Blue Rose
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第三話 変わらない声その十
「それじゃあ」
「ええ、絶対にね」
「それがいいですね、ただ」
「ただ?」
「いえ、私もこの子の個人情報は実は詳しく知らないんですが」
「そうなの」
「レントゲン科でもどうも」
微妙な顔での言葉だった。
「内密のことで」
「医師の貴女も知らされていないの」
「詳しくは」
「そこまで個人情報がチェックされているってことね」
「多分この病院でも院長先生と限られた人だけしかです」
知らないというのだ。
「それこそ」
「それだけ守らなくてはいけないってことね」
「そうした話ですね」
「そうね、ただこのことは」
優子は真剣な顔でだ、同僚にさらに言った。
「ご家族にはね」
「お話すべきですね」
「そうしないとね」
「はい、本当に」
「そしてご家族とも相談して」
「今後どうするかを決めるべきですね」
「私はそう思うわ」
優子は真剣そのものの顔で述べた。
「事態を無事に解決する為には」
「私も同じです、では」
「院長先生とお話してね」
「そうするべきですね」
「慎重かつ内密に」
優子はこの二つを強く言った。
「ことを進めていくべきね」
「この子の為にも」
「病院は患者を守るものよ」
「その命も個人情報も」
「全部ね、だからね」
それでというのだ。
「守りましょう」
「はい、レントゲン科でもお話します」
同僚も応えた、そして。
優子はこの話を終えた、その話が終わってだった。
お茶を手に取って一口飲んだがだ、ここでこう言ったのだった。
「このことが幸せに進むことを祈るけれど」
「何か」
「いえ、妙に胸騒ぎがするのよ」
眉を微妙に歪めさせてだ、優子は同僚にこうも言った。
「何かね」
「胸騒ぎですか」
「何かね」
こう言うのだった。
「何故かわからないけれど」
「嫌な予感ですか」
「そうかも知れないわね」
その胸騒ぎがそうしたものであることもだ、優子は否定しなかった。
「マスコミが来るとか。そうしたことにならない様にしても」
「それでもですね」
「何かが起こるかも」
「そう思われますか」
「だからね」
それでというのだ。
「この胸騒ぎが悪いことにならないことを祈るわ」
「そうですね、確かに」
同僚も暗い顔で頷いて応えた。
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