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真田十勇士

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巻ノ三十二 会見その七

「御主達もそれぞれの場に着け」
「はい、それでは」
「これより」
 二人もすぐに応えてだ、そしてだった。
 それぞれ城の要地である自分達の持ち場についた。幸村がそこに入ると既に兵達と十人の家臣達がいた。
 その家臣達がだ、幸村に問うて来た。
「では殿、これより」
「これよりですな」
「戦ですな」
「本格的な城での戦ですな」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、幸村は彼等に確かな声で答えた。
「ここで勝てばな」
「真田家は守れる」
「そうなりますな」
「うむ、負ければ降らざるを得ず」
 そして、というのだ。
「我等は徳川家の家臣となってします」
「そうですな、それはどうにも」
「やはり真田は真田です」
 十人共こう言うのだった、
「徳川家ではありません」
「ですからここは勝ち」
「当家のままでいましょうぞ」
「そういうことじゃ、では御主達にも戦ってもらう」
 真田家が真田家である為にもというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「敵を思う存分破ってみせます」
「そして勝ち」
「お家を守りましょうぞ」
「ではな、頼むぞ」
 こうしてだった、彼等もその持ち場についた。そして。
 徳川の軍勢は動きはじめた、高らかに法螺貝を鳴らし。
 鉄砲や弓矢を放ちだ、そのうえで。
 城との距離を狭めていく、鳥居はその中で言った。
「堀が深いな」
「はい、しかも広いです」
「これは渡れませぬ」
 周りの旗本達が答える。
「ですから渡るにはです」
「難しいです」
「しかも壁も高いです」
「堀や壁を越えることは」
「それでは、ですな」
「うむ、正攻法じゃ」
 下手に堀や壁を越えるよりもというのだ。
「橋、特に大手門に向かう橋から攻めるぞ」
「ですな、ここは」
「そうすべきですな」
「それでは大手門の前に兵を集め」
「そのうえで攻めましょうぞ」
「わしも行く」
 その大手門の方にというのだ。
「そのうえで攻めるぞ」
「はい、わかりました」
「ではそこから主に攻めましょうぞ」
 周りも応えてだ、そしてだった。
 徳川の軍勢は大手門に兵を集めた。昌幸は櫓からその動きを見て言った。
「これでよい」
「殿の読み通りですな」
「敵は大手門のところに来ましたな」
「徳川家の戦は正道じゃ」 
 こう周りの家臣達に言うのだった。
「それ故にな」
「大手門に兵を集めてきましたか」
「この城の堀や壁を見たうえで」
「その深さや高さを見てですな」
「確かにこの城の堀や壁は険しい」
 昌幸自身が最も知っていることだ。 
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