Re;FAIRY TAIL 星と影と……
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原作開始前
EP.5 幼き想い
前書き
更新遅れてすみません!
今回は少し短いです、どうぞ。
黒いノースリーブ型のシャツに白いスラックス。ワタルは動きやすさのみを追求したこの二つを複数所有し、好んで着用していた。
だが、それもギルド加入の初日までの話だ。
「窮屈だな……」
ギルド加入三日目、つまり模擬戦の翌日、ワタルの左腕はギプスで覆われていたのだから。
模擬戦に勝利したものの、ラクサス(とエルザ)によって怪我を負ってしまったワタル。久しく無かった本気の勝負の機会に思わず熱くなってしまった自分を戒める意味でも、そのことを恨むつもりは毛頭ない。
ないのだが、怪我が原因で生まれてしまった問題がある。
片腕とはいえ、骨折という駆け出しには少々厳しい怪我を負ったこの身体でどうやって食い扶持を稼ぐか、という問題だ。
「ま、大丈夫だろ」
「そうそう。探し物とか魔法教室の臨時講師とか、荒っぽくない依頼だって沢山あるからね」
家賃の事もあるのにどうしたものか……、と頭を悩ませたワタルだったが、グレイやカナの助言を受けてあっさり解決。幸い右手は問題なく使えるため、腕が完治するまでは片腕でも支障の無い仕事を数受けてこなす、という質素だが無難な策をとることにしたのだった。
ギルドの仕事に関して、ワタルが困惑する事は無いと言ってよかった。
イシュガルの極東で正規ギルドではないものの魔導士ギルドのようなものに属して活動していたワタルであるが、舞い込む依頼は荒事が中心の傭兵のような依頼ばかりだった。偏に極東には魔導士ギルドが他になかったためだったのだが、そんな彼にとってギルドの初仕事なんてあってないようなものだったのだ。
しかし、魔法教室はともかく、届け物や落し物、捜し物まで魔導士の仕事として依頼されている事に若干の違和感を覚えたのだが、そこは『所変われば品変わる』というもの。特に不満がある訳でもなし、『郷に入っては郷に従え』の精神で仕事をこなしていくのだった。
閑話休題。
「しかし便利だな、それ」
ワタルの愚痴を流したグレイの視線は木製のテーブルの上に立っている、ちょうど膝くらいの大きさの白い人形に向いていた。
白一色にのっぺらぼう、あえて特徴らしい特徴を挙げるなら胸の辺りに黒い線で描かれた星の形ぐらいか。丸い手足に指は無く、幼い子供が作った粘土人形のようなそれは両手で挟んでスプーンを持ち、両手を満足に使えないワタルの口にシチューを運んでいた。
「“式神”っていったか?」
「ん……戦闘には使えないが、なかなか便利な奴だ」
式神は魔符と呼ばれる特殊な紙に術式を刻み、使用者が魔力を込める事で使役する。しかし、特殊な物とはいえ元が紙なので耐久性に難があり、日常生活の補助に支障はないが複雑で激しい動きを必要とする戦闘には使えないのだ。
食べつつもワタルがその旨を言えば、式神はスプーンを小脇に抱えると片手を腰について胸を反らした。
「へぇ……例えば何ができるの?」
「こいつに興味があるのか?」
表情どころか顔も無いがどこか愛嬌を感じさせる動きに感心したのか、カナは指で式神の頭を小突きながらワタルに尋ねた。聞けば、自分の魔法である魔法の札と関連性があるかも、と思ったとの事。
仕事道具であるタロットカードを見せながらのカナの言葉に少し考えると、ワタルは口を開いた。
「あんまり関係ないと思うぞ。式神は魔法というより契約に近いし」
「契約?」
「そう。血を与える代わりに術者の命に従う存在となる――それが式神だ」
「血、って……」
血で主を刻み、術式で用途を指定し、術者の魔力で発動する――これが式神の大まかな概要だ。
純粋な好奇心で聞いた答えが『血』に『契約』というあまり穏やかではない言葉だったためか、カナは絶句している。
「じゃあ、命があるって事か?」
グレイの問いはもちろん否だ。魔術において命を創り出す事は禁忌中の禁忌であり、それを侵した者は永遠の責め苦を受ける、とされている。
式神はただ命令に従うためだけの存在。血はあくまで主人との契約に使う媒介であり、魔力で動く人形に過ぎない。
「――といっても、さっきも言ったが元が紙だから大した事は出来ないし、契約に使う血だって一滴だけ、俺の情報を与えるだけだから、そんな物騒な話でもないさ」
改良しだいでは戦闘にも使える式神を生み出す事は可能なのかはワタルには分からない。だが仮に可能だとしても、ワタルはそれをするつもりは無いし、それを公表するつもりも無い。
碌な使われ方がされないのが目に見えているのも理由の一つだが、ワタル自身がそういった戦法を好まないからだ。
端的に言えば、殴らせるのではなく殴る方が好きなのだ。
殺し合いは嫌いだが、殴り合いは好きなのだ。
式神で戦わせることとの違いは説明が難しいのだが、そこには微妙な違いがある。
良く言えばまっすぐ、悪く言えば脳筋的な思考である事は重々承知だが、ワタルからすれば譲れない一線なのだ。
「……そういえばエルザは? 朝から見てないけど、ワタルは知ってる?」
そんなワタルの胸の内の考えは置いといて、興味が失せたのか、カナは話題を変えた。
「なんか、昨日マスターに呼ばれたって言ってたな」
「ふーん……仲良いの?」
模擬戦の後にマカロフに声を掛けられたエルザの事を思い出したワタルがそれを言えば、カナは目に好奇の光を宿らせて尋ねてくる。大人と同じように魔導士として働いているが、年頃の少女である事に変わりはなく、興味を持つのは別に不思議な事ではない。
「……一ヶ月の付き合いだ。そういうのじゃない」
ワタルは面倒そうなのに目を付けられたと内心溜息を吐きながら、食事を終えて役目を果たした式神を魔符に戻し、若干煩わしげにあしらうのだった。
= = =
ワタルがカナの追及を躱しているその頃、当のエルザはマカロフと共にマグノリアの東の森にある妖精の尻尾の顧問薬剤師、ポーリュシカを訪ねていた。
人間嫌いの彼女はマカロフの古い知り合いで、魔法薬の調合を専門とした腕利きの治癒魔導士だ。
「……これまた酷い傷だねぇ」
「もう一度見えるようにはならんか?」
「問題ないよ。応急処置がされてなかったら難しいところだったが」
「そりゃあよかった。せっかく綺麗な顔をしておるのに不憫でのう……」
拷問によって潰されたエルザの右目はワタルによって摘出され、傷口に雑菌が入らないように処置されていた。そのおかげで眼窩の奥の視神経は生きており、容易に治療できる。
あくまで比較的容易に、だが。
マカロフ経由で渡された保存用魔水晶に保管された右目の損傷具合を見るに、雑菌が入って視神経が壊死していた可能性もあったのだから、不幸中の幸いというやつだ。
それはさておき、ポーリュシカは顔を顰めてマカロフの耳を引っ張り、エルザから離して声を潜めた。
「……ちょっと来な」
「痛い痛い!」
「大きくなったら手を出すんじゃないだろうね……」
「ととと、とんでもない! あの子には好きな奴……いや、憧れか? とにかくそういうのがおるわい。目の事もそいつに頼まれたんじゃ」
「フーン……その子の名は?」
「……ワタル、じゃ。エルザと同い年くらいの少年じゃよ」
腐れ縁の女性の剣幕にビビッて、引っ張られた耳をさすりながら個人情報を漏らしてしまうマカロフ。
この女好きの老人を白眼視していたポーリュシカだったが、その言葉を聞くと目を開いて驚いた。
「応急処置もその子が? 何者なんだい?」
エルザと同い年くらいというと、まだ10歳かそこらだろうか。
そんな少年が、殆ど潰されていた右目を的確に応急処置したというのだからポーリュシカの驚愕は推して知るべしだろう。
「……星族の末裔じゃ」
「星族? 生き残りがいたのかい?」
「そうらしいの」
「らしい、ってあんた……」
「心配ない」
眉を顰めたポーリュシカの言葉に、マカロフは胸を張って何の問題もないと言い切った。
型破りで女好きで80になっても無茶を止めない馬鹿だが、本質を見抜く目は確かだ。それに言っても聞くような男でもないと、十分すぎるほど知っている。
ポーリュシカは鼻を鳴らすとエルザに視線を遣って口を開いた。
「フン……で、あの子、どこの子だい?」
「それが……ロブの奴に世話になっていたみたいで……」
「ロブ!? あいつ、今どこに!?」
「……死んだそうじゃ」
「…………そうか」
懐かしい名前を聞いてと驚くポーリュシカだったが、その訃報を聞くと顔を歪めたのだった。
エルザの目の治療が始まって何日か経った。
ポーリュシカは人嫌いで義眼の作成と薬の調合以外にエルザに関わろうとはせず、ワタルにすら完全に心を開いていないエルザにしても周りを拒絶するかのように塞ぎこんでいた。
そのため、2人の間には問診以外の会話はなく、この何日かは静かなものだった。
そして、全ての治療を終えたポーリュシカがエルザの目に巻いた包帯を取ると……
「どうだい?」
「……治ってる……」
ずっと見えないままだと思っていた右目が見えるようになっていた。
エルザは暫し呆然としていたが、込み上げる物を抑えきれずに涙を流す。
二度と見えないと諦めていた右目は楽園の塔で受けた拷問――エルザのトラウマそのもの。それが再び見えるようになったとあっては堪えきれるものではなかった。
「見えているね?」
「は、はい」
義眼の感触に違和感はなく、拷問で目を潰された時の醜い傷は跡も残らず綺麗さっぱりなくなっている。視力も正常で、エルザ用に調合したポーリュシカが治癒魔導士として高い技量を持っている事を示していた。
「ならさっさと出て行きな……あたしは人間が嫌いでね。ああ、そうだ。ワタルって子がアンタの目の治癒を頼んだそうだよ。帰ったら礼を言っときな」
「ワ、ワタルが!?」
目に見えて狼狽するエルザに、ポーリュシカは彼女を連れてきたマカロフの言葉を思い出した。
「そうだ……その顔じゃ、想い人っていうのも当たりかい?」
「な、なな、なん……!?」
「落ち着きなさいな……ッ!? あんた、その目……右目だけ涙が流れていない?」
人嫌いを自称しているポーリュシカだったが、泣きながらも真っ赤になって狼狽えるエルザの様子に微笑ましいものを感じ、からかったのだが……ある事に気付き、驚きの声を上げる。
左目は正常に涙を流しているのに、右目には涙が浮かんですらいないのだ。
「そんなはずは……薬の調合は完璧だったし……」
「……いいんです。私は……もう半分の涙は流しきっちゃったから」
治療に不備は無かった。義眼に拒否反応も認められないし、しっかり見えているのはエルザを見れば明らかだ。それでも何か原因があるはずだとポーリュシカは治療の際に付けた日誌を急いで見直したが、他ならぬエルザに止められた。
赤い顔で泣きながら、しかし嬉しそうな笑顔で。
『半分の涙は流しきっちゃった』
ポーリュシカは、彼女がそんなふうに言う程に辛いことがあったのだろうと察し、それ以上は何もせず、また何も言わなかった。
元来彼女は他人に関わろうとしないが、かつて同じ紋章を背負った旧友の頼みを断るほど冷たい性格をしてはいない。ましてや患者は幼い少女だ。顔に傷が残る辛さは理解できる。
「……そうかい」
妖精の尻尾の顧問薬剤師として、そして治癒魔導士としてのプライドもあった。
だが、物憂げな表情で心を閉ざしていたはずの少女が浮かべている笑顔を止めてまで、それを押し通す気にはなれなかったのだ。
願わくば、彼女の未来が幸せに溢れる物でありますように。
ポーリュシカにはただそんな風に祈る事しかできなかった。
= = =
ポーリュシカに目を治癒してもらい、マグノリアに帰る森の中で、エルザは考えていた。
「(ジェラールは、その後ろ姿を見ていることしかできなかった)」
皆のリーダーだった彼は、誰よりも前で自由を謳い未来と理想を求めた彼は仲間を庇って自分を犠牲にできるほど高潔で、いつだって皆に認められ、慕われていた。自分もその皆の内の一人だ。
彼はいつでも、誰にでも手を差し伸べていた。一緒に行こう、と。
でも変わってしまった。最悪の黒魔導士ゼレフの亡霊に憑かれて憎しみの赴くままに魔法の力で塔の神官を虐殺し、それを拒んだエルザに手を上げ、目を覚ましてと叫んでも『いらない』と一人海に放り出した。
伸ばした手は届かなかったのだ。
心が軋む。痛む。悲鳴を上げる。
まるでこれ以上彼の事を考えるのを拒否するかのように。
そこで、今度は自分を拾い、治療を施して魔法を教え、ここまで連れてきてくれた男の子の事を想う。
「(ワタルは私の横で歩いてくれる。隣に居てくれれば、どこまででも歩いて行けそうだ)」
彼の隣は温かく、居心地が良かった。
何故だろう――エルザはこの一ヶ月を振り返り、そう思う。
何度も身体中の怪我の治療をしてくれた。一人で歩けば早いだろうに、遅い自分の歩みを合わせて歩いてくれた。眠れないときは自分が眠りにつくまで話し相手になってくれた。請えば魔法を、魔力の扱いを、剣の握り方を教えてくれた。
そして、目を治してやってくれと頼んでくれた。悪夢の中で自分の手を取ってくれた。此処にいるからと笑いかけてくれた。
何てことだ、自分は与えられてばかりではないか。
心地良いのも当たり前だ、親に甘える子供と同じではないか。
逆に自分は彼に何かをしてやれただろうか。いや、塞ぎこんで自分の殻に閉じこもっていただけだ。ぬるま湯と言ってもいい。
ならばと、エルザはより一層決意を固くする。
彼の隣に居ても恥ずかしくないように強くなる。魔導士としての彼は遠いところにいるけど、絶対に諦めるものか、と。
「しかし……お、想い人、か」
ポーリュシカに指摘された単語を反芻する。
恋愛感情なるものは、エルザにはよく分からない。楽園の塔でジェラールに抱いていた感情だって、正義感の強い彼への憧れはあったが、それが恋なのかと聞かれてもその是非を答えられないのだ。
こそばゆいというか小っ恥ずかしいというか……恋というものに対して、エルザはそんな感覚だった。
「(時間が経てば自然と分かるのだろうか……)」
ワタルの事を『好き』か『嫌い』なら『好き』と答えられる。それがlikeかloveなのかは分からないが。
その断定もしたくなかった。もし違った時、ワタルとどう向き合えばいいのか皆目見当がつかなかったから。
「(それとも私くらいの歳なら分かるのが普通なのだろうか……)」
捨てられたのか、亡くなったのか、それさえも覚えておらず、居た記憶も無い『親』というものが居れば、教えてくれるのだろうか。
たられば言っても仕方ないとは分かっているが、両親が居て、子供狩りにも合わず、同年代の者――浮かんだのは楽園の塔で苦楽を共にした仲間やストロベリー村で過ごした面々だ――が普通に居たら、普通の少女のような話ができる友達ができたのだろうか……そんな『if』を想像してしまう。
「…………あ」
取り留めの無い雑多な思考をしていると、森を抜けてマグノリアの街に入り、最奥部の妖精の尻尾に着いてしまった。
「(考え事をしていると時間が経つのが早いな……そうだ、ワタルに礼を言わないと)」
そんな事を思いながらもエルザが中に入ると見慣れた背中……ワタルの姿を見つける。
その瞬間、先ほどまでの纏まりの無い考えがエルザの頭の中をグルグルと回り始める。
何か話しかけようとするも、その声は音にならず、ただ立ち尽くしてしまう。
「ああ、エルザ。目、治ったんだな」
そんなエルザに気付いたワタルは彼女より先に話し掛けた。
左のギプスはそのままだが、右手の包帯は取れており、こちらに手を振っている。
その顔には喜色に染まっていて――。
「見ないと思ったら……」
「その目、ポーリュシカのばーさんのところにいたのか?」
カナが心配したかのように、グレイはエルザの顔をまじまじと見ながら声を掛けるが、エルザにはぼんやりとしか聞こえていなかった。
「義眼か? へぇ、よくできてるな」
「(ああ、どうして――)」
コイツと居ると、こんなにも心が掻き乱されるのだろうか――。
= = =
右目が完治したエルザはその翌日、漸く、初仕事に出る事にした。
結局ワタルに関する考えが纏まる事は無く、治療を頼んでくれた事の礼は伝えたが他に大した事も無く解散となってしまった。
それが何となく申し訳ないような気がして、挽回のつもりでワタルを朝食中に誘ったのだが……ワタルは右手一本で器用に食べながら断ったのだ。
当然、エルザは理由を聞く。
「何故だ?」
「……別にお前と行くのが嫌って訳じゃない。でも、初仕事は妖精の尻尾の習慣とかあるかもしれないから、よく知ってる人と行くべきだって」
ギルドの一員、つまり、一人前と認められた魔導士になったからには、適当にやるのは拙い。
そう考えた故の提案だったが、エルザには不満だったようだ。
「ワタルは知らないのか?」
「完全に知ってる訳じゃない。今も勉強中だよ……そういう訳だから、カナ頼む」
「えっ……わ、私!?」
「グレイでもいいが、同性の方がエルザも緊張しないで済むだろ?」
「お、おい……勝手に決めるな!」
同席していたカナは困惑し、エルザも抗議した。もう一人同席していたグレイは我関せずのようだ。
因みにグレイやカナとは、ギルド内で年が近いこともあり、特に怪我をしている今は一緒に仕事に出ることが多く、必然的によく話すようになったのだ。
歳が近いと言えばラクサスもそうだが、彼はグレイらのように談笑するタイプではないため、あまり話す訳では無い。もっとも、ワタルの腕が治ったら犬歯をむき出しにして笑いながらまた戦う約束をする程度には関係は良好だが。……これって良好か?
「(やりあった時も思ったが、たいがい化け物だよな、アイツも……)」
負かしたはずのラクサスが模擬戦の次の日には怪物退治の仕事に出かけていたのを見て、勝ったはずなのに負けたような気分になったワタルだった。
とはいえ、今向き合っているのは彼ではなく不満げなエルザである。
「なら、エルザはこれから毎日ずっと俺と過ごすつもりか? ギルドに在籍する以上それは無理だ……っておい、どうした?」
「毎日、ずっと!? いや、そんな……でも……」
ワタルの言葉の前半を聞いたエルザは顔を真っ赤にしてショートしてしまった。
とりあえず元に戻すため、叩けば直るだろと言わんばかりにワタルはエルザの額をチョップで軽く小突く。
「……えい」
「いたっ! 何をする!?」
「や、こう斜め45度で叩けば直るかなと」
「私は古い機械か!?」
エルザとの問答もそこそこに、ワタルはグレイやカナの視線が白いものに変わった事に気付き、目を向ける。
「別に……」
「エルザも大変ねぇ……仕事、行く? 」
「あ、あぁ……頼む」
結局カナの方から申し出て、エルザがそれを受けて初仕事に行く事に。
それを見送ったワタルは溜息と共に愚痴を漏らす。
「なんか、釈然としない……」
「自分の行動を振り返れよ」
「お前に言われたくないわ、半裸」
「あれぇ!?」
もう当然のようにパンツ一丁になっているグレイにワタルは指摘すると、クエストボードに向かって歩き出すのだった。
後書き
これからもぼちぼちやってきます。
不定期更新ですが、どうぞよろしく。
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