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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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山賊退治

 
前書き
FAIRYTAILと同じくマガジンで連載されてる『ACMAGAME』で今やっているキグルミかくれんぼ。もしこの小説の大魔闘演武で似たような競技があったらシリルとソフィア無双できたような気がする。
シリル・・・中身が見える。
ソフィア・・・お尻の感触で大体わかる。
他にも駆け引きとかやれそうだし、戦車(チャリオット)なんかよりよっぽど競技っぽいぞこれ。 

 
次の日・・・

「おはようございま~す!!」

元のギルドが贈呈された次の日、俺はいつものように扉を開けてギルドの中にいる皆さんに挨拶する。

「おう。いつもより少し遅かったんじゃねぇか?」
「いや・・・色々ありまして・・・」

ギルドで朝食を食べていたのだろうか、テーブルにエルザさんと一緒に腰かけているグレイさんが俺に気づいてそう言う。実は朝、間違って山の方にあるギルドの方へと行ってしまい、慌てて引き返してきたのだけど、言うとからかわれそうだから絶対に言わないぞ。

「あとはウェンディが来れば全員揃うな」
「何のことですか?」

グレイさんと向かい合うように紅茶を飲んでいるエルザさん。彼女が何を言っているのかわからず、俺は首を傾げる。

「私とグレイとシリル、そしてウェンディで仕事に行こうと思ってな。待っていたのだ」
「んで、お前とウェンディが来るのを待ってたってわけだ」

俺の質問に分かりやすく答えてくれる。二人。なるほど、そう言うことなのか。

「あれ?ナツさんとルーシィさんは?」

今名前が上がらなかった二人。エルザさんとグレイさんはナツさんとルーシィさんと『妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チーム』と呼ばれているわけだし、てっきり彼らも一緒に行くものだと思っていたら、そうじゃないみたいだ。

「今回は簡単な仕事だからな。あいつらなしでも大丈夫だろう」

なるほどそういうことか。確かに簡単な仕事だったらたくさんでいく必要もないし、依頼もたくさん来ているだろうからそれをこなしていく意味でもいいと思う。それに、ルーシィさんの家賃のことを考えたら、少ない人数で仕事した方がお金も稼げるし、二人には残ってもらった方がいいかもしれない。

「おはようございますグレイさん、エルザさん」

俺たちが話していると、後ろから待ち人がこちらにやって来るのがわかった。

「おはようウェンディ」
「おはようシリル」

ニルビット族の織物である緑を主としたワンピースに身を包んだウェンディ。彼女の後ろにはシャルルと眠そうな顔をしているセシリーがチョコチョコとついてきていた。

「待ってたぜ、ウェンディ」
「さて。揃ったことだし、行くとするか」

ウェンディがやって来たことでグレイさんとエルザさんは立ち上がる。丁度朝御飯も食べ終わっているようですし、いいタイミングで来たみたいだな。

「行くってどこにですか?」

後からやって来たため、何の話かわからないといった様子のウェンディ。俺が事情を説明すると、彼女は疑問に思ったことを質問する。

「何の仕事に行くの?」
「あ・・・」

言われてみると、俺も全然聞いてなかった。二人がいつも間にか選んでいた仕事みたいだし、俺はそんな疑問など全く持っていなかったから聞くことすらしていなかった。

「どうした?早く行くぞ」
「馬車も手配済みだからな。何も心配はいらないぞ」

すでにギルドの出入り口に立ってまだ話をしている俺たちを急かす二人。俺たちは彼らに質問するために、すぐに近くに駆けていく。

「依頼って何の仕事なんですか?」
「これだ」

エルザさんが依頼書をこちらに向ける。俺とウェンディ、シャルルとセシリーはそれを覗き込むようにして見る。

「山賊退治・・・ですか?」

どうやら依頼は山で旅人を襲う山賊を退治するというものらしい。確かに山賊程度なら、簡単に片をつけることができそうだ。

「場所はドロマーズの村からさらに一時間ほど馬車で向かった先だな」
「馬車か・・・」

ドロマーズの村っていうのは、馬車で三時間ほど向かった先にある村らしく、山賊たちが現れるのはさらにそこから一時間先の地点らしい。つまり四時間の旅路・・・いくらウェンディのトロイアでもそこまでの長時間は持たないだろうし、これは苦しい依頼になりそうだ。




















それから数時間後・・・

「う・・・ぷ・・・」

予想通り、俺は乗り物酔いで今は苦しい状況になっている。途中まではトロイアも効いていたし、中間地点もあっさり通過したから問題ないと思っていたのだけれども、後一時間弱といったところでトロイアの効力が切れてしまったのだ。

「大丈夫?シリル」
「うん・・・ギリギリ・・・」

顔面蒼白の俺の背中を擦っているのはもちろんウェンディ。ギリギリ吐かないではいられてるけど、正直山賊退治までに生きていられるかは定かではない。

「なんで滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ってのは乗り物に弱ぇんだ?」

もっともな疑問を言うグレイさん。確かにそうだよな。俺もナツさんもガジルさんも、剣咬の虎(セイバートゥース)のスティングさんと恐らくグラシアンさんとローグさんも、皆乗り物に弱い。ラクサスさんとコブラはどうかは知らないけど、基本的に皆酔いやすい体質なのである。ウェンディを除いてはだけど。

「まぁそう言うな。シリルは以前までは大丈夫だったではないか。いずれ元通りになるさ」
「そ・・・そうか?」

エルザさんが何の根拠もない発言をし、グレイさんもどこからそんな自信が湧いてくるのかわからない様子。俺はそれどころではないので、何も突っ込みとかは入れられないけど。

「おっ?見えてきたな」

そろそろ限界に差し掛かった頃、グレイさんから救いの言葉が聞こえてくる。ようやくこの地獄の時間から解放されるのだと思うと、吐き気も吹き飛ぶようだった。

「おえ・・・」

前言撤回。そんなことはあるはずなかった。

「あの辺りで山賊が出没するというのか?」
「らしいな」

二人はそう言うと運転手に馬車を止めるように指示する。馬車が止まったことで乗り物酔いも治り、俺も元気になる。いやぁギリギリだった。もう少しでやってはいけないことになるところだった。

「シリル。具合は大丈夫か?」
「はい!!バッチリです!!」

親指と人差し指で丸を作りエルザさんに見せる。心配しているウェンディはまだ背中を擦ってくれているが、もう大丈夫だから。心配しなくていいから。

「ならば、打ち合わせ通りいくぞ」
「おうっ!!」
「「はい!!」」

エルザさんの指示を受け散っていく俺たち。今回の作戦はこうだ。俺とウェンディが何も知らないフリをして山を登っていき、山賊たちを呼び寄せる囮になる。俺たちは見た感じは非力な子供だし、山賊たちも何の警戒もなく近づいてくることだろう。
そして全員が現れたところでエルザさんをシャルルが、グレイさんをセシリーがそれぞれ連れて飛んできて、四人で一気にフルボッコ。完璧な作戦ですね。

「じゃあ、いこっ!!ウェンディ」
「うん!!」

手を繋ぎ、一本道を登っていく俺とウェンディ。本当に二人だけだったらすごく嬉しいけど、どこかでエルザさんたちが見ているのだと思うとなんだか逆にドキドキする。

「ねぇシリル」
「ん?」

旅人を装うために何かを雑談でもしようかと思っていると、ウェンディもそう思ったのか、話を振ってくれる。

「この作戦なんだけどね?」
「俺たちが囮になるって作戦のこと?」

ウェンディは小さくうなずく。この作戦に何か不安を感じているのだろうか、ウェンディは少々浮かない顔をしている。

「こんな山道を子供二人で歩いてたら、不自然じゃないかな?」
「あ!!」

言われてみて気付いたけど、確かに違和感がある。子供だけで旅をするというのもないとは言えないが、かなり珍しいことだと思う。もし確実に敵をおびき寄せるのであれば、グレイさんたちも一緒にいて年齢幅の広い旅人やら親子やらに見せることができるような気もする。

「エルザさん怒るかもね」
「怒るだろうね」

実は今回のこの作戦はエルザさんが発案なのである。で、彼女はもちろん自信満々だったので俺たちも納得していたが、ウェンディにそう言われると急に不安になってきた。
以前ルーシィさんの妹を名乗るミッシェルさんがやって来た時、盗賊退治だったかな?その依頼を受けたときにルーシィさんのお色気作戦で敵の注意を引き、後ろからナツさんたちが奇襲を仕掛けるって作戦だったらしいのだが、その盗賊団というのがオネェ系の軍団だったらしく失敗。その結果、一晩寝ずに考えた作戦を無駄にされたエルザさんが激怒して敵を瞬殺したとか。
もし今回も同じようなことになったらきっと彼女は怒ることだろう。もっともクエストが成功するならそれでもいいとは思うけど、あまり刺激はしないでほしい。

「おおっ!?お嬢ちゃんたち可愛いねぇ」

なんてことを考えていると、俺たちの前に数人の男たちが姿を現す。

「こんな山の中にたった二人で来るなんて」
「家出か何かかな?」

思わず押し黙ってしまった。まさか何の警戒もなく子供二人が歩いているところにやってくる山賊がいるとは・・・今ごろエルザさんは作戦が成功して大喜びしていそうだな。

「よかったらお兄さんたちと遊ばない?」
「俺たちの家すぐ近くだからさ」

甘ったるい声で俺たちを誘い込もうとする山賊?さんたち。予想していた山賊のイメージと大分違う。聞いた話だと旅人を襲いものをせしめているとの話だったけど、俺たちには全くそんな感じのことはしてこない。

「これってナンパ?」
「まさか。そう言って付いていったところをカツアゲするんじゃないの?」

ウェンディと敵に聞こえないように小声で今の状況について話す。いくらなんでもナンパなんかしないだろう。第一俺たちの見た目はウェンディには悪いけど、迷うことなく子供だ。向こうはどう見てもグレイさんより年上といった感じの男たちだし、いくらウェンディが可愛くてもそんなことしないだろう。

「ねぇ?どうなの?」
「あっ」

俺たちが返事をしないことに対してイラついたのか、男の一人がウェンディの手を掴み、引き寄せようとする。

「お前・・・」

その瞬間、俺は確信を持った。

「ロリコンか!!」
「ぐはっ!!」

チャパティさんと同じ人種だと確信を持った俺は、ウェンディの手をつかんだ男の顔を思いっきり殴る。その衝撃で男はノックアウト、地面に倒れ気絶していた。

「なっ!?」
「パンチ強!?」

山賊たちはいきなりのことに目を白黒させ、倒れた男とそれを殴った俺を交互に見ている。

「いや・・・別にロリコンってわけじゃ・・・」

殴られた男の隣・・・つまり俺の正面に立っていた奴が焦った様子で自分たちが俺の予想する人物ではないことを言おうとする。だが、彼は俺とウェンディの顔を見て、何かに気付き、言葉を飲んだ。

「どうした?」
「なんかしたのか?」

周りの男たちがなぜ彼がしゃべらなくなってしまったのかわからず、声をかける。固まっている男の人は、俺たちを指さし、冷や汗を流しながらこう言う。

「こいつら妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!」
「「「「「えぇっ!?」」」」」

なんと驚いたことに、大魔闘演武優勝の功績はこんなところまで広まっていたらしい。大魔闘演武優勝ギルドの・・・それも大会出場者二人が目の前にいるんだから、驚かない方がおかしいか。

「本当だ!!」
「どっちも見たことあるぞ!?」
「や・・・やべぇ!!」

数歩後ずさる山賊。なんだか戦ってもいないのに相手が圧倒されているのを見ると、正直気分がいい。頑張った甲斐があるってもんだよね。

「その通り!!」
「「「「「!?」」」」」

すると、山賊たちの後ろから声が聞こえ、彼らはそちらに視線を移す。そこにいたのは、エルザさんとグレイさん、そして彼女たちを持っていたと思われるシャルルとセシリーだった。

妖精女王(ティターニア)のエルザ!?」
「あっちは露出魔のグレイか!?」
「俺の覚え方どうなってんだ!!」

一日目のタクトさんがグレイさんと相対した時のセリフが脳裏をよぎる。覚え方としては間違ってないけど、呼ばれる方としてはもう少し何かなかったのかと思ってしまうのは間違いないだろう。

「私たちは貴様らを退治しにきた。大人しくしろ」

剣の先端を敵である山賊に向けるエルザさん。それを聞いた山賊たちはさらに慌て出していた。

「お・・・おい!!どうするよ!?」
「こ・・・ここは一先ず・・・」
「「「「「逃げるが勝ちだ!!」」」」」

男たちは視線を交換し、一目散に山の中へと逃げていこうとする。その際ちゃんと俺が気絶させた仲間も担いでいたので、なんだか悪い人なのかいい人なのか判断しづらくなったのは俺だけだろうか?

「行かせるか!!アイスメイク・・・氷創騎兵(フリーズランサー)!!」

背を向け懸命に逃げる山賊たち。そんな彼らを後ろからグレイさんが氷の槍を大量に放つ。まともに攻撃が入ったことで、彼らはその場に倒れ込んでいた。

「さて、まだやるか?」
「「「「「ひぃぃぃぃ!!」」」」」

いつの間にか男の上に仁王立ちしていたエルザさん。彼女は倒れている男の目と鼻の先に剣を向ける。向けられた男と彼のそばにいた意識のあるものたちは、皆悲鳴をあげている。

「「「「「ま・・・参りましたぁ!!」」」」」

なんて呆気ないのだろうか。まだ俺とグレイさんしか攻撃をしていないのにも関わらず、山賊たちは勝てないと判断したらしく、土下座して地面に額を擦り付けている。

「反省するのはいいことだ。だが、依頼は依頼だからな。拘束させてもらうぞ」

依頼主に身柄を渡さなければならないため、動けないようにロープで山賊たちを縛り上げていく。

「結局この人たちって・・・何の目的だったのかな?」
「な・・・なんだったんだろうね?」

ウェンディがナンパされそうになっただけで、別に金品を取られそうになった訳でもなかったし。
それが気になったので後で聞いてみると、いつもは金目のものを奪っているのらしいけど、今日は俺とウェンディは子供・・・つまり、お金を持っているように見えなかったらしい。旅人がいたから現れてはみたけど、俺たちを見て失敗したと思い適当に声をかけて時間を潰し、次に来る旅人たちを襲うと計画を切り替えていたそうだ。
でも、よく考えたらそうだよね。子供の持っている金額なんて限度があるし、巻き上げてもリスクの方が多いかもしれない。そんな作戦に引っ掛かってしまうとは・・・哀れ・・・






















その日の夜・・・

「じゃあ、また明日な」
「はい!!」
「今日はゆっくり休めよ」
「あんたたちもね」
「お休みなさい」
「じゃあね~」

山賊退治をした日の夜、俺たちは依頼主が保有している宿に、夜遅いこともあり泊めてもらうことになった。元々依頼主は俺たちが泊まることを考えていたらしく、部屋を二つ開けていてくれたらしい。
それで、当初は俺とグレイさん、エルザさんとウェンディとシャルルとセシリーの男女別で部屋を分けようと考えていたのだが・・・

「待て!!シリルと一緒はやめてくれ!!」

と、グレイさんがなぜか俺との相部屋を頑なに拒否。なんでダメなのか聞いても彼はなかなか答えてくれなかったのだが、エルザさんが何かを察知してそれを了承した。
その結果、俺とエルザさんが入れ替わるという形で決着したのだが・・・普通エルザさんとの相部屋の方がダメじゃないのか?グレイさんはエルザさんと二人っきりで依頼をやってた時もあるらしいけど、さすがに部屋が一緒じゃ不味いんじゃ・・・いや、これ以上はやめておこう。

「それじゃ・・・寝よっか」
「そうね。明日も早いし」
「お休み~zzzz」
「「「はやっ!!」」」

ウトウトしながら部屋でベッドの中に入る。明日は馬車を使ってギルドに帰るらしいし、乗り物酔い対策として体調は万全にしておきたい。
すでに眠っているセシリーを俺のベッドの中にいれ、布団を被る。ウェンディもシャルルを抱えるように布団に潜り込む。

それから俺たちは深い眠りについた・・・と、言いたいところなのだが・・・

(ね・・・眠れない・・・)

俺はなかなか眠らずに、セシリーを起こさない程度に寝返りを打っている。理由はたぶん、馬車で乗り物酔いになっていたことだと思う。
ほとんど寝てるようなものだったし、その後の山賊たちも全然大したことなくて体が全く疲れていない。隣に眠るセシリーを見てみるが、こいつは静かに寝息を立てて眠っており、ほっぺを突っついてみても起きる気配がない。羨ましい奴・・・

「シリル・・・寝た?」
「起きてるよ」

すると、どうやら眠れていないのは俺だけじゃなかったらしい。隣のベッドで布団にくるまっているウェンディも、同様に眠っていないようだった。

「なんだか目が覚めちゃって」
「俺も」

横たわったまま、そちらを見るように寝返りを打つと、ウェンディもこちらを向いていた。

「シャルルは?」
「寝ちゃった」

彼女と同じベッドで眠っているシャルルは、セシリー同様にスヤスヤと眠っているらしい。それを聞いた俺は、なぜかよくわからないけどホッとする。

「エルザさんとグレイさんは寝ちゃったかな?」
「どうだろうね」

隣の部屋で寝ているはずのエルザさんとグレイさん。二人はシャルルたちと同じように眠ってるのか、はたまた俺たちのように起きて何かを話しているのか・・・




















グレイside

仕事も終わり、依頼主が用意した宿で一泊することになった俺たち。部屋割りは俺の希望でエルザと一緒になっている。シリルと一緒でもよかったのだが、なんだか最近ジュビアがシリルを変な目で見ており、なんとなくではあるが、一緒の部屋だとおかしなことを言われそうな気がするので、あえて離れさせてもらったのだ。

「ん?」

部屋にはベッドが二つ。俺とエルザは当然のことではあるが別々のベッドに入っているのだが、なぜか俺の背中に何かがピッタリとくっついている感触がある。

「なんだ?」

違和感を感じた俺は首を捻りその正体を確認する。そこにいたのは、同じ部屋で寝ているはずのエルザがいた。

「うおっ!!何してんだエルザ!!」

思わず声を張り上げた俺。その声で目覚めたエルザは眠たげな目を擦りながら体を起こす。

「なんだグレイ。うるさいぞ」
「おめぇ・・・人の布団に入ってくるな!!」

そういや忘れてた。こいつは複数人数で寝ると他人の布団の中に入る癖があったんだ。大魔闘演武中はシリルやルーシィの布団に入ってたから、完全に頭から落ちてたぜ。

「まぁいいではないか。仲間だしな」

エルザは自分のベッドを見た後、動くのが面倒くさくなったのか、そのまま俺の布団に潜り込んでしまう。

「おい!!エルザ!!」
「むにゃむにゃ・・・」

シーツにしがみついている彼女を揺すってみるが、目覚めることはおろか動くことすらしない。こ・・・この野郎・・・

「なら俺が移動するか・・・」

一つため息をついて起き上がろうとすると、足に人の手が絡み付く。

「なっ・・・」

絡み付いてきたのはもちろんエルザの手。俺はそれを振り払おうとしたが、彼女の寝相の悪さに押し倒されてしまう。

「うまそうなショートケーキだ」
「はっ!?」

それと同時に彼女の口から信じられない単語が聞こえ、耳をかじられる。

「なっ!!おい!!エルザ!!」
「なんて大きいケーキだ・・・zzzz」

俺のことを食おうとしている緋色の女性を引き剥がそうとするが、さすがはS級魔導士、力が半端じゃない。

「てめぇ!!ふざけんな!!」
「ふふっ。逃げるな、私のケーキzzzz」

どれだけ揺すっても寝ぼけたまま俺のことを食い物と勘違いしているエルザは全く離れる様子がない。助けを呼んでも誰も来ねぇし、こんなことならジュビアの目なんか気にせずにシリルと一緒の部屋にしておけばよかった!!クソッ!!なんてこった!!























シリルside

「私・・・命拾いした気がする・・・」
「ハハッ。そうかもね」

なんだろう、エルザさんとウェンディが別々の部屋になってよかった気がする。なんでかはよくわからないけど、そんな気がする。

「シリル・・・そっちのベッド行っていい?昔みたいに」

人肌が恋しくなってきたのか、ウェンディがそんなことを提案してくる。そういえば昔は二人で一つのベッドで寝てたっけ。夜とか部屋暗くて怖かったし、ウェンディもそんなだったからちょうどよかったんだよね。

「うん。おいで」

眠っているセシリーと交換の形でやってくるウェンディ。セシリーとシャルルは同じベッドに入れられていることも知らずに、そのまま静かに眠っていた。

「「・・・」」

同じベッドに入っている俺とウェンディ。なんだかこの感じ懐かしいな。何年ぶりぐらいなのかな?全然覚えてないや。

「シリル」
「ん?」

一つの枕に頭を乗っける俺と彼女。彼女は目の前の少年の名前を呼ぶと、ゆっくりと目を閉じて顎を少し上げる。
それで何をしてほしいのか察した水髪の少年は、同じように瞳を閉じ、向けられる桃色の唇へとそれを重ね合わせる。

「んん・・・」

しばらくして重ね合わせたそれをゆっくりと離していく。完全に唇が離れると、自然と目が合い、求めた少女は沸騰したかのように頬を赤く染める。

「あ・・・ありがとう/////」
「うん・・・/////」

恥ずかしそうな表情でお礼をいう彼女を見て、思わず俺も同調して赤くなる。

「ね・・・寝よっか/////」
「そ・・・そうだね/////」

気恥ずかしさを残したまま、互いに顔を向けたまま深い眠りに落ちていく二人の妖精。

「今日は守ってくれてありがとね、私の王子様」

薄れ行く意識の中、微かに聞こえた少女の声。その直後に額に柔らかな感触を感じたような気もしたが、それに気づくことなく、俺の記憶は途切れたのだった。









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
アニメオリジナルであったナツとルーシィのモグラ?退治の前に、ウェンディたちが泊まりがけで山賊退治にい行っていたとあったので、勝手な想像のもとやってみちゃいました。
本当はもっとちゃんとした山賊と戦う予定だったのに、突然路線変更した次第です。
次はモグラ退治ですよ。あれがモグラなのかどうかわかりませんけど。 
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