Blue Rose
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第三話 変わらない声その九
「お話していいですか?」
「何かわかったの?」
「どうも最初から女性的でしたが」
それでもというのだ。
「レントゲン写真から調べていくと」
「ええ、その写真からね」
「徐々に、なんです」
「徐々に?」
「身体が女の子になっていっている」
「女の子になの」
「そうです、性別が変わっていっているみたいです」
こう深刻な顔で言うのだった。
「男性から女性に」
「そんな話が本当にあったのね」
「はい、それで」
「その子はなのね」
「女の子になっていってるみたいです」
「そうなのね」
「ですから」
それで、というのだ。
「このことは医学的にもです」
「かなり特殊な事例として」
「凄いことだと思います」
「そうね、実際にそうした事例が身近にあるなんてね」
「想像してなかったですよね」
「正直驚いてるわ」
優子はお茶を飲む手を止めてだ、優花に真剣な顔で答えた。
「そうした事例は実際にあることはね」
「先輩もご存知ですよね」
「ええ、ただ」
「身近では」
「それは考えていなかったから」
まさに夢にも思っていなかった。
「嘘みたいよ、ただ」
「はい、このことは」
「その子のプライバシーとかはね」
「守らないといけないですね」
「それとね」
真剣に考える顔でだ、優子は同僚に言った。
「もう一つあるわ」
「もう一つとは」
「その子が女の子になったら戸籍とかね」
そうしたことでというのだ。
「マスコミにこのことが知られたりしたら」
「大変なことになりますね」
「我が国のマスコミのレベルは世界最低よ」
優子は眉を顰めさせて言った。
「そのことは貴女もわかっているわね」
「はい、嘘も平気で書きますから」
「嘘を書いても報道してもそれが普通よ」
「だからですね」
「このことはね」
「くれぐれもですね」
「そう、知られてはいけないわ」
絶対にというのだ。
「本当にね」
「そうですね、何としても」
「幸いうちの病院はね」
今度は自分達が務めている病院のことも話した。
「八条グループの病院でね」
「はい、マスコミにもですね」
「隠すことが出来るから」
「こうしたことですね」
「院長先生にもお話しましょう」
「そうですね、それがいいですね」
同僚も優子のその言葉に頷いた。
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