八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十五話 夏の花火その十一
「阪神に絶対はなイ」
「どんな状況でもあるな」
「そうなのよ、だから落合さんもね」
この人もというのだ。
「味方であってくれたら」
「そう思うことしきリ」
「そうあるな」
「そうよ、阪神にいてくれたら」
阪神タイガースにというのだ。
「そう思ったわ」
「今年は本当に大丈夫だろうな」
井上さんは深刻な顔だった、その顔出必死に言う。
「優勝するだろうな」
「普通あそこまでいけば」
僕は井上さんにこう返した。
「優勝ですよね」
「普通はな」
「はい、まだ夏ですけれど」
「甲子園もまだだがな」
「出来ますよ、優勝」
間違いなくとだ、僕は半分自分自身にも言った。
「今年も」
「そうであればいいがな」
「私としましては」
小夜子さんは寂しいお顔で言った。
「カープが」
「うん、最近強いけれどね」
「優勝から遠ざかっています」
だからというのだ。
「優勝したいですね」
「そうだよね、広島もね」
「何かこう」
「こう?」
「暗いものを吹き飛ばす様な」
「そうしたものが欲しいんだよね」
「そうなのですが」
それでもという返事だった。
「難しいですわね」
「阪神が優勝したらね」
「カープは」
「優勝出来るチームは一つ」
絶対にだ、このことはどのスポーツのリーグでも同じだ。
「だからね」
「はい、最下位にはなっていませんが」
「最下位はもう決まってるからね」
「巨人ですね」
「今年もいくよ、百敗」
勝率一割台だ、そのせいか皆機嫌がいい。巨人が負ける姿を見ることは本当に心から元気が出ることだ。
「百二十敗はいくかな」
「そのことはいいのですが」
「巨人が最下位になることは」
「そしてカープが最下位にならないことは」
「そのことはいいのですが」
それでもというのだ。
「ですがやはり」
「優勝だね」
「したいですね」
心からの言葉だった。
「あの赤い帽子の胴上げを」
「ううん、わかるよ」
小夜子さんのその気持ちはとだ、僕は答えた。
「その気持ちはね、けれどね」
「阪神が、ですね」
「僕としてはね」
そしてここにいる詩織さん達もだ。
「阪神に優勝して欲しいよ」
「そうですわね」
「やっぱりね」
「勝って欲しいのよ」
切実にだ、詩織さんは言った。
「私も」
「私もですわ」
「私もだ」
円香さんも井上さんも切実な声だ。
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