八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十六話 花火が終わってその三
「言うまでもなくな」
「ですね、本当に」
僕も否定しなかった。
「身体にも悪いですし」
「乱れた生活はあらためなければな」
「僕も言ってます」
息子としてもだ、実際言わないではいられないからだ。
「そんなお酒と女の人ばかりの生活はって」
「しかし聞かないな」
「僕が就職するまでのお金はきっちり溜めてあるって言って」
「それでか」
「自分は太く短く生きるって言ってます」
お酒に女の人を楽しんでだ。
「いつも」
「困ったことだな」
「そう思いますけれど」
それでもなのだ。
「親父はその生活はあらためないですね」
「本当に身体を壊しそうだな」
「不思議と妙なところで節制してますがね」
まず毎日絶対に寝るようにはしていて運動もしている。そして食べるものもお野菜も果物もかなり食べている。
「けれどお酒と女の人はそんな感じです」
「毎日豪遊か」
「自分の分は」
僕の分のお金はいつも家に入れてくれてだ。
「そうしてます」
「とんでもない親父さんだけれド」
「筋は通った人あるな」
ジューンさんと水蓮さんは僕の話を聞いて言って来た。
「節制もしているなんテ」
「思ったより長生きするあるよ」
「そうかもね、医者の不養生な生活だけれど」
それでもだ、うちの親父は。
「変なところで節制もしてるから」
「というかまず義和の面倒を見ていル」
「そこは尊敬出来るある」
「幾ら遊んでも息子のことは忘れなイ」
「これかなり高ポイントある」
「まあね。暴力は絶対に振るわないし」
僕にも女の人にもだ。親父曰く飲んででも何時でも奥さんや子供、交際相手の人にも後輩にも暴力を振るう人間は最低だ。
「お金も入れてくれるし」
「もうそれだけでネ」
「いいあるよ」
「世の中子供に暴力を振るう奴多いヨ」
「所謂DVあるな」
嫌な言葉だと思う、子供に暴力を振るって死なせる親なんか論外だ。そんな親はいなくていいとさえ思っている。
「義和の親父さんいいよ」
「それだけでも違うある」
「まあね、そういえば親父も」
親父の話をして花火を観つつだ、僕はあることを思い出して言った。
「花火好きだよ」
「あっ、それお母さんも言ってたわ」
詩織さんが僕に応えてくれた。
「義和さん花火も好きだって」
「大好きなんだよね」
「粋なことが好きで」
「そうそう、親父は粋がね」
この言葉がだ。
「第一なんだよ」
「粋に生きることね」
「それが親父の好きなことなんだよ」
「だから遊んでるのね、いつも」
「粋にね」
粋に遊んでそしてだ。
「粋を意気とも呼んだりするんだよね」
「意気で手術をするの?」
「そうなんだ、粋と意気だね」
漢字は違うけれど言葉は同じだった。
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