに応えrて言った。
「何時まであるんだってなりますよね」
「飽きるどころか嫌になる」
「終わるからこそ」
「名残惜しくもなる」
「漫画にしましても」
詩織さんは花火とは別のものも話に出した。
「終わりがないと」
「どうもだな」
「はい、何か飽きて嫌になりますね」
「そうした漫画があったな」
何か某週刊少年雑誌で多いと思う、終わらせればいいのに延々と続いてそれでつまらなくなってしまう漫画が。
「延々とワンパターンな展開が続く」
「どのキャラも主役登場までのつなぎで」
「引き伸ばしばかりでな」
「アニメ版が酷くて」
「より酷い引き伸ばしだな」
「オープニングとエンディング除いて二十分ずっと殴り合いとかありましたから」
「よくそんなもの放送出来たものだ」
井上さんは悪い意味で感心の言葉を述べた。
「そこまでしてだな」
「延々放送していましたけれど」
「酷い駄作になっていたな」
「正直そう思います」
「その作品は何の作品か察しはつく」
井上さんもというのだ。
「あれはない」
「終わらせたくないと思ってですね」
「あそこまでしたがだ」
「失敗でしたね」
「終わりは奇麗にだ」
くれぐれもというのだ。
「この花火は予定を決めている」
「それで締めのこれですね」
「これがはっきりしているからだ」
「いいんですね」
「名残惜しく思いだ」
「終わることが残念だと思いながらも」
「しかし終わることでだ」
それがあるからというのだ、この花火においても。
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